年下の男の子

うめまつ

文字の大きさ
2 / 7

2

しおりを挟む
朝起きたら、あーちゃんがいなくて家の中を探し回った。

私が起きる前にお父さんが家に送ったって。

そのままお父さんは仕事に行ってあーちゃんは戻ってないと知り、とっても腹が立った。


なんで勝手に帰るの!と怒ったら、ラジオ体操が終わるころにまた来ると言われて、急いで外に出た。

スタンプをもらって走って帰ったけど、まだあーちゃんは来てなかった。

「宿題してて。何時ごろ着くか聞いてみるから。」

「宿題終わったら来るの?」

「それより早いかも。お昼、うちでごちそうする約束してるから。」

リビングに宿題を広げて漢字の書き取りと算数のドリルをがんばった。

その間、お母さんはどこかに電話して色々おしゃべりしてた。

早く来ないかな、まだかな。

お母さんと庭に小さなプールを準備した。


友達と行くプールに連れていくつもりだったのにがっかりしたけど、あんなかわいい男の子を友達に見せたらきっと好きになっちゃうからダメって気づいた。

あーちゃんを独り占めできると思ったら嬉しくなった。
お母さんに頼んでかわいい水着を出してもらった。
友達とプールに行く時はいつもスクール水着だったから、あーちゃんとは特別な格好したかったの。

あーちゃんはおじいちゃんと一緒にやって来た。

半ズボンみたいなダボダボの水着とぴっちりのラッシュガードを着てた。

似合っててとっても格好良い。

お母さんはおじいちゃんとお話するんだって。

私はあーちゃんを引っ張ってプールに連れていった。

あーちゃんはプールの中でちょこんと座ってた。

かわいい。

「お姉ちゃんも早く入ろうよ。早く着替えてきてよ。」

「分かってるよ。ねえ!水着はどっちが良い?」

「えー?こんなにあるの?どれも良いと思うよ?」

どっち?と聞いた癖、水着を三つも四つも持ち出して見せた。

「なんでこんなにあるの?」

「おばあちゃんちが海の近くなの。行ったら毎日海で遊ぶの。スクール水着は学校で着るものでしょ?海はかわいい水着で入らなきゃいけないの。」

「そうなの?!海に行ったことがないから知らなかった!」

だって私が決めたもん。

「かわいいでしょ?これとこれは今年ので、これは去年の。まだあるよ。他のも見る?」

「ええ?見なくて良いから!もう着替えてきてよぉ。」

「なら早く選んでよ。どれがいいの?」

水着を並べて1枚ずつ説明してあげた。

あーちゃんはビニールプールから体を乗り出して大人しく話を聞いて、この色が好きと薄い紫の水着を選んでくれた。

見た目は水着じゃなくて普通のワンピースにしか見えなくて、お母さんがいちいち着替える必要なくて便利そうだから買ったと言ってた。

これが良いの?と体に当てて聞くと、

「うん。他のはなんかよく分からない。」

言われてみたら、他の水着は丸まってると柄がよく分からないし、ごちゃごちゃしてて靴下か何かと間違えそう。

「着替えてくるね!」

走ってリビングを抜けて廊下で着替えた

リビングからお母さんとおじいちゃんの声がぼそぼそ聞こえた。

「あーちゃんの……さんが早く…それまではあーちゃんをうちで…」

「あきが………ります」

「それ………」
 
え?なに?あーちゃんが何?

途切れ途切れに聞こえる会話から、あーちゃんの名前が気になってお母さんのところへ近寄った。

「お母さん、あーちゃんが何?」

「今は大事な話だから。それよりあーちゃんをほったらかしなの?」

いつもより怖い顔でじろっと睨まれ、着替えてたんだもーんと言い逃げた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おしどり夫婦の茶番

Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。 おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。 一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。

欲しいものが手に入らないお話

奏穏朔良
恋愛
いつだって私が欲しいと望むものは手に入らなかった。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

将来の嫁ぎ先は確保済みです……が?!

翠月るるな
恋愛
ある日階段から落ちて、とある物語を思い出した。 侯爵令息と男爵令嬢の秘密の恋…みたいな。 そしてここが、その話を基にした世界に酷似していることに気づく。 私は主人公の婚約者。話の流れからすれば破棄されることになる。 この歳で婚約破棄なんてされたら、名に傷が付く。 それでは次の結婚は望めない。 その前に、同じ前世の記憶がある男性との婚姻話を水面下で進めましょうか。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

処理中です...