4 / 78
4
しおりを挟む
朝早くにこちらから王宮に先触れを出します。
私の特注の馬車にメランプス義兄さまが付き添いとして同乗し、お母様達に見送られました。
「君のお姉さんは頼もしいね」
「はい。」
実際に頼もしいのはそうなのだと思います。
お姉さまはお強い方です。
私と相性が悪いだけ。
「お姉さまは何でも出来ますから」
「君とはだいぶ違うね。」
「はい。私は苦手なことが多いので」
目を伏せて答えました。
私が出来るのは乗馬だけです。
外国語もマナーも刺繍も、何もかもお姉さまに劣ります。
その乗馬でさえ他国で女性の横のりが流行ったおかげで認められました。
「いや、気質が違うと言いたいだけだよ」
「気質、でございますか?」
「私も兄とは違うけど似ている。君達は真逆だ。ウルリカはおとなしい見かけと違ってまわりを従えさせる強さがあるけど、君は自然体で甘えてくる。」
「そうでございましょうか?」
「馬上の姫、社交界の妖精と我が国まで有名だよ。いまだに兄が君に固執してる。」
「え!?まだ?!」
驚きと恐怖で隣のサラにしがみつきました。
「リリィ様、」
サラが怯える私の手を握ります。
「い、嫌です」
もうあんな、男女のいさかいに巻き込まれるのは。
「今は、サフィア様と婚姻されましたのに。わ、私、」
帰りたい。
「よっぽど兄が苦手なようだね?」
「…申し訳ありません」
自分のうろたえぶりに恥ずかしくなりましたが、まだサラの手を強く握って離せませんでした。
こんなところ、来なければ良かった。
そればかりが頭をぐるぐる回ります。
「結婚をして多少は落ち着いてるよ。それに王子妃であるサフィア様が君に会いたがってる。恩人だと」
去年、第一王子に追い回されて、サフィア様が悋気を起こして私を殴りました。
お二人の醜聞を隠す為に私は沈黙を選び、その事に感謝されたサフィア様と和解したのです。
「こんな機会がなければ会うことはないからね」
「…はい」
気軽に訪れることの出来る距離ではありません。
「サフィア様にも、兄にも甘えればいい。君になら何でも買ってやるだろうね」
「そんなこと致しません」
「そんなに意固地になるから兄が固執するんだ。」
わからないと思い首をかしげました。
「そう、なんですか?」
「そうだよ。まわりにするようにニコニコ甘えてればそのうち兄も飽きる。自分に愛想を振り撒かないのが気に入らないだけだからね。」
男は逃げられたら追うから、そう仰ってあとは黙っていました。
逃げたら追うなんて、男は狼だと聞いていましたが、そう言うところのことを言うのでしょうか。
「サラ、今のお話わかる?」
「申し訳ありません。さっぱりです。」
こそっとサラに耳打ちしました。
「逃げたら追いかけるなんて男は狼って本当なのかしら?狩猟本能?だから殿方は狩りがお好きなのかしら?」
「絶対そういうことではないというのは分かります。」
「ぶふっ!」
「あら、聞こえてしまいましたか?」
狭い車内です。
聞こえてもしょうがないことです。
「んんっ、失礼」
「女性に拒絶されると余計頑張ってしまうという意味でございましょう。」
「…ふーん。」
「ごほん、まあ、そういうことだ。特に兄はちやほやされて育って何でも手に入れてきた。簡単な手に入らないことで余計にね?君の目の色。」
とんとんとご自身の下まぶたに指を当てて指し示しました。
「我が王家でもっとも尊いとされる虹のアイスブルー。これで金の髪色だったら王妃として招かれてもおかしくなかった。アッシュの混じったプラチナで残念だ。」
「…私には幸いでございますのね」
王妃なんて望んでません。
「そんなに嫌かい?」
論より証拠とメランプス義兄さまの母国語で答えました。
『コノ国ノ言葉、勉強、ガンバリマス。』
困った顔で拙く答えれば納得されました。
『はは、だが兄より姉に気を付けろ。自分より若い娘がお嫌いだ』
「え?」
早口で聞き取れませんでした。
何か気を付けろと仰ったようでしたが。
私の特注の馬車にメランプス義兄さまが付き添いとして同乗し、お母様達に見送られました。
「君のお姉さんは頼もしいね」
「はい。」
実際に頼もしいのはそうなのだと思います。
お姉さまはお強い方です。
私と相性が悪いだけ。
「お姉さまは何でも出来ますから」
「君とはだいぶ違うね。」
「はい。私は苦手なことが多いので」
目を伏せて答えました。
私が出来るのは乗馬だけです。
外国語もマナーも刺繍も、何もかもお姉さまに劣ります。
その乗馬でさえ他国で女性の横のりが流行ったおかげで認められました。
「いや、気質が違うと言いたいだけだよ」
「気質、でございますか?」
「私も兄とは違うけど似ている。君達は真逆だ。ウルリカはおとなしい見かけと違ってまわりを従えさせる強さがあるけど、君は自然体で甘えてくる。」
「そうでございましょうか?」
「馬上の姫、社交界の妖精と我が国まで有名だよ。いまだに兄が君に固執してる。」
「え!?まだ?!」
驚きと恐怖で隣のサラにしがみつきました。
「リリィ様、」
サラが怯える私の手を握ります。
「い、嫌です」
もうあんな、男女のいさかいに巻き込まれるのは。
「今は、サフィア様と婚姻されましたのに。わ、私、」
帰りたい。
「よっぽど兄が苦手なようだね?」
「…申し訳ありません」
自分のうろたえぶりに恥ずかしくなりましたが、まだサラの手を強く握って離せませんでした。
こんなところ、来なければ良かった。
そればかりが頭をぐるぐる回ります。
「結婚をして多少は落ち着いてるよ。それに王子妃であるサフィア様が君に会いたがってる。恩人だと」
去年、第一王子に追い回されて、サフィア様が悋気を起こして私を殴りました。
お二人の醜聞を隠す為に私は沈黙を選び、その事に感謝されたサフィア様と和解したのです。
「こんな機会がなければ会うことはないからね」
「…はい」
気軽に訪れることの出来る距離ではありません。
「サフィア様にも、兄にも甘えればいい。君になら何でも買ってやるだろうね」
「そんなこと致しません」
「そんなに意固地になるから兄が固執するんだ。」
わからないと思い首をかしげました。
「そう、なんですか?」
「そうだよ。まわりにするようにニコニコ甘えてればそのうち兄も飽きる。自分に愛想を振り撒かないのが気に入らないだけだからね。」
男は逃げられたら追うから、そう仰ってあとは黙っていました。
逃げたら追うなんて、男は狼だと聞いていましたが、そう言うところのことを言うのでしょうか。
「サラ、今のお話わかる?」
「申し訳ありません。さっぱりです。」
こそっとサラに耳打ちしました。
「逃げたら追いかけるなんて男は狼って本当なのかしら?狩猟本能?だから殿方は狩りがお好きなのかしら?」
「絶対そういうことではないというのは分かります。」
「ぶふっ!」
「あら、聞こえてしまいましたか?」
狭い車内です。
聞こえてもしょうがないことです。
「んんっ、失礼」
「女性に拒絶されると余計頑張ってしまうという意味でございましょう。」
「…ふーん。」
「ごほん、まあ、そういうことだ。特に兄はちやほやされて育って何でも手に入れてきた。簡単な手に入らないことで余計にね?君の目の色。」
とんとんとご自身の下まぶたに指を当てて指し示しました。
「我が王家でもっとも尊いとされる虹のアイスブルー。これで金の髪色だったら王妃として招かれてもおかしくなかった。アッシュの混じったプラチナで残念だ。」
「…私には幸いでございますのね」
王妃なんて望んでません。
「そんなに嫌かい?」
論より証拠とメランプス義兄さまの母国語で答えました。
『コノ国ノ言葉、勉強、ガンバリマス。』
困った顔で拙く答えれば納得されました。
『はは、だが兄より姉に気を付けろ。自分より若い娘がお嫌いだ』
「え?」
早口で聞き取れませんでした。
何か気を付けろと仰ったようでしたが。
16
あなたにおすすめの小説
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!
白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。
婚約者ではないのに、です。
それに、いじめた記憶も一切ありません。
私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。
第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。
カクヨムにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる