TS陸上防衛隊 〝装脚機〟隊の異世界ストラテジー

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第7話:「攻略計画とエルフ王女とTSの魅惑」

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 街路十字路の角に建つ建物は、この町の役所であるらしかった。現在は防衛隊空挺団が一時接収し、臨時指揮所としているそうだ。
 その正面玄口に伸びる幅広の外階段を、戦場三佐に案内されて上がる髄菩等。

「ん?」

 階段をほぼ上り切り、役所の正面玄関が前に近づいた所で、髄菩等はその正面玄関の前に立つ一人分の人影に気付いた。
 それは中年から壮年の間と言った容姿の、地球の西洋系に似る白人男性。そしてこの異世界に良く見られる服装から、男性がこの異世界の住民である事が判別できた。
 その男性は何か思いつめたような神妙な表情を見せながらも、片手を広げる動作で、上がって来た各員を迎える意思を見せた。

「〝学長先生〟。こちらは我々の友軍部隊です、ご心配なく」

 大隊長の戦場は、その男性をそんな役職名であろう呼称で呼び。そしてまず先に闘藤や髄菩等を視線で流して示し、紹介と説明の言葉を紡いだ。

「友軍……ではこちらの皆さんに、あの鋼の存在も……」

 それを受けたその〝学長先生〟の男性は。髄菩等を見て、そしてその背後向こうに今は停車する、装脚機の姿を見降ろして。静かにしかし驚き戸惑うような言葉を零す。

「闘藤、皆。こちらはアルデイトさん、この街の学校の校長先生を勤められる方だ」

 その学長先生の様子を伺いつつ。戦場はその身分正体と名を、髄菩等に紹介する言葉を紡いだ。

「あぁ、と――失礼を、アルデイトと申します。今に隊長さんからありました通り、この王都で小さな学校の学長をしております」

 戦場の紹介に続いて。学長先生改めアルデイトは、居ずまいを正して自らも自己紹介の言葉を改めて紡ぐ。
 それに闘藤や髄菩等も、軽い会釈で返した。

「この役所には、街の生き残りの人々が集まり避難している。アルデイトさんはその代表者を務められ、現在我々にご協力を頂いている状況だ」

 それぞれの紹介の言葉に続き。戦場は今この場のそんな現状状況を簡単に告げ説明して見せる。

「アルデイトさん、お騒がせしました、中へ戻りましょう。近辺は確保しましたが外はまだ特に危険です。皆も入ってくれ」

 そして戦場はアルデイトに謝罪と合わせて促し、そして髄菩等にも同じく促し。
 それぞれは役所建物の正面玄関を潜った。



 役所内は今に説明された通り、空挺団の臨時本部として使用され、物々しい騒ぎを見せていた。
 大隊本部中隊の隊員等が調整に確認に、急かしく動く一方。
 役所空間内の各所には、多いとは言えないがこの街の住民の姿が見えた。
 その多くは子供であり、それを限られた数の大人達が付き添い見ている。それが今の所空挺団が保護した、街の住民の全てであるとの事であった。

「各中隊から、街の各エリアの無力化確保の報は順次上がって来ている。完全確保は時間の問題――と言いたい所だが」

 戦場は髄菩等を案内しながら、街の状況を説明する。
 そしてその間にも各々は、役所内の広い一角。そこにある役所の机を集めて急造した作戦卓の前に辿り着き、それを思い思いの立ち位置で囲った。

「一つ。厄介な障害に居座られていて、それの攻略排除に手を焼いている」

 作戦卓には事前の航空偵察で撮影し用意された、大きな街の地図が。そして作戦用のタブレット端末が置かれている。

「位置はここ、この街の王城の正面城門。ここ(役所)から南東へ2区画分向こうのすぐの所だ」

 戦場はまず指先で地図上の一点を丸く囲い示し、その障害の位置関係を説明。

「これを見てくれ」

 そして続けてタブレット端末を、各々に見えるように中央に押して寄せ、それへの中止確認を促した。

「これは――っ」

 タブレットに映るは、現在街の上空を飛んでいる無人観測機がリアルタイムで送ってくる上空映像。
 そのカメラは現在ズームして、今に戦場が説明した王城城門周りの実際の光景を映しだしていた。
 そしてその光景を目に、闘藤は微かに驚きの含まれた、訝しむ声を零した。

 王城城門は上空映像からでも完全に倒壊している様子が分かる。そしてそこには、何か巨大な物体――いや生き物が鎮座居座っていた。

「竜か?」

 その回答をまた闘藤が紡ぐ。
 見えるそれは、紫かかった不気味な黒色の、巨大な竜であった。
 その体調は比較すれば、大型の旅客機に届く程もあるか。そんな竜がその場に鎮座し、その首や羽を緩慢に動かす様子が見えた。

「そうだ。えぇと――闇の竜、でしたか?」

 戦場は闘藤の言葉を行程。そしてその詳細にあたる所を、同席していたアルデイトに尋ねる。

「えぇ、闇魔竜種の個体でしょう。体長から測るだけでも、種族の中でも上位の個体と思えます。魔帝軍が闇魔竜種を使役している事は聞き及んでいましたが、まさかこんな上位個体までもとは……」

 アルデイトは戦場のそれに答えて説明の言葉を紡ぎ。合わせて困惑を交えた言葉を静かに添えて見せる。

「さらにこの鎮座した竜を中心に、敵――魔帝軍とやらが陣地隊形を組んで籠城に入っている。今は第2中隊が対峙包囲しているが、これが強固で俺等空挺だけでは突破できずにいる」

 説明を再開して紡ぐ戦場。その言葉通り、上空からの城門周りの映像を見れば、その闇魔竜の周囲には多数の魔帝軍兵士部隊の配置した様子光景を見る事が出来た。

「――!、今のはッ」

 その映像中にある現象が見え、闘藤がまた目を微かに剥いたのはその直後だ。
 闇魔竜がその口先より、漆黒の閃光を――闇色の太いレーザービームのような物を吐いたのだ。

「あぁ。仕組みは知らんが、魔法による〝闇〟のレーザーだそうだ。これがべらぼうな反則レベルの破壊力で、これのせいで禄に全身もできないでいる」

 闘藤に向けて戦場はまた説明の言葉を、今度は少しの呆れの色を含めて紡ぐ。

 さらに戦場から補足があり。
 この闇魔竜は最初、王城からの逃走を図り飛び立とうとしていた所だそうだ。しかしそこで僅差で上空へ飛来したAH-92Dが、先制攻撃を叩き込む事に成功。
 その片翼を傷つけ奪い、空へと飛び立つ力を封じた。
 しかし明確な脅威を飛び立たせる事を封じたまでは良かったが。揚力を失い城門を押し潰し倒壊して鎮座した闇魔竜は、そのまま強力な要塞と成り代わり。それを中心に魔帝軍は籠城隊形の構築に企てを変更し、現在に至ると言う。
 最初こそ奇襲による航空攻撃に成功した物の。以降は闇のレーザーの脅威と、背後の王城建造物が阻害要因となり、ヘリコプター隊も有効な投射を行えていないとの事であった。


「――あの、学長先生、皆様……っ」

 作戦卓を囲っていたそれぞれに、端より何かおずおずとした声が掛けられたのはその時であった。

「?」

 闘藤を始め各員が振り向けば。そこに立ち見えたのは一人の少女、そして付き添う一人の空挺隊員の美女の姿だ。
 少女にあっては淡いショートの金髪が眩しい、15歳前後程の美少女。しかし特に目を引くは、その側頭部より生え見える長く尖る耳。
 少女は、この世界に存在するエルフ種族の女であった。

 もう一名、付き添うようにエルフ少女の隣に立つ空挺隊員にあっては。
 ポニーテールに結われた微かに紫掛かった黒髪に、気の強そうな凛とした顔立ちが特徴の、長身の美女。
 迷彩服3型改の袖には二等陸士の階級章が見え、その腕には5.56mm機関銃 MINIMI Mk.3が構え下げられている。

「すみません。エリュニナさんが、問題無ければ作戦の事を知っておきたいと」

 集まった視線に次の言葉を発し難そうにしているエルフの少女に代わり、ポニーテール美女の二等陸士が代わりに繋ぐ言葉を紡ぐ。

「あぁ、エリュニナさん。存じております、貴方からの要請に関わる所がご心配なのですね?」

 その言葉からすぐに何かの察しをつけた様子で、戦場はそのエリュニナと言う名らしいエルフの少女に言葉を返す。

「戦場、こちらは?」

 傍ら、闘藤は戦場にそのエルフの身の上正体を尋ねる。

「あぁ、皆。こちらはエリュニナ殿下――この王都、この国の第三王女である方だ」

 それに戦場は、シンプルにそう明かす回答を明かして見せた。

「王女っ。そんな方がここに?」
「えぇ、彼女は王族の身ですが。私の学校に生徒として通っている身でして、その関係で王城襲撃を間逃れたのです」

 闘藤の疑問の言葉には、今度はアルデイトが回答した。
 そこまでの言葉通り、そのエリュニナというエルフの少女の正体は、この王国の王族の第三王女。しかし王家の教育方針から街の、アルデイトの学校に国民と立場を同じくして通っている身であり。それが幸いし、魔帝軍による王城襲撃の際にその魔の手を間逃れたのであると言う。

「それで、その要請の言うのは?」
「彼女の、ご家族――王族の身柄の件だ」

 そこから続けての闘藤の言葉に、戦場はまた説明の言葉を紡ぎ始める。
 どうにも彼女を除く王族は皆、魔帝軍の手に堕ち捕らわれの身にあるらしい。彼女、エリュインの要請とは、その王族を、家族を救ってほしいとのものであった。
 なお、空挺団が敵陣を攻めあぐねているのは。この捕らわれている王族の所在が不明瞭であり、重迫やりゅう弾砲による重火力の投射が下手に出来ないことも一因となっていた。

「ニホンのボウエイタイの皆さま。見ず知らずの異界の皆様に、厚かましいお願いとは承知しております。しかし、どうか……!」

 一連の説明が終わった所で、その第三王女エリュイン自身から、懇願の言葉が各員へ紡がれる。その様相は毅然と振舞おうとしているが、今にも泣き出しそうなそれだ。

「エリュインさん、大丈夫か?無理をするな」
「エリュイン、少し気持ちを休めなさい。そして神様を信じるんだ」

 その様子を見かね、付き添うポニーテール美人の二等陸士が声を掛け。
 続けてアルデイトも彼女に歩み寄り、そう促し言い聞かせる言葉を掛けた。

狡徒こうと様……学長先生、すみません……っ」

 それぞれの言葉を受けたエリュインは、そう詫びる言葉を泣きそうなそれを堪えて紡ぎ。
 そして狡徒と呼んだ空挺二等陸士の腕に、泣くのを堪えるために力を借りるように、そっと縋った。

「――敵軍連中も、現在は追い込まれている状況だ。それでなりふり構わず、その王族の人々を人間の盾にしてこないとも限らん」

 エリュイン等のその様子を見つつ。戦場は作戦卓に視線を戻し、今後の展開次第でのよろしくない可能性を鑑み紡ぐ。

「そんで――ッ!?」

 さらに続けようとした戦場の言葉を、しかし唐突な鈍い衝撃音と、役所建物に巻き起こった鈍い振動が遮ったのはその時だ。

「!」
「ッ」

 天井より崩れた埃煙欠片がパラパラと降り注ぐ。
 視線を上げ、身構える髄菩等各員。
 役所建物内の空挺隊員や街の住民もまた皆身構え、いくつかの微かな悲鳴やざわめきが上がる。
 アルデイトは近場に居て逃げ寄って来た生徒の子供達を、その両腕で誘い集めて庇う行動を見せる。

「エリュインさんッ」
「ひゃっ!」

 そして、エリュインに在ってはポニーテール美人空挺の狡徒の腕に引き寄せられ、その身長差のある体に庇われた。
 狡徒のその体前に抱き込まれ、その豊満な乳房の乳下に庇われ、狡徒の下乳を頭に押し付けられるエリュイン。

「少し我慢して」

 狡徒は視線を上げて建物内の様子を伺いつつ、抱き込んだエリュインにそう言葉を告げる。

(――……狡徒様のおっぱ……お胸が私の頭に……っ!)

 しかし方や、その腕中のエリュインはそれまでの悲観していた意識が吹っ飛び。自身の後頭部から脳天に押し付けられる狡徒の乳の感覚に、ドギマギしていた。

(狡徒様は本当は男の方なのに、こんな抱きしめられて……っ!いえでも今は女性……でもそれで、お、おっぱいが狡徒様は男の方なのにおっぱいが……っ!?)

 明かせば狡徒も本来は男性である身から、性転換している身であり。エリュインもすでにその事は知っていた。
 そして経緯を語れば。今は指揮所兼避難所として使用されているこの役所建物も、少し前までは戦いに巻き込まれて危機に在り。エリュインもその最中に在った。
 そこを駆け付け救ったのが、空挺団の第1普通科大隊。そしてエリュインの危機を救ったのが狡徒であった。

 そして暴露すれば、その際の狡徒の男性の姿に。エリュインは一目惚れしてしまっていた。
 しかしだ。呆ける彼女を、狡徒は自分が恐怖されていると受け取り。そこへの対策として彼女の目の前で、ポニーテール美女へと性転換して見せたのだ。
 それが彼女を驚愕させ、そして初心な彼女の性癖を多分に歪める、罪な行為とも知らずに。

「――今の一発だけか」

 その罪な女(中身男)な狡徒は、エリュインを抱き留めたまま、それ以上の振動襲撃が無い事を推察して呟く。

(男性なのにおっぱい……っ!。ううん、なんか全部柔らかくて良い匂い……っ!)

 その下乳の下、腕中で。エルフの第三王女は耳をピコピコさせて、その性癖を多分に複雑に歪められつつあったのだが。
 それにあっては零れ話なので、これ以降は放っておく。


「――一発こっきりです、流れ弾かとッ。被害軽微ッ」

 役所建物の正面玄関から外を伺っていた空挺団陸士(性転換しており銀髪美少女)から、報告の声が上がる。
 今の振動は流れ弾が役所建物に落ちたものであり、意図して狙われたものでは無く、被害も軽いものであった。

「了解――だが、いつヤケを起こされて無差別にばら撒かれるかも知れん」

 それに戦場は了解の返事を返しつつ。作戦卓に視線を戻して、懸念事項を口にする。

「そういう訳だ、各事情から悠長にはしてられん。それで到着間近と聞いていたそちら――機動火力、装脚機を期待にしてたんだが……――どうだ?やれそうか?」

 言葉説明が一区切りした所で。戦場は端的な言葉で、闘藤に問いかける。

「分が良いとは言えないな――」

 それに闘藤は、まず正直な所を一言で返す。

「装脚機は何も装甲に一際優れるわけじゃない、むしろ主力戦車には引けを取る。真正面から力押しは望めない」

 そう一言を置き、闘藤は続ける。

「だから、やるとしたら機動力での裏取りになる。街並みを遮蔽に利用しながら周り込み背後を取り、一撃を叩き込む――これも簡単にどうにかなる事では無い」

 続け、策を簡単に説明して見せた闘藤は。しかしそれも容易い事では無いと、今は美女のその顔に難しい色を作る。

「ですが、どうにかするのが自分等の役割――でしょう」

 しかしそこへ、そんな言葉が透る声で割り込んだ。それは他ならぬ髄菩のものだ。

「っ!――珍しいな、陸士長」

 それに闘藤はそんな言葉を返す。髄菩とはそこまで長くはない付き合いの闘藤だが、ここまでで髄菩が皮肉屋で面倒を嫌う人物であることは、すでに闘藤も知っての事であった。
 そんな髄菩からの珍しい前向きな言葉に、思わず零れた闘藤の一言。

「どうせそういうカンジで、やる流れになるだろうと」

 しかし闘藤からのそれに。髄菩はいつものそれな様相調子で、皮肉気に応えて見せた。

「まったく、そんなオチか……しかし、その通りだな――やるぞ」

 そんな髄菩の調子に呆れつつ。しかし直後には闘藤も、腹を括る様に一言を発して見せた。
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