116 / 169
王都
116.脱出
しおりを挟む
「アリエル、あなたの薬品で錠を焼き切ってくれない?」
私の問いに、アリエルは首を振った。
「えっと、すいません!薬品が足りません。ここの全ての錠を溶かすとなると、大量の薬品が必要ですので……」
それもそうだわ。
アリエルの持っていたのはほんの少量。
自分の牢の錠だけで限界だったはず。
困ってうーんと唸った私に、アリエルが言った。
「でも、ここに鍵がありますからー」
…………………………。
何故それを早く言わないのかなぁ?
ここまでのくだり、全部無駄になりましたよね?
私はアリエルに微笑んだ。
怒ったりしないわ!最短で物事が上手く進んでいるんだもの。
……ただ、釈然とはしないわよ?
「持ってたのね?」
「はいっ!私兵が昏倒している隙に漁りました!!」
アリエルは、鍵の束を取り出すと、褒めて欲しそうな目でこちらを見た。
「……さ、さすがね!頼りになるわ!さぁ、時間がないわよ!みんなを助けましょう!」
「はいっ!」
アリエルと私は手前のフロールから順に檻から解放した。
鍵束は1つしかない上に、たくさんの中から錠に合ったものを探さなくてはならず、思いの外時間がかかる。
しかも、足に掛けられた鎖の鍵も束の中に紛れ込んでおり、更に時間が掛かった。
それでも、根気よく探しだし、一人また一人と助ける。
人質の女性達は最初のうちは、疲れきった顔をしていた。
でも、檻から出て、互いの無事を確かめ合うと希望が見えたのか、私達を手伝って動いてくれるようになっていた。
そして漸く、箱庭にいた20人ほどの人質を檻から解放することに成功した。
でも、問題はここから、よね?
「アリエル、ここに来るまで一本道だったじゃない?ということは、帰りも同じ道を通るしかないってことよね?」
「だと思います。あたしの確かめた限りでは、裏口はなかったかと……」
その会話に、スピークルムが加わった。
『周囲を探ってみましたが、裏口は人為的に塞がれているようデス。なので、道は1つしかないデスね』
つまり、敵陣の真っ只中を進むということね?
私は頷き、不安げな女性達に声を掛けた。
「皆さん、疲れてるとは思うけど、もう少し頑張って!外では、ヴァーミリオン騎士団や、ナシリスの王子達が戦ってくれています。なんとかみんなと合流しましょう!大丈夫上手くいきます!無事に脱出して、ご家族と会いましょう!」
その声に、フロール王女、人質の女性達は力強く頷いた。
死んだような目をしている者は、もう誰一人としていない。
全員がその目に強い光を宿していた。
良かった。
こんな私の言葉でも、なんとか皆を勇気づけることが出来る……。
そのことに、何となく気恥ずかしくなりながら、先頭に立ち箱庭を後にした。
私の問いに、アリエルは首を振った。
「えっと、すいません!薬品が足りません。ここの全ての錠を溶かすとなると、大量の薬品が必要ですので……」
それもそうだわ。
アリエルの持っていたのはほんの少量。
自分の牢の錠だけで限界だったはず。
困ってうーんと唸った私に、アリエルが言った。
「でも、ここに鍵がありますからー」
…………………………。
何故それを早く言わないのかなぁ?
ここまでのくだり、全部無駄になりましたよね?
私はアリエルに微笑んだ。
怒ったりしないわ!最短で物事が上手く進んでいるんだもの。
……ただ、釈然とはしないわよ?
「持ってたのね?」
「はいっ!私兵が昏倒している隙に漁りました!!」
アリエルは、鍵の束を取り出すと、褒めて欲しそうな目でこちらを見た。
「……さ、さすがね!頼りになるわ!さぁ、時間がないわよ!みんなを助けましょう!」
「はいっ!」
アリエルと私は手前のフロールから順に檻から解放した。
鍵束は1つしかない上に、たくさんの中から錠に合ったものを探さなくてはならず、思いの外時間がかかる。
しかも、足に掛けられた鎖の鍵も束の中に紛れ込んでおり、更に時間が掛かった。
それでも、根気よく探しだし、一人また一人と助ける。
人質の女性達は最初のうちは、疲れきった顔をしていた。
でも、檻から出て、互いの無事を確かめ合うと希望が見えたのか、私達を手伝って動いてくれるようになっていた。
そして漸く、箱庭にいた20人ほどの人質を檻から解放することに成功した。
でも、問題はここから、よね?
「アリエル、ここに来るまで一本道だったじゃない?ということは、帰りも同じ道を通るしかないってことよね?」
「だと思います。あたしの確かめた限りでは、裏口はなかったかと……」
その会話に、スピークルムが加わった。
『周囲を探ってみましたが、裏口は人為的に塞がれているようデス。なので、道は1つしかないデスね』
つまり、敵陣の真っ只中を進むということね?
私は頷き、不安げな女性達に声を掛けた。
「皆さん、疲れてるとは思うけど、もう少し頑張って!外では、ヴァーミリオン騎士団や、ナシリスの王子達が戦ってくれています。なんとかみんなと合流しましょう!大丈夫上手くいきます!無事に脱出して、ご家族と会いましょう!」
その声に、フロール王女、人質の女性達は力強く頷いた。
死んだような目をしている者は、もう誰一人としていない。
全員がその目に強い光を宿していた。
良かった。
こんな私の言葉でも、なんとか皆を勇気づけることが出来る……。
そのことに、何となく気恥ずかしくなりながら、先頭に立ち箱庭を後にした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,696
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる