君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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伊藤「東…東起きろ」

千菜「…ん…先生…?」

伊藤「もう3時間目が終わるぞ
それに俺これから用事があるから今日はもう保健室閉めるんだ
東もそろそろ授業行け?」

千菜「……3時間目…そんなに寝てた?」

伊藤「おぅ、むしろ寝過ぎだな。ほら荷物」

先生…用事…もう少し寝てたかった…
でもしょうがない…
私は先生から荷物を受け取って教室に向かった

ガラッ…

奏叶「あ!千菜!」

私を見るなり七瀬奏叶は近付いて声をかけてきた
私はそれを無視しながら鞄をかけて席に座った
って…いうより
昨日あれだけ酷い事言ったのにどうして笑顔で話しかけてくるんだろう…
おかしな人……

奏叶「千菜今まで何してたの?
来ないから心配した」

私の事なんて関係ないのに…
まぁ、勝手に心配しただけ
私はそんな事頼んでないし…
そして1つ分かった
七瀬奏叶はどんなに無視をしてもめげずに話しかけてくる人…

奏叶「そういえば昨日の下駄箱のやつありがとう
千菜って綺麗な字書くんだね
お金もわざわざありがとう」

……やっぱり私だってバレたみたい
だって借りを作るのは嫌だったから…

千菜「……なんの事?そんなの私知らない」

でも私は知らないふりをした

奏叶「ふーん…でもいいんだ!
俺はそう信じてるから♪じゃっ」

言うだけ言って七瀬奏叶は皆の中に戻っていった
信じてるって……
七瀬奏叶の言葉…行動、全て下らないものだと感じる
だけど…七瀬奏叶の1つ1つの言動が心に残るのは何故だろう…
私に話しかけてくる人なんて居なかったもんね…
きっとそのせい
私は教科書を広げた

先生「ここは~………であるから……」

黒板に当たるチョークの音、先生の声、小さな話し声
私は黒板をボーッと眺めていた
何も考えたくない…

ピーポーピーポー…

どこからか救急車の音が聞こえる
それはこの近くを通るようで段々と音が大きくなってきた
やめて……聞きたくない…!
激しい目眩に襲われ、記憶が走馬灯のように蘇った
思い出さないようにしていた、赤く冷たい記憶の数々が鮮明に目に焼きついていた
苦しい……嫌だ…1人にしないで…!
お母さん、お父さん、お爺ちゃん、お婆ちゃん、お兄ちゃん、真琴……!
私は救急車の音が聞こえなくなるまで耳を塞いだ

そして昼休み
お弁当を持っていつもの中庭に向かう
今日はお日様が出てる
雪が照らされてキラキラ輝く光景は何度も何度も見た
もうすぐ降り続いていた雪ともお別れで暖かい春がやって来る…
ベンチに座りご飯に持ってきた野菜ジュースを飲んだ
そしてご飯を終えるといつものように読書を始めた
だけど読み進めているうちに、何だか眠くなってきた…
私は眠気に勝てずそのまま目を閉じた
………シャク…シャク…シャク…
誰かの足音が近づいてるとも知らずに
…………

かえで「こら千菜。こんな所で寝たら風邪引くぞ
千菜!……全くしょうがないな…」

………………暖かい……
お兄ちゃんの夢を見た
リビングの机の上で寝ていた私に優しく掛け布団をかけてくれた
お兄ちゃんの優しさが伝わってきて暖かくて心地よかった…

千菜「………………?」

目が覚めると馴染みのある中庭
私……こんな所で寝むちゃってた…?

いつも賑やかな昼休みのはずなのに静か…
ケータイを開いて時間を確認する
……やっぱりもう授業始まってる…
てゆうよりもうすぐ終わる
何やってんだろ私……
とりあえず教室に戻ろうかな
立ち上がるとパサッと何かが落ちた
パサッ…?
何が落ちたんだろうと下を見る
コート…?なんでこんなところに?
それより誰の…?
そしてもう1つ気づいてしまった

千菜「これ………」

机の上にポツンと置いてあった…白いココア
手に取ってみるともう冷たくなっていたココア
………七瀬奏叶がここに…?
じゃあこのコートも七瀬奏叶がかけてくれた物?
……告白してきて私の噂も怖がらずに近づいてきて、ココアもコートもお人好しにも程があるでしょ…
馬鹿じゃないの…
また借りが出来ちゃった…

千菜「七瀬奏叶……」

その頃から奏叶の事を考えるようになった
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