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虹雨
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朝から座る暇も息付く暇も惜しむ程に動き回る。
素直に観念すれば良いものを悪足掻きする馬鹿共の事情聴取は当然。昨日に引き続き現場検証、遺留物回収、残留者の証拠を基に逮捕手続き、1番面倒なのが銃の弾丸数合わせと色々とやらないと行けないと 慌ただしい中、自分達で資料を目に通して決めろと言いたくなる最も頭を悩ませる上の奴らに呼ばれて記者会見の打ち合わせ。
身体がいくつあっても足りないし、使える頭も1つで幾つもの指示を的確にやらないといけない。今回の事で 若造がまた1つ抜きに出て面白くない無能共が、綻びに喜んで 突っつきに来る嫌な奴も現れる。
そんな事を知っていながらも、1つ2つ 嫌味を言われながらも素直に礼を言う方が相手を優越感に浸らせて上機嫌で帰って言ってくれるから今までは良しとしてたが、実際は無駄に疲れるし 時間が勿体ないし一気に終わる物も終わらない。運命の番を得た今の俺は早く終わらせて鈴とマンションに帰り 二人っきりでのんびりと過ごしたい野望がある。
少しでも多く鈴の為に時間を取りたい俺は、わざわざ 綻びを作ってやる必要は無くなった。欲望に素直になりたい俺は、初めから鉄壁の壁を造り少しの隙も与えてやらないし、今までのように嫌味を聞いてやるつもりもない。
次々と指示を飛ばして移動する時間も勿体ないと資料を目に通して歩く俺に時折 妙な視線を感じる事があるが、どうせくだらないでまかせの噂を聞いた奴の視線だ。真偽を確かめたいけど堂々と聞けるやつは 数少ない人間に限られる。
鬱陶しい視線は今更なのでなんとも思わないが、今後の事を考えるなら本気で僅かな時間でも作って 噂をばら蒔いたあの馬鹿を訴える準備の為に病院に通ってやろうかと本気で考える。
「やっほぉ~、さっすがー 有名人 ジロジロ見られたらゾクゾクするよねぇ~。そんなに 真偽が分からないなら一晩お願いすればいいのに。僕ならお願いするなぁ~」
片手にはホッチキス止めにしてある書類をバインダーに挟んだ物をかかげ 軽いノリで現れたのは人物を、全力で不快感を表した如月。
「挨拶が出来ておりませんね。まともに教育を受けて居ないのなら有名私立の幼稚舎を御紹介致しますので、其方からやり直して見ては如何ですか?少しはまともな挨拶 くらい挨拶位は出来るようになりますよ」
「我が署 始まって以来の悲劇の男が、堂々と部屋から出歩けないと僕が自ら大至急仕上げた報告書を持ってきて上げたのに、挨拶が軽いけだけで ひっどぉ~い」
余計な事を土屋に言うなとキツく如月を睨み付けた。誰がどの様に悲劇なのかを聞けば更なる悲劇の主人公にされてしまう。
「持ってきた物があるならサッサと出してくれ」
掌を見せて出せと態度で示したが、子供みたいに バインダーを渡す所か背に隠してしまった。
「ひっどいなぁ~。折角持ってきて上げたんだから部屋に招いてお茶でもどうぞってなるでしょ」
「本来ならそうなるが 生憎 今から事情聴取を見に行くんだが、良かったら一緒にどうだ。お前がわざわざ出動して連れ帰ってきた者達だ。見守ってやらないか?」
態と丁重に断りながらも面倒臭い事に誘ってやる事にした。人数が多い分 要になるトップとその側近達の話を聞けば良いが、時折ノーマークの三下から貴重な話が飛び出す時が有るから気が抜けない。
異様な空気感が支配する事情聴取室等は嫌いだろう土屋は即座に不機嫌になる。
「折角のお誘いだけど 僕も忙しいんだよねぇ~、ごめんね お断りしちゃうけど、夜のお誘いなら喜んで受けちゃうから明日の夜なんてどうぉ?織田さんが無理なら如月さんが誘ってくれても全然構わないんだけど」
前々から事ある毎に遠慮も無く誘って来るΩの土屋。誰の前だろうと遠慮もせずに堂々と気のある素振りを見せ、自分とライバルと分かると俺達の目の前でライバル宣言を伝える猛者だが、陰でコソコソ 陰湿なイジメをしない分高く評価してる。それでも恋愛とは地球と太陽程遠い位置に存在する人物だ。そんな全く気にならない相手に俺がノーマークになったのは素直に嬉しくてついつい いい笑顔で笑いそうになるのを堪え、一応 可哀想な親友を援護しとく事にする。
「なるべく身体が空くようにするが、俺が如月のプライベートに口出しできる権限はない」
「遠慮なく口出ししていただいて結構ですよ。なんなら私設秘書も引き受けますよ」
冗談に全く聞こえない口調と眼差しで俺を見る如月に嫌な汗が背中に流れる。
そんな俺の前で 熱い何かを含んだ目をする土屋。
「俺達は公務員なんだ、当然 副業はご法度だ。そんな根本的な下らない理由でクビになったら俺の可愛い番が色々と気にして自分の好きな事も出来なくなる」
素直に高校に行きたいと勉強を始めた鈴に余計な心配をさせる訳にはいかない。
「へぇ~、運命の番に出会ったって噂は本当だったんだ。出会う迄 気が付かないっていうけど 出会ってても気づいてもらえないって辛いですよね本当に。はい コレ」
今にも泣きそうな面を隠す様に下を向いてバインダーを渡すと背を向けて遠ざかって行く土屋。
もしかしてと、隣を見るが 同じ様に俺を見た如月。同時に首を捻った。
「αの人数って何人だ?」
思わず口走ってしまった疑問を細部まで読み取る如月がうんざりした口調で返して来た。
「全警察関係者と土屋が接触した可能性のあるαを調べろと?」
「いや、時間の無駄だ。でもな あんだけちょっかいを出して来た上に 今のセリフだ。思わず土屋の運命の番が如月なのかもと思っただけだ」
「同じですね。でも貴方には鈴君が居ますから直ぐに排除しましたが」
「当然だ。あの匂いは俺だけを呼んでる匂いだ。甘く柔らかい匂いは俺だけのものだ」
鈴の貴重な匂いを如月に教えてやることも無いが、僅かでも勘違いされた俺としては不愉快でしか無い。
「はぁ~、左様ですか。1日でもマトモに帰れる日を目指して今は事情聴取室に行きませんか?」
確かに、マトモに帰れる日を夢見る俺達の今するべき事は、事件の全貌の全てをさらけ出し、その一つ一つの裏付けを取り、法廷の場で明らかにし、法の裁きを下す迄の道筋を付けるための作業をしなければならない。
その為に動かなければ何時まで経っても鈴の元に帰れないと、足を動かした。
最初に出会った日の事をよく覚えてたお母さんは、俺が肉好きだと須賀のお母さんに教えると、その場であの日食べれなかったすき焼きだとお昼が決まり、須賀のお母さんと晃さんのお母さん一緒にお昼のすき焼きを食べる事になった。
思い立ったが吉日なのか、サッとお店に予約を入れるとそのまま移動してお部屋に案内されて 最高級品のお肉を堪能しながらちょっとした疑問を口にした。
どちらも母親だし、お母さんと呼ぶと二人共返事をしてしまう。呼び名って難しいなって話から、ダブルお母さんは女の子が欲しいって話しになり、女の子には是非ママと呼んで欲しいって話になって、、、何故か俺にママと読んで欲しいってなった。
何故?何故なんだ??分からない???
女の子がほしかった話までは、"へぇ~、そうなんだ。母親って 同性の女の子とキャピキャピしたいんだな"位にしか思わなかった。
なのに!!何処からどう間違って俺が両方の母親をママ呼びにしなきゃならんのだ?!
18歳でママ呼びは 流石にキツイ!恥ずい!痛い子だ!!
必至に断ったけど、期待の篭もった目がシュッンとなると、オレが虐めをしてる気になるから不思議だ。勝負に負けた気になるし、こんな時に思い出さなくてもいい園長の言葉も思い出す。『良いですか?男の子が女性を泣かせたり悲しませたりしてはいけません。どんなにカッコイイ男の子でも、女性にそんなことをしてはカッコ良くありません、最低な男の子です』カッコイイ男は一先ず 隣に置いといて、ダブルお母さんはどちらも女性で、悲しげな表情をさせたのは間違いなく俺である。
ァァァ~!もぉ~~!!やだ!!!園長の言葉が頭ん中をグルグル回る。
男は度胸だ!!1度よべば諦めもつく!かも?
「えっと、トリックアート展!!楽しみだったんです。早く行きましょう真由ママ、ふみかママ」
「まぁ!!」
「ふふっ」
ダブルお母さんはお互いを見て俺を見た。
見つめてくるダブルお母さんの目は嬉しそうにキラキラとしてて 思わずコレで良かったんだ。とは思うが 俺の羞恥心が1日でも早く無くなれ。と、祈った。
素直に観念すれば良いものを悪足掻きする馬鹿共の事情聴取は当然。昨日に引き続き現場検証、遺留物回収、残留者の証拠を基に逮捕手続き、1番面倒なのが銃の弾丸数合わせと色々とやらないと行けないと 慌ただしい中、自分達で資料を目に通して決めろと言いたくなる最も頭を悩ませる上の奴らに呼ばれて記者会見の打ち合わせ。
身体がいくつあっても足りないし、使える頭も1つで幾つもの指示を的確にやらないといけない。今回の事で 若造がまた1つ抜きに出て面白くない無能共が、綻びに喜んで 突っつきに来る嫌な奴も現れる。
そんな事を知っていながらも、1つ2つ 嫌味を言われながらも素直に礼を言う方が相手を優越感に浸らせて上機嫌で帰って言ってくれるから今までは良しとしてたが、実際は無駄に疲れるし 時間が勿体ないし一気に終わる物も終わらない。運命の番を得た今の俺は早く終わらせて鈴とマンションに帰り 二人っきりでのんびりと過ごしたい野望がある。
少しでも多く鈴の為に時間を取りたい俺は、わざわざ 綻びを作ってやる必要は無くなった。欲望に素直になりたい俺は、初めから鉄壁の壁を造り少しの隙も与えてやらないし、今までのように嫌味を聞いてやるつもりもない。
次々と指示を飛ばして移動する時間も勿体ないと資料を目に通して歩く俺に時折 妙な視線を感じる事があるが、どうせくだらないでまかせの噂を聞いた奴の視線だ。真偽を確かめたいけど堂々と聞けるやつは 数少ない人間に限られる。
鬱陶しい視線は今更なのでなんとも思わないが、今後の事を考えるなら本気で僅かな時間でも作って 噂をばら蒔いたあの馬鹿を訴える準備の為に病院に通ってやろうかと本気で考える。
「やっほぉ~、さっすがー 有名人 ジロジロ見られたらゾクゾクするよねぇ~。そんなに 真偽が分からないなら一晩お願いすればいいのに。僕ならお願いするなぁ~」
片手にはホッチキス止めにしてある書類をバインダーに挟んだ物をかかげ 軽いノリで現れたのは人物を、全力で不快感を表した如月。
「挨拶が出来ておりませんね。まともに教育を受けて居ないのなら有名私立の幼稚舎を御紹介致しますので、其方からやり直して見ては如何ですか?少しはまともな挨拶 くらい挨拶位は出来るようになりますよ」
「我が署 始まって以来の悲劇の男が、堂々と部屋から出歩けないと僕が自ら大至急仕上げた報告書を持ってきて上げたのに、挨拶が軽いけだけで ひっどぉ~い」
余計な事を土屋に言うなとキツく如月を睨み付けた。誰がどの様に悲劇なのかを聞けば更なる悲劇の主人公にされてしまう。
「持ってきた物があるならサッサと出してくれ」
掌を見せて出せと態度で示したが、子供みたいに バインダーを渡す所か背に隠してしまった。
「ひっどいなぁ~。折角持ってきて上げたんだから部屋に招いてお茶でもどうぞってなるでしょ」
「本来ならそうなるが 生憎 今から事情聴取を見に行くんだが、良かったら一緒にどうだ。お前がわざわざ出動して連れ帰ってきた者達だ。見守ってやらないか?」
態と丁重に断りながらも面倒臭い事に誘ってやる事にした。人数が多い分 要になるトップとその側近達の話を聞けば良いが、時折ノーマークの三下から貴重な話が飛び出す時が有るから気が抜けない。
異様な空気感が支配する事情聴取室等は嫌いだろう土屋は即座に不機嫌になる。
「折角のお誘いだけど 僕も忙しいんだよねぇ~、ごめんね お断りしちゃうけど、夜のお誘いなら喜んで受けちゃうから明日の夜なんてどうぉ?織田さんが無理なら如月さんが誘ってくれても全然構わないんだけど」
前々から事ある毎に遠慮も無く誘って来るΩの土屋。誰の前だろうと遠慮もせずに堂々と気のある素振りを見せ、自分とライバルと分かると俺達の目の前でライバル宣言を伝える猛者だが、陰でコソコソ 陰湿なイジメをしない分高く評価してる。それでも恋愛とは地球と太陽程遠い位置に存在する人物だ。そんな全く気にならない相手に俺がノーマークになったのは素直に嬉しくてついつい いい笑顔で笑いそうになるのを堪え、一応 可哀想な親友を援護しとく事にする。
「なるべく身体が空くようにするが、俺が如月のプライベートに口出しできる権限はない」
「遠慮なく口出ししていただいて結構ですよ。なんなら私設秘書も引き受けますよ」
冗談に全く聞こえない口調と眼差しで俺を見る如月に嫌な汗が背中に流れる。
そんな俺の前で 熱い何かを含んだ目をする土屋。
「俺達は公務員なんだ、当然 副業はご法度だ。そんな根本的な下らない理由でクビになったら俺の可愛い番が色々と気にして自分の好きな事も出来なくなる」
素直に高校に行きたいと勉強を始めた鈴に余計な心配をさせる訳にはいかない。
「へぇ~、運命の番に出会ったって噂は本当だったんだ。出会う迄 気が付かないっていうけど 出会ってても気づいてもらえないって辛いですよね本当に。はい コレ」
今にも泣きそうな面を隠す様に下を向いてバインダーを渡すと背を向けて遠ざかって行く土屋。
もしかしてと、隣を見るが 同じ様に俺を見た如月。同時に首を捻った。
「αの人数って何人だ?」
思わず口走ってしまった疑問を細部まで読み取る如月がうんざりした口調で返して来た。
「全警察関係者と土屋が接触した可能性のあるαを調べろと?」
「いや、時間の無駄だ。でもな あんだけちょっかいを出して来た上に 今のセリフだ。思わず土屋の運命の番が如月なのかもと思っただけだ」
「同じですね。でも貴方には鈴君が居ますから直ぐに排除しましたが」
「当然だ。あの匂いは俺だけを呼んでる匂いだ。甘く柔らかい匂いは俺だけのものだ」
鈴の貴重な匂いを如月に教えてやることも無いが、僅かでも勘違いされた俺としては不愉快でしか無い。
「はぁ~、左様ですか。1日でもマトモに帰れる日を目指して今は事情聴取室に行きませんか?」
確かに、マトモに帰れる日を夢見る俺達の今するべき事は、事件の全貌の全てをさらけ出し、その一つ一つの裏付けを取り、法廷の場で明らかにし、法の裁きを下す迄の道筋を付けるための作業をしなければならない。
その為に動かなければ何時まで経っても鈴の元に帰れないと、足を動かした。
最初に出会った日の事をよく覚えてたお母さんは、俺が肉好きだと須賀のお母さんに教えると、その場であの日食べれなかったすき焼きだとお昼が決まり、須賀のお母さんと晃さんのお母さん一緒にお昼のすき焼きを食べる事になった。
思い立ったが吉日なのか、サッとお店に予約を入れるとそのまま移動してお部屋に案内されて 最高級品のお肉を堪能しながらちょっとした疑問を口にした。
どちらも母親だし、お母さんと呼ぶと二人共返事をしてしまう。呼び名って難しいなって話から、ダブルお母さんは女の子が欲しいって話しになり、女の子には是非ママと呼んで欲しいって話になって、、、何故か俺にママと読んで欲しいってなった。
何故?何故なんだ??分からない???
女の子がほしかった話までは、"へぇ~、そうなんだ。母親って 同性の女の子とキャピキャピしたいんだな"位にしか思わなかった。
なのに!!何処からどう間違って俺が両方の母親をママ呼びにしなきゃならんのだ?!
18歳でママ呼びは 流石にキツイ!恥ずい!痛い子だ!!
必至に断ったけど、期待の篭もった目がシュッンとなると、オレが虐めをしてる気になるから不思議だ。勝負に負けた気になるし、こんな時に思い出さなくてもいい園長の言葉も思い出す。『良いですか?男の子が女性を泣かせたり悲しませたりしてはいけません。どんなにカッコイイ男の子でも、女性にそんなことをしてはカッコ良くありません、最低な男の子です』カッコイイ男は一先ず 隣に置いといて、ダブルお母さんはどちらも女性で、悲しげな表情をさせたのは間違いなく俺である。
ァァァ~!もぉ~~!!やだ!!!園長の言葉が頭ん中をグルグル回る。
男は度胸だ!!1度よべば諦めもつく!かも?
「えっと、トリックアート展!!楽しみだったんです。早く行きましょう真由ママ、ふみかママ」
「まぁ!!」
「ふふっ」
ダブルお母さんはお互いを見て俺を見た。
見つめてくるダブルお母さんの目は嬉しそうにキラキラとしてて 思わずコレで良かったんだ。とは思うが 俺の羞恥心が1日でも早く無くなれ。と、祈った。
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