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Extra Ausgabe
伯爵令嬢、奮闘中《3》恋の魔法
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「アンナ?いるか?」
クリム様!?
控え目に扉がノックされ、部屋で妄想中だった私はベッドの上で飛び上がった。
クリム様のお仕事は不規則で、1日や2日、顔を合わせないこともある。
今日も地方の視察とかで遅くなるって聞いていたけど?
「は、はい!おりますよ、おりますとも!!どうぞ!」
ベッドからソファーへ、一瞬で移動し、軽く身なりを整える。
私の上擦った声に、クスッと笑いながら、クリム様は部屋に入ってきた。
ああ!美しい!!
ただ扉を開けて入って来ただけなのに、何故こんなに美しいのか!?
何をしても美しいとは、さすがクリム様だ。
……はっ!もしかして、これがアレかな?
母上のよく言う『恋の魔法』というやつか!?
すごいな、恋!!
「ど、どうされました?今日も遅いと聞きましたが?」
「視察を早く終わらせて、一つ早い列車に乗ったんだ。久しぶりにアンナの顔を見たいと思って」
クリム様は少し照れて言い、私の横に座った。
お忙しい身でありながら、こんな私のつまらない顔を見るために、早く仕事を終わらせた……だと……?
「クリム様。私なんかの顔を見ても、楽しくもなんともありませんよ?」
そう言って首を傾げる私に、クリム様はハハッと笑う。
「そんなことない。アンナの顔を見ると元気が出るんだ。いつも全力で頑張ってる君を見てるとね」
「元気が……出ます??」
「ああ」
「なら……良かったです!!私、目一杯クリム様を元気にしますのでっ!さぁ!どうぞ御覧下さい!」
シュッと素早く敬礼をする私を見て、クリム様はそれはそれは素敵に笑った。
どうしよう、これからこの方が旦那様になるということに私は耐えられるのだろうか!!
この煌めく笑顔を四六時中見ていられるのか!?
……これ、絶対心臓持たないよな…。
尚も激しくなっていく鼓動はとどまることを知らず、それを抑える為に私は大きく深呼吸をした。
するとクリム様が、何やら自分の膝をポンポンと叩いている。
はて?
埃でも付いてたかな?
と、膝を覗き込んでみたが特に何もついてはいなかった。
「アンナ、ほら、頭をここに」
クリム様はまた膝を叩く。
『アンナ、ほら、頭をここに』?
アンナは私だよな。
ほら、頭をここに、とは……頭を膝に乗せろと……ふぁっ!?
「私の頭を!クリム様の麗しいお膝にと仰る!?」
「膝は麗しくはないが……まぁ、そうだな」
「なっ、なぜ!?」
「何故って……そうしたいから?かな?」
クリム様の青い目が、まっすぐ私を見つめる。
「私はな、出来るだけ君のしたいことや人生を邪魔したくはない。だが、この家に入るということは、他のどこの家よりも厳しい掟が付いて回る。済まないと思っている。そして、感謝している……」
「感謝なんて……そんな……」
私の言葉は遮られた。
その大きな手に頬を捉えられ、頭はゆっくりと傾いていく。
恋の魔法にかかった私の頭は、簡単にクリム様の膝に落ち着いた。
「だからかな、頑張っている君を少しでもリラックスさせてあげたくて……こんなことしか思いつかなかったけどな」
頭上から聞こえる透き通った声。
優しく髪をとく、長い指。
私、クリム様に膝枕されている!?
……夢かな?
そういえば、何だか眠くなってきた。
催眠術にでもかかったようだ。
何でも出来るクリム様だから、催眠術程度習得していても驚きはしないけど……。
ふわぁ……あー、気持ちいい……。
「疲れたろう?少しお休み。いつも、頑張ってくれてありがとう。アンナ」
「いえ……頑張って……なんか……な……」
意識が薄らいで……とうとう、私は術中に落ちた。
「好きだよ、アンナ」
最後にクリム様が何かを言った。
だが、当然私には全く聞こえていなかったのである。
クリム様!?
控え目に扉がノックされ、部屋で妄想中だった私はベッドの上で飛び上がった。
クリム様のお仕事は不規則で、1日や2日、顔を合わせないこともある。
今日も地方の視察とかで遅くなるって聞いていたけど?
「は、はい!おりますよ、おりますとも!!どうぞ!」
ベッドからソファーへ、一瞬で移動し、軽く身なりを整える。
私の上擦った声に、クスッと笑いながら、クリム様は部屋に入ってきた。
ああ!美しい!!
ただ扉を開けて入って来ただけなのに、何故こんなに美しいのか!?
何をしても美しいとは、さすがクリム様だ。
……はっ!もしかして、これがアレかな?
母上のよく言う『恋の魔法』というやつか!?
すごいな、恋!!
「ど、どうされました?今日も遅いと聞きましたが?」
「視察を早く終わらせて、一つ早い列車に乗ったんだ。久しぶりにアンナの顔を見たいと思って」
クリム様は少し照れて言い、私の横に座った。
お忙しい身でありながら、こんな私のつまらない顔を見るために、早く仕事を終わらせた……だと……?
「クリム様。私なんかの顔を見ても、楽しくもなんともありませんよ?」
そう言って首を傾げる私に、クリム様はハハッと笑う。
「そんなことない。アンナの顔を見ると元気が出るんだ。いつも全力で頑張ってる君を見てるとね」
「元気が……出ます??」
「ああ」
「なら……良かったです!!私、目一杯クリム様を元気にしますのでっ!さぁ!どうぞ御覧下さい!」
シュッと素早く敬礼をする私を見て、クリム様はそれはそれは素敵に笑った。
どうしよう、これからこの方が旦那様になるということに私は耐えられるのだろうか!!
この煌めく笑顔を四六時中見ていられるのか!?
……これ、絶対心臓持たないよな…。
尚も激しくなっていく鼓動はとどまることを知らず、それを抑える為に私は大きく深呼吸をした。
するとクリム様が、何やら自分の膝をポンポンと叩いている。
はて?
埃でも付いてたかな?
と、膝を覗き込んでみたが特に何もついてはいなかった。
「アンナ、ほら、頭をここに」
クリム様はまた膝を叩く。
『アンナ、ほら、頭をここに』?
アンナは私だよな。
ほら、頭をここに、とは……頭を膝に乗せろと……ふぁっ!?
「私の頭を!クリム様の麗しいお膝にと仰る!?」
「膝は麗しくはないが……まぁ、そうだな」
「なっ、なぜ!?」
「何故って……そうしたいから?かな?」
クリム様の青い目が、まっすぐ私を見つめる。
「私はな、出来るだけ君のしたいことや人生を邪魔したくはない。だが、この家に入るということは、他のどこの家よりも厳しい掟が付いて回る。済まないと思っている。そして、感謝している……」
「感謝なんて……そんな……」
私の言葉は遮られた。
その大きな手に頬を捉えられ、頭はゆっくりと傾いていく。
恋の魔法にかかった私の頭は、簡単にクリム様の膝に落ち着いた。
「だからかな、頑張っている君を少しでもリラックスさせてあげたくて……こんなことしか思いつかなかったけどな」
頭上から聞こえる透き通った声。
優しく髪をとく、長い指。
私、クリム様に膝枕されている!?
……夢かな?
そういえば、何だか眠くなってきた。
催眠術にでもかかったようだ。
何でも出来るクリム様だから、催眠術程度習得していても驚きはしないけど……。
ふわぁ……あー、気持ちいい……。
「疲れたろう?少しお休み。いつも、頑張ってくれてありがとう。アンナ」
「いえ……頑張って……なんか……な……」
意識が薄らいで……とうとう、私は術中に落ちた。
「好きだよ、アンナ」
最後にクリム様が何かを言った。
だが、当然私には全く聞こえていなかったのである。
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