君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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千菜「……ん………」

明るい日差しで目が覚めた
私…またこのまま寝ちゃったんだ…
いつの間にかキャンドルの火も消えていた
ふと目元に手を当ててみる
涙…?私はまた泣いたんだ…
夢を見た気がする
誰かがずっと千菜…千菜って私の名前を呼んでいた気がする
………泣いたところで何も変わらない
何も…戻ってこない
何度も突き付けられる現実に心が張り裂けそうになる
私は涙の跡を拭い、立ち上がってベランダの戸を開けた

ヒュウ~と冷たい風が私を通り過ぎる
降っていた雪が今日は止んでる
今日は鮮やかな青空が見える
窓の外は眩しいくらいの真っ白な雪景色だった
息が白く空に消えていく
そんな空を眺めているとふと昨日の事が頭に浮かんだ

「俺と付き合って」「千菜が好きだから」

そういえば昨日そんな事言ってた人が居たな…
学校の人なら私の噂を知らないはずない…
告白どころか友達になろうという人も関わろうとする人も居ないのに…
あぁ…もしかして面白半分だったのかな
まぁ、私には関係ない

千菜「……………寒い…」

私は準備をして部屋を出た
白い雪の上を歩いて学校に向かった
学校に着くと賑やかな声があちこちで聞こえる
教室のドアを開けると皆が私を見る
そして離れて行きこそこそと何かを話し出す
いつもの光景…私には関係ない…
私はそんな人達を気にせずに自分の席に着いていつものように読書を始めた
全部いつもと変わらない
教室は賑やか
だけど空を眺めるとどこか寂しく感じる
パラ……パラ……と1ページずつ静かに読み進める
ふと近くで声が聞こえた

「おはよ。あれ?今日は眼鏡なんだ?」

ふと声の主を探して見上げた
私の前には昨日、告白をしてきた人が私に笑顔を見せて立っていた
私は視線を本に戻してまた読み始めた
無視してればきっとその内どこか行くでしょ…

「いつもコンタクトだったよね?
でも眼鏡も可愛い
ね、いつも本読んでるけど何の本?」

………居なくなるどころかしつこい程話しかけてくる
周りからはまたこそこそと話す声が聞こえてくる

「え……ちょっとなにしてんの…?本気…?」

「嘘でしょ?噂知らないの?」

「近づいたら………って…」

教室に入った時よりも話し声が聞こえて来て、どうしようもない気持ちが溢れた

「ね、聞いてる?」

その人はしゃがんで私と目線を合わせて話しかけてきた

………ガタッ

私は何も言わず立ち上がり、教室から出ていった

ガラッ…

千菜「伊藤先生、少し休ませてください」

教室を出て向かったのは保健室

伊藤「お、あずま
久しぶりだな。何かあったのか?」

私に笑顔を浮かべて出迎えてくれた保健室の先生

千菜「別に…少しイライラしただけ…」

伊藤「東、俺には全部話すって約束だろ?」

千菜「…私は約束した覚えないけど…
先生が一方的にしたんじゃないですか?」

伊藤「ははっ、そういえばそうか」

声を出して笑う伊藤先生とは裏腹に私は俯いて伝えた

千菜「………先生もこれ以上私に関わらない方がいいですよ」

伊藤先生はこの学校で唯一私の事を気にかけてくれる人
私が保健室を訪れるといつも話し相手になったりしてくれるとても優しい人…
だけど……

伊藤「まだ噂の事を気にしてるのか?
東のせいじゃない
だから自分を責めるな。怖がるな
俺は大丈夫だから」

千菜「でも…先生までそうなったら…」

だから私は極力関わらないようにしていた
守りたかったから
もう誰も失いたくなかったから…
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