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チャプター9:「草と風の村、燃ゆる」
9-4:「納屋の攻防」
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制刻等四名を村の外周捜索のために分派し、偵察捜索隊本隊は村の中心部を目指す。
現在本隊は指揮通信車を中心とし、後方からそれぞれ河義等普通科4分隊の三名と、増強戦闘分隊の四名がそれぞれ縦隊で追走し、警戒態勢の元進んでいた。
「――ん?あれは?」
いくらか進み、一軒の家屋の角を曲がった所で、指揮通信車上の矢万が声を零す。
「鬼奈落、停車しろ」
直後に矢万は操縦手の鬼奈落に向けて停車を指示。同時に車上で左手で拳を作り掲げ、後続の各員に停止を要請する合図を送る。
「どうした?」
唐突に停止した指揮通信車、そして出された停止要請に、指揮通信車に追走していた河義は車上の矢万に向けて、尋ねる声を上げる。
「人影かと。前方に複数」
河義の声に、矢万は車上より前方を指し示しながら答え返す。
河義は鉄帽に装着された暗視眼鏡を降ろし、指し示された方向を確認する。暗視眼鏡越しに見えたその先には、矢万の言葉通り複数の人影が確認できた。
「あれは――」
よくよく見れば、それは多数の人影が少数の人影を囲っている光景であった。
多数側は、これまで交戦して来た者達と同様の装備を纏う、傭兵と思しき人間。そしてその傭兵達の隙間からおそらく包囲されているらしい、二名程の傭兵とは異なる出で立ちの、村人と思しき人間が見えた。
さらに双方は互いの得物を交える様子が見え、それに合わせて金属のぶつかる音が、微かに聞こえ届いて来る。
「――襲われているようだ」
河義はそれ等から状況を察し、言葉を零した。
「まずそうな状況です。射撃許可を」
「いや、ここからでは誤射の危険がある。」
矢万は車上で12.7㎜重機関銃の握把を握り、照準を先の一団に定めるが、しかし河義はそれを差し止める。
「接近し、各個に無力化するべきと見止む。――矢万三曹、指揮通信車であの集団内に突入し、双方の分断を試みるんだ。他、各員は散会し前進――いいか?」
そして河義は暗視眼鏡を跳ね上げしまい、同時に各員に向けて命じ、問う。
「了」
「了解」
「よし、かかれ!」
各員からは了解の返答が上がり、そして河義は手を翳して号令を発する。
それに呼応し、指揮通信車は前進を再開。4分隊及び増強戦闘分隊の各員は、指揮通信車の両翼へと散会し展開。行動を開始した。
「ッ……」
「ふぅ……!」
その場ではこの草風の村の村人である男女二名が、複数名の傭兵達と対峙していた。二人はいずれも、先日のファニール達によるナイトウルフ討伐の際に、駆け付けた者達。その手にはそれぞれ得物が握られ、険しい顔で自分達を囲う傭兵達を睨んでいる。
「クソッ……!」
しかし、一方の傭兵達にもまた微かな狼狽の色が走っていた。
両者の間には、多数の人間の亡骸が横たわっている。
内二名程は、先の男女と類似の格好をした村人の物。そしてその他の数名分は、傭兵達の物であった。
「こいつ等、厄介だぞ……!」
一人の傭兵が、焦れた声を上げる。
傭兵達は最初、相手をたかが村人と思い、請けおった今回の仕事を軽く見ていた。しかしいざ蓋を開けてみれば、村人達は武器を手に思いの他抵抗を見せ、傭兵達の手を煩わせたのだ。
依然数の上では勝ってはいるが、ここまで出た犠牲に、傭兵達は濃い動揺と焦りの色を浮かべる。
「はぁ……ッ!」
だが、それと相対する村人男女の顔色は、それにも増して逼迫した色を浮かべていた。
ここまで懸命な抵抗を試みたはいいが、すでに同胞が二人も討たれ地面に亡骸となって沈み、そして彼等二人の体力、精神力も限界に近づいていた。
「おらぁぁぁッ!」
「ッ……!」
そこへ一人の傭兵が、剣を振り上げ攻撃を敢行して来た。狙いは、二人の内の女村人の方。意識の朦朧としていた女村人は、反応が遅れる。
「ネイッ!」
だがそこへ男村人が、その傭兵の進路上へ割り入る。そして彼は傭兵の剣が振り下ろされるよりも早く剣を振るい、その胴を横一文字に薙いだ。
「ぐふッ!?」
襲い掛かって来た傭兵は、割かれた腹と口から血を零して崩れ落ちる。
「――ヅッ!?」
しかし、男村人の彼のわき腹に、激痛が走ったのはそれとほぼ同時であった。見れば、彼の横には別の傭兵の姿があり、その傭兵の突き出した剣の先が、彼のわき腹を突き刺している。一人目の傭兵を屠った直後の隙を、続けざまに襲い来た傭兵に狙われたのだ。
「ネウフッ!」
それを目の当りにした、先にネイと呼ばれた女村人は、ネウフと呼んだその男村人の姿に目を剥く。
「このッ!」
「ごッ!?」
ネイは直後にすかさず自身の剣を、ネウフの肩越しに突き出し、傭兵の首を突いた。首を突かれた傭兵は、悲鳴を零して倒れ、地面の亡骸に加わる。
「ッ……」
わき腹を突かれたネウフはよろめく様に後退し、背後にある家屋に倒れ込むように背を預け、そしてずるりと崩れ落ちて腰を地面に着いた。
「ネウフ!大丈夫!?」
ネイはそのネウフを庇うように前にその前に立ち、傭兵達を睨みながらも背後に声を掛ける。
「ネイ……!逃げろ……ッ!」
そんなネイに、苦し気な声色で言葉を絞り出すネウフ。彼の纏う上衣の腰回りは、脇から噴き出た血でドス黒く染まって行く。
「そんな……そんなの嫌だッ!」
そんな痛ましい姿の彼から発せられた言葉を、ネイは拒絶し剣の柄を握る力を込める。
「クソ、また二人もやられたぞ!」
「どこまで手こずらせるんだ!」
「後はコイツだけだ、早く仕留めるんだ!」
そんな彼女等を囲う傭兵達からは、狼狽の憎々し気な言葉が飛び聞こえて来る。そして傭兵達の殺気に満ちた目と、得物の切っ先がネイに向けて一斉に向けられる。
「く……!」
ネウフを見捨てられずに担架を切った彼女だったが、状況は絶望的であった。
最早これまでかと、奥歯を噛み締めるネイ。
「おい?何だこの音……?」
しかしその時、目の前の傭兵達の中から、何か戸惑うような声が聞こえ来る。そして直後、傭兵達とそしてネイは共に、その耳に異質な音を捉える。
「おい!何だあれ!?」
そして再び傭兵達の中から声が上がった。今度は同時に一人の傭兵が一方向を指し示し、他の傭兵達が一斉にそちらを向く。
「――え?」
ネイもそれを追うように視線を移す。そして彼女は、視界に飛び込んで来た物に目を剥いた。
彼女等の視線の先に見えたのは、夜闇の中で強烈に瞬く二つの光だ。
その光はみるみるうちに接近。そして微かに聞こえていた異音は、明瞭で、そして不可解な唸り声のような物へと変わり、彼女等の聴覚を震わせる。
近づき瞬いた強烈な光は彼女等の視界を奪う。そして彼女等の前に、異音と閃光の発生源――六つの車輪を備えた、正体不明の巨大な物体が姿を現した。
82式指揮通信車は、村人とそれを包囲する傭兵達の元へと加速接近し、そして双方を割るようにその間へと突っ込み踏み入った。
「う、うわぁッ!?」
突然現れ割り入って来た指揮通信車に、狼狽し、包囲を崩して散り退く傭兵達。
「な、何だこれ……がッ!」
そしてそんな傭兵達は、唐突に響き出した破裂音と共に、何かに打ち倒され始めた。
指揮通信車の後方両翼に展開した、4分隊と増強戦闘分隊の各員からの各個射撃が、傭兵達を襲ったのだ。
《敵性分子を左右に分断。左だ、左手の集団を叩いてくれ》
突入した指揮通信車の矢万から、敵性分子である傭兵と民間人の、それぞれの位置関係がインカム越しに伝えられる。
「ダウン」
「排除、一名排除」
それを元に各員は傭兵と村人を分別し、傭兵だけを狙い弾を打ち込んでゆく。
「ぎゃッ!?」
「うがッ!?」
襲い来た多数の銃火に傭兵達は次々と倒れてゆき、程なくしてその場に居た全ての傭兵は、地面へと崩れ動かなくなった。
「――排除、一帯はクリア」
全ての傭兵の無力化を確認した河義は、確認の声を上げる。
「各員各隊、指揮車を中心に展開し警戒」
そして腕を翳し上げて周囲の各員に合図を送る。河義の合図に呼応した各員は、前進して指揮通信車へと合流し、その周辺に展開して警戒態勢を取る。
「………」
そんな傍らで村人の女ネイは、一変した状況を目の前に呆然と立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか?」
そこへ彼女に掛かる声。見れば、ネイへと歩み近寄る河義の姿がその先にあった。
「ッ!」
安否を問う言葉と共にネイへと近寄ろうとした河義。しかし一方のネイは、得体の知れぬ不可解な格好の河義を前に、その顔に警戒の色を再び戻し、そして鋭い瞳と手にしていた得物の切っ先を、河義へと向けた。
「っと!――落ち着いて下さい。私達は、あなたに害成す者ではありません」
そんな彼女の行動を前に、河義は小銃を降ろして空いた片手を翳し、そのモーションと合わせて自分が彼女に仇名す存在では無い事を説明する。
「敵じゃ……ない?」
発された河義の言葉に、ネイは依然警戒の目を河義へ向けながら、訝しむ言葉を零す。
「はい、そうです。私達は――」
そんな彼女に対して、続けて自分の身分を名乗ろうとした河義。――しかし、そんな河義の前で、彼女が崩れ倒れたのはその瞬間であった。
「ッ!どうしました!?」
唐突に崩れ落ちた彼女に、河義は驚き、声を上げながら彼女に駆け寄る。そして河義は彼女の腕に、切り裂かれできたであろう傷と、そこから流れ出る少なくない量の血を見止めた。ネイもまた、先の戦いの中で傷を負っていたのだ。
さらに河義は続けて、崩れ退いた彼女の背後にもう一人、彼女が庇っていた村人の男、ネウフの姿を見つける。そして彼の衣服のわき腹に、黒々とした血が滲み出ている様子を見止めた。
「ッー――!これは……誰か衛生キットを!負傷者だ!」
二人の痛ましい姿を目の当りにし、河義は顔を顰め、周囲へ向けて発し上げる。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「……私より、ネウフを……」
「そちらの方ですね?大丈夫です。お二人とも助けます」
河義の呼び掛ける声に対して、首を動かしネウフを示しながら訴えるネイ。そんな彼女に対して、河義は双方の救護にあたる旨を告げる。
その間に、衛生キットを手に各員が駆け付ける。各員は衛生キットをその場に広げ、そして二人の応急手当てが開始される。
「あんた……達は……?」
隊員により止血処置が施される中、ネウフが苦し気な吐息に阻まれながらも、隊員に向けて問いかけの言葉を発する。
「大丈夫、私達は敵ではありません。あなた方はこの集落の方ですね?私達は、あなた方を助けに来ました」
そんな彼に向けて、河義は再び自分達が敵ではない事を説明する。
「村を……俺達を……?」
「はい、ですから安心してください」
河義のその言葉に、か細い声で尋ね返すネウフ。それに対して河義は、努めて両名を安心させるような口調と身振りで発し伝える。
「酷いな――河義三曹、私達の応急処置で間に合う傷ではありません」
「ッ――じき小隊が到着する。それまで持たせるんだ」
応急手当を行う増強戦闘分隊の隊員が、村人の二人の傷の深さを訴える。それに河義は苦い顔を作りながらも、そう返す。先に追走展開を無線発報にて要請した呼応展開小隊には、衛生隊員も付随している。衛生隊員が到着すれば、彼等への適切な処置が可能となる。河義はそれまでの間、なんとしてでも自分達の手で村人二人の命を繋ぐ事を命じる。
「な……や……」
そんな河義等の足元で横たわるネイの口から、何か言葉が零されたのはその時であった。
「どうしました?」
それに気づき、声を掛ける河義。
「この先の……納屋……」
「そうだ……守らないと……」
対するネイは続けそんな言葉を零し、そしてネウフも同様に言葉を零す。
「納屋?」
「……お願い……!」
ネイの発したワードを反復する河義。その河義にネイは続けて、そんな懇願の言葉を絞り上げる。多量の出血のせいか、その意識は朦朧とし始めているようであった。
「河義三曹、無理に喋らせるのはまずいかと」
「あぁ――分かりました、私達で対応します。ですから無理に喋らないで」
増強戦闘分隊の隊員の言葉を受け、河義はネイに了承の言葉を向け、そして促した。
「……この先の納屋、か」
ネイ達を落ち着かせた後に、河義は口許に片手を当てて、彼女達が発した言葉の示す所を推測する。
「そこに何かあるんでしょうね」
そんな河義の零した言葉に、端から別の声が返される。声の主は、傍で警戒に当たっていた野砲科の威末だ。
「まぁ、大体想像は付きますが」
彼は警戒の目線を先へ維持しながらも、そのどこか気だるげな口調で続け呟く。
「聞くに、何か守らなければならない物があるようだ。それを確認しに向かわなければならないが――」
河義は威末に続け零しながら、しかし次にはネイやネウフの姿に目をやり、言葉尻を濁す。二人の処置及び収容にはまだ時間がかかる。いや二人の容態を考えれば、この場から無理に動かす事自体、望ましくないと見えた。
何にせよすぐには行動を再開できない。その状況に難しい表情を浮かべる河義。
「なんなら、先に見て来ましょうか?」
そんな河義の向けて、威末が進言の声を上げた。
「威末士長――頼めるのか?」
「えぇまぁ。FO(前進観測員、班)の仕事の延長ってトコですかね」
河義の尋ねる言葉に、威末は変わらぬ気だるげな口調でそんな言葉を返す。
「門試、一緒に来てくれ。――他は置いて行きますんで、ヨロシクお願いします」
そして威末は自身の指揮する増強戦闘分隊の一組――正確には、増強第2戦闘分隊1組を呼称する――を編成する四名の中から、分隊支援火器射手の役割を臨時に担っている、武器科隊員の門試を同行者としてピックアップ。その他の編成隊員はこの場に残して行く旨を、河義に告げる。
「無理はするな、何かあればすぐに連絡をしてくれ」
「了」
河義の忠告の言葉に了解の返事を返すと、威末等二名はこの場より発し、先の偵察へと向かった。
地下と地上を結ぶ階段を駆け上がり納屋の上階に出た所で、再び威末の耳に数発分の連続的な発砲音が届く。音を追って視線を上げれば、納屋の上の方に、足場が設けられて梯子が掛けられた、中二階のようなスペースが見える。
そしてそこにある窓からMINIMI軽機を外へ突き出し構える、門試の姿が見えた。
それを見止めた威末はすかさず自身も、その足場の真下、解放された納屋の大扉の端へと駆け、カバー態勢に入る。
「数は?」
「およそ一個分隊強!二人程仕留めましたが、残りが散りました!」
威末の問いかけに対して、門試から状況報告の言葉が返される。
威末が遮蔽物にした扉から視線を出して見れば、先には2~3件の点在する家屋が――そしてその陰に逃げ込んでゆく人影が、暗がりの中に微かにだが見えた。
「向こうさんも嗅ぎつけたか――門試、奴さん達を食い止めるんだ」
威末は門試に向けて指示の言葉を上げると、再びインカムを口元に寄せる。
「ジャンカー4ヘッドもしくはハシント、応答を。こちらケンタウロス2-1――」
威末は偵察捜索隊本隊に向けて無線通信を発報。偵察行動の先で納屋と、その地下空間で多数の村人と思しき民間人を多数発見した旨を。続け、敵性集団がこの納屋に迫っている状況と、応援を必要とする旨を発報する。
《了解ケンタウロス2-1。だが、こちらも敵性集団と接敵し、交戦状態にある》
しかし発報、要請に対して返って来たのは、そんなあまり喜ばしくない本隊側の状況を伝える、河義の声。
加えて通信音声の向こうからは、銃声と思しき音が混じり聞こえて来る。
《可能な限り早急に対処し、そちらに向かう。だが、少しの間持ちこたえて欲しい》
「ッー――了解です。ケンタウロス2-1、終ワリ」
威末は苦々しく口を鳴らして返し、通信を終了。
「聞いたな、門試?少しの間、俺達だけで持ちこたえる必要がある」
「チッ、了」
そして威末は門試に向けて告げ、門試からは舌打ちと共に了解の返事が返される。
「相手の動向は?」
「散会し、隠れたまま動きなし――待った、訂正。1時方向の家屋、二階に動きが――」
威末等の籠る納屋の周辺に点在するいくつかの家屋。
その内の、正面およそ50m程先に見える家屋の二階。そこにある窓の奥に動きを見止め、門試は声を上げかける。しかし直後、その声を阻むようにそれは襲い来た。
「ヅッ!」
飛来し門試を襲ったのは、これまで散々遭遇してきた鉱石の針の群れ。襲来した鉱石針は門試の陣取った窓際周辺に音を立てて突き刺さり、いくつかは窓から飛び込み門試の傍を掠める。襲い来たそれ等に、門試は鈍い声を零しながら身を竦めた。
「大丈夫か!?」
「ッ――攻撃されました!正面の家屋から鋼の針!」
威末の問いかける言葉に、報告の声を返す門試。
しかし相手からの攻撃はそれだけに留まらず、今度は数本の矢が放たれ襲い来た。
「ッ――畜生ッ!」
飛来し納屋の壁に突き刺さり、あるいは窓から飛び込み傍を掠めて行った矢の群れに、門試は再び身を隠して悪態を吐く。
「正面家屋に複数配置したか――」
相手からの攻撃が襲い来た中、威末は先の家屋を覗き観察し、敵の配置を推測。
「門試、家屋上階の魔法攻撃の火点を叩け。他は俺がやる」
「了!」
そして威末は門試に指示の言葉を張り上げる。
門試はそれに応じ、MINIMI軽機を構え直し、その照準内に正面家屋を覗いて引き金を絞り、発砲を開始。撃ち出され銃火が、正面家屋の敵の潜むであろう窓へと注がれ出した。
MINIMI軽機の発砲音を上に聞きながら、威末も同時にその身を、遮蔽物の扉より最低限乗り出し小銃を突き出す。そして正面家屋の一階窓を照準に覗き、単発射撃で二度発砲。
家屋へ二発の弾を撃ち込むと同時に、すかさず遮蔽物へ身を引き込む。
――その瞬間、複数の矢が威末の元へ襲来し、彼の身を隠す扉を激しく叩き、そして横を抜けて納屋の床面に突き刺さった。
「――!」
即座に襲い来た敵からの応射に、顔を若干顰める威末。
しかし威末は臆さず、再び遮蔽物より小銃を構え突き出し、もう一度正面の家屋の窓を照準し、素早く二度引き金を引く。
再度撃ち込まれた5.56㎜弾は、窓の向こうのシルエットを打ち倒した。しかし威末はその確認もそこそこに、すかさず遮蔽物へ身を隠す。
そこへまたも矢撃が降り注ぎ、威末を襲った。
敵から来る苛烈な攻撃に肝を冷やしながらも、一呼吸吐き、そして三度攻撃を敢行する。
小銃を突き出し、引き金を引いて身を隠し、敵からの攻撃を凌いでは再び小銃を突き出し発砲。この動作を反復し、威末は正面家屋の、敵が配置し潜むであろう各窓に弾を撃ち込んでゆく。
「――弱まって来たか?」
少しの間、納屋の家屋の間を銃火と、敵からの矢や魔法攻撃が飛び交い行き会ったが、やがて投射された銃火の効果か、敵方家屋側からの攻撃は弱まりを見せる。
敵の攻勢の減退を感じ、希望の念の含まれた推察の声を上げる威末。
――しかし直後、突如背後で大きな異音が響き届いた。
ドン――という何かを大きく叩くようなその音。その発生源は、納屋の反対側の片隅に設けられた、小さな通用扉と思われ、音を聞き振り向いた威末の視線が、その扉に注がれる。
再びの大きな音と共に、その通用扉が破られ開かれたのは、その瞬間であった。
破られた通用扉から踏み込んで来たのは、二名程の傭兵。その手には剣等の得物が握られ、その傭兵達は威末の姿を見止めると同時に、こちらへ向けて駆け迫って来た。
「ッ――ッ!」
対する威末は、侵入者を前に表情を険しくしながらも、すかさず小銃を構え立て続けに発砲。
踏み込み肉薄を試みた傭兵達は、しかし威末の元へたどり着く前に、その身に5.56㎜弾をそれぞれ受けて、もんどり打ちあるいは崩れ落ちた。
一方の威末は、危なげなく侵入して来た傭兵達を排除しながらも、その表情は依然険しい。
「まずいな――裏か」
敵が納屋の反対側からの回り込みを試みて来た事に、威末は苦い声を零す。この場に二名しかいない現状で、複数方向から攻撃を受ける事は大変に都合が悪かった。
「門試、少しの間正面を頼む。俺は裏を塞ぐ!」
「了!」
威末は門試に発し、納屋の反対側へと駆ける。そして破られ開かれた扉へ、小銃を構えた姿勢でドンとぶつかるように取りつく。
瞬間、視界に入る扉の向こうの光景。そこには、ほんの数m先に、いままさに扉から納屋へ駆け込み踏み込まんとする、二名程の傭兵の姿があった。
威末はそんな傭兵達に向けて、構えていた小銃の引き金をすかさず数度引き絞った。
傭兵達は、突然扉の向こうに現れ進路を塞いだ威末の姿に目を剥く様子を見せたが、直後には襲い来た5.56㎜弾の餌食となった。応戦行動を取る事もままならないままその身に弾を受け、立て続けに崩れ倒れてゆく傭兵達。
威末はそんな崩れた傭兵達の向こうに、さらに複数の人影を見る。
視線の先、納屋の裏手の十数m向こうにはまた一軒の家屋があり、その玄関口から駆け出て来る、あるいは家屋を囲う垣根を越えてこちらへ迫る、傭兵達の姿が見えた。
威末はそんな傭兵達に向けて、間髪入れずに牽制で数発発砲。
傭兵達の内の一人が命中弾を受けて倒れ、それを目の当りにした他の傭兵達がわずかだが同様の様子を見せる。
威末は傭兵達のそんな様子を見ながら納屋の中へと引き込む。そしてサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを引き抜き、そして残る傭兵達の元へ向けて投擲。
一拍置いて、扉の向こうで炸裂音が響き渡った。
同時に傭兵の物と思しき叫び声や怒声が聞こえ来たが、威末はその様子や手榴弾の効果をその目で確認する事はせず、開かれていた扉を、脚で乱暴に蹴り閉める。そして近くに置かれていた大きな木箱や家具類を荒い手つきで引きずって倒し、バリケードを築いて納屋の通用扉を塞いだ。
「少しでも時間を稼げればいいが」
突貫工事で築いたバリケードの効果に不安を覚えながらも、それが敵の裏手からの侵入をわずかな時間でも防いでくれる事を願い呟く威末。
「威末士長ッ!」
そのタイミングで、門試からの声が届いた。
その声の意味が応援を要請する物である事を察し、威末は通用扉の前を離れて、元居た納屋の正面へと駆け戻る。
そして再び先の大扉の端に取りつきカバーした瞬間、飛来し飛び込んで来た鉱石柱の群れが、威末のすぐ傍を掠め抜けて行った。
「ッ!――どうなった!?」
威末は掠めた攻撃に顔を顰めながらも、上の足場に居る門試に状況を問う。
「10時方向、11時方向の家屋に新手!正面家屋も再び脅威度増加ッ!」
威末の問う声に、張り上げた声で門試から返答が返る。
その直後、門試の報告内容を証明するかのように、伝え示された周辺各家屋の方向から次々に矢や鉱石の針等が襲い着て、納屋の各所を叩き貫き、そして威末等の傍を抜けて行った。周辺家屋には新たに増援として現れた傭兵達が陣取り、さらには先に一度勢いの減退した正面家屋も攻撃の勢いを吹き返し、それ等各方から来る攻撃に納屋は晒されていた。
「あぁ――野郎!」
襲い来た攻撃に対し門試は、悪態を零しながらもMINIMI軽機を構え発砲する。しかしすぐにそれに対して、いずれかの方向から矢あるいは鉱石針の応射が返され、門試はそれを凌ぐために身を隠すことを余儀なくされる。
先程から門試はこれを繰り返しており、敵に対して、軽機をもっての継続火力投射を行う事ができないでいた。
一方の威末も、遮蔽物より小銃を突き出し、先に見える一つの家屋、その窓に浮かぶシルエットに向けて発砲。一度引き込み、一拍置いてもう一度小銃を構え突き出し、再度同方向の家屋に数発撃ち込む。
そして再び遮蔽物に引き込んだ瞬間、僅差で多方向から矢と鉱石針が飛来し、周囲を叩き、掠めた。
「――敵方の火点が多い」
垣間見えた敵の配置状況から、現状の戦力差は敵傭兵側に利がある事を把握し、難しい声を零す威末。
「これはまずいんじゃないですか、捌ききれる数じゃねぇ!」
上階足場の門試は、敵の攻撃の隙を縫いつつ可能な限りの火力投射を試みながら、威末に向けて懸念の声を張り上げる。
「落ち着け。偵察捜索隊本隊の到着まで、食い止めれば――」
そんな門試に向けて宥める声を向けながら、威末は遮蔽物より視線を出して先の様子を伺おうとする。
「――は?」
だが、その威末の眼は直後、その先に異質な光景を見た。
納屋より正面方向にある家屋の二階。そこに設けられた窓の前に、複数の光源が浮かんでいた。
その正体は、中空に並び浮かんだ五つ程の炎の玉。
威末がそれを視認した瞬間、煌々と燃え揺らめくその五つの火の玉は、その場を飛び出した。そして五つの火の玉はそれぞれ違った放物線状の軌道描き、威末等の籠る納屋へと飛来。
それぞれが直径50㎝程の大きさを持つそれ等の火の玉――いや火炎弾は、納屋の各所に命中。それぞれの個所で飛散し、燃え広がった。
「ヅッ――!」
「熱――!」
幸い威末等に直接の被害は無かった。
しかっし飛来着弾し、燃え広がった炎から伝わり来た熱に、威末等は声を零して顔を顰める。
「――無事か!?」
「食らってませんが――冗談が過ぎるッ!」
威末の安否確認の声に、門試は悪態を付随させた返答を返す。
「さっき見た火の玉攻撃の、強化版といった所か?」
襲い来た火炎弾の攻撃に対して推察を零す威末。そして威末は小銃を突き出し構え、火炎弾の出現点である窓付近を狙い、数発撃ち込む。そしてセオリー通り一度引き込んで応射を凌ぎ、再び小銃を突き出し引き金を数度絞り、弾を撃ち込む。
「仕留めたか――?」
二度の反復攻撃を終えて身を隠し、どこか願うように言葉を零す威末。
「士長、もっぺん来ますッ!」
しかしそこへ門試の張り上げられた声が響く。
そして直後に、再び複数の火炎弾が納屋の各所へ直撃し、燃え上がった。
「ッ――ダメだ。射手?オペレーター?――何かは知らないが大元がまだいる!」
襲い来た攻撃から、火炎弾攻撃の発生源が健在である事が嫌が応にも判明し、威末は小さな舌打ちと共に荒げた声を発する。
「奴等突っ込んでくる!」
足場から再び門試の言葉が聞こえ届く。
威末が遮蔽物の大扉より視線を覗き出して見れば、正面家屋の玄関口より4名程の傭兵が駆け出て来る姿が見えた。どうやら威末等側の攻撃の手が弱まった所を見て、こちらへ踏み込もうとする腹積もりらしい。
「させん!」
それを見止めた威末は、発すると共にサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを抜く。そして現れ迫る傭兵達目がけて投擲。放り投げられた手榴弾は迫る傭兵達の足元に落ち、そして炸裂。傭兵達を真ん中から綺麗に爆風で吹き飛ばし、撒き散らした破片殺傷した。
さらに威末はダメ押しで、炸裂に紛れて正面家屋に数発撃ち込んだ。
「弾切れだ――再装填!」
「了!」
威末の小銃はそこで弾倉が空になり、威末は門試に再装填動作に入る旨を告げる。
身を遮蔽物に隠し、敵からの応射が納屋の大扉や壁を叩く感覚を背中に感じながらも、空弾倉を外し、新たな弾倉を小銃に装填する威末。
「完了――」
再装填動作を終え、小銃に降ろしていた視線を起こす威末。そんな彼の眼に、思いがけない物が飛び込んで来た。
納屋の隅に設けられた、地下空間へと続く階段への出入り口。そこに姿を現した、一人の男の姿があった。
「これは……!一体どうなってるんだ……!?」
男は、先に地下空間で威末等の前に、女子供を庇い立ちはだかった男女の村人の内の片割れ。彼は戦闘により荒れ尽くした納屋の内部や、聞こえ響く戦闘の音に目を剥き驚く様子を見せる。
「ダメよケルケ!怪我してるんだから!」
そんな男に追いつく様に、階段の下から一人の女が現れる。先の立ちはだかった男女の内の、ゼリクスという名で呼ばれていた女の方だ。彼女は制止の声を上げながら、男の衣服を掴み彼を止める動作を見せる。
「あんた方――出て来てはダメだ!危険ですッ!」
その様子を見止めた威末は、警告の声を発し上げながら、二人の元に駆け寄る。
「そんな事は分かっている!見るに今ここは囲われているんだろう!?だからこそ、戦わないでどうするッ!」
しかし威末の警告に対して、女からケルケと呼ばれた彼は、そんな訴えを返して寄越した。そして負傷した様子の痛ましい体で、しかしその手に携えた剣を持ち上げて見せる。
「気持ちは分かりますが――」
彼、ケルケの訴えも理解はできるが、民間人でありましてや負傷者である彼を戦いの場に立たせる事はできない。いや、彼が無傷でありかつ心得がある事を前提にしたとしても、戦術概念の異なる彼等との連携等、とても即興で取れる物ではないだろう。
何にせよ彼等の戦闘参加を認可する道理はない。その上で、威末は説得の言葉を探す。
――鈍く、しかし大きな衝撃音が聞こえ届いたのはその直後であった。
「ッ!」
聞こえ来たそれに視線を起こす威末。そして威末は飛び込んで来た光景に目を剥いた。
事が起こっていたのは、納屋の裏手の大扉。
閂が掛けられ閉ざされていたはずの大扉は、しかし見れば、推定3mはあるかと見られる、巨大で鋭利な鉱石の柱がその中心から突き出し、こじ開けられ閂を破壊されていた。
さらに大扉はゆっくりと開き始め、その隙間から向こうに、今まさに踏み込まんとする傭兵達の姿が見えた。
それを目にした瞬間、威末は即座に小銃を構えて、大扉の隙間の向こうに向けて発砲した。咄嗟に数回引き金を絞り撃ち出された5.56㎜弾は、隙間を潜ってその向こうの傭兵達を殺傷。彼等の悲鳴が聞こえ来る。
「な……!?」
「え……何ッ!?」
その威末の行動に、ケルケとゼリクスは驚きの様子を見せる。
威末はそんな二人をよそに、手榴弾を掴み、大扉の隙間に向けて投擲。扉の向こうへ投げ込まれた手榴弾は、直後に炸裂。向こう側の潜んでいた傭兵達を吹き飛したのであろう、炸裂音と共に悲鳴のような物がまた聞こえ届いた。
「ッ……今のは?」
「一体何を……?」
立て続けに威末の起こした行動と現象に、二人は目を剥き言葉を零す。
「後だ!とにかく隠れているんだッ!」
しかし威末は、切羽詰まった状況に最早説得も説明もじれったく、荒く声を張り上げて二人を階段下へと強引に押し戻した。
「三度目来ますッ!」
そこへまたしても、門試の声が響く。最早その言葉が示すところに疑問は無い。
解放された納屋の正面から先を見れば、複数――正確には今度は七つもの火炎弾が、こちらへ迫る光景が目に飛び込んで来た。
飛来した火炎弾は三度納屋の各所を直撃して焼く。さらに今回は、その一つが納屋の正面から内部へ飛び込み、内部の壁を直撃して燃え広がった。
「ふざけてる――!」
燃え広がった火炎弾から伝わり来る熱に、表情を顰め悪態を零す。
しかし敵の攻撃はなお、容赦を見せる様子が無い。
先の連弾的な火弾攻撃に加え、別方向からの各家屋からも、単発の火炎弾が放たれ飛来し、納屋の各所を焼く。そして今さっき大扉をこじ開けた物と同種の巨大な鉱石の柱が、それに混じり二本、三本と襲来。納屋の壁面を破り破壊し、そして内部に突き刺さる。
「ゲホッ!トンデモ攻撃のバーゲンセールだ、ふざけやがってッ!本気でヤバいッ!」
幾度にも渡る火炎弾攻撃により納屋の各所は燃え上がり、その影響で納屋の内外には煙が立ち込め出している。門試は煙に咳き込みながら、立て続く常識外れな攻撃に悪態を吐き、そして自分等が窮地に陥っている事を訴える。
もはや満足に頭を上げる事もままならず、門試はMINIMI軽機だけを窓から突き出し、ブラインド射撃で傭兵達に牽制射撃を行っていた。
「持ちこたえるんだッ!!」
そんな門試しに張り上げ返しながらも、威末は周囲へ視線を走らせる。
正面からは、今の状況を好機とみたのだろう、各家屋より傭兵が飛び出し、こちらへ迫る姿が見える。
さらに背後裏手の半分こじ開けられた大扉の、その向こうからも敵傭兵の物であろう声や音が零れ聞こえて来る。
納屋は完全に包囲された上で苛烈な攻撃に晒されており、さらには本格的に踏み込まれようとしている。門試の言う通り、威末等は窮地に陥っていた。
威末はインカムのマイクを口元に寄せ、怒鳴り声にも近い声で発し出す。
「ケンタウロス2-1より全ユニット!こちらは先の納屋にて包囲され、苛烈な攻撃に晒されている!当ユニットだけでは対応不可能、我々も住民も大変危険な状況にある!至急、応援求む!繰り返す、至急――!」
地下と地上を結ぶ階段を駆け上がり納屋の上階に出た所で、再び威末の耳に数発分の連続的な発砲音が届く。音を追って視線を上げれば、納屋の上の方に、足場が設けられて梯子が掛けられた、中二階のようなスペースが見える。
そしてそこにある窓からMINIMI軽機を外へ突き出し構える、門試の姿が見えた。
それを見止めた威末はすかさず自身も、その足場の真下、解放された納屋の大扉の端へと駆け、カバー態勢に入る。
「数は?」
「およそ一個分隊強!二人程仕留めましたが、残りが散りました!」
威末の問いかけに対して、門試から状況報告の言葉が返される。
威末が遮蔽物にした扉から視線を出して見れば、先には2~3件の点在する家屋が――そしてその陰に逃げ込んでゆく人影が、暗がりの中に微かにだが見えた。
「向こうさんも嗅ぎつけたか――門試、奴さん達を食い止めるんだ」
威末は門試に向けて指示の言葉を上げると、再びインカムを口元に寄せる。
「ジャンカー4ヘッドもしくはハシント、応答を。こちらケンタウロス2-1――」
威末は偵察捜索隊本隊に向けて無線通信を発報。偵察行動の先で納屋と、その地下空間で多数の村人と思しき民間人を多数発見した旨を。続け、敵性集団がこの納屋に迫っている状況と、応援を必要とする旨を発報する。
《了解ケンタウロス2-1。だが、こちらも敵性集団と接敵し、交戦状態にある》
しかし発報、要請に対して返って来たのは、そんなあまり喜ばしくない本隊側の状況を伝える、河義の声。
加えて通信音声の向こうからは、銃声と思しき音が混じり聞こえて来る。
《可能な限り早急に対処し、そちらに向かう。だが、少しの間持ちこたえて欲しい》
「ッー――了解です。ケンタウロス2-1、終ワリ」
威末は苦々しく口を鳴らして返し、通信を終了。
「聞いたな、門試?少しの間、俺達だけで持ちこたえる必要がある」
「チッ、了」
そして威末は門試に向けて告げ、門試からは舌打ちと共に了解の返事が返される。
「相手の動向は?」
「散会し、隠れたまま動きなし――待った、訂正。1時方向の家屋、二階に動きが――」
威末等の籠る納屋の周辺に点在するいくつかの家屋。
その内の、正面およそ50m程先に見える家屋の二階。そこにある窓の奥に動きを見止め、門試は声を上げかける。しかし直後、その声を阻むようにそれは襲い来た。
「ヅッ!」
飛来し門試を襲ったのは、これまで散々遭遇してきた鉱石の針の群れ。襲来した鉱石針は門試の陣取った窓際周辺に音を立てて突き刺さり、いくつかは窓から飛び込み門試の傍を掠める。襲い来たそれ等に、門試は鈍い声を零しながら身を竦めた。
「大丈夫か!?」
「ッ――攻撃されました!正面の家屋から鋼の針!」
威末の問いかける言葉に、報告の声を返す門試。
しかし相手からの攻撃はそれだけに留まらず、今度は数本の矢が放たれ襲い来た。
「ッ――畜生ッ!」
飛来し納屋の壁に突き刺さり、あるいは窓から飛び込み傍を掠めて行った矢の群れに、門試は再び身を隠して悪態を吐く。
「正面家屋に複数配置したか――」
相手からの攻撃が襲い来た中、威末は先の家屋を覗き観察し、敵の配置を推測。
「門試、家屋上階の魔法攻撃の火点を叩け。他は俺がやる」
「了!」
そして威末は門試に指示の言葉を張り上げる。
門試はそれに応じ、MINIMI軽機を構え直し、その照準内に正面家屋を覗いて引き金を絞り、発砲を開始。撃ち出され銃火が、正面家屋の敵の潜むであろう窓へと注がれ出した。
MINIMI軽機の発砲音を上に聞きながら、威末も同時にその身を、遮蔽物の扉より最低限乗り出し小銃を突き出す。そして正面家屋の一階窓を照準に覗き、単発射撃で二度発砲。
家屋へ二発の弾を撃ち込むと同時に、すかさず遮蔽物へ身を引き込む。
――その瞬間、複数の矢が威末の元へ襲来し、彼の身を隠す扉を激しく叩き、そして横を抜けて納屋の床面に突き刺さった。
「――!」
即座に襲い来た敵からの応射に、顔を若干顰める威末。
しかし威末は臆さず、再び遮蔽物より小銃を構え突き出し、もう一度正面の家屋の窓を照準し、素早く二度引き金を引く。
再度撃ち込まれた5.56㎜弾は、窓の向こうのシルエットを打ち倒した。しかし威末はその確認もそこそこに、すかさず遮蔽物へ身を隠す。
そこへまたも矢撃が降り注ぎ、威末を襲った。
敵から来る苛烈な攻撃に肝を冷やしながらも、一呼吸吐き、そして三度攻撃を敢行する。
小銃を突き出し、引き金を引いて身を隠し、敵からの攻撃を凌いでは再び小銃を突き出し発砲。この動作を反復し、威末は正面家屋の、敵が配置し潜むであろう各窓に弾を撃ち込んでゆく。
「――弱まって来たか?」
少しの間、納屋の家屋の間を銃火と、敵からの矢や魔法攻撃が飛び交い行き会ったが、やがて投射された銃火の効果か、敵方家屋側からの攻撃は弱まりを見せる。
敵の攻勢の減退を感じ、希望の念の含まれた推察の声を上げる威末。
――しかし直後、突如背後で大きな異音が響き届いた。
ドン――という何かを大きく叩くようなその音。その発生源は、納屋の反対側の片隅に設けられた、小さな通用扉と思われ、音を聞き振り向いた威末の視線が、その扉に注がれる。
再びの大きな音と共に、その通用扉が破られ開かれたのは、その瞬間であった。
破られた通用扉から踏み込んで来たのは、二名程の傭兵。その手には剣等の得物が握られ、その傭兵達は威末の姿を見止めると同時に、こちらへ向けて駆け迫って来た。
「ッ――ッ!」
対する威末は、侵入者を前に表情を険しくしながらも、すかさず小銃を構え立て続けに発砲。
踏み込み肉薄を試みた傭兵達は、しかし威末の元へたどり着く前に、その身に5.56㎜弾をそれぞれ受けて、もんどり打ちあるいは崩れ落ちた。
一方の威末は、危なげなく侵入して来た傭兵達を排除しながらも、その表情は依然険しい。
「まずいな――裏か」
敵が納屋の反対側からの回り込みを試みて来た事に、威末は苦い声を零す。この場に二名しかいない現状で、複数方向から攻撃を受ける事は大変に都合が悪かった。
「門試、少しの間正面を頼む。俺は裏を塞ぐ!」
「了!」
威末は門試に発し、納屋の反対側へと駆ける。そして破られ開かれた扉へ、小銃を構えた姿勢でドンとぶつかるように取りつく。
瞬間、視界に入る扉の向こうの光景。そこには、ほんの数m先に、いままさに扉から納屋へ駆け込み踏み込まんとする、二名程の傭兵の姿があった。
威末はそんな傭兵達に向けて、構えていた小銃の引き金をすかさず数度引き絞った。
傭兵達は、突然扉の向こうに現れ進路を塞いだ威末の姿に目を剥く様子を見せたが、直後には襲い来た5.56㎜弾の餌食となった。応戦行動を取る事もままならないままその身に弾を受け、立て続けに崩れ倒れてゆく傭兵達。
威末はそんな崩れた傭兵達の向こうに、さらに複数の人影を見る。
視線の先、納屋の裏手の十数m向こうにはまた一軒の家屋があり、その玄関口から駆け出て来る、あるいは家屋を囲う垣根を越えてこちらへ迫る、傭兵達の姿が見えた。
威末はそんな傭兵達に向けて、間髪入れずに牽制で数発発砲。
傭兵達の内の一人が命中弾を受けて倒れ、それを目の当りにした他の傭兵達がわずかだが同様の様子を見せる。
威末は傭兵達のそんな様子を見ながら納屋の中へと引き込む。そしてサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを引き抜き、そして残る傭兵達の元へ向けて投擲。
一拍置いて、扉の向こうで炸裂音が響き渡った。
同時に傭兵の物と思しき叫び声や怒声が聞こえ来たが、威末はその様子や手榴弾の効果をその目で確認する事はせず、開かれていた扉を、脚で乱暴に蹴り閉める。そして近くに置かれていた大きな木箱や家具類を荒い手つきで引きずって倒し、バリケードを築いて納屋の通用扉を塞いだ。
「少しでも時間を稼げればいいが」
突貫工事で築いたバリケードの効果に不安を覚えながらも、それが敵の裏手からの侵入をわずかな時間でも防いでくれる事を願い呟く威末。
「威末士長ッ!」
そのタイミングで、門試からの声が届いた。
その声の意味が応援を要請する物である事を察し、威末は通用扉の前を離れて、元居た納屋の正面へと駆け戻る。
そして再び先の大扉の端に取りつきカバーした瞬間、飛来し飛び込んで来た鉱石柱の群れが、威末のすぐ傍を掠め抜けて行った。
「ッ!――どうなった!?」
威末は掠めた攻撃に顔を顰めながらも、上の足場に居る門試に状況を問う。
「10時方向、11時方向の家屋に新手!正面家屋も再び脅威度増加ッ!」
威末の問う声に、張り上げた声で門試から返答が返る。
その直後、門試の報告内容を証明するかのように、伝え示された周辺各家屋の方向から次々に矢や鉱石の針等が襲い着て、納屋の各所を叩き貫き、そして威末等の傍を抜けて行った。周辺家屋には新たに増援として現れた傭兵達が陣取り、さらには先に一度勢いの減退した正面家屋も攻撃の勢いを吹き返し、それ等各方から来る攻撃に納屋は晒されていた。
「あぁ――野郎!」
襲い来た攻撃に対し門試は、悪態を零しながらもMINIMI軽機を構え発砲する。しかしすぐにそれに対して、いずれかの方向から矢あるいは鉱石針の応射が返され、門試はそれを凌ぐために身を隠すことを余儀なくされる。
先程から門試はこれを繰り返しており、敵に対して、軽機をもっての継続火力投射を行う事ができないでいた。
一方の威末も、遮蔽物より小銃を突き出し、先に見える一つの家屋、その窓に浮かぶシルエットに向けて発砲。一度引き込み、一拍置いてもう一度小銃を構え突き出し、再度同方向の家屋に数発撃ち込む。
そして再び遮蔽物に引き込んだ瞬間、僅差で多方向から矢と鉱石針が飛来し、周囲を叩き、掠めた。
「――敵方の火点が多い」
垣間見えた敵の配置状況から、現状の戦力差は敵傭兵側に利がある事を把握し、難しい声を零す威末。
「これはまずいんじゃないですか、捌ききれる数じゃねぇ!」
上階足場の門試は、敵の攻撃の隙を縫いつつ可能な限りの火力投射を試みながら、威末に向けて懸念の声を張り上げる。
「落ち着け。偵察捜索隊本隊の到着まで、食い止めれば――」
そんな門試に向けて宥める声を向けながら、威末は遮蔽物より視線を出して先の様子を伺おうとする。
「――は?」
だが、その威末の眼は直後、その先に異質な光景を見た。
納屋より正面方向にある家屋の二階。そこに設けられた窓の前に、複数の光源が浮かんでいた。
その正体は、中空に並び浮かんだ五つ程の炎の玉。
威末がそれを視認した瞬間、煌々と燃え揺らめくその五つの火の玉は、その場を飛び出した。そして五つの火の玉はそれぞれ違った放物線状の軌道描き、威末等の籠る納屋へと飛来。
それぞれが直径50㎝程の大きさを持つそれ等の火の玉――いや火炎弾は、納屋の各所に命中。それぞれの個所で飛散し、燃え広がった。
「ヅッ――!」
「熱――!」
幸い威末等に直接の被害は無かった。
しかっし飛来着弾し、燃え広がった炎から伝わり来た熱に、威末等は声を零して顔を顰める。
「――無事か!?」
「食らってませんが――冗談が過ぎるッ!」
威末の安否確認の声に、門試は悪態を付随させた返答を返す。
「さっき見た火の玉攻撃の、強化版といった所か?」
襲い来た火炎弾の攻撃に対して推察を零す威末。そして威末は小銃を突き出し構え、火炎弾の出現点である窓付近を狙い、数発撃ち込む。そしてセオリー通り一度引き込んで応射を凌ぎ、再び小銃を突き出し引き金を数度絞り、弾を撃ち込む。
「仕留めたか――?」
二度の反復攻撃を終えて身を隠し、どこか願うように言葉を零す威末。
「士長、もっぺん来ますッ!」
しかしそこへ門試の張り上げられた声が響く。
そして直後に、再び複数の火炎弾が納屋の各所へ直撃し、燃え上がった。
「ッ――ダメだ。射手?オペレーター?――何かは知らないが大元がまだいる!」
襲い来た攻撃から、火炎弾攻撃の発生源が健在である事が嫌が応にも判明し、威末は小さな舌打ちと共に荒げた声を発する。
「奴等突っ込んでくる!」
足場から再び門試の言葉が聞こえ届く。
威末が遮蔽物の大扉より視線を覗き出して見れば、正面家屋の玄関口より4名程の傭兵が駆け出て来る姿が見えた。どうやら威末等側の攻撃の手が弱まった所を見て、こちらへ踏み込もうとする腹積もりらしい。
「させん!」
それを見止めた威末は、発すると共にサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを抜く。そして現れ迫る傭兵達目がけて投擲。放り投げられた手榴弾は迫る傭兵達の足元に落ち、そして炸裂。傭兵達を真ん中から綺麗に爆風で吹き飛ばし、撒き散らした破片殺傷した。
さらに威末はダメ押しで、炸裂に紛れて正面家屋に数発撃ち込んだ。
「弾切れだ――再装填!」
「了!」
威末の小銃はそこで弾倉が空になり、威末は門試に再装填動作に入る旨を告げる。
身を遮蔽物に隠し、敵からの応射が納屋の大扉や壁を叩く感覚を背中に感じながらも、空弾倉を外し、新たな弾倉を小銃に装填する威末。
「完了――」
再装填動作を終え、小銃に降ろしていた視線を起こす威末。そんな彼の眼に、思いがけない物が飛び込んで来た。
納屋の隅に設けられた、地下空間へと続く階段への出入り口。そこに姿を現した、一人の男の姿があった。
「これは……!一体どうなってるんだ……!?」
男は、先に地下空間で威末等の前に、女子供を庇い立ちはだかった男女の村人の内の片割れ。彼は戦闘により荒れ尽くした納屋の内部や、聞こえ響く戦闘の音に目を剥き驚く様子を見せる。
「ダメよケルケ!怪我してるんだから!」
そんな男に追いつく様に、階段の下から一人の女が現れる。先の立ちはだかった男女の内の、ゼリクスという名で呼ばれていた女の方だ。彼女は制止の声を上げながら、男の衣服を掴み彼を止める動作を見せる。
「あんた方――出て来てはダメだ!危険ですッ!」
その様子を見止めた威末は、警告の声を発し上げながら、二人の元に駆け寄る。
「そんな事は分かっている!見るに今ここは囲われているんだろう!?だからこそ、戦わないでどうするッ!」
しかし威末の警告に対して、女からケルケと呼ばれた彼は、そんな訴えを返して寄越した。そして負傷した様子の痛ましい体で、しかしその手に携えた剣を持ち上げて見せる。
「気持ちは分かりますが――」
彼、ケルケの訴えも理解はできるが、民間人でありましてや負傷者である彼を戦いの場に立たせる事はできない。いや、彼が無傷でありかつ心得がある事を前提にしたとしても、戦術概念の異なる彼等との連携等、とても即興で取れる物ではないだろう。
何にせよ彼等の戦闘参加を認可する道理はない。その上で、威末は説得の言葉を探す。
――鈍く、しかし大きな衝撃音が聞こえ届いたのはその直後であった。
「ッ!」
聞こえ来たそれに視線を起こす威末。そして威末は飛び込んで来た光景に目を剥いた。
事が起こっていたのは、納屋の裏手の大扉。
閂が掛けられ閉ざされていたはずの大扉は、しかし見れば、推定3mはあるかと見られる、巨大で鋭利な鉱石の柱がその中心から突き出し、こじ開けられ閂を破壊されていた。
さらに大扉はゆっくりと開き始め、その隙間から向こうに、今まさに踏み込まんとする傭兵達の姿が見えた。
それを目にした瞬間、威末は即座に小銃を構えて、大扉の隙間の向こうに向けて発砲した。咄嗟に数回引き金を絞り撃ち出された5.56㎜弾は、隙間を潜ってその向こうの傭兵達を殺傷。彼等の悲鳴が聞こえ来る。
「な……!?」
「え……何ッ!?」
その威末の行動に、ケルケとゼリクスは驚きの様子を見せる。
威末はそんな二人をよそに、手榴弾を掴み、大扉の隙間に向けて投擲。扉の向こうへ投げ込まれた手榴弾は、直後に炸裂。向こう側の潜んでいた傭兵達を吹き飛したのであろう、炸裂音と共に悲鳴のような物がまた聞こえ届いた。
「ッ……今のは?」
「一体何を……?」
立て続けに威末の起こした行動と現象に、二人は目を剥き言葉を零す。
「後だ!とにかく隠れているんだッ!」
しかし威末は、切羽詰まった状況に最早説得も説明もじれったく、荒く声を張り上げて二人を階段下へと強引に押し戻した。
「三度目来ますッ!」
そこへまたしても、門試の声が響く。最早その言葉が示すところに疑問は無い。
解放された納屋の正面から先を見れば、複数――正確には今度は七つもの火炎弾が、こちらへ迫る光景が目に飛び込んで来た。
飛来した火炎弾は三度納屋の各所を直撃して焼く。さらに今回は、その一つが納屋の正面から内部へ飛び込み、内部の壁を直撃して燃え広がった。
「ふざけてる――!」
燃え広がった火炎弾から伝わり来る熱に、表情を顰め悪態を零す。
しかし敵の攻撃はなお、容赦を見せる様子が無い。
先の連弾的な火弾攻撃に加え、別方向からの各家屋からも、単発の火炎弾が放たれ飛来し、納屋の各所を焼く。そして今さっき大扉をこじ開けた物と同種の巨大な鉱石の柱が、それに混じり二本、三本と襲来。納屋の壁面を破り破壊し、そして内部に突き刺さる。
「ゲホッ!トンデモ攻撃のバーゲンセールだ、ふざけやがってッ!本気でヤバいッ!」
幾度にも渡る火炎弾攻撃により納屋の各所は燃え上がり、その影響で納屋の内外には煙が立ち込め出している。門試は煙に咳き込みながら、立て続く常識外れな攻撃に悪態を吐き、そして自分等が窮地に陥っている事を訴える。
もはや満足に頭を上げる事もままならず、門試はMINIMI軽機だけを窓から突き出し、ブラインド射撃で傭兵達に牽制射撃を行っていた。
「持ちこたえるんだッ!!」
そんな門試しに張り上げ返しながらも、威末は周囲へ視線を走らせる。
正面からは、今の状況を好機とみたのだろう、各家屋より傭兵が飛び出し、こちらへ迫る姿が見える。
さらに背後裏手の半分こじ開けられた大扉の、その向こうからも敵傭兵の物であろう声や音が零れ聞こえて来る。
納屋は完全に包囲された上で苛烈な攻撃に晒されており、さらには本格的に踏み込まれようとしている。門試の言う通り、威末等は窮地に陥っていた。
威末はインカムのマイクを口元に寄せ、怒鳴り声にも近い声で発し出す。
「ケンタウロス2-1より全ユニット!こちらは先の納屋にて包囲され、苛烈な攻撃に晒されている!当ユニットだけでは対応不可能、我々も住民も大変危険な状況にある!至急、応援求む!繰り返す、至急――!」
現在本隊は指揮通信車を中心とし、後方からそれぞれ河義等普通科4分隊の三名と、増強戦闘分隊の四名がそれぞれ縦隊で追走し、警戒態勢の元進んでいた。
「――ん?あれは?」
いくらか進み、一軒の家屋の角を曲がった所で、指揮通信車上の矢万が声を零す。
「鬼奈落、停車しろ」
直後に矢万は操縦手の鬼奈落に向けて停車を指示。同時に車上で左手で拳を作り掲げ、後続の各員に停止を要請する合図を送る。
「どうした?」
唐突に停止した指揮通信車、そして出された停止要請に、指揮通信車に追走していた河義は車上の矢万に向けて、尋ねる声を上げる。
「人影かと。前方に複数」
河義の声に、矢万は車上より前方を指し示しながら答え返す。
河義は鉄帽に装着された暗視眼鏡を降ろし、指し示された方向を確認する。暗視眼鏡越しに見えたその先には、矢万の言葉通り複数の人影が確認できた。
「あれは――」
よくよく見れば、それは多数の人影が少数の人影を囲っている光景であった。
多数側は、これまで交戦して来た者達と同様の装備を纏う、傭兵と思しき人間。そしてその傭兵達の隙間からおそらく包囲されているらしい、二名程の傭兵とは異なる出で立ちの、村人と思しき人間が見えた。
さらに双方は互いの得物を交える様子が見え、それに合わせて金属のぶつかる音が、微かに聞こえ届いて来る。
「――襲われているようだ」
河義はそれ等から状況を察し、言葉を零した。
「まずそうな状況です。射撃許可を」
「いや、ここからでは誤射の危険がある。」
矢万は車上で12.7㎜重機関銃の握把を握り、照準を先の一団に定めるが、しかし河義はそれを差し止める。
「接近し、各個に無力化するべきと見止む。――矢万三曹、指揮通信車であの集団内に突入し、双方の分断を試みるんだ。他、各員は散会し前進――いいか?」
そして河義は暗視眼鏡を跳ね上げしまい、同時に各員に向けて命じ、問う。
「了」
「了解」
「よし、かかれ!」
各員からは了解の返答が上がり、そして河義は手を翳して号令を発する。
それに呼応し、指揮通信車は前進を再開。4分隊及び増強戦闘分隊の各員は、指揮通信車の両翼へと散会し展開。行動を開始した。
「ッ……」
「ふぅ……!」
その場ではこの草風の村の村人である男女二名が、複数名の傭兵達と対峙していた。二人はいずれも、先日のファニール達によるナイトウルフ討伐の際に、駆け付けた者達。その手にはそれぞれ得物が握られ、険しい顔で自分達を囲う傭兵達を睨んでいる。
「クソッ……!」
しかし、一方の傭兵達にもまた微かな狼狽の色が走っていた。
両者の間には、多数の人間の亡骸が横たわっている。
内二名程は、先の男女と類似の格好をした村人の物。そしてその他の数名分は、傭兵達の物であった。
「こいつ等、厄介だぞ……!」
一人の傭兵が、焦れた声を上げる。
傭兵達は最初、相手をたかが村人と思い、請けおった今回の仕事を軽く見ていた。しかしいざ蓋を開けてみれば、村人達は武器を手に思いの他抵抗を見せ、傭兵達の手を煩わせたのだ。
依然数の上では勝ってはいるが、ここまで出た犠牲に、傭兵達は濃い動揺と焦りの色を浮かべる。
「はぁ……ッ!」
だが、それと相対する村人男女の顔色は、それにも増して逼迫した色を浮かべていた。
ここまで懸命な抵抗を試みたはいいが、すでに同胞が二人も討たれ地面に亡骸となって沈み、そして彼等二人の体力、精神力も限界に近づいていた。
「おらぁぁぁッ!」
「ッ……!」
そこへ一人の傭兵が、剣を振り上げ攻撃を敢行して来た。狙いは、二人の内の女村人の方。意識の朦朧としていた女村人は、反応が遅れる。
「ネイッ!」
だがそこへ男村人が、その傭兵の進路上へ割り入る。そして彼は傭兵の剣が振り下ろされるよりも早く剣を振るい、その胴を横一文字に薙いだ。
「ぐふッ!?」
襲い掛かって来た傭兵は、割かれた腹と口から血を零して崩れ落ちる。
「――ヅッ!?」
しかし、男村人の彼のわき腹に、激痛が走ったのはそれとほぼ同時であった。見れば、彼の横には別の傭兵の姿があり、その傭兵の突き出した剣の先が、彼のわき腹を突き刺している。一人目の傭兵を屠った直後の隙を、続けざまに襲い来た傭兵に狙われたのだ。
「ネウフッ!」
それを目の当りにした、先にネイと呼ばれた女村人は、ネウフと呼んだその男村人の姿に目を剥く。
「このッ!」
「ごッ!?」
ネイは直後にすかさず自身の剣を、ネウフの肩越しに突き出し、傭兵の首を突いた。首を突かれた傭兵は、悲鳴を零して倒れ、地面の亡骸に加わる。
「ッ……」
わき腹を突かれたネウフはよろめく様に後退し、背後にある家屋に倒れ込むように背を預け、そしてずるりと崩れ落ちて腰を地面に着いた。
「ネウフ!大丈夫!?」
ネイはそのネウフを庇うように前にその前に立ち、傭兵達を睨みながらも背後に声を掛ける。
「ネイ……!逃げろ……ッ!」
そんなネイに、苦し気な声色で言葉を絞り出すネウフ。彼の纏う上衣の腰回りは、脇から噴き出た血でドス黒く染まって行く。
「そんな……そんなの嫌だッ!」
そんな痛ましい姿の彼から発せられた言葉を、ネイは拒絶し剣の柄を握る力を込める。
「クソ、また二人もやられたぞ!」
「どこまで手こずらせるんだ!」
「後はコイツだけだ、早く仕留めるんだ!」
そんな彼女等を囲う傭兵達からは、狼狽の憎々し気な言葉が飛び聞こえて来る。そして傭兵達の殺気に満ちた目と、得物の切っ先がネイに向けて一斉に向けられる。
「く……!」
ネウフを見捨てられずに担架を切った彼女だったが、状況は絶望的であった。
最早これまでかと、奥歯を噛み締めるネイ。
「おい?何だこの音……?」
しかしその時、目の前の傭兵達の中から、何か戸惑うような声が聞こえ来る。そして直後、傭兵達とそしてネイは共に、その耳に異質な音を捉える。
「おい!何だあれ!?」
そして再び傭兵達の中から声が上がった。今度は同時に一人の傭兵が一方向を指し示し、他の傭兵達が一斉にそちらを向く。
「――え?」
ネイもそれを追うように視線を移す。そして彼女は、視界に飛び込んで来た物に目を剥いた。
彼女等の視線の先に見えたのは、夜闇の中で強烈に瞬く二つの光だ。
その光はみるみるうちに接近。そして微かに聞こえていた異音は、明瞭で、そして不可解な唸り声のような物へと変わり、彼女等の聴覚を震わせる。
近づき瞬いた強烈な光は彼女等の視界を奪う。そして彼女等の前に、異音と閃光の発生源――六つの車輪を備えた、正体不明の巨大な物体が姿を現した。
82式指揮通信車は、村人とそれを包囲する傭兵達の元へと加速接近し、そして双方を割るようにその間へと突っ込み踏み入った。
「う、うわぁッ!?」
突然現れ割り入って来た指揮通信車に、狼狽し、包囲を崩して散り退く傭兵達。
「な、何だこれ……がッ!」
そしてそんな傭兵達は、唐突に響き出した破裂音と共に、何かに打ち倒され始めた。
指揮通信車の後方両翼に展開した、4分隊と増強戦闘分隊の各員からの各個射撃が、傭兵達を襲ったのだ。
《敵性分子を左右に分断。左だ、左手の集団を叩いてくれ》
突入した指揮通信車の矢万から、敵性分子である傭兵と民間人の、それぞれの位置関係がインカム越しに伝えられる。
「ダウン」
「排除、一名排除」
それを元に各員は傭兵と村人を分別し、傭兵だけを狙い弾を打ち込んでゆく。
「ぎゃッ!?」
「うがッ!?」
襲い来た多数の銃火に傭兵達は次々と倒れてゆき、程なくしてその場に居た全ての傭兵は、地面へと崩れ動かなくなった。
「――排除、一帯はクリア」
全ての傭兵の無力化を確認した河義は、確認の声を上げる。
「各員各隊、指揮車を中心に展開し警戒」
そして腕を翳し上げて周囲の各員に合図を送る。河義の合図に呼応した各員は、前進して指揮通信車へと合流し、その周辺に展開して警戒態勢を取る。
「………」
そんな傍らで村人の女ネイは、一変した状況を目の前に呆然と立ち尽くしていた。
「大丈夫ですか?」
そこへ彼女に掛かる声。見れば、ネイへと歩み近寄る河義の姿がその先にあった。
「ッ!」
安否を問う言葉と共にネイへと近寄ろうとした河義。しかし一方のネイは、得体の知れぬ不可解な格好の河義を前に、その顔に警戒の色を再び戻し、そして鋭い瞳と手にしていた得物の切っ先を、河義へと向けた。
「っと!――落ち着いて下さい。私達は、あなたに害成す者ではありません」
そんな彼女の行動を前に、河義は小銃を降ろして空いた片手を翳し、そのモーションと合わせて自分が彼女に仇名す存在では無い事を説明する。
「敵じゃ……ない?」
発された河義の言葉に、ネイは依然警戒の目を河義へ向けながら、訝しむ言葉を零す。
「はい、そうです。私達は――」
そんな彼女に対して、続けて自分の身分を名乗ろうとした河義。――しかし、そんな河義の前で、彼女が崩れ倒れたのはその瞬間であった。
「ッ!どうしました!?」
唐突に崩れ落ちた彼女に、河義は驚き、声を上げながら彼女に駆け寄る。そして河義は彼女の腕に、切り裂かれできたであろう傷と、そこから流れ出る少なくない量の血を見止めた。ネイもまた、先の戦いの中で傷を負っていたのだ。
さらに河義は続けて、崩れ退いた彼女の背後にもう一人、彼女が庇っていた村人の男、ネウフの姿を見つける。そして彼の衣服のわき腹に、黒々とした血が滲み出ている様子を見止めた。
「ッー――!これは……誰か衛生キットを!負傷者だ!」
二人の痛ましい姿を目の当りにし、河義は顔を顰め、周囲へ向けて発し上げる。
「大丈夫ですか?しっかりして下さい!」
「……私より、ネウフを……」
「そちらの方ですね?大丈夫です。お二人とも助けます」
河義の呼び掛ける声に対して、首を動かしネウフを示しながら訴えるネイ。そんな彼女に対して、河義は双方の救護にあたる旨を告げる。
その間に、衛生キットを手に各員が駆け付ける。各員は衛生キットをその場に広げ、そして二人の応急手当てが開始される。
「あんた……達は……?」
隊員により止血処置が施される中、ネウフが苦し気な吐息に阻まれながらも、隊員に向けて問いかけの言葉を発する。
「大丈夫、私達は敵ではありません。あなた方はこの集落の方ですね?私達は、あなた方を助けに来ました」
そんな彼に向けて、河義は再び自分達が敵ではない事を説明する。
「村を……俺達を……?」
「はい、ですから安心してください」
河義のその言葉に、か細い声で尋ね返すネウフ。それに対して河義は、努めて両名を安心させるような口調と身振りで発し伝える。
「酷いな――河義三曹、私達の応急処置で間に合う傷ではありません」
「ッ――じき小隊が到着する。それまで持たせるんだ」
応急手当を行う増強戦闘分隊の隊員が、村人の二人の傷の深さを訴える。それに河義は苦い顔を作りながらも、そう返す。先に追走展開を無線発報にて要請した呼応展開小隊には、衛生隊員も付随している。衛生隊員が到着すれば、彼等への適切な処置が可能となる。河義はそれまでの間、なんとしてでも自分達の手で村人二人の命を繋ぐ事を命じる。
「な……や……」
そんな河義等の足元で横たわるネイの口から、何か言葉が零されたのはその時であった。
「どうしました?」
それに気づき、声を掛ける河義。
「この先の……納屋……」
「そうだ……守らないと……」
対するネイは続けそんな言葉を零し、そしてネウフも同様に言葉を零す。
「納屋?」
「……お願い……!」
ネイの発したワードを反復する河義。その河義にネイは続けて、そんな懇願の言葉を絞り上げる。多量の出血のせいか、その意識は朦朧とし始めているようであった。
「河義三曹、無理に喋らせるのはまずいかと」
「あぁ――分かりました、私達で対応します。ですから無理に喋らないで」
増強戦闘分隊の隊員の言葉を受け、河義はネイに了承の言葉を向け、そして促した。
「……この先の納屋、か」
ネイ達を落ち着かせた後に、河義は口許に片手を当てて、彼女達が発した言葉の示す所を推測する。
「そこに何かあるんでしょうね」
そんな河義の零した言葉に、端から別の声が返される。声の主は、傍で警戒に当たっていた野砲科の威末だ。
「まぁ、大体想像は付きますが」
彼は警戒の目線を先へ維持しながらも、そのどこか気だるげな口調で続け呟く。
「聞くに、何か守らなければならない物があるようだ。それを確認しに向かわなければならないが――」
河義は威末に続け零しながら、しかし次にはネイやネウフの姿に目をやり、言葉尻を濁す。二人の処置及び収容にはまだ時間がかかる。いや二人の容態を考えれば、この場から無理に動かす事自体、望ましくないと見えた。
何にせよすぐには行動を再開できない。その状況に難しい表情を浮かべる河義。
「なんなら、先に見て来ましょうか?」
そんな河義の向けて、威末が進言の声を上げた。
「威末士長――頼めるのか?」
「えぇまぁ。FO(前進観測員、班)の仕事の延長ってトコですかね」
河義の尋ねる言葉に、威末は変わらぬ気だるげな口調でそんな言葉を返す。
「門試、一緒に来てくれ。――他は置いて行きますんで、ヨロシクお願いします」
そして威末は自身の指揮する増強戦闘分隊の一組――正確には、増強第2戦闘分隊1組を呼称する――を編成する四名の中から、分隊支援火器射手の役割を臨時に担っている、武器科隊員の門試を同行者としてピックアップ。その他の編成隊員はこの場に残して行く旨を、河義に告げる。
「無理はするな、何かあればすぐに連絡をしてくれ」
「了」
河義の忠告の言葉に了解の返事を返すと、威末等二名はこの場より発し、先の偵察へと向かった。
地下と地上を結ぶ階段を駆け上がり納屋の上階に出た所で、再び威末の耳に数発分の連続的な発砲音が届く。音を追って視線を上げれば、納屋の上の方に、足場が設けられて梯子が掛けられた、中二階のようなスペースが見える。
そしてそこにある窓からMINIMI軽機を外へ突き出し構える、門試の姿が見えた。
それを見止めた威末はすかさず自身も、その足場の真下、解放された納屋の大扉の端へと駆け、カバー態勢に入る。
「数は?」
「およそ一個分隊強!二人程仕留めましたが、残りが散りました!」
威末の問いかけに対して、門試から状況報告の言葉が返される。
威末が遮蔽物にした扉から視線を出して見れば、先には2~3件の点在する家屋が――そしてその陰に逃げ込んでゆく人影が、暗がりの中に微かにだが見えた。
「向こうさんも嗅ぎつけたか――門試、奴さん達を食い止めるんだ」
威末は門試に向けて指示の言葉を上げると、再びインカムを口元に寄せる。
「ジャンカー4ヘッドもしくはハシント、応答を。こちらケンタウロス2-1――」
威末は偵察捜索隊本隊に向けて無線通信を発報。偵察行動の先で納屋と、その地下空間で多数の村人と思しき民間人を多数発見した旨を。続け、敵性集団がこの納屋に迫っている状況と、応援を必要とする旨を発報する。
《了解ケンタウロス2-1。だが、こちらも敵性集団と接敵し、交戦状態にある》
しかし発報、要請に対して返って来たのは、そんなあまり喜ばしくない本隊側の状況を伝える、河義の声。
加えて通信音声の向こうからは、銃声と思しき音が混じり聞こえて来る。
《可能な限り早急に対処し、そちらに向かう。だが、少しの間持ちこたえて欲しい》
「ッー――了解です。ケンタウロス2-1、終ワリ」
威末は苦々しく口を鳴らして返し、通信を終了。
「聞いたな、門試?少しの間、俺達だけで持ちこたえる必要がある」
「チッ、了」
そして威末は門試に向けて告げ、門試からは舌打ちと共に了解の返事が返される。
「相手の動向は?」
「散会し、隠れたまま動きなし――待った、訂正。1時方向の家屋、二階に動きが――」
威末等の籠る納屋の周辺に点在するいくつかの家屋。
その内の、正面およそ50m程先に見える家屋の二階。そこにある窓の奥に動きを見止め、門試は声を上げかける。しかし直後、その声を阻むようにそれは襲い来た。
「ヅッ!」
飛来し門試を襲ったのは、これまで散々遭遇してきた鉱石の針の群れ。襲来した鉱石針は門試の陣取った窓際周辺に音を立てて突き刺さり、いくつかは窓から飛び込み門試の傍を掠める。襲い来たそれ等に、門試は鈍い声を零しながら身を竦めた。
「大丈夫か!?」
「ッ――攻撃されました!正面の家屋から鋼の針!」
威末の問いかける言葉に、報告の声を返す門試。
しかし相手からの攻撃はそれだけに留まらず、今度は数本の矢が放たれ襲い来た。
「ッ――畜生ッ!」
飛来し納屋の壁に突き刺さり、あるいは窓から飛び込み傍を掠めて行った矢の群れに、門試は再び身を隠して悪態を吐く。
「正面家屋に複数配置したか――」
相手からの攻撃が襲い来た中、威末は先の家屋を覗き観察し、敵の配置を推測。
「門試、家屋上階の魔法攻撃の火点を叩け。他は俺がやる」
「了!」
そして威末は門試に指示の言葉を張り上げる。
門試はそれに応じ、MINIMI軽機を構え直し、その照準内に正面家屋を覗いて引き金を絞り、発砲を開始。撃ち出され銃火が、正面家屋の敵の潜むであろう窓へと注がれ出した。
MINIMI軽機の発砲音を上に聞きながら、威末も同時にその身を、遮蔽物の扉より最低限乗り出し小銃を突き出す。そして正面家屋の一階窓を照準に覗き、単発射撃で二度発砲。
家屋へ二発の弾を撃ち込むと同時に、すかさず遮蔽物へ身を引き込む。
――その瞬間、複数の矢が威末の元へ襲来し、彼の身を隠す扉を激しく叩き、そして横を抜けて納屋の床面に突き刺さった。
「――!」
即座に襲い来た敵からの応射に、顔を若干顰める威末。
しかし威末は臆さず、再び遮蔽物より小銃を構え突き出し、もう一度正面の家屋の窓を照準し、素早く二度引き金を引く。
再度撃ち込まれた5.56㎜弾は、窓の向こうのシルエットを打ち倒した。しかし威末はその確認もそこそこに、すかさず遮蔽物へ身を隠す。
そこへまたも矢撃が降り注ぎ、威末を襲った。
敵から来る苛烈な攻撃に肝を冷やしながらも、一呼吸吐き、そして三度攻撃を敢行する。
小銃を突き出し、引き金を引いて身を隠し、敵からの攻撃を凌いでは再び小銃を突き出し発砲。この動作を反復し、威末は正面家屋の、敵が配置し潜むであろう各窓に弾を撃ち込んでゆく。
「――弱まって来たか?」
少しの間、納屋の家屋の間を銃火と、敵からの矢や魔法攻撃が飛び交い行き会ったが、やがて投射された銃火の効果か、敵方家屋側からの攻撃は弱まりを見せる。
敵の攻勢の減退を感じ、希望の念の含まれた推察の声を上げる威末。
――しかし直後、突如背後で大きな異音が響き届いた。
ドン――という何かを大きく叩くようなその音。その発生源は、納屋の反対側の片隅に設けられた、小さな通用扉と思われ、音を聞き振り向いた威末の視線が、その扉に注がれる。
再びの大きな音と共に、その通用扉が破られ開かれたのは、その瞬間であった。
破られた通用扉から踏み込んで来たのは、二名程の傭兵。その手には剣等の得物が握られ、その傭兵達は威末の姿を見止めると同時に、こちらへ向けて駆け迫って来た。
「ッ――ッ!」
対する威末は、侵入者を前に表情を険しくしながらも、すかさず小銃を構え立て続けに発砲。
踏み込み肉薄を試みた傭兵達は、しかし威末の元へたどり着く前に、その身に5.56㎜弾をそれぞれ受けて、もんどり打ちあるいは崩れ落ちた。
一方の威末は、危なげなく侵入して来た傭兵達を排除しながらも、その表情は依然険しい。
「まずいな――裏か」
敵が納屋の反対側からの回り込みを試みて来た事に、威末は苦い声を零す。この場に二名しかいない現状で、複数方向から攻撃を受ける事は大変に都合が悪かった。
「門試、少しの間正面を頼む。俺は裏を塞ぐ!」
「了!」
威末は門試に発し、納屋の反対側へと駆ける。そして破られ開かれた扉へ、小銃を構えた姿勢でドンとぶつかるように取りつく。
瞬間、視界に入る扉の向こうの光景。そこには、ほんの数m先に、いままさに扉から納屋へ駆け込み踏み込まんとする、二名程の傭兵の姿があった。
威末はそんな傭兵達に向けて、構えていた小銃の引き金をすかさず数度引き絞った。
傭兵達は、突然扉の向こうに現れ進路を塞いだ威末の姿に目を剥く様子を見せたが、直後には襲い来た5.56㎜弾の餌食となった。応戦行動を取る事もままならないままその身に弾を受け、立て続けに崩れ倒れてゆく傭兵達。
威末はそんな崩れた傭兵達の向こうに、さらに複数の人影を見る。
視線の先、納屋の裏手の十数m向こうにはまた一軒の家屋があり、その玄関口から駆け出て来る、あるいは家屋を囲う垣根を越えてこちらへ迫る、傭兵達の姿が見えた。
威末はそんな傭兵達に向けて、間髪入れずに牽制で数発発砲。
傭兵達の内の一人が命中弾を受けて倒れ、それを目の当りにした他の傭兵達がわずかだが同様の様子を見せる。
威末は傭兵達のそんな様子を見ながら納屋の中へと引き込む。そしてサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを引き抜き、そして残る傭兵達の元へ向けて投擲。
一拍置いて、扉の向こうで炸裂音が響き渡った。
同時に傭兵の物と思しき叫び声や怒声が聞こえ来たが、威末はその様子や手榴弾の効果をその目で確認する事はせず、開かれていた扉を、脚で乱暴に蹴り閉める。そして近くに置かれていた大きな木箱や家具類を荒い手つきで引きずって倒し、バリケードを築いて納屋の通用扉を塞いだ。
「少しでも時間を稼げればいいが」
突貫工事で築いたバリケードの効果に不安を覚えながらも、それが敵の裏手からの侵入をわずかな時間でも防いでくれる事を願い呟く威末。
「威末士長ッ!」
そのタイミングで、門試からの声が届いた。
その声の意味が応援を要請する物である事を察し、威末は通用扉の前を離れて、元居た納屋の正面へと駆け戻る。
そして再び先の大扉の端に取りつきカバーした瞬間、飛来し飛び込んで来た鉱石柱の群れが、威末のすぐ傍を掠め抜けて行った。
「ッ!――どうなった!?」
威末は掠めた攻撃に顔を顰めながらも、上の足場に居る門試に状況を問う。
「10時方向、11時方向の家屋に新手!正面家屋も再び脅威度増加ッ!」
威末の問う声に、張り上げた声で門試から返答が返る。
その直後、門試の報告内容を証明するかのように、伝え示された周辺各家屋の方向から次々に矢や鉱石の針等が襲い着て、納屋の各所を叩き貫き、そして威末等の傍を抜けて行った。周辺家屋には新たに増援として現れた傭兵達が陣取り、さらには先に一度勢いの減退した正面家屋も攻撃の勢いを吹き返し、それ等各方から来る攻撃に納屋は晒されていた。
「あぁ――野郎!」
襲い来た攻撃に対し門試は、悪態を零しながらもMINIMI軽機を構え発砲する。しかしすぐにそれに対して、いずれかの方向から矢あるいは鉱石針の応射が返され、門試はそれを凌ぐために身を隠すことを余儀なくされる。
先程から門試はこれを繰り返しており、敵に対して、軽機をもっての継続火力投射を行う事ができないでいた。
一方の威末も、遮蔽物より小銃を突き出し、先に見える一つの家屋、その窓に浮かぶシルエットに向けて発砲。一度引き込み、一拍置いてもう一度小銃を構え突き出し、再度同方向の家屋に数発撃ち込む。
そして再び遮蔽物に引き込んだ瞬間、僅差で多方向から矢と鉱石針が飛来し、周囲を叩き、掠めた。
「――敵方の火点が多い」
垣間見えた敵の配置状況から、現状の戦力差は敵傭兵側に利がある事を把握し、難しい声を零す威末。
「これはまずいんじゃないですか、捌ききれる数じゃねぇ!」
上階足場の門試は、敵の攻撃の隙を縫いつつ可能な限りの火力投射を試みながら、威末に向けて懸念の声を張り上げる。
「落ち着け。偵察捜索隊本隊の到着まで、食い止めれば――」
そんな門試に向けて宥める声を向けながら、威末は遮蔽物より視線を出して先の様子を伺おうとする。
「――は?」
だが、その威末の眼は直後、その先に異質な光景を見た。
納屋より正面方向にある家屋の二階。そこに設けられた窓の前に、複数の光源が浮かんでいた。
その正体は、中空に並び浮かんだ五つ程の炎の玉。
威末がそれを視認した瞬間、煌々と燃え揺らめくその五つの火の玉は、その場を飛び出した。そして五つの火の玉はそれぞれ違った放物線状の軌道描き、威末等の籠る納屋へと飛来。
それぞれが直径50㎝程の大きさを持つそれ等の火の玉――いや火炎弾は、納屋の各所に命中。それぞれの個所で飛散し、燃え広がった。
「ヅッ――!」
「熱――!」
幸い威末等に直接の被害は無かった。
しかっし飛来着弾し、燃え広がった炎から伝わり来た熱に、威末等は声を零して顔を顰める。
「――無事か!?」
「食らってませんが――冗談が過ぎるッ!」
威末の安否確認の声に、門試は悪態を付随させた返答を返す。
「さっき見た火の玉攻撃の、強化版といった所か?」
襲い来た火炎弾の攻撃に対して推察を零す威末。そして威末は小銃を突き出し構え、火炎弾の出現点である窓付近を狙い、数発撃ち込む。そしてセオリー通り一度引き込んで応射を凌ぎ、再び小銃を突き出し引き金を数度絞り、弾を撃ち込む。
「仕留めたか――?」
二度の反復攻撃を終えて身を隠し、どこか願うように言葉を零す威末。
「士長、もっぺん来ますッ!」
しかしそこへ門試の張り上げられた声が響く。
そして直後に、再び複数の火炎弾が納屋の各所へ直撃し、燃え上がった。
「ッ――ダメだ。射手?オペレーター?――何かは知らないが大元がまだいる!」
襲い来た攻撃から、火炎弾攻撃の発生源が健在である事が嫌が応にも判明し、威末は小さな舌打ちと共に荒げた声を発する。
「奴等突っ込んでくる!」
足場から再び門試の言葉が聞こえ届く。
威末が遮蔽物の大扉より視線を覗き出して見れば、正面家屋の玄関口より4名程の傭兵が駆け出て来る姿が見えた。どうやら威末等側の攻撃の手が弱まった所を見て、こちらへ踏み込もうとする腹積もりらしい。
「させん!」
それを見止めた威末は、発すると共にサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを抜く。そして現れ迫る傭兵達目がけて投擲。放り投げられた手榴弾は迫る傭兵達の足元に落ち、そして炸裂。傭兵達を真ん中から綺麗に爆風で吹き飛ばし、撒き散らした破片殺傷した。
さらに威末はダメ押しで、炸裂に紛れて正面家屋に数発撃ち込んだ。
「弾切れだ――再装填!」
「了!」
威末の小銃はそこで弾倉が空になり、威末は門試に再装填動作に入る旨を告げる。
身を遮蔽物に隠し、敵からの応射が納屋の大扉や壁を叩く感覚を背中に感じながらも、空弾倉を外し、新たな弾倉を小銃に装填する威末。
「完了――」
再装填動作を終え、小銃に降ろしていた視線を起こす威末。そんな彼の眼に、思いがけない物が飛び込んで来た。
納屋の隅に設けられた、地下空間へと続く階段への出入り口。そこに姿を現した、一人の男の姿があった。
「これは……!一体どうなってるんだ……!?」
男は、先に地下空間で威末等の前に、女子供を庇い立ちはだかった男女の村人の内の片割れ。彼は戦闘により荒れ尽くした納屋の内部や、聞こえ響く戦闘の音に目を剥き驚く様子を見せる。
「ダメよケルケ!怪我してるんだから!」
そんな男に追いつく様に、階段の下から一人の女が現れる。先の立ちはだかった男女の内の、ゼリクスという名で呼ばれていた女の方だ。彼女は制止の声を上げながら、男の衣服を掴み彼を止める動作を見せる。
「あんた方――出て来てはダメだ!危険ですッ!」
その様子を見止めた威末は、警告の声を発し上げながら、二人の元に駆け寄る。
「そんな事は分かっている!見るに今ここは囲われているんだろう!?だからこそ、戦わないでどうするッ!」
しかし威末の警告に対して、女からケルケと呼ばれた彼は、そんな訴えを返して寄越した。そして負傷した様子の痛ましい体で、しかしその手に携えた剣を持ち上げて見せる。
「気持ちは分かりますが――」
彼、ケルケの訴えも理解はできるが、民間人でありましてや負傷者である彼を戦いの場に立たせる事はできない。いや、彼が無傷でありかつ心得がある事を前提にしたとしても、戦術概念の異なる彼等との連携等、とても即興で取れる物ではないだろう。
何にせよ彼等の戦闘参加を認可する道理はない。その上で、威末は説得の言葉を探す。
――鈍く、しかし大きな衝撃音が聞こえ届いたのはその直後であった。
「ッ!」
聞こえ来たそれに視線を起こす威末。そして威末は飛び込んで来た光景に目を剥いた。
事が起こっていたのは、納屋の裏手の大扉。
閂が掛けられ閉ざされていたはずの大扉は、しかし見れば、推定3mはあるかと見られる、巨大で鋭利な鉱石の柱がその中心から突き出し、こじ開けられ閂を破壊されていた。
さらに大扉はゆっくりと開き始め、その隙間から向こうに、今まさに踏み込まんとする傭兵達の姿が見えた。
それを目にした瞬間、威末は即座に小銃を構えて、大扉の隙間の向こうに向けて発砲した。咄嗟に数回引き金を絞り撃ち出された5.56㎜弾は、隙間を潜ってその向こうの傭兵達を殺傷。彼等の悲鳴が聞こえ来る。
「な……!?」
「え……何ッ!?」
その威末の行動に、ケルケとゼリクスは驚きの様子を見せる。
威末はそんな二人をよそに、手榴弾を掴み、大扉の隙間に向けて投擲。扉の向こうへ投げ込まれた手榴弾は、直後に炸裂。向こう側の潜んでいた傭兵達を吹き飛したのであろう、炸裂音と共に悲鳴のような物がまた聞こえ届いた。
「ッ……今のは?」
「一体何を……?」
立て続けに威末の起こした行動と現象に、二人は目を剥き言葉を零す。
「後だ!とにかく隠れているんだッ!」
しかし威末は、切羽詰まった状況に最早説得も説明もじれったく、荒く声を張り上げて二人を階段下へと強引に押し戻した。
「三度目来ますッ!」
そこへまたしても、門試の声が響く。最早その言葉が示すところに疑問は無い。
解放された納屋の正面から先を見れば、複数――正確には今度は七つもの火炎弾が、こちらへ迫る光景が目に飛び込んで来た。
飛来した火炎弾は三度納屋の各所を直撃して焼く。さらに今回は、その一つが納屋の正面から内部へ飛び込み、内部の壁を直撃して燃え広がった。
「ふざけてる――!」
燃え広がった火炎弾から伝わり来る熱に、表情を顰め悪態を零す。
しかし敵の攻撃はなお、容赦を見せる様子が無い。
先の連弾的な火弾攻撃に加え、別方向からの各家屋からも、単発の火炎弾が放たれ飛来し、納屋の各所を焼く。そして今さっき大扉をこじ開けた物と同種の巨大な鉱石の柱が、それに混じり二本、三本と襲来。納屋の壁面を破り破壊し、そして内部に突き刺さる。
「ゲホッ!トンデモ攻撃のバーゲンセールだ、ふざけやがってッ!本気でヤバいッ!」
幾度にも渡る火炎弾攻撃により納屋の各所は燃え上がり、その影響で納屋の内外には煙が立ち込め出している。門試は煙に咳き込みながら、立て続く常識外れな攻撃に悪態を吐き、そして自分等が窮地に陥っている事を訴える。
もはや満足に頭を上げる事もままならず、門試はMINIMI軽機だけを窓から突き出し、ブラインド射撃で傭兵達に牽制射撃を行っていた。
「持ちこたえるんだッ!!」
そんな門試しに張り上げ返しながらも、威末は周囲へ視線を走らせる。
正面からは、今の状況を好機とみたのだろう、各家屋より傭兵が飛び出し、こちらへ迫る姿が見える。
さらに背後裏手の半分こじ開けられた大扉の、その向こうからも敵傭兵の物であろう声や音が零れ聞こえて来る。
納屋は完全に包囲された上で苛烈な攻撃に晒されており、さらには本格的に踏み込まれようとしている。門試の言う通り、威末等は窮地に陥っていた。
威末はインカムのマイクを口元に寄せ、怒鳴り声にも近い声で発し出す。
「ケンタウロス2-1より全ユニット!こちらは先の納屋にて包囲され、苛烈な攻撃に晒されている!当ユニットだけでは対応不可能、我々も住民も大変危険な状況にある!至急、応援求む!繰り返す、至急――!」
地下と地上を結ぶ階段を駆け上がり納屋の上階に出た所で、再び威末の耳に数発分の連続的な発砲音が届く。音を追って視線を上げれば、納屋の上の方に、足場が設けられて梯子が掛けられた、中二階のようなスペースが見える。
そしてそこにある窓からMINIMI軽機を外へ突き出し構える、門試の姿が見えた。
それを見止めた威末はすかさず自身も、その足場の真下、解放された納屋の大扉の端へと駆け、カバー態勢に入る。
「数は?」
「およそ一個分隊強!二人程仕留めましたが、残りが散りました!」
威末の問いかけに対して、門試から状況報告の言葉が返される。
威末が遮蔽物にした扉から視線を出して見れば、先には2~3件の点在する家屋が――そしてその陰に逃げ込んでゆく人影が、暗がりの中に微かにだが見えた。
「向こうさんも嗅ぎつけたか――門試、奴さん達を食い止めるんだ」
威末は門試に向けて指示の言葉を上げると、再びインカムを口元に寄せる。
「ジャンカー4ヘッドもしくはハシント、応答を。こちらケンタウロス2-1――」
威末は偵察捜索隊本隊に向けて無線通信を発報。偵察行動の先で納屋と、その地下空間で多数の村人と思しき民間人を多数発見した旨を。続け、敵性集団がこの納屋に迫っている状況と、応援を必要とする旨を発報する。
《了解ケンタウロス2-1。だが、こちらも敵性集団と接敵し、交戦状態にある》
しかし発報、要請に対して返って来たのは、そんなあまり喜ばしくない本隊側の状況を伝える、河義の声。
加えて通信音声の向こうからは、銃声と思しき音が混じり聞こえて来る。
《可能な限り早急に対処し、そちらに向かう。だが、少しの間持ちこたえて欲しい》
「ッー――了解です。ケンタウロス2-1、終ワリ」
威末は苦々しく口を鳴らして返し、通信を終了。
「聞いたな、門試?少しの間、俺達だけで持ちこたえる必要がある」
「チッ、了」
そして威末は門試に向けて告げ、門試からは舌打ちと共に了解の返事が返される。
「相手の動向は?」
「散会し、隠れたまま動きなし――待った、訂正。1時方向の家屋、二階に動きが――」
威末等の籠る納屋の周辺に点在するいくつかの家屋。
その内の、正面およそ50m程先に見える家屋の二階。そこにある窓の奥に動きを見止め、門試は声を上げかける。しかし直後、その声を阻むようにそれは襲い来た。
「ヅッ!」
飛来し門試を襲ったのは、これまで散々遭遇してきた鉱石の針の群れ。襲来した鉱石針は門試の陣取った窓際周辺に音を立てて突き刺さり、いくつかは窓から飛び込み門試の傍を掠める。襲い来たそれ等に、門試は鈍い声を零しながら身を竦めた。
「大丈夫か!?」
「ッ――攻撃されました!正面の家屋から鋼の針!」
威末の問いかける言葉に、報告の声を返す門試。
しかし相手からの攻撃はそれだけに留まらず、今度は数本の矢が放たれ襲い来た。
「ッ――畜生ッ!」
飛来し納屋の壁に突き刺さり、あるいは窓から飛び込み傍を掠めて行った矢の群れに、門試は再び身を隠して悪態を吐く。
「正面家屋に複数配置したか――」
相手からの攻撃が襲い来た中、威末は先の家屋を覗き観察し、敵の配置を推測。
「門試、家屋上階の魔法攻撃の火点を叩け。他は俺がやる」
「了!」
そして威末は門試に指示の言葉を張り上げる。
門試はそれに応じ、MINIMI軽機を構え直し、その照準内に正面家屋を覗いて引き金を絞り、発砲を開始。撃ち出され銃火が、正面家屋の敵の潜むであろう窓へと注がれ出した。
MINIMI軽機の発砲音を上に聞きながら、威末も同時にその身を、遮蔽物の扉より最低限乗り出し小銃を突き出す。そして正面家屋の一階窓を照準に覗き、単発射撃で二度発砲。
家屋へ二発の弾を撃ち込むと同時に、すかさず遮蔽物へ身を引き込む。
――その瞬間、複数の矢が威末の元へ襲来し、彼の身を隠す扉を激しく叩き、そして横を抜けて納屋の床面に突き刺さった。
「――!」
即座に襲い来た敵からの応射に、顔を若干顰める威末。
しかし威末は臆さず、再び遮蔽物より小銃を構え突き出し、もう一度正面の家屋の窓を照準し、素早く二度引き金を引く。
再度撃ち込まれた5.56㎜弾は、窓の向こうのシルエットを打ち倒した。しかし威末はその確認もそこそこに、すかさず遮蔽物へ身を隠す。
そこへまたも矢撃が降り注ぎ、威末を襲った。
敵から来る苛烈な攻撃に肝を冷やしながらも、一呼吸吐き、そして三度攻撃を敢行する。
小銃を突き出し、引き金を引いて身を隠し、敵からの攻撃を凌いでは再び小銃を突き出し発砲。この動作を反復し、威末は正面家屋の、敵が配置し潜むであろう各窓に弾を撃ち込んでゆく。
「――弱まって来たか?」
少しの間、納屋の家屋の間を銃火と、敵からの矢や魔法攻撃が飛び交い行き会ったが、やがて投射された銃火の効果か、敵方家屋側からの攻撃は弱まりを見せる。
敵の攻勢の減退を感じ、希望の念の含まれた推察の声を上げる威末。
――しかし直後、突如背後で大きな異音が響き届いた。
ドン――という何かを大きく叩くようなその音。その発生源は、納屋の反対側の片隅に設けられた、小さな通用扉と思われ、音を聞き振り向いた威末の視線が、その扉に注がれる。
再びの大きな音と共に、その通用扉が破られ開かれたのは、その瞬間であった。
破られた通用扉から踏み込んで来たのは、二名程の傭兵。その手には剣等の得物が握られ、その傭兵達は威末の姿を見止めると同時に、こちらへ向けて駆け迫って来た。
「ッ――ッ!」
対する威末は、侵入者を前に表情を険しくしながらも、すかさず小銃を構え立て続けに発砲。
踏み込み肉薄を試みた傭兵達は、しかし威末の元へたどり着く前に、その身に5.56㎜弾をそれぞれ受けて、もんどり打ちあるいは崩れ落ちた。
一方の威末は、危なげなく侵入して来た傭兵達を排除しながらも、その表情は依然険しい。
「まずいな――裏か」
敵が納屋の反対側からの回り込みを試みて来た事に、威末は苦い声を零す。この場に二名しかいない現状で、複数方向から攻撃を受ける事は大変に都合が悪かった。
「門試、少しの間正面を頼む。俺は裏を塞ぐ!」
「了!」
威末は門試に発し、納屋の反対側へと駆ける。そして破られ開かれた扉へ、小銃を構えた姿勢でドンとぶつかるように取りつく。
瞬間、視界に入る扉の向こうの光景。そこには、ほんの数m先に、いままさに扉から納屋へ駆け込み踏み込まんとする、二名程の傭兵の姿があった。
威末はそんな傭兵達に向けて、構えていた小銃の引き金をすかさず数度引き絞った。
傭兵達は、突然扉の向こうに現れ進路を塞いだ威末の姿に目を剥く様子を見せたが、直後には襲い来た5.56㎜弾の餌食となった。応戦行動を取る事もままならないままその身に弾を受け、立て続けに崩れ倒れてゆく傭兵達。
威末はそんな崩れた傭兵達の向こうに、さらに複数の人影を見る。
視線の先、納屋の裏手の十数m向こうにはまた一軒の家屋があり、その玄関口から駆け出て来る、あるいは家屋を囲う垣根を越えてこちらへ迫る、傭兵達の姿が見えた。
威末はそんな傭兵達に向けて、間髪入れずに牽制で数発発砲。
傭兵達の内の一人が命中弾を受けて倒れ、それを目の当りにした他の傭兵達がわずかだが同様の様子を見せる。
威末は傭兵達のそんな様子を見ながら納屋の中へと引き込む。そしてサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを引き抜き、そして残る傭兵達の元へ向けて投擲。
一拍置いて、扉の向こうで炸裂音が響き渡った。
同時に傭兵の物と思しき叫び声や怒声が聞こえ来たが、威末はその様子や手榴弾の効果をその目で確認する事はせず、開かれていた扉を、脚で乱暴に蹴り閉める。そして近くに置かれていた大きな木箱や家具類を荒い手つきで引きずって倒し、バリケードを築いて納屋の通用扉を塞いだ。
「少しでも時間を稼げればいいが」
突貫工事で築いたバリケードの効果に不安を覚えながらも、それが敵の裏手からの侵入をわずかな時間でも防いでくれる事を願い呟く威末。
「威末士長ッ!」
そのタイミングで、門試からの声が届いた。
その声の意味が応援を要請する物である事を察し、威末は通用扉の前を離れて、元居た納屋の正面へと駆け戻る。
そして再び先の大扉の端に取りつきカバーした瞬間、飛来し飛び込んで来た鉱石柱の群れが、威末のすぐ傍を掠め抜けて行った。
「ッ!――どうなった!?」
威末は掠めた攻撃に顔を顰めながらも、上の足場に居る門試に状況を問う。
「10時方向、11時方向の家屋に新手!正面家屋も再び脅威度増加ッ!」
威末の問う声に、張り上げた声で門試から返答が返る。
その直後、門試の報告内容を証明するかのように、伝え示された周辺各家屋の方向から次々に矢や鉱石の針等が襲い着て、納屋の各所を叩き貫き、そして威末等の傍を抜けて行った。周辺家屋には新たに増援として現れた傭兵達が陣取り、さらには先に一度勢いの減退した正面家屋も攻撃の勢いを吹き返し、それ等各方から来る攻撃に納屋は晒されていた。
「あぁ――野郎!」
襲い来た攻撃に対し門試は、悪態を零しながらもMINIMI軽機を構え発砲する。しかしすぐにそれに対して、いずれかの方向から矢あるいは鉱石針の応射が返され、門試はそれを凌ぐために身を隠すことを余儀なくされる。
先程から門試はこれを繰り返しており、敵に対して、軽機をもっての継続火力投射を行う事ができないでいた。
一方の威末も、遮蔽物より小銃を突き出し、先に見える一つの家屋、その窓に浮かぶシルエットに向けて発砲。一度引き込み、一拍置いてもう一度小銃を構え突き出し、再度同方向の家屋に数発撃ち込む。
そして再び遮蔽物に引き込んだ瞬間、僅差で多方向から矢と鉱石針が飛来し、周囲を叩き、掠めた。
「――敵方の火点が多い」
垣間見えた敵の配置状況から、現状の戦力差は敵傭兵側に利がある事を把握し、難しい声を零す威末。
「これはまずいんじゃないですか、捌ききれる数じゃねぇ!」
上階足場の門試は、敵の攻撃の隙を縫いつつ可能な限りの火力投射を試みながら、威末に向けて懸念の声を張り上げる。
「落ち着け。偵察捜索隊本隊の到着まで、食い止めれば――」
そんな門試に向けて宥める声を向けながら、威末は遮蔽物より視線を出して先の様子を伺おうとする。
「――は?」
だが、その威末の眼は直後、その先に異質な光景を見た。
納屋より正面方向にある家屋の二階。そこに設けられた窓の前に、複数の光源が浮かんでいた。
その正体は、中空に並び浮かんだ五つ程の炎の玉。
威末がそれを視認した瞬間、煌々と燃え揺らめくその五つの火の玉は、その場を飛び出した。そして五つの火の玉はそれぞれ違った放物線状の軌道描き、威末等の籠る納屋へと飛来。
それぞれが直径50㎝程の大きさを持つそれ等の火の玉――いや火炎弾は、納屋の各所に命中。それぞれの個所で飛散し、燃え広がった。
「ヅッ――!」
「熱――!」
幸い威末等に直接の被害は無かった。
しかっし飛来着弾し、燃え広がった炎から伝わり来た熱に、威末等は声を零して顔を顰める。
「――無事か!?」
「食らってませんが――冗談が過ぎるッ!」
威末の安否確認の声に、門試は悪態を付随させた返答を返す。
「さっき見た火の玉攻撃の、強化版といった所か?」
襲い来た火炎弾の攻撃に対して推察を零す威末。そして威末は小銃を突き出し構え、火炎弾の出現点である窓付近を狙い、数発撃ち込む。そしてセオリー通り一度引き込んで応射を凌ぎ、再び小銃を突き出し引き金を数度絞り、弾を撃ち込む。
「仕留めたか――?」
二度の反復攻撃を終えて身を隠し、どこか願うように言葉を零す威末。
「士長、もっぺん来ますッ!」
しかしそこへ門試の張り上げられた声が響く。
そして直後に、再び複数の火炎弾が納屋の各所へ直撃し、燃え上がった。
「ッ――ダメだ。射手?オペレーター?――何かは知らないが大元がまだいる!」
襲い来た攻撃から、火炎弾攻撃の発生源が健在である事が嫌が応にも判明し、威末は小さな舌打ちと共に荒げた声を発する。
「奴等突っ込んでくる!」
足場から再び門試の言葉が聞こえ届く。
威末が遮蔽物の大扉より視線を覗き出して見れば、正面家屋の玄関口より4名程の傭兵が駆け出て来る姿が見えた。どうやら威末等側の攻撃の手が弱まった所を見て、こちらへ踏み込もうとする腹積もりらしい。
「させん!」
それを見止めた威末は、発すると共にサスペンダーに下がった手榴弾を掴みピンを抜く。そして現れ迫る傭兵達目がけて投擲。放り投げられた手榴弾は迫る傭兵達の足元に落ち、そして炸裂。傭兵達を真ん中から綺麗に爆風で吹き飛ばし、撒き散らした破片殺傷した。
さらに威末はダメ押しで、炸裂に紛れて正面家屋に数発撃ち込んだ。
「弾切れだ――再装填!」
「了!」
威末の小銃はそこで弾倉が空になり、威末は門試に再装填動作に入る旨を告げる。
身を遮蔽物に隠し、敵からの応射が納屋の大扉や壁を叩く感覚を背中に感じながらも、空弾倉を外し、新たな弾倉を小銃に装填する威末。
「完了――」
再装填動作を終え、小銃に降ろしていた視線を起こす威末。そんな彼の眼に、思いがけない物が飛び込んで来た。
納屋の隅に設けられた、地下空間へと続く階段への出入り口。そこに姿を現した、一人の男の姿があった。
「これは……!一体どうなってるんだ……!?」
男は、先に地下空間で威末等の前に、女子供を庇い立ちはだかった男女の村人の内の片割れ。彼は戦闘により荒れ尽くした納屋の内部や、聞こえ響く戦闘の音に目を剥き驚く様子を見せる。
「ダメよケルケ!怪我してるんだから!」
そんな男に追いつく様に、階段の下から一人の女が現れる。先の立ちはだかった男女の内の、ゼリクスという名で呼ばれていた女の方だ。彼女は制止の声を上げながら、男の衣服を掴み彼を止める動作を見せる。
「あんた方――出て来てはダメだ!危険ですッ!」
その様子を見止めた威末は、警告の声を発し上げながら、二人の元に駆け寄る。
「そんな事は分かっている!見るに今ここは囲われているんだろう!?だからこそ、戦わないでどうするッ!」
しかし威末の警告に対して、女からケルケと呼ばれた彼は、そんな訴えを返して寄越した。そして負傷した様子の痛ましい体で、しかしその手に携えた剣を持ち上げて見せる。
「気持ちは分かりますが――」
彼、ケルケの訴えも理解はできるが、民間人でありましてや負傷者である彼を戦いの場に立たせる事はできない。いや、彼が無傷でありかつ心得がある事を前提にしたとしても、戦術概念の異なる彼等との連携等、とても即興で取れる物ではないだろう。
何にせよ彼等の戦闘参加を認可する道理はない。その上で、威末は説得の言葉を探す。
――鈍く、しかし大きな衝撃音が聞こえ届いたのはその直後であった。
「ッ!」
聞こえ来たそれに視線を起こす威末。そして威末は飛び込んで来た光景に目を剥いた。
事が起こっていたのは、納屋の裏手の大扉。
閂が掛けられ閉ざされていたはずの大扉は、しかし見れば、推定3mはあるかと見られる、巨大で鋭利な鉱石の柱がその中心から突き出し、こじ開けられ閂を破壊されていた。
さらに大扉はゆっくりと開き始め、その隙間から向こうに、今まさに踏み込まんとする傭兵達の姿が見えた。
それを目にした瞬間、威末は即座に小銃を構えて、大扉の隙間の向こうに向けて発砲した。咄嗟に数回引き金を絞り撃ち出された5.56㎜弾は、隙間を潜ってその向こうの傭兵達を殺傷。彼等の悲鳴が聞こえ来る。
「な……!?」
「え……何ッ!?」
その威末の行動に、ケルケとゼリクスは驚きの様子を見せる。
威末はそんな二人をよそに、手榴弾を掴み、大扉の隙間に向けて投擲。扉の向こうへ投げ込まれた手榴弾は、直後に炸裂。向こう側の潜んでいた傭兵達を吹き飛したのであろう、炸裂音と共に悲鳴のような物がまた聞こえ届いた。
「ッ……今のは?」
「一体何を……?」
立て続けに威末の起こした行動と現象に、二人は目を剥き言葉を零す。
「後だ!とにかく隠れているんだッ!」
しかし威末は、切羽詰まった状況に最早説得も説明もじれったく、荒く声を張り上げて二人を階段下へと強引に押し戻した。
「三度目来ますッ!」
そこへまたしても、門試の声が響く。最早その言葉が示すところに疑問は無い。
解放された納屋の正面から先を見れば、複数――正確には今度は七つもの火炎弾が、こちらへ迫る光景が目に飛び込んで来た。
飛来した火炎弾は三度納屋の各所を直撃して焼く。さらに今回は、その一つが納屋の正面から内部へ飛び込み、内部の壁を直撃して燃え広がった。
「ふざけてる――!」
燃え広がった火炎弾から伝わり来る熱に、表情を顰め悪態を零す。
しかし敵の攻撃はなお、容赦を見せる様子が無い。
先の連弾的な火弾攻撃に加え、別方向からの各家屋からも、単発の火炎弾が放たれ飛来し、納屋の各所を焼く。そして今さっき大扉をこじ開けた物と同種の巨大な鉱石の柱が、それに混じり二本、三本と襲来。納屋の壁面を破り破壊し、そして内部に突き刺さる。
「ゲホッ!トンデモ攻撃のバーゲンセールだ、ふざけやがってッ!本気でヤバいッ!」
幾度にも渡る火炎弾攻撃により納屋の各所は燃え上がり、その影響で納屋の内外には煙が立ち込め出している。門試は煙に咳き込みながら、立て続く常識外れな攻撃に悪態を吐き、そして自分等が窮地に陥っている事を訴える。
もはや満足に頭を上げる事もままならず、門試はMINIMI軽機だけを窓から突き出し、ブラインド射撃で傭兵達に牽制射撃を行っていた。
「持ちこたえるんだッ!!」
そんな門試しに張り上げ返しながらも、威末は周囲へ視線を走らせる。
正面からは、今の状況を好機とみたのだろう、各家屋より傭兵が飛び出し、こちらへ迫る姿が見える。
さらに背後裏手の半分こじ開けられた大扉の、その向こうからも敵傭兵の物であろう声や音が零れ聞こえて来る。
納屋は完全に包囲された上で苛烈な攻撃に晒されており、さらには本格的に踏み込まれようとしている。門試の言う通り、威末等は窮地に陥っていた。
威末はインカムのマイクを口元に寄せ、怒鳴り声にも近い声で発し出す。
「ケンタウロス2-1より全ユニット!こちらは先の納屋にて包囲され、苛烈な攻撃に晒されている!当ユニットだけでは対応不可能、我々も住民も大変危険な状況にある!至急、応援求む!繰り返す、至急――!」
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