君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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千菜「……はぁ…」

小さく溢した息が、音もなく白く静かに空に消えていく
薄暗い空からは宝石のようにも見える白い雪が静かに降りてくる
冷たくて綺麗だった…
降りてくる雪を掌に乗せると、瞬く間に溶けて消えてしまった
どこか切なくて悲しい…まるで…
頭に思い浮かんだことを消すように私はギュッと目を閉じた
寒い…早く帰ろう…
いつもと同じ空
いつもと同じ帰り道
お気に入りの白いマフラーに顔を少しうめて
帰り道を1人で歩き進む

千菜せな待って」

いつもと違ったのは
………君に名前を呼ばれたこと

私は声のする方を何も言わずに振り返って君を見た
ねぇ…どうして私だったの?

「千菜、俺と…付き合って」

突然の告白
相手は…見たことがある
確か同じクラスの…名前は覚えてないけど…
遠くで下校中の他の生徒の楽しそうな話し声が聞こえる
だけど私達の空間は静かだった

千菜「……なんで私…?」

「千菜が好きだから」

迷いもなく、躊躇うこともなく、真っ直ぐ私の目を見て言った君はきっと本当の事を言った
だからこそ近づいちゃいけないって思った
あんな思いを私は2度としたくないから…

千菜「私は嫌い」

まるで雪のように冷たく言い放った
私にこれ以上関わらないように
そして私は向きを変え、また帰り道を歩き出した
ーー…学校から歩いて10分程度
鞄から鍵を出して重いドアを開けた
音もしない静かな家
ただいまは言わない
言ったところでおかえりなんて言う人は居ないのだから
あ、違う
私が唯一ただいまを言う相手が居た

千菜「ただいま…チョコ」

薄茶色のハムスター、名前はチョコ
人差し指でそっと頭を撫でる
そして大好物のエサをあげた
エサを嬉しそうに頬張るチョコを見ていると
冷たく冷めた自分の心が少しだけ癒されるような気がした
私もそろそろご飯にしよう…
帰りに寄ったコンビニの袋から買ったばかりの野菜ジュースを取り出して静かに飲んだ
ご飯はほとんど野菜ジュース
基本、作るのは面倒くさい
でもたまに料理は作る
たまにだけど…
別に野菜ジュースで充分だから

千菜「ご馳走さまでした」

ご飯を食べたらお風呂に入る
シャワーを浴びて、ゆっくりお風呂に入る
これでも半身浴が好き
だから1時間くらい入ってる
そしてお風呂から上がると私の大好きな時間
机の上に沢山の様々なキャンドルを並べ火を灯した
そして引き出しから小さなオルゴールを取り出して机に置いた
準備が出来たらいつものように電気を消すと、淡いキャンドルの火がゆらゆらと明かりを灯した
そしてオルゴールのネジを回すと綺麗な音がゆっくり流れ始めた
オルゴールから綺麗な音が流れ始める

ポロン…ポロン…♪

綺麗な音…
毎日聞いていても飽きない私の大好きな曲…
暗い部屋の中に灯るキャンドルの小さな幾つもの炎とオルゴールの優しい音色
外では静かに白い雪が降り続いていた
この時間が一番好き…
大好きな曲を聴きながらただ揺らめく小さな炎を見つめる
………なんだか…眠たくなってきた
私はそのまま深い眠りについた
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