君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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いつもと変わらない校舎内の景色
窓の外は少し暖かそうな空が見える
もうすぐ冬が終わって春が来る
そう思いながら少しずつ溶けていく雪景色を見ていた
見慣れた廊下をただ歩く
今日も学校には色んな声が聞こえて賑やか
そんな中私は教室に向かって歩いた

伊藤先生の言葉…
なぜか心に突き刺さった

教室に入ると皆が一瞬私を見て
そして何事もなかったかのようにまた友達と喋り始めた

いつもと同じ


奏叶「千菜!おはよ♪」


七瀬奏叶が私に話しかけてくるのもいつもと同じ
ただいつもと違うのは私の心境…


千菜「……おはよ…」


初めて挨拶を返した
私は…七瀬奏叶を信じてみようと思った
正直まだ怖くて怖くて戸惑ってる
だけど変わらなきゃって…
もう逃げちゃいけないって思ったの

誰かに挨拶をするのはいつ振りなんだろう
なんだか不思議な感じ…
だけど周りはシンとして冷たい空気が流れた

やっぱり…今更こんなの気にしてないけど…
七瀬奏叶も変に思ったかな…
どこを見ていいか分からなくて私はただうつ向いていた
どうしよう…すごく怖い…


奏叶「…千菜…今…俺に初めて挨拶返してくれた?」


千菜「…か…勘違いしないで…ただの気まぐれ…」


なんだか恥ずかしく思えた
ゆっくり奏叶を見ると今までに無いくらい笑顔だった


奏叶「超嬉しい…千菜が初めて挨拶してくれた
ありがとう千菜」


七瀬奏叶はなんて素直で真っ直ぐなんだろう
ただ挨拶を返したくらいでこんなに嬉しそう…
馬鹿じゃないの…

だけど私はそんな七瀬奏叶を見てなんだか胸が締め付けられた
目の奥が熱くなる…
こんな…気持ちはいつ以来だろう…


ーーーー…先生「今日はここまで
皆気を付けて帰るように」


1日の長い長い授業が終わった
なんだかあっという間だった気がする

皆嬉しそうに鞄を持って帰っていく
私も帰ろう…と思った時だった


奏叶「せーな♪一緒に帰ろ♪」


七瀬奏叶が笑顔で声をかけてきた
朝、挨拶を返してから七瀬奏叶はずっとご機嫌な様子

今までなら断った
だけど今はやっぱり…


千菜「うん…」


挨拶を返しただけで喜んでる七瀬奏叶を見たらもう断れないよ…

そして思ったんだ
もっと君に近づきたいって…

いつも一人で歩いてた学校の廊下
今は隣に七瀬奏叶が一緒に歩いてる
不思議でずっと胸がドキドキしてる
誰かと一緒に歩くなんていつ振り…?
こんなことになるなんて思わなかった…

噂を怖がって誰も私に近づこうとはしなかったのに、その噂をもろともせずに告白してきて、何度突き放してもぶつかってくる…
こんな人は初めてだった


先生「おい七瀬!」


奏叶「先生?」


先生「やっと見つけたぞ
お前なんだこの点数!」


国語の長澤先生…
先生が持ってるのってこの間の小テスト…
七瀬奏叶…37点…


奏叶「ちょっ…先生!赤点じゃないからいいだろ!?」


先生「良いわけあるか!
課題を渡すからちょっと職員室に来い」


奏叶「ええーっ!?
あ、千菜…!ちょっと待っててくれる!?
すぐ戻ってくるから!」


私はただ頷いた
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