1 / 12
第1話:「TS美少女隊員と装脚機、異世界へ」
しおりを挟む
「――ったく」
陸上防衛隊、普通科所属の装甲車輛搭乗員――髄菩 神和陸士長は。
狭く快適とは言えない空間内の座席で、いささか難儀な想いをしていた。
そこは89式装甲装脚機――89AWV(Armor Walker Vehicle)の機体内部。その砲塔内に設けられる、機長と砲手がタンデム配置で縦に並ぶ内の、機長側席だ。
狭さや居心地にあっては別に良い。入隊して部隊配置になった時から装甲車乗りだ、慣れている。
問題は別に多々あった。
まず、まだ陸士階級に過ぎない自分が、この89AWVの機長を務める事になった現状。いや、それはまだ可愛いほうか。
大きなウェイトを占める問題の一つは。
――この慣れない〝女〟の身体。
――本来の性別は〝男〟である自分が、女――それも美少女と言っても良い姿身体へと、性転換している事実だ。
今は何も映っていない、側面の通信用モニターには。
凛とした顔立ちの黒髪ロングの美少女――自分の顔が反射で映って見える。
おまけに視線を落とすと見える。自分で言うのも難だが、その美少女な自分の完璧ながらもワガママな凹凸のボディは。
全身のボディラインを浮き出して主張する、ぴっちりのボディスーツに。プロテクタやパーツ、装甲類がそのボディラインを損なわない(というか露骨に際立たせる)ように付属装着される。良い趣味をした(もちろん皮肉)搭乗員用の装甲ボディスーツ。
――〝軽量装甲戦闘服7-型〟に飾られ、悩ましく色気を醸している。
「妙なことになった」
そして、極めつけの一つ。
髄菩はボヤきながら、機長用席に設けられるキューポラのペリスコープを覗き、そこから外を望む。
外に見えて広がるは、丘や草原が続き青空が広がる長閑な光景。
そしてその大空に――〝ドラゴン〟が。飛龍や大きな鳥獣が人を背に乗せて、宙に在り飛び交う姿光景。
極めつけはの問題は、現在自分等が居る場所が。魔法とモンスターが存在する、〝異世界〟であるという事実であった――
簡単に、事の経緯を説明する。
日本は、地球は。ある特殊な新エネルギーの実験中に不測の事態が起き、その効果が原因で異世界へと繋がってしまった。
そしてその転移先の、異世界の国家コミュニティと嫌が応にも関係を持つ事となり。その果てに人道的観点や防衛観点上から、面倒事に介入せざるを得なくなり。
日本国防衛隊が派遣され、その矢面に立つ事となったのだ――
「――それはいいが、いや良くは無いが。何も〝女になって乗る事になる〟のと、タイミングが被ることは無いだろうに」
その世間を揺るがした事件を、事の経緯を思い返しつつ。髄菩は続けてそんな言葉を零す。
前述したとおり、髄菩の本来の性別は男性である。
それがなぜ今に在っては美少女の姿となっているのか。それに関する地球世界の歴史事件と、いくつかの事情について説明したい。
髄菩等の世界、地球では十数年前に。その身の性別を変換できる性転換特質が人類の体機能に潜在する事が発見され、その後に自由な性転換を可能とする技術が確立された。
数年前程からその技術、ノウハウ他は一般レベルにも降りてきて普及が始まり。
その世界の人類は性別の垣根を、一つの形で越える事に成功していた。
それから現在にあっては日本国防衛隊でもこの性転換特性、技術は各方面で活用が始まっている。
当初は広報面や隊員の生活面での活用に比重が置かれていたが。続けての活用先として目が付けられたのが、戦車や戦闘機、一部艦船など。物理的構造・容量に制約を受ける機体車輛装備などに登場する隊員による活用。
要は男性隊員が、小柄で柔軟な女性の身体へ性転換する事で、快適性や利便性の向上を図るもの。それを期待しての、任務時の性転換推奨および場合によっての指定だ。
これは一部部隊で試験的に運用が始まり、昨今の重作業の機械化・オート化も助け、その結果いくらかの有用性が証明され。それから順次各部隊でも導入が進んでいった。
陸上防衛隊各隊にあっても例外では無く、戦車・装甲車・AWV部隊の男性隊員は。少しでも良い居住性など追及し、搭乗時は女体化することがセオリーになりつつあった。
それらを前提として、髄菩の話に戻れば。
その、異世界との接続という大事件と。
性転換文化が普及して、髄菩の所属する部隊にもその業務上での活用推奨が流れて来たのが。良いのか悪いのか分からないが、奇しくも同じタイミングだったのであった。
そしてその直後に、髄菩の部隊には異世界派遣部隊としての白羽の矢が立てられた。
おまけのおまけに、異世界との接続の混乱の煽りによる人員不足から。髄菩の直の上官であった機長の陸曹が異動する事となってしまい。
砲手であった髄菩が、そのまま機長にスライドする措置が取られる事となってしまう。
――かくして。
髄菩から言わせれば、いらないタイミングが重なり。髄菩は美少女へと姿を転じた上で。
現在の搭乗機である89AWVと、異世界へと踏み入る事になったのである。
陸上防衛隊、普通科所属の装甲車輛搭乗員――髄菩 神和陸士長は。
狭く快適とは言えない空間内の座席で、いささか難儀な想いをしていた。
そこは89式装甲装脚機――89AWV(Armor Walker Vehicle)の機体内部。その砲塔内に設けられる、機長と砲手がタンデム配置で縦に並ぶ内の、機長側席だ。
狭さや居心地にあっては別に良い。入隊して部隊配置になった時から装甲車乗りだ、慣れている。
問題は別に多々あった。
まず、まだ陸士階級に過ぎない自分が、この89AWVの機長を務める事になった現状。いや、それはまだ可愛いほうか。
大きなウェイトを占める問題の一つは。
――この慣れない〝女〟の身体。
――本来の性別は〝男〟である自分が、女――それも美少女と言っても良い姿身体へと、性転換している事実だ。
今は何も映っていない、側面の通信用モニターには。
凛とした顔立ちの黒髪ロングの美少女――自分の顔が反射で映って見える。
おまけに視線を落とすと見える。自分で言うのも難だが、その美少女な自分の完璧ながらもワガママな凹凸のボディは。
全身のボディラインを浮き出して主張する、ぴっちりのボディスーツに。プロテクタやパーツ、装甲類がそのボディラインを損なわない(というか露骨に際立たせる)ように付属装着される。良い趣味をした(もちろん皮肉)搭乗員用の装甲ボディスーツ。
――〝軽量装甲戦闘服7-型〟に飾られ、悩ましく色気を醸している。
「妙なことになった」
そして、極めつけの一つ。
髄菩はボヤきながら、機長用席に設けられるキューポラのペリスコープを覗き、そこから外を望む。
外に見えて広がるは、丘や草原が続き青空が広がる長閑な光景。
そしてその大空に――〝ドラゴン〟が。飛龍や大きな鳥獣が人を背に乗せて、宙に在り飛び交う姿光景。
極めつけはの問題は、現在自分等が居る場所が。魔法とモンスターが存在する、〝異世界〟であるという事実であった――
簡単に、事の経緯を説明する。
日本は、地球は。ある特殊な新エネルギーの実験中に不測の事態が起き、その効果が原因で異世界へと繋がってしまった。
そしてその転移先の、異世界の国家コミュニティと嫌が応にも関係を持つ事となり。その果てに人道的観点や防衛観点上から、面倒事に介入せざるを得なくなり。
日本国防衛隊が派遣され、その矢面に立つ事となったのだ――
「――それはいいが、いや良くは無いが。何も〝女になって乗る事になる〟のと、タイミングが被ることは無いだろうに」
その世間を揺るがした事件を、事の経緯を思い返しつつ。髄菩は続けてそんな言葉を零す。
前述したとおり、髄菩の本来の性別は男性である。
それがなぜ今に在っては美少女の姿となっているのか。それに関する地球世界の歴史事件と、いくつかの事情について説明したい。
髄菩等の世界、地球では十数年前に。その身の性別を変換できる性転換特質が人類の体機能に潜在する事が発見され、その後に自由な性転換を可能とする技術が確立された。
数年前程からその技術、ノウハウ他は一般レベルにも降りてきて普及が始まり。
その世界の人類は性別の垣根を、一つの形で越える事に成功していた。
それから現在にあっては日本国防衛隊でもこの性転換特性、技術は各方面で活用が始まっている。
当初は広報面や隊員の生活面での活用に比重が置かれていたが。続けての活用先として目が付けられたのが、戦車や戦闘機、一部艦船など。物理的構造・容量に制約を受ける機体車輛装備などに登場する隊員による活用。
要は男性隊員が、小柄で柔軟な女性の身体へ性転換する事で、快適性や利便性の向上を図るもの。それを期待しての、任務時の性転換推奨および場合によっての指定だ。
これは一部部隊で試験的に運用が始まり、昨今の重作業の機械化・オート化も助け、その結果いくらかの有用性が証明され。それから順次各部隊でも導入が進んでいった。
陸上防衛隊各隊にあっても例外では無く、戦車・装甲車・AWV部隊の男性隊員は。少しでも良い居住性など追及し、搭乗時は女体化することがセオリーになりつつあった。
それらを前提として、髄菩の話に戻れば。
その、異世界との接続という大事件と。
性転換文化が普及して、髄菩の所属する部隊にもその業務上での活用推奨が流れて来たのが。良いのか悪いのか分からないが、奇しくも同じタイミングだったのであった。
そしてその直後に、髄菩の部隊には異世界派遣部隊としての白羽の矢が立てられた。
おまけのおまけに、異世界との接続の混乱の煽りによる人員不足から。髄菩の直の上官であった機長の陸曹が異動する事となってしまい。
砲手であった髄菩が、そのまま機長にスライドする措置が取られる事となってしまう。
――かくして。
髄菩から言わせれば、いらないタイミングが重なり。髄菩は美少女へと姿を転じた上で。
現在の搭乗機である89AWVと、異世界へと踏み入る事になったのである。
0
あなたにおすすめの小説
装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―
EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。
そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。
そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる――
陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。
注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。
・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。
・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。
・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。
・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。
陸上自衛隊 異世界作戦団
EPIC
ファンタジー
その世界は、日本は。
とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。
その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。
日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。
此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。
そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。
その戦いを描く――
自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。
ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。
最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。
自衛隊名称ですが半分IF組織。
オグラ博士……これはもはや神話だ……!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
消息不明になった姉の財産を管理しろと言われたけど意味がわかりません
紫楼
ファンタジー
母に先立たれ、木造アパートで一人暮らして大学生の俺。
なぁんにも良い事ないなってくらいの地味な暮らしをしている。
さて、大学に向かうかって玄関開けたら、秘書って感じのスーツ姿のお姉さんが立っていた。
そこから俺の不思議な日々が始まる。
姉ちゃん・・・、あんた一体何者なんだ。
なんちゃってファンタジー、現実世界の法や常識は無視しちゃってます。
十年くらい前から頭にあったおバカ設定なので昇華させてください。
異世界ランドへようこそ
来栖とむ
ファンタジー
都内から車で1時間半。奥多摩の山中に突如現れた、話題の新名所――「奥多摩異世界ランド」。
中世ヨーロッパ風の街並みと、ダンジョンや魔王城を完全再現した異世界体験型レジャーパークだ。
26歳・無職の佐伯雄一は、ここで“冒険者A”のバイトを始める。
勇者を導くNPC役として、剣を振るい、魔物に襲われ、時にはイベントを盛り上げる毎日。
同僚には、美人なギルド受付のサーミャ、エルフの弓使いフラーラ、ポンコツ騎士メリーナなど、魅力的な“登場人物”が勢ぞろい。
――しかしある日、「魔王が逃げた」という衝撃の知らせが入る。
「体格が似てるから」という理由で、雄一は急遽、魔王役の代役を任されることに。
だが、演技を終えた後、案内された扉の先にあったのは……本物の異世界だった!
経営者は魔族、同僚はガチの魔物。
魔王城で始まる、まさかの「異世界勤務」生活!
やがて魔王の後継問題に巻き込まれ、スタンピードも発生(?)の裏で、フラーラとの恋が動き出す――。
笑えて、トキメいて、ちょっと泣ける。
現代×異世界×職場コメディ、開園!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる