君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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今日も長くてダルい授業が始まる
憂鬱な気分のまま授業を聞いてると俺のケータイが光った
授業中とかお構いなしにケータイを見ると、かなからだった


"千菜をよろしく(^o^)v"


…は?
なんだこれ…よろしくってなんだよ
普通に考えて仮にも自分の彼女だろ?
それを普通によろしくって…
自分の彼女が他の男と居るんだから手出すなよくらい言うだろ普通
しかもなんだよこの顔文字
なんかよくわかんねぇけどムカつく…
こいつ俺の事信用し過ぎ…
まぁ当然だけど

…にしてもかなから頼まれたらもう逃げらんねぇな
つまんねぇから帰ろうかと思ったけど…
やっぱり東と2人きりとか…
ここで帰って東になんかあった時にはかなに殺されるかな…
それに実際絡まれることもあるみてぇだし…
正直ちょっぴり心配な部分は俺にもある

はぁーめんどくせ


――体育終了後


湊「ふぁぁ…」


よく寝た…
持久走なんてめんどくさすぎ
あんまりサボってばっかもいられねぇけど
なんて考えながら歩いてると体操着姿で歩いてくる東と出会った


湊「お、終わった?」


千菜「うん…湊サボり?」


湊「まぁ、持久走とかだるかったし
てかお前は大丈夫なん?」


千菜「え?」


湊「お前風邪治ったばっかりだし、体弱いんだろ?」


前に倒れたことあったし…
てか風邪治ったばっかりで持久走やるこいつがすげぇわ
俺だったら風邪じゃなくてもやりたくない


千菜「大丈夫…くしゅんっ…」


大丈夫って言ったばっかでくしゃみするか普通…
持久走で汗でもかいたんだろ
本当世話がやける奴だな

これで風邪ぶり返されたらまたかなが心配する
今のうちかなに借りでも作っとくか
明日なんか奢ってもらお


湊「…なにが大丈夫だよ、ほら」


自分のブレザーを東に手渡した


千菜「え、いいよ…湊が風邪引く…」


湊「いいんだよ。俺暑がりだし」


千菜「でも…」


素直じゃないな…たく…


湊「俺がいいっつってんだろ」


半ば強引に東に手渡した
すると少し表情が変わった気がした
…え、なに
もしかして…喜んでんの?
うわ…分かりにく
表情さっきとほとんど変わらねぇじゃん
こいつと居ると調子狂いそうだわ…


湊「んなことより早く着替えてこいよ」


千菜「え?」


湊「昼、食うんだろ?
先中庭行って待ってんから早く来いよバーカ」


あーやっと半分終わった
かなが居ないと退屈だな…
俺は購買で買ったパンを持ちながら中庭に向かっていた


「みーなと♪」


湊「綾奈あやな


綾奈「これからご飯?ならうちらと一緒に食べよーよ♪」


湊「あー悪い。今日は先約ある」


綾奈「えぇー」


湊「また今度な」


綾奈「しょうがないなぁ…約束だからね!」


綾奈と別れた後、また中庭に向かって足を動かす
中庭に着くと椅子に座って東を待った
腹減った…
てかよく考えたら東を待ってることなくね?
あいつが来るまで待ってるとかカップルでもねぇのに無理無理
それはかなの役目だろ
うん、俺のがらじゃねぇし先に食べながら待ってるか

俺は袋を開けてパンを食べ始めた
それから数分してようやく東が来た


湊「遅い。待ってられなかったから先に食ってた」


千菜「湊ブレザーありがとう…これお礼」


東がブレザーと一緒に差し出したのは俺の好きなホットピーチ

東が借りを返すのはよく分かった…でも…


湊「…なんでこれ買った?」


ホットピーチは特に女子に人気の飲み物
男が飲むのなんか珍しい
ましてや俺が好きな事なんて東は知らないだろ


千菜「え…前にこれが好きだって奏叶に聞いて…」


やっぱりかな情報かよ
あいつ勝手に話すなよ
なんかはずいから


湊「ふーん…サンキュー」


お礼を言うと東は安心したように椅子に座った


湊「今日は弁当なんだ」


千菜「う、うん…」


へぇ…珍しい
見たところ料理は意外とできんだな
こいつの場合しないだけか
すると東は聞きにくそうに俺に話しかけてきた


千菜「…湊…機嫌悪い…?」


正直そんな事を聞かれたことに驚いた


湊「は?なんで?」


千菜「…ずっと怖い顔してるから」


やば…俺、無意識に…
大体かなのせいだろ
かなに頼まれなきゃ…いや…かなに頼まれなくても俺はきっと同じことしてた…?


なんで…
1人でごちゃごちゃ考えてると東があからさまに不安そうにする


湊「ちょ…なに落ち込んでんの
勝手に誤解すんなって」


千菜「誤解…?」


あぁもう…こんなんカッコ悪すぎ…
でもこいつが誤解したままだと厄介だし…

俺は仕方なくケータイを東に見せた
メール画面を出して東にケータイを手渡した
それを見た東はきょとんとしたように俺を見た


湊「かなの願いなら断るなんかあり得ねぇけど…よく考えたら今までかなが居たのに急にお前と2人きりとか…」


じっと俺を見ている東の純粋な目に何故かだんだん恥ずかしくなってきた


湊「どうしていいか分かんねぇ…
いきなりお前と2人きりとか何話せばいいかも分かんねぇし。てかその前に俺はお前に酷いこといっぱい言ったし…」


普通なら嫌われるような酷い言葉をこいつに沢山言った
俺にどんな理由があってもこいつを泣かせたことに変わりはない
普通ならこいつも…


千菜「…今更気にしてないよ…だから湊も気にしないで」


東の言葉は俺にとって予想外だった
散々酷いこと言った。こいつなんか居なければいいと思ったこともあった
こんな俺をそんな言葉1つで許すってのか


湊「…お前ってお人好しだな。そんなんじゃ騙されんぞ」


千菜「え?」


ほんとに今まで見てきた女の誰とも違う
こいつといると調子が狂いそうだ


湊「まぁいいや。てか1つ聞いていい?
前から気になってたんだけどさお前のあの噂って本当なんだ?
半分誰かが嫌がらせに流したデマかとも思ってたけどお前実際1人暮らしだし」


適当に話題を変えようと思って出た言葉がこれ。俺としては気になってた事をさらっと聞いただけだったけど…


千菜「…本当だよ。家族も当時付き合っていた人も皆…」


東は俯き身体は微かに震えている
必死に何かを思い出さないようにしているように見えて…俺は東をあの時の自分と重ねてしまった
そしてしまったと思った
無神経な事を言って東を苦しめてしまったと思った
だからすぐに謝った


湊「悪い!嫌なこと思い出させちまった!?
ごめん!俺が悪かったから、もう聞かねぇから…だから泣くなよ!」


うつむいて震えている東を見て泣かせてしまったと思った
女が泣いてる…ましてやこいつが泣いている所なんて…どうしていいか一気に頭がパニックになった


湊「あ、そうだこれやる!
俺がこの前ガチャポンで取った幻とも言われるマスコット"ヒデトラ君"!!」


今思えばなんでこんなもん出しちまったのか分からない
でも東を慰めようと必死だった


千菜「…変なの…てか要らない」


湊「は!?お前ヒデトラ君の良さ分かんねぇのかよ!
幻って言われるくらいすっげぇレアなんだからな!」


なのに東ときたら俺のお気に入りのヒデトラ君を変とか言って侮辱するし…東はヒデトラ君の良さを知らねぇんだよ
何故か俺がヒデトラ君の良さを語っていると東はいつの間にか笑っていた


千菜「…ふ、あははっ。なんでそんな変なの好きなの」


それは今まで泣いたり表情の変わらなかった東の初めて見た笑顔だった
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