白昼夢の中で

丹葉 菟ニ

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涙雨

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急ブレーキの音で振り返ると 鈴が車の真ん前に立ってることに驚き自身も走り出した。
怒鳴る運転に大声で謝ると道の反対に走り出した鈴。

「鈴!!行くな!!!」

鈴が車の前から居なくなると直ぐに動き出した車は直ぐに日常的に行き交い 後を追う事が出来なくなった。

「鈴!!!」

声を張り上げて呼び止めるも声は届いてないのか角を曲がり姿が見えなくなってしまった。

「まずい」

すぐ様携帯取り出し 鈴の後を追うように指示を出し母親の所に戻ると鈴の支払い書を拾い集めてた。

「コレで支払いが出来のよね。私やってみるわ」

「母さん 先程の光景を目にしましたよね?!不測の事態が起きたので帰ります」

「ええ、見てたわ。心臓が止まるかと思ったもの。でも無事だったわ。大丈夫 鈴ちゃん 誰かを追い掛けて行ったみたいだし お話ししたら帰ってくるわ。帰ってきたらタップリお灸を据えなきゃね。車の前に飛び出したらダメって。その前に コレよね。さ、頑張るわよ」

車の前に飛び出すことはダメだ。その事は間違いなく合ってるが、後は大きく間違ってる母親に頭を抱えた。1部しか合ってない答えをどう説得して車に乗せるか頭を悩ませるかより 頑張って支払いをしようとする母親の目的を達成させる方が遥かに簡単だ。

さっさとコンビニの誘導し 支払いが出来たと喜ぶ母親を車に乗せて自宅に急ぐ。
その間に弟の電話から すぐさま呪い殺されそうな声を聞くハメになった。








御手洗 俊を張らせてた班から連絡がはいった。

御手洗 俊と田中鈴が 偶然に遭遇。
田中鈴が御手洗 俊を追っていた。

何故そんな 経緯になったか事細かに説明を受け 無事でよかったと思いと 兄に一言 物申さないと気がすまない。
廊下に出て直ぐに 電話を掛けると相手が出た。確認もせずに「今回の釈明は後でしてもらいます」怒気を孕んだ声になったのはしかない。
直ぐに捜査本部に向かい 各自に指令を出し、自身も外に出る為に準備を始めた。










後を追うけど 元々 運動が苦手で見失ってしまった。

園で 鬼ごっこをして遊んでたとき、走るのが苦手な俊は 逃げるには逃げるけど、俺と一緒で持久力がない。
逃げたと見せかけて 近くに隠れて鬼が通り過ぎるのを待って、遠く行った隙に違う方向に逃げるのが俊のやり方だった。

あの頃と一緒ならと周りを見渡し 奥に小さな公園を見つけ走り 隠れそうな子供の遊具の中に身を屈めた。

「なんで ここだとわかった」

銃を向けて威嚇してくる。あの日 俺を打ったのは間違いなく俊だ。

「わかるよ」

両膝を着いて両腕を上げて 敵意が無いことを見せる。

「俺の事を 覚えてる」

黙ったまま俺をみてる俊、答えない事が答えって晃さんに教わった。

「そっか、覚えててくれたんだ」

良かった。覚えてないって言われなくて。

「次は・・・次は、お前だって思ってた。あんな地獄から抜け出せるって・・アイツら お前はΩだって!オレは解放されるって・・・僕とお前 体型だって変わらないのに なんでβたんだよ!!なんで 俺だけ」

泣き叫んでた俊の声が甦る。
βだって騙してるけど自分自身は騙せなかった。あんな風になりたくないって 逃げた。
あの時 俊を助けなかった。自分自身が可愛かった。
俊は俺にその事を責めてもいい。でも、関係ない人を傷付けるのは違う。

「だからって 無差別に人に銃を向けるのは良くない」

「違う!!僕が打ったのはお前だけだ!!!」

え?オレだけ??

「俺だけ?」

「ある人がコレをくれたんだ。捕まりそうになったら使えって。でも 使わなかった。それなのに、あの日、お前を見て 腹が立ってきた。・・僕は アイツらに見つからないように息を潜めて生きてるのに、おまえは 堂々と仕事してるの姿を見て・・・無償に腹が立って」

ボロボロと涙を流す俊。

「そう、そんなに俺が・・・。ねぇ、佐藤は一緒じゃないの?」

次の生贄ができれば開放されるとか信じてたんだ。それが歳が1つしか変わらない 小さな俺だと信じてた。ごめん、俺の嘘が 色々と誤解を与える様になったんだ。それでも 俺は周りの人に比べたら発情期は遅い方だったみたいだけど。

「知らない」

「知らない?」

「知らない僕 何も知らない」

泣きながらも銃を向けたままの俊は かなり警戒心が強い。

「そう、佐藤は去年の夏頃から園を無断欠席してて行方不明なんだ。何も知らない?」

「無断欠席?」

「そう、無断欠席。それに 俊さ、それ誰に貰ったの?」

フィ と顔をそむける。誰に貰ったかなんて言いたくないって態度だ。

「ねぇ、俺しか撃ってないって言ってたよね。俺を除いた5人を撃ったのは 誰?」

「僕は知らない。玉も1発しか使ってない。殺したい奴は居るけど」

殺したい奴と言ってるが 酷いことをされて来たんだろう。ガタガタと震えてる。こんな状態では殺す所ではないだろうな。

「その事 ちゃんと分かるように説明しないと全部の事件 俊が1人でやった様に思われるよ」
 
「お前が!あんな所に ボサっと立ってなかったら 僕はこんな事にならなかったのに!!なんで なんで今頃 ・・・お前 なんでそんなナリしてβなんだよ!!」

怒りに任せて引き金に掛かる指に力が籠るのか見て取れる。
背中にに冷たい汗を感じながら 思いとどまって。と、願う。

「ごめん。まさか俊と会うところに 俺が仕事するとは思ってなかった。俊は本当はあそこに何をしにいってたんだ?」

確か、あの近くで発砲事件があった って言ってた。

「べつに」

「犯人、・・・発砲事件の犯人 探してたんじゃないの?」

視線をズラす俊。俺の考えは間違ってなかった。

「俺も 俊を探してた。きっと俊と同じ思いだから」

「僕の何がわかるって言うんだよ!!僕がどれだけ 苦しんだか・・・・わかるはずない」

顔をぐちゃぐちゃに歪めて 泣きながら言葉にならない思いを伝えようとしても 言葉が出てこない代わりにあらたな涙が頬を伝う。

遊具に開けられた穴から外が見えた。数人の大人達が慌てた様子で走り回ってる。
もしかして 俊を追い掛けてる悪い奴らなのかもしれない。

「なぁ、俊ここに隠れてちゃすぐ見つかるよ」

「あ、あいつらに 見つかった?! ヤダ あんな事 二度とされたくない」

よほど 酷いことをされて来たのか 酷い怯えようだ。

「大丈夫。絶対に大丈夫」

家に連れて帰るにしてもここからじゃ 遠すぎて無理だ。どうしたらいいのか・・・確かこの先に道路工事で来たことがある。道を1本入った所にラブホテルがあるっておっちゃん達が話してたな。
その時はおっちゃん達には からかわれたけど、今はその話をしてくれた事に感謝する。

「俊 ここに居ると直ぐに見つかる。ちゃんと隠れよう」

少しさがってる銃を持つ手に 自分の手を乗せて語りかける。俊はちゃんと 聞く耳を持ってる。自分が悪いことをしたんだと分かってる。自首をしてくれる気持になる迄 俺は俊を説得したい。

「ここを移動して 隠れよう」

「あいつらから 逃してくれる」

頼りげない 幼子の様な俊に頷いた。

2人で遊具の中から這い出て 周りに人が居ないこと確認しながら建物のすき間を縫う様に 細い路地を進む。

怪しい奴が居たとしても大勢が集まる場所では手が出せないだろう。大通りに出て 道路工事で来た場所にたどり着いた。確か、コンビニと旅行会社の間の道を入って 少し行って右手奥に目にHOTELがみえた。

ラブホテルって どぎつい 看板かと思ってたけど 何か普通だ。
適当に入り 戸惑った。部屋の様子を映し出した写真のパネルだけ。人がいない代わりに電話が置かれてた。

只今の時間はfreeTime、3時間コース、2時間コース

とりあえずフリータイムを選びたいけど部屋のボタンしかない。
背後から人の話し声が聞こえ 慌てて適当に部屋のボタンを押した。【エレベーターにお乗り下さい】と表示されたので俊の手を引きエレベーターに乗った。

部屋のランプが点滅してる。ほかの部屋はしてないのでその部屋のドアノブを回し 部屋の中に入った。

時間を決めてないけど このまま勝手にいていいものなのか戸惑ってると電話が鳴り出した。
おそるおそる電話にでると「本日発売お越しいただきありがとうございます。本日の滞在時間はフリータイム、2時間 3時間 となっておりますが」へぇー、こんな風になってるのかと関心してしまった。

「フリータイムでお願いします」

フリーTimeは午後7時迄が4980円だ。かなり安い。のか?

ここなら 安心して俊と話が出来る。

「Ωの体がそんなに珍しい?オメガだから下の締まりは
「違う!!俺は俊と話したくてここに入っただけ!!体目当てとかじゃない!」

有り得ない 誤解を与えてしまったことに気がつき、力強く否定した。

「はなし?」

「そう、公園で話しただろう その続き」

ソファーに座らずにベッドに座った。 園ではベッドに座って話してたからそのほうが話しやすいと考えて。

「俊は 俺しか撃ってない。俺は死んでない。でも、俺の前に撃たれた人は死んでるんだ。俊がその事をちゃんと伝えないと全部の罪を1人で背負わないと行けなくなる。俺はそんな事して欲しくない」

「僕の事 信じてくれるの?」

潤み始めた瞳からは またポロポロ涙が溢れる。きっと俺には想像出来ない程 辛いことが いっぱいあったんだ。

「うん、信じる。あの日 あの場所に俊が居たのは 発砲事件を起こしてる人を探してたんじゃ無いの?」

「うん、名前しか知らないから自分で探すしか無かった」

「そう、その人が俊に銃をくれたんだ。名前何っていうの?

「 浅嗣さん。僕が逃げる時にも手を貸してくれたから」

「浅嗣って、苗字?」

「名前だよ」

「そう。その人は 本当に浅嗣って名乗ったの?」

「そうだよ。逃がしてやるからって、浅嗣さんは約束してくれた。約束を果たしてくれたんだ」

浅嗣さんの話しをしてる時は尊敬してる人の話しをしてるような俊。浅嗣って変わった名前 そんなにあるもんじゃない。俺はその浅嗣に強い嫌悪感を抱いてた。





家にもどり鈴が着ていた パジャマをビニール袋に入れて現場に急いだ。

いまだに足取りが掴めないまま時間だけが経過してる。

如月に手渡したビニール袋の匂いを嗅ぎ  俺の側に来て匂いを嗅ぎ、しっかりとした 足取りで動き出した警察犬の後を追った。

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