魔王と王の育児日記。(下書き)

花より団子よりもお茶が好き。(趣味用)

文字の大きさ
118 / 184
第六章

馬には乗ってみよ人には添うてみよ04

しおりを挟む


「それ首に下げて、リーベのぶんもあるから庭でも散歩しよう」
「なんだよこれ?」
「本当はアンタに渡したくないんだけどね。すぐ好き勝手歩き回りそうだからさ、でもここに閉じこもったままってのも身体からだにも精神的にも良くないし」
「だから何これ?」
「僕の魔力をこめた石だよ」
「それで?」
「けど条件がある。それを付けたまま勝手にどっか行かないって約束すること。あとこれ渡したこと魔王さま達には内緒で」
「つまりこれがあれば邪気の影響を受けないと?」

 ご名答とイェンは軽く拍手する。

「普通に説明して欲しいんだけど」

 するとハタキを指し棒がわりにイェンは語り出す。
 嫌がらせかと思うほどやけに長ったらしい説明だったが、要するに〝魔力を石に変えた〟らしい。そしてこの石には結界の術が施されている。そのため身に着けている間はその者を邪気から守ってくれるとか。
 ちなみに今のところそれ以外は付加されていない。

「なるほどお守りみたいなもんか。俺ってなんてラッキーな男なんだ。いいもん貰ったよ」

 鼻歌交じりに首に下げる。

「ところで邪気以外からは守ってくれないのか?」
「くれないなー。さっきも言ったけどそーゆー感じにしてあるからさ」
「ケチだなぁ」
「お言葉だけどね。一個につき一つ効力をつけるのが普通なの、一つ付けるだけでも大変なのに二つだなんて、これでも頑張ってー」
「ウソウソありがとう」

 青年は小言を遮りながら、こんなに自分達に甘くてあとで怒られやしないのかと多少心配になる。
 するとコンコンと扉をノックする音が響いた。
 慌てて首に下げた石を外し寝台へと隠すと扉へ向かって「どうぞ」と声をかける。
 入って来たのはハクイだった。

「何もかわりありませんか?」

 ハクイが問うとイェンは特に何もなく平和だとこたえる。
 その短いやり取りをただ流し見て終わろうとしたが、思い出して「あっ」と声を上げた。

「そうだハクイ様! 何個か言いたい事があるんですけど」

 まずこの部屋だ。
 この寝台はまるでそう、御伽の国のお姫様が使ってそうなファンシーキュートなピンクのベッドだ。
 リーベの為にあつらえたのだろうが、彼女はまだベビーベッドで事足りている。
 では誰がこのお姫様のベッドに毎日寝るのかと言うと、そう青年だ。
 とっくの昔に成人した男が一人、このひらひらとしたひだのついたパステルカラーピンクの可愛らしい寝台で寝る。
 なんともおかしな状況に流石に耐え難いものを感じていた。

「もっと俺用にして欲しいんですが、駄目ですか?」
「なんだそんな事ですか、それならイェンに頼むといいですよ」

 話を振られたイェンが直ぐにハクイへと向き直り「かしこまりました」と両の腕を自身の胸の前へと伸ばして両手を重ね、そのままこうべを垂れる。

(変わった作法さほうだなぁ)

 青年はそんな事を思い見ていたが、とりあえずこれでようやくこのある意味居心地の悪い寝台からは解放されそうだ。
 そうだ忘れちゃいけない居心地が悪いと言えばそもそもこの部屋だ。ファンシーなアトラクション、いな、今も空中を浮遊するユニコーンやウサギなどのぬいぐるみ、そしてパステルカラー全快の不思議な空間と備品をなんとかして貰おうと思った時だ。
 タイミング悪くもハクイは誰かに呼ばれて出て行ってしまった。
 話があればまたの機会にと言い残して……。

「え、ちょっと」

 残念だがどうにもこのファンシー空間とはもう暫く仲良くしなくてはいけないらしい。

「あぁてかマールのこと言うの忘れてた!」

 俺としたことがと頭を抱える。だがその頭に何かがどしっとぶつかった。

「イタ~?」

 ぶつかり落ちてきた物を慌てて両手でとらえると、それはリーベの着替えなどを詰めた袋。

 顔を上げれば

「ほらさっさと行くぞ」

 イェンがリーベを抱き上げてそう言った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

白銀の城の俺と僕

片海 鏡
BL
絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの高度かつ不可思議な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は聖徒として神殿に召し上げられる。オメガの青年エンティーは不遇を受けながらも懸命に神殿で働いていた。ある出来事をきっかけに島を統治する皇族のαの青年シャングアと共に日々を過ごし始める。 *独自の設定ありのオメガバースです。恋愛ありきのエンティーとシャングアの成長物語です。下の話(セクハラ的なもの)は話しますが、性行為の様なものは一切ありません。マイペースな更新です。*

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...