君が嫌いで…好きでした。

秋月

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君が嫌いで…好きでした。

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教頭先生の許可が降りた鈴村先生は車に乗って凜ちゃんが運ばれた病院に向かった
私達も授業が残ってたけどそれよりも凜ちゃんの事が心配で他の先生にバレないように一緒に病院に向かった
静かな車内に不安な空気が流れた
凜ちゃんが事故にあった…
病院に運ばれたってことは…もしかしたらってずっと怖くて震えが止まらなかった
走馬灯のように皆が死んでいった日の事が思い出されては心が締め付けられた
奏叶も何も言わず隣でずっと手を握っていてくれた
凜ちゃん…どうか無事でいて…!
病院に着くと慌てて車を飛び出して病院に入った

鈴村「凜…!」

湊「先生落ち着けよ。まずは受付で聞いて…」

辺りを見回したその時に松葉杖をついてお会計している凜ちゃんの姿があった

鈴村「凜…!」

凜ちゃんを見つけて涙ながらに飛び付いていった鈴村先生

鈴村「良かった凜…!無事だったのね!」

凜「紗香!それに千菜ちゃん達も来てたの?
紗香、大丈夫だから離れて。ここ一応病院だから」

松葉杖をつき左足を固定されて頭には包帯が巻かれていた凜ちゃん
運ばれたって言ったからもっと重症なのかと思ったけど…命を落とすような事にならなくて本当に良かった
凜ちゃんの様子を見てホッとはしたけど…何か胸につっかえるような違和感…なんとも言えない恐怖感は何故か消えなかった

凜「運転してたらさ交差点で信号無視してきた車とぶつかっちゃってさ…頭ぶつけたショックで気失って運ばれたらしいんだけど大した怪我でもないし、脳に異常もなかったから入院もなし
いやぁ~ビックリしたよ
紗香も皆もお騒がせして悪かったな」

紗香「何が大したことないよ!
それでも充分大怪我じゃない!」

凜「怒るなって。でもまさか湊達まで来るとは思わなかった」

湊「ちょうど鈴村先生と一緒だったんで」

凜「千菜ちゃんも怖かったよな?
心配してくれてありがとう
でもこの通り大丈夫だからさ」

千菜「…うん」

鈴村「じゃぁ私達は学校に戻らなきゃ
凜はどうするの?」

凜「俺はタクシー拾って店に戻るよ」

鈴村「大丈夫なの?」

湊「俺、ついていきますよ」

鈴村「でも学校は?」

湊「今さら戻ってもめんどくさいし…鞄はあってもなくても同じだから」

奏叶「後でお前んとこ届けてやるよ」

湊「じゃ、よろしく」

鈴村「ごめんね湊くん、凜の事お願いね
私も仕事終わったら行くから」

凜「了解。じゃ行くか湊」

鈴村「私達も戻りましょ?」

奏叶「はい。千菜行こう…千菜?」

ボーッと立ち尽くす私に奏叶は声をかけた

奏叶「千菜…大丈夫?」

千菜「あ…うん…ごめん…ボーッとしてた…」

奏叶「行こう」

奏叶に手を引かれて私達は学校に戻った
鈴村先生は凜ちゃんが無事でホッとしているみたいだったけど…私は1人ある疑問を抱いていた
学校に戻ってきてからも凜ちゃんが無事で安心した反面…ずっと消えない不安と私は戦っていた

奏叶「千菜ってば!」

千菜「奏叶…?」

奏叶「ずっと呼んでるのに気付かないんだもんな…
凜さんの事があってからずっとボッーとしてるけど大丈夫?
何か思ってる事があるなら1人で抱えてないで俺にも話して」

…奏叶にはやっぱりお見通しなんだね

千菜「怖いの…また誰かが居なくなっちゃうんじゃないかって…」

奏叶「…凜さんは無事だったから大丈夫だよ
きっと事故にあったって聞いて千菜まだ混乱してるんだよ
千菜にとっては辛い事だもんね」

千菜「…事故にあったって聞いた時…皆が死んでいった日の事を思い出したの
不安で怖くて…また私のせいで誰かが死んでしまうって本当に怖かった…
凜ちゃんが生きててくれて嬉しかった…でもずっと不安が消えないの」

奏叶「…何が不安?」

千菜「…奏叶達話してたよね
私と同じクラスの柊くんが怪我したって…
それに鈴村先生も怪我していたし、凜ちゃんも事故に合うなんて…こんなに良くないことが続くと思う?」

奏叶「千菜…それ自分のせいだと思ってるの?」

私は何も返せなかった
何も返せなかったのは私のどこかで全部私と関わりがあったからだと思っていた

奏叶「千菜、自分を責める必要ないよ
今日は偶然悪いことが続いただけだから…千菜のせいじゃないよ」

偶然…?偶然でこんな事が本当にあるの?
まるであの夢のように…私と関わった人達が怪我をしていってる
本当にこれは偶然なの…?

奏叶「千菜、俺も皆も絶対千菜の側に居るから
あんまり考えすぎるとまた倒れるよ」

奏叶は不安な私を優しく励まそうとしてくれた
奏叶の側に居るって言葉が嬉しくてどこか安心できた

奏叶「今日家に泊まっていきなよ
1人だとまた色々考え込んじゃうでしょ?」

千菜「うん…ありがとう奏叶」

奏叶「帰りに凜さんのお店行こう湊に鞄も届けなきゃいけないし凜さんにも会いたいでしょ?」

千菜「うん…」

私達は手を繋いで帰り道を歩いた
気を紛らわす為なんだろうけど奏叶はずっと話しかけてくれていた
凜ちゃんのお店によると松葉杖をつきながらも働いている凜ちゃんの姿があった
それでも出来ることが減った凜ちゃんをフォローするように湊が一生懸命サポートしていた
私達は少し話して店を後にした
凜ちゃんとちゃんと話が出来たおかげか不安がほとんどなくなった気がする
奏叶が言っていたようにただ悪い偶然が重なっただけかもしれない
深く考えなくても良かったのかもしれない
これ以上あんな悲劇は起こらないはず…
だからきっと大丈夫…

そして私は奏叶の家にお邪魔して安心して眠りに着くことが出来た
―…だけど悲劇は幕を開けたに過ぎなかった
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