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ムーンバレー地方
18.衛生師、ヒューゴ
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「お前、あの軟膏持ってるか?」
「あっ、はい。持っています」
ヒューゴはロビーに答えながら、可愛らしく私に微笑んだ。
「じゃあ、シルベーヌ様に使ってもらえよ。効くんだろ?」
ロビーの言葉に、ヒューゴは眉間にシワを寄せた。
そして、可愛らしい少年ヒューゴは、次の瞬間、私の度肝を抜いたのだ。
「軟膏が何にでも効くと思わないで下さい!人それぞれ、症状は違うのですよ!しかも、シルベーヌ様のような繊細な肌をお持ちの方に、男連中が使う大雑把な配合の物を使わせるなんて!」
と、恐ろしく怖い顔をして捲し立てる。
冥府の悪鬼も顔負けの様子に、私の口もだらしなく開いた。
「わ、悪かったよ!悪かったって!そうだよな、人それぞれだよな、うん。………じゃあさ、シルベーヌ様用の軟膏を作れるか?」
ロビーも必死で宥めている。
それほどの怖さである………。
「…………………」
ヒューゴは黙り込み、私の方を向いた。
そして、その細い指を遠慮がちに頬に沿わせる。
上に横に。
湿疹の部分には極力触れないようにして、注意深く眺めている。
「出来ますよ。この湿疹は、光の刺激と、栄養の無さ。それが主な原因です。冥府から突然、燦々と輝く光の下ではそうなりますね。ですから……光を遮断する軟膏を作りましょう」
「ひ、光を遮断??」
私の声は裏返った。
慌てて口を押さえたが、プッと笑ったのはディランだけで、あとの皆は真剣そのものだ。
全員から恨みがましい目を向けられたディランは、ばつが悪そうに顔を背けた。
「そうです。太陽の光には様々な恩恵もありますが、余計なものも過分に含まれています。それは老化を促進させるものだったり、体に悪影響を及ぼしたりもします」
「へぇ。そうなんだ?」
「はい。ですから、それをなるべく遮断して、いい成分だけを取り入れる、軟膏にはそういった効果も期待出来ます」
何だか、すごい。
こんな年若く可愛らしい少年が、ここまでの知識を!?
「ヒューゴって賢いのね?ひょっとしてお医者さん?」
「ええと、そこまでのものではありませんが。一応騎士団の衛生師を務めてます!」
やっぱり。
あの剣幕は、そういった立場の人のものよね。
いざというとき、あんな風に叱り飛ばさないと大人しく治療させてもらえないもの。
「ふふ。ヒューゴのような衛生師がいれば、病魔も立ち去るでしょうね!」
その言葉に、ヒューゴは大きく目を開き、年相応の顔をして破顔した。
「光栄です!!シルベーヌ様のために、僕、取って置きの軟膏を作ろうと思います!!」
「まぁ!ほんと?」
「はいっ!この蜜蝋で……」
ヒューゴが懐から取り出したのは、黄色く四角い塊だった。
興味津々で覗く私の顔を楽しそうに見ながら、ヒューゴは説明を続ける。
「あっ、はい。持っています」
ヒューゴはロビーに答えながら、可愛らしく私に微笑んだ。
「じゃあ、シルベーヌ様に使ってもらえよ。効くんだろ?」
ロビーの言葉に、ヒューゴは眉間にシワを寄せた。
そして、可愛らしい少年ヒューゴは、次の瞬間、私の度肝を抜いたのだ。
「軟膏が何にでも効くと思わないで下さい!人それぞれ、症状は違うのですよ!しかも、シルベーヌ様のような繊細な肌をお持ちの方に、男連中が使う大雑把な配合の物を使わせるなんて!」
と、恐ろしく怖い顔をして捲し立てる。
冥府の悪鬼も顔負けの様子に、私の口もだらしなく開いた。
「わ、悪かったよ!悪かったって!そうだよな、人それぞれだよな、うん。………じゃあさ、シルベーヌ様用の軟膏を作れるか?」
ロビーも必死で宥めている。
それほどの怖さである………。
「…………………」
ヒューゴは黙り込み、私の方を向いた。
そして、その細い指を遠慮がちに頬に沿わせる。
上に横に。
湿疹の部分には極力触れないようにして、注意深く眺めている。
「出来ますよ。この湿疹は、光の刺激と、栄養の無さ。それが主な原因です。冥府から突然、燦々と輝く光の下ではそうなりますね。ですから……光を遮断する軟膏を作りましょう」
「ひ、光を遮断??」
私の声は裏返った。
慌てて口を押さえたが、プッと笑ったのはディランだけで、あとの皆は真剣そのものだ。
全員から恨みがましい目を向けられたディランは、ばつが悪そうに顔を背けた。
「そうです。太陽の光には様々な恩恵もありますが、余計なものも過分に含まれています。それは老化を促進させるものだったり、体に悪影響を及ぼしたりもします」
「へぇ。そうなんだ?」
「はい。ですから、それをなるべく遮断して、いい成分だけを取り入れる、軟膏にはそういった効果も期待出来ます」
何だか、すごい。
こんな年若く可愛らしい少年が、ここまでの知識を!?
「ヒューゴって賢いのね?ひょっとしてお医者さん?」
「ええと、そこまでのものではありませんが。一応騎士団の衛生師を務めてます!」
やっぱり。
あの剣幕は、そういった立場の人のものよね。
いざというとき、あんな風に叱り飛ばさないと大人しく治療させてもらえないもの。
「ふふ。ヒューゴのような衛生師がいれば、病魔も立ち去るでしょうね!」
その言葉に、ヒューゴは大きく目を開き、年相応の顔をして破顔した。
「光栄です!!シルベーヌ様のために、僕、取って置きの軟膏を作ろうと思います!!」
「まぁ!ほんと?」
「はいっ!この蜜蝋で……」
ヒューゴが懐から取り出したのは、黄色く四角い塊だった。
興味津々で覗く私の顔を楽しそうに見ながら、ヒューゴは説明を続ける。
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