伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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朝早くにこちらから王宮に先触れを出します。

私の特注の馬車にメランプス義兄さまが付き添いとして同乗し、お母様達に見送られました。

「君のお姉さんは頼もしいね」

「はい。」

実際に頼もしいのはそうなのだと思います。

お姉さまはお強い方です。

私と相性が悪いだけ。

「お姉さまは何でも出来ますから」

「君とはだいぶ違うね。」

「はい。私は苦手なことが多いので」

目を伏せて答えました。

私が出来るのは乗馬だけです。

外国語もマナーも刺繍も、何もかもお姉さまに劣ります。

その乗馬でさえ他国で女性の横のりが流行ったおかげで認められました。

「いや、気質が違うと言いたいだけだよ」

「気質、でございますか?」

「私も兄とは違うけど似ている。君達は真逆だ。ウルリカはおとなしい見かけと違ってまわりを従えさせる強さがあるけど、君は自然体で甘えてくる。」

「そうでございましょうか?」

「馬上の姫、社交界の妖精と我が国まで有名だよ。いまだに兄が君に固執してる。」

「え!?まだ?!」

驚きと恐怖で隣のサラにしがみつきました。

「リリィ様、」

サラが怯える私の手を握ります。

「い、嫌です」

もうあんな、男女のいさかいに巻き込まれるのは。

「今は、サフィア様と婚姻されましたのに。わ、私、」

帰りたい。

「よっぽど兄が苦手なようだね?」

「…申し訳ありません」

自分のうろたえぶりに恥ずかしくなりましたが、まだサラの手を強く握って離せませんでした。

こんなところ、来なければ良かった。

そればかりが頭をぐるぐる回ります。

「結婚をして多少は落ち着いてるよ。それに王子妃であるサフィア様が君に会いたがってる。恩人だと」

去年、第一王子に追い回されて、サフィア様が悋気を起こして私を殴りました。

お二人の醜聞を隠す為に私は沈黙を選び、その事に感謝されたサフィア様と和解したのです。

「こんな機会がなければ会うことはないからね」

「…はい」

気軽に訪れることの出来る距離ではありません。

「サフィア様にも、兄にも甘えればいい。君になら何でも買ってやるだろうね」

「そんなこと致しません」

「そんなに意固地になるから兄が固執するんだ。」

わからないと思い首をかしげました。

「そう、なんですか?」

「そうだよ。まわりにするようにニコニコ甘えてればそのうち兄も飽きる。自分に愛想を振り撒かないのが気に入らないだけだからね。」

男は逃げられたら追うから、そう仰ってあとは黙っていました。

逃げたら追うなんて、男は狼だと聞いていましたが、そう言うところのことを言うのでしょうか。

「サラ、今のお話わかる?」

「申し訳ありません。さっぱりです。」

こそっとサラに耳打ちしました。

「逃げたら追いかけるなんて男は狼って本当なのかしら?狩猟本能?だから殿方は狩りがお好きなのかしら?」

「絶対そういうことではないというのは分かります。」

「ぶふっ!」

「あら、聞こえてしまいましたか?」

狭い車内です。

聞こえてもしょうがないことです。

「んんっ、失礼」

「女性に拒絶されると余計頑張ってしまうという意味でございましょう。」

「…ふーん。」

「ごほん、まあ、そういうことだ。特に兄はちやほやされて育って何でも手に入れてきた。簡単な手に入らないことで余計にね?君の目の色。」

とんとんとご自身の下まぶたに指を当てて指し示しました。

「我が王家でもっとも尊いとされる虹のアイスブルー。これで金の髪色だったら王妃として招かれてもおかしくなかった。アッシュの混じったプラチナで残念だ。」

「…私には幸いでございますのね」

王妃なんて望んでません。

「そんなに嫌かい?」

論より証拠とメランプス義兄さまの母国語で答えました。

『コノ国ノ言葉、勉強、ガンバリマス。』

困った顔で拙く答えれば納得されました。

『はは、だが兄より姉に気を付けろ。自分より若い娘がお嫌いだ』

「え?」

早口で聞き取れませんでした。

何か気を付けろと仰ったようでしたが。
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