君が嫌いで…好きでした。

秋月

文字の大きさ
上 下
24 / 83

君が嫌いで…好きでした。

しおりを挟む

奏叶のおかげでもう1度取り戻せるかもしれない
誰かと一緒に居る幸せを…

気分が少し落ち着いてくると奏叶のケータイが鳴った


奏叶「あ、電話?湊からだ…ごめん千菜出ていい?」


私は頷いて返した


奏叶「湊?どうし…湊「かなお前!何回電話したら出るんだよ!!」


隣に居ても電話から漏れてくるあの人の慌てた声
奏叶は耳から少しケータイを遠ざけた


奏叶「何回だった?」


湊「5回目だよ!ったく…で!?お前今何処にいんだよ!」


奏叶「何処って…屋上だけど?」


湊「屋上!?」


ダダダダダ…バンっ!!

誰かが屋上までの階段をかけあがり、ドアを開けた音がした
そこには少し息切れをした奏叶の友達が居


湊「…見つけた!かな!」


奏叶「湊?お前そんなに勢いよく開けたら壊れるだろ
てか、なんでここに居んの?お前授業は?」


奏叶は平然とした様子で聞いてるけど、そういえば今はとっくに授業中だった…


湊「は!?んなもんサボったに決まってるだろ!?
こっちは教師の目盗んで学校中かなの事探したわ!」

奏叶「学校中?
お前どんだけ俺の事好きなんだよ」


あ…笑った
奏叶の笑った時の横顔…私…好きだな…

でもあの人…すごい怒ってるみたいだけ大丈夫なのかな
それにあの人私の事嫌ってるみたいだし…


湊「は!?気持ち悪い事言ってんなよ!
こっちはかなの事心配して…っ
やっぱりそいつと一緒に居たんだな」


バチっと目が合うと睨まれた


湊「かな…お前そいつと付き合うのか?
そいつはかなを殺…」


奏叶「湊!!……それ以上言ったらいくら湊でも許さないよ?
千菜を責めるな」


奏叶は遮るように少し強い口調でそう言ってくれた


湊「けどよ…っ」


奏叶「てか、まずお前は千菜に謝れ
簡単にあんな事言っていいわけないだろ
千菜を傷付けるのは許さない
それにお前だってそうだっただろ湊」


なに?この2人の空気…
この2人の間には私の知らない何かがあるのかな…

それに湊って人…
口は悪いけど、この人の言葉や行動はいつも奏叶の事を心配してた
今だってそう
授業をサボって息を切らして奏叶の事を探して、もしかしたら悪い人じゃないのかもしれない…


湊「……――っ」


奏叶「…湊、俺はお前の事嫌いになりたくない」


湊「分かったよ…
東…千菜…さっきは…酷いこと言って悪かったよ…」


謝ってくれた…
やっぱり根は…あんまり悪い人じゃないのかもしれない…


千菜「…気にしてない
それに私の噂を知ってれば…あんな風に言うのは当然だと思うし…」


湊「…俺は昔…片親だったから苛められた事があるんだよ
その時唯一助けてくれたのがかなだったんだ
だからかなが居なくなんのは嫌だったんだよ
俺を助けてくれた唯一のダチだったから…」


2人にそんな過去があったんだ…
皆…ただ怖がってただけなんだね
何だかこの人私と…


奏叶「なんか似てるね2人共」


奏叶も同じ事思ってたみたい
誰だって大切な誰かを失うのは怖い…
だから逃げて…傷付けて…

だけど逃げる事でまた誰かを傷つけてしまう
1人だと分からなかった事が今は分かる気がする…


千菜「湊…だったっけ?
ありがとう…謝ってくれて」


嫌われてたと思ってたから…
謝ってくれて自分の事も話してくれた


湊「…礼言われるような事してねぇし…
あと、名前しっかり覚えろよ
…………友達だろ…」


友達…


千菜「私と…貴方が…?」


湊「嫌なのかよ」


千菜「だって私の事嫌ってると思ってたから…」


湊「それはそれ。今は今!
俺がそう決めたんだから文句言うな」


まさかそんな風に言ってくれるなんて思わなかった…
顔を少し赤らめて怒ったような顔してる…
不器用な人…


湊「だぁー!なんかムカつく!
まさかこいつと友達になるとか…俺、頭可笑しいんじゃね!?」


奏叶「そう?俺は嬉しいけどね
湊、俺の事心配してくれてありがと
千菜も湊の事許してくれてありがと」


私はただ首を横に振った

しおりを挟む

処理中です...