赤い糸の先

丹葉 菟ニ

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上質な恋を

罰と禁止で錬金術発動 6

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アルと話そうと決めてもう3日。

実験でトウカチョウの殻はマーサさん等に頼んで火を付けて貰い ただ茹でてはそのまま放置を繰り返してるだけ。

『湯が沸騰してるぞ』

掻き混ぜ棒で鍋の中をグルグルかき混ぜる。

『あのさ 明日で外出禁止が解けるからさ アルに会いに行っても良いんだよね』

『明日までが禁止。明後日なら兵士を連れてなら大丈夫だ』

違う!いや、実際に桔梗が正解なんだけど、そんな事を聞きたいんじゃない。
俺はもしかして、もしかすると、そんなことは 無いと信じたいけど、アルに嫌われたのか、も・・・。
あぁ~、ダメだ。桔梗にこんなことは相談できない。至極真っ当に遠慮なくバッサリと物事を言ってしまう桔梗にその通りだなんて言われたら、今の俺では立ち直れない。

って、そもそも 最初は同性と恋愛とか考えられないでいたのに、今ではアル限定でアルが好き。これも番の証効果なのか?は疑問だけど、徐々にアルが俺の中に浸透してきた。アルが隣で微笑んでる相手が俺じゃなくて 他の人だったら、俺は絶対に許せない。その場で誰だって詰め寄って聞き出すかもしれない。それも アルも俺を好きだと信じてるからそこできる行動。でも今の状態では出来ない 。
"私のたった一人の番は貴方だけだ。この身は国の忠誠に誓ったが 私の魂はイオリだけに捧げたい。この身が滅びたとしても生まれ変わっても貴方だけ愛したい。どうか私の魂を受け取って欲しい イオリ"1度しか聞いてないのに一字一句 覚えてしまってるアルの言葉。嘘偽りは無い言葉だったと信じられた。なのに俺が隠し事をしてると分かったあの時点で アルの気持ちが離れて行ってしまったのではと考えるだけで胸が重苦しくて何かしてないとずっと泣き続けてしまいそうになる。
ずっと 忙しくしていたいのに誰も訪ねてこない1人の時間を3日も部屋で過ごしてる。

桔梗の指示でカーテンを締めて誰にも見られて無いかを確認して、一度だけ綴じ針を錬金術で作り アルのカーディガンを完成させてから 亜麻色でセーターも編んでしまった。中途半端に余った毛糸で桔梗の耳が出せる帽子を編むと微妙な反応だったが 帽子をかぶってくれた。

つらつらとループしてしまう思いから抜け出せない自分自身が情けなくなりながらも、水分が少なくなった鍋の中のトウカチョウの殻同士がガチャガチャと妙な音を立てる。
水を足してあげないと焦げるかな?と思うものの 水気がほぼ無くなる寸前までトウカチョウの殻をかき混ぜるてると半透明の糸のようなもが薄らと見えた。

え?コレって糸!?
半透明で良く見ないと気が付かないけど、数本の糸が見える。
1本を掴む為に鍋からコレだと思う物のを取り出し 布で出てる糸を引っ張ると硬質だった物とは思えないほどスルスルと簡単にほぐれてくれる。

持っていた棒にそのままある程度巻き付けたら残りの部はまた鍋の中に戻し 慎重に糸を棒に絡めとった。

『湯がいるか』

『うん!欲しい それも熱々が良い』

鍋の中をお湯で満たしてくれた桔梗。

『どうだ』

少し伸びあがって鍋の中を覗いてくる桔梗にお礼を言いながらも糸を回収していく。





オーババードを最後に魔獣の出現は無いが、忙しい。少しの時間も取れない中、リアンテからの面会を要望が来たので丁度良いと受けた。

「お久しぶりですリアンテ様」

相変わらず悪趣味なアクセサリーをジャラジャラと付けてる。

「こちらこそ いきなりの面会要望を聞き入れて頂きありがとうございます」

悪びれた様子も全く無い。

「いえ、警戒体制中にも関わらずか急に相談したい案件となれば聞かない訳にはいきませんから」

こんな中、直接会って話したいと申し出るのは本当にか急な案件だけ。後は伝達事項は手紙鳥や伝書鳥で知られてるのが一般的なやり取り。

「街の至る所に限らず 遠く離れてる街や村までも厳戒体制ではやっと出会えた番様との逢瀬も出来ないでしょうに。それに、神主様も貴方の番様に何かしら有ればと 毎日が生きた心地がしないのでは?」

確かに最後までイオリの親にと粘ってたのがコイツだ。父さんがいち早く排除したけど。

「我が家から兵士を派遣しておりますのでご心配には及びませんし、遠く離れていても我国の民達に不安にさせる訳には行きません。騎士達も十分に理解してくれてると」

「流石は歴代最少年で総隊長まで上り詰めた マシューム家の神童ですな」

神童か、幼い時を思い出す。番が見つかった時に少しでも頼りになる男で居たいと頑張った結果が神童と呼ばれ始めただけの事。

「騎士である私が民を心配するのは当たり前のこと」

「騎士である貴方は1度はその席を退く決心したにも関わらず今でもその席にいるのは大きな手柄が欲しかったからなのでは?」

騎士になれば遠くに行ける 自分の番を探すことが出来るし、番の状況が分からない以上 騎士で上位に居れば状況判断での行動も権力も執行できる事が多いから上を目指しただけ。

「人生で一度は大きな手柄を手にしてみたい。男なら大体の者が思うことでしょう。ですが私にはそんな野望の前に一日でも早く私と同じ証を持つ番を見つけることが最優先事項だったので」

番探しの途中で手にした手柄は幾つも有るがそんなものどうでもいい。俺が欲しかったのはただ1つ。俺と一緒の証を持つ番だけ。

「ほう、では今 最優先事項だった番様が見つかり次は大きな手柄が欲しくてシルバーウルフを使い街中に魔獣を誘い込んでる。なんて事は」

バカバカしい。イオリが居れば俺は何も要らない。隣にイオリさえ居てくれたら俺は何処でも暮らしていける、当然イオリには苦労は掛けない。

「はっ、まさか昨日今日出た噂話を聞きに来たのですか?確かにシルバーウルフは魔獣ですが、私達の話も良く理解し行動をする頭も頗る良い」

シルバーウルフが伝説となってるのは、1人の冒険者とシルバーウルフが街や村を回っては人々を助け幸せを齎したと伝承がある。それは幼い子供の読み聞かせの本にもある。
しかも、シルバーウルフや一部の祝福を齎す魔獣には明確な決まりがある。人を襲ったり攻撃をしてきたなら反撃をしていい。だけど、シルバーウルフや祝福をもたらす魔獣は殆ど人を襲うことは無いとされてる。シルバーウルフの桔梗もすんなりと人々に受け入れられてるのはこのバカでも知ってるはずの話だ。

「信憑性も無ければこんな噂は出ないでしょう。魔獣が出た所にはシルバーウルフも居たと聞きます。それに貴方が野営練習からテイムして帰って来てから魔獣が街に出没し始めた。貴方の前ではいい子にしてても所詮は魔獣、街中でシルバーウルフが手引きをしてるのでは?」

人を襲わないシルバーウルフ、しかもイオリを守ってる桔梗がイオリを危険に晒してるとハッキリと断言したコイツに腹が立つ前に呆れてしまう。
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