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第三章

名は体を表す01

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――ねぇ。

ねぇってば。


薄れ行く意識の中で、鈴の音が鳴るような声が聞こえた。


『……貴方、こんな所でどうしたの?』


うっすらと、キラキラ輝く光が見える。
お日様に照らされた長い、金の髪。
ふわりとしたその髪に顔をうずめればきっと、暖かく、柔く、気持ちがよさそうな気がする。
無意識に手を伸ばして、その髪をそっと掴み、顔をうずめる。
日の光を浴びたそれは、やはり暖かく、とても良い匂いがした。
花のようなお日様のような、軽く息を吸い込むとほっとして、また眠たくなる。

『あらだめよ。眠ったりしちゃ』

空と同じ色をした清んだ瞳が僅かに揺れた。
きっと天使だ。
そうでなければこんなに可憐な者がこの世に存在する筈がない。
そう天使、天使がこぼれ落ちそうな瞳でこっちを見ている。
と言う事は……そうか《俺》は、もう。

『どうして微笑むの?』

自分は笑っているのか?分からない。
わからないけどただ。

『ダメよ眠っちゃ。……ねぇお友達になりましょうよ。貴方のお名前は?』


俺は――




「だから寝るなって!」

バチーーンッと痛々しい音が部屋に響いた。




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第三章 名は体を表す

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