君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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生徒玄関の前で七瀬奏叶を待つ
私の横を賑やかに帰っていく人達
私を見ては避けていく人達
色んな人がいるけど…気にしない
大切な人を失う事ほど辛くて悲しい事はないのだから

冷たい…冬の匂いがする
課題を貰うだけだからすぐ来ると思うけど…
37点…
私に話しかけてきた時から思ってたけど…やっぱり馬鹿…?
あんな点数初めて見た

雪が残ってる…きっとまだ来ないよね…?


ーーー…奏叶「失礼しましたっ」


職員室を出て俺は駆け足で生徒玄関に向かった
課題プラス説教までされるなんて思った以上に時間かかった…!

千菜…待ってるよね…?
もしかしたら先に帰ったかも…
しかも点数…見られたよな千菜に…
うわぁ…絶対馬鹿だと思われた!

長澤恨んでやる…っ

生徒玄関に着くと外でしゃがんでいる千菜の姿が見えた
千菜…良かった。待っててくれたんだ…
スゲー…馬鹿みたいに嬉しい…


ーーー…シャクシャク…


千菜「…出来た」


雪うさぎ…うん、上手に出来た


奏叶「千菜、何作ってるの?」


ビクッ…
振り返ると後ろに七瀬奏叶が居た


奏叶「ごめん脅かしちゃった?
あ、もしかして雪うさぎ?それ」


う…雪遊びなんて子どもぽかったかな…


奏叶「千菜って雪うさぎ上手だよね
俺にも教えてよ」


千菜「え…?」


奏叶「俺も作ってみたいし
それに独りぼっちじゃこいつ可哀想でしょ?
俺がこいつに友達作ってあげるの」


友達…
この時の七瀬奏叶の言葉はまるで全部私に向けられてるみたいだった


奏叶「出来た!中々上手でしょ俺!」


私の作った雪うさぎの隣に少し形のいびつな雪うさぎが並んだ

いつも…雪うさぎを作るときは一匹だけだった
だけど今の雪うさぎは…二匹揃ってなんだか嬉しそうに見える
でも…


奏叶「千菜?どうしたの?」


千菜「溶けたらまた…離れるのかな…」


ふと思ったことが口に出てしまった
でもこの雪うさぎ達を見てたら悲しくなった
きっと私は無意識にこの雪うさぎと自分を重ね合わせていた


奏叶「…そんな事ない。この二匹はずっと一緒だよ」


真っ直ぐ雪うさぎを見て迷うことなく言った
どうして…どうして七瀬奏叶は…


千菜「どうしてそう言い切れるの…?」


ずっと一緒に居るなんてただの夢物語…
死んでしまったら全て終わってしまうのに…


奏叶「ん?勘だよ」



にっと笑った七瀬奏叶
なんて適当な答え…
なんの根拠もないのに大丈夫って言い切るの…?
馬鹿じゃないの…

でもなんでかな…
根拠もないのになぜかそうだと思わせられる
もしかしたらこの雪うさぎは本当に…


奏叶「そろそろ帰ろっか」


帰り道を七瀬奏叶と並んで歩く
七瀬奏叶との距離は前よりも少しだけ近く感じた

未だに肌寒い…
冷たい冬の匂いの中に七瀬奏叶の香水の匂いが混じってる
本当に不思議な感覚…
七瀬奏叶は次の角を右に曲がろうとした

だけど私は足を止めた
それに気付いた七瀬奏叶は振り返って私に声をかけてきた


奏叶「千菜?どうしたの?」


足が動かない…
これ以上先には行きたくないから…
だって…覚えているから…
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