―異質― 激突の編/日本国の〝隊〟 その異世界を掻き回す重金奏――

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チャプター4:「異海に轟く咆哮」《海隊編》

4-7:「超常を与えられし艦 〝かまくら〟」

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 ――この不思議な異世界に降り立つ直前。

 都心は異質な、胡散臭い人物と邂逅していた。
 作業服に白衣というおかしな格好、そして遠回しで抽象的で胡散臭い言い回し。そんな人物と、異質で気味の悪い空間で相対した事を覚えている。
 その人物はふざけた口調で、「貴方方に贈り物を用意させてもらった」。そんな事を宣っていた。

 そしてこの異世界に、驚愕に困惑に翻弄され奔走する事となった都心等だったが。
 都心等はその最中で、自分等の護衛艦かまくらに、また異質な変化がある事に気付いた。
 艦の心臓たる機関部を始め、艦の主たる装備に。見知らぬ異質なモジュール・ハードウェアやソフトウェアが加わっていたのだ。
 そしてご丁寧に、それらは艦の元あった機関装備やシステムと見事に接続され。適合、アップデートされていたのだ。

 そして勝手に増えていたソフトウェア・アプリケーションの一つに、「お気に入りいただければ幸いです、ご健闘を――」。そんなふざけたメッセージが残されていた。


 想像、予測ではあるがまず間違いない。
 護衛艦かまくらは、その作業服と白衣の胡散臭い人物によって。新たなそして強大な〝力〟を与えられたのだ。
 今しがた漆黒の闇の球体から護衛艦かまくらを守ったのは、その内の一つ。
 〝反特性現象異力場〟。
 理屈構造は皆目不明だが。特性現象、すなわち魔法に作用する。魔法に値する現象を無力化してみせる――異力フィールド、言ってしまえばバリアを形成展開するものと見て良かった。


 今の都心の表現の言葉は。自分の護衛艦かまくらにそんなトンデモな代物を組みつけた異質な人物を少し不快に思い。しかしそれがこの異世界で生き残るために必須である事を、まさに今確信に至り、そしてしかし面白く無く思う物だ。

「――稼働率93%、安定率90%――ですって。まぁ、問題なく稼働してるんじゃないですか」

 そこへコンソールに向かっている海士長が、何か投げやりな様子で報告兼推測の言葉を寄こした。彼の視線を落とすコンソールに表示されているのは、今まさに展開された反特性現象異力場のステータスだ。もちろん護衛艦かまくらに本来備わるシステムでは無く、異世界に転移するに在って、勝手にアップデートされた代物だ。

「それを、使用したんですか……?」

 それを聞いた副艦長の由比は、都心に尋ねる。
由比もその存在についてはもちろん掌握していた。しかしあまりに怪しく胡散臭すぎ。さらにはこの異世界に転移して来てからの相次ぐ騒ぎに追われていた事から、ここまでそれを試験的にも起動する事は無かった。
 しかし今、土壇場で都心の決断によりそれは起動され。そして見事、護衛艦かまくらを救って見せた。

「流言ではなかったか――しかし未だ。いやより、あの者は解せぬ」

 その都心はと言えば、コンソールに視線を落としたまま。そのかまくらに与えられた〝力〟を真の物と認めながらも、同時に作業服と白衣の人物への不可解をより深くする言葉を零す。

「――いや――チェストとは〝知恵捨て〟と心得たのだ」

 しかし。そう自らに言い聞かせるような言葉を紡ぐと。
 都心はコンソールより視線を上げ、前方を望む。

「〝闇竜どらごん〟、何するものぞッ――このかまくら、今仕果たすはただひとつッ!」

 そしてブリッジに確たる声で、信念で。そう言葉を発し轟かせた。

「ハハァッ!いいじゃねぇかァッ!」

 都心の意思を伝えるそれは、そのまま命令となり艦の意思となった。
 操舵を預かる一等海曹は機嫌よさげに荒々しく発し上げ、それを了解変わりとして寄こす。

「ッー……――艦長、では〝アレ〟も使うんですね?」

 副艦長の由比は少し苦く未だ困惑微かに残る顔で、しかし何かを伺い確認する言葉を紡ぐ。

「無論」

 都心は、ただ端的にそれに肯定解答。

「了――CIC!例の未分類の弾体を準備しろ、ミサイル体もだ。――そうだ、全ての使用許可が降りた!各部署は準備行動に入れッ!」

 それを受け、由比はそれ以上の確認は蛇足と言うように了解の一言を紡ぎ。そして通信越しに、CICに向けて荒々しく声を発し出した。

 護衛艦かまくらに、新たにそして勝手に与えられた〝力〟は。盾、鎧のみに留まらない。
 主砲やミサイル発射機の弾薬庫や備蓄庫には、本来かまくらに装備使用される各種砲弾およびミサイルの中に。
シレっと混じり、それでいてあからさまな異彩を放ち。
 海隊の正式採用装備ではない――いや。元居た世界のどの国、どの海軍でも開発や採用された情報経歴など無い。
 形式不明の弾体やミサイル体が増え、備わっていたのだ。
 そしてご丁寧にも艦の武器システムや、搭載装備を管理するデータには。また勝手にアップデートが施されており。そしてその形式不明の弾体やミサイル体の名称や要項が、厚かましくも割り込まれ連なっていた。

 得体の知れないそれ等であったが。今この時をもって都心を筆頭に乗組員の各員は。
 それが護衛艦かまくらに与えられた、新たな力、〝刀〟であると理解した。


 副艦長の由比の指示がCIC経由で艦の関係各部署に伝達され。各部署、各システムはその得体の知れぬ代物を、自らの得物として用いるべく。慌ただしく荒々しく、作業行動を開始。

 行動動作はまず、護衛艦かまくらの備える三基の各主砲が見せた。
各主砲それぞれが主砲弾の換装動作を始める。自動装填装置に並ぶ従来の203㎜砲弾から入れ替わり、形式不明のしかし203㎜口径に合わせられている弾体が新たに並ぶ。
 弾体は自動装填装置の給弾機構により流れ運ばれ。
 そしてその最初の一弾目が、一番砲へと滑り込み装填を完了した――


《――一番砲装填完了、再照準調整開始。三番砲次いで完了調整開始、二番砲も間もなく――》

 CICの砲雷長から通信越しに上がり届く進捗状況の報告が、ブリッジ内に響いている。
 都心はそれを聞きながら、コンソールに視線を落とす。
 艦の各状況情報、ステータスを表示するモニターの一点。一番砲のステータスが記される一個所の横に、強調表示される一つの文字列がある。


 〝反特性現象抗生弾〟。


 表示されるそれが。今まさに主砲より撃つ放たれようとしている、形式不明の弾体に与えられた名称らしかった。

 都心は視線を起こし、艦橋窓越しに眼下の前甲板を望む。
 一番砲砲塔が旋回仰角による再照準に入る様子が見え、わずかに遅れ二番砲も動きを見せる。すでに都心は、今までと同様に照準完了次第の確固射撃開始を認可している。
 艦は最大戦速で航行しているため、艦首が荒々しく海を割り、激しい飛沫が上がっている。視線をブリッジ内に戻せば、操舵士の一等海曹が荒々しいのお手本のような様相で、舵を操っている。

「――ボギー!球体を再度生成ッ!」

 そこへ観測配置の海曹から張り上げた声が寄こされる。
 艦は現在、敵性である漆黒の竜を右舷側に見るように旋回航行している。都心等が報の声を受け、視線を右舷側上空へと向ければ。
 上空で滞空する漆黒の竜が、その体の前にまた歪な闇の球体を生み出している。
 そして刹那――球体は竜の前より撃ち出すように解き放たれ、一直線の軌道で瞬く間に飛来。
 艦を覆い守る異質な守り――異力フィールドへ直撃した。

「――!」

 由比が顔を顰める。
 発生し艦を襲い伝わり来るは、異質な振動。そして電子音にも、何か鐘を強く打つ音にも似た巨大な音。
 二度目のそれにより各員はそれが。異力フィールドと漆黒の球体の衝突により発生した現象である事を、明確に掌握理解した。
 そしてまた艦の傍で巨大な水飛沫、水柱が上がり巻き散る。威力フィールドに防がれ退けられた漆黒の球体は、それにより安定を失い崩壊四散。飛散したエネルギーが爆破にも似た現象を起こし、海面を叩き巻き上げたのだ。

「ッ――稼働率87%、安定率85%に低下もステータス、ブルーを維持。支障なしッ」

 コンソールに向かう海士長が、威力フィールドのステータス状況を報告の言葉を上げて寄こす。多少の揺らぎこそあれど、威力フィールドは漆黒の球体をまた見事退けて見せたようだ。

《――一番砲、ボギー照準――!》

 立て続け届くはCICの砲雷長からの声。そして。

 
 都心の眼下で、一番砲が咆哮を上げた――



「――退けると言うかッ」

 眼下の光景を。灰色の巨船を目の当たりに、オグロヒュムは思わず苦い色で零した。
 己が生成し放った、闇の魔力を宿す魔力弾。万物のあらゆる物体を消滅せしめる、脅威の魔法。
 しかし、眼下の巨船はその直撃の瞬間。青く透き通る膜を発生させ、そして驚くべきことに魔力弾を退けて見せたのだ。それも二度に渡り。

「魔防壁を?――いや、魔力をまるで感じない――」

 オグロヒュムは巨船が魔力による魔法防護壁を張った物と最初推測、しかしすぐに内心でそれを否定。眼下の巨船からは、魔力に類する感覚気配をまるで感じ取れなかったからだ。

「――ッ!」

 しかし直後。オグロヒュムは考察を中断。
 己に向けられた殺気を感じ、そして同時に巨船の前甲板で爆煙が上がる光景を見たからだ。
 それが巨船の攻撃の姿であることは、すでに掌握している。一瞬後には、雷を生み出す飛翔物体が襲い来るそれ。オグロヒュムはすかさず、己に付き従わせる漆黒の翼を動かし。自らをの体を囲い庇い身構える。
 飛翔物体は先と違わず、漆黒の翼に受け止め阻まれ。オグロヒュムには届かず消失の運命を辿るはずであった。

 ――異質な。振動音とも衝突音とも知れぬ音が響いたのは瞬間。

「――」

 オグロヒュムは感情を脳裏に浮かべる間もなく。ただそれを見た。
 己を重ね覆う漆黒の翼。その真正面の一点が消失し、大穴が開いていた――そしてそこに見えるは、円錐状の何かの切っ先――

 ――直後。オグロヒュム身を、比類無き暴力と暴音が襲い包み込んだ。


 オグロヒュムの身を襲った物体――それは、護衛艦かまくらの一番砲より撃ち出された〝反特性現象抗生弾〟(以降、抗生弾と呼称)。
 その正体詳細は内蔵した機構により、魔法魔力といった特殊な現象を無力化消滅せしめ。その護り、加護を貫き退けた上で炸裂の暴力を浴びせる異質な弾頭。
 それが闇の魔力で形成されたオグロヒュムの翼に、大穴を開けて抉じ開け。果てにその体を爆裂と破片の暴力で包んだのだ。


 「――ッゥ……!?」

 爆炎に巻かれ。オグロヒュムはその衝撃、エネルギーで宙空を少し弾き飛ばされ、若干高度を落した。
 驚くべきは、艦船の主砲砲弾の炸裂を諸にその身に受けたにも関わらず。オグロヒュムは微々たる傷を作った様子を見せるのみで、その五体は満足であり意識も明確であった。それは上級魔族に名を連ねるである闇竜族。そしてそのなかでもさらに上位個体であるオグロヒュムだからこそ成してみせた恐るべき堅牢っぷりであった。
 しかし、その当のオグロヒュムの顔と眼には、少なからずの驚愕の色が浮かんでいる。当然だ。万物を飲み込み消失させるはずの己が闇の翼が、しかしいとも容易く抉じ開けられ貫かれたのだから。

「――ッぅ!?」

 そしてそのオグロヒュムに、間髪入れずに飛翔物体が立て続け襲い来た。
 それは一番砲に続き、護衛艦かまくらの各砲が撃ち放ってきた抗生弾。それ等がオグロヒュムを護る漆黒の翼に大穴を開け。直撃、ないし近接炸裂による暴力で立て続けオグロヒュムを襲った。
 その苛烈さ。まるで先に消失し役割を果たせぬ無念を辿った、砲弾やスタンダード・ミサイルの仇を取らんかの如く。

「――魔を……闇を、〝消す〟か――ッ!?」

 詳細の正体こそ不明だが。オグロヒュムがその襲い来る抗生弾の成す現象、性質に気付き察する事は容易かった。
 オグロヒュムが今言葉にした通り、抗生弾はこの異世界の理――魔力を。そして万物にとって絶対の帰する所であるはずの闇を、〝消す〟。

「どこまでも異――……これが魔王様に仇なす存在ならば、なお捨て置けぬ――!」

 しかし驚愕し。そして今も上がり襲う炸裂に体を傷つけられながらも、オグロヒュムは決意し発し上げる。
 そして次に、オグロヒュムはその己が顎を開口。
 強靭な牙の並び覗くその口前に、次に生み出され発生したのは、直径十数cm程の小さな漆黒の球体。それはまた闇の魔力を宿すものだが、それまでの物よりもひどく控えめな大きさ。
 しかし、ひどく不安定なのか小さな闇の球体はひどく荒ぶり揺らめいている。


 ――直後瞬間。その小さな闇の球体より、一閃が照射された――
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