伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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ティールームからふたりに腕を絡まれたまま中庭へと連れ出されました。

怒ろうにもお二人の怯えた様子に怒りそびれています。

「すみません、忠告されてましたのに」

「……そうよ。私達が早く帰るように言っていたのに」

「ああいうことは言われ慣れておりまして。帰国の予定日まで我慢するつもりでした」

「バカよ、帰ればよかったのよ」

「泣かないでくださいませ」

「うるさいわね、自分の心配なさいよ」

「こんなことしたくないのに」

大きな池を渡って茂みの奥。

古い小屋の中へ。

昼間だというのに雨戸が下ろされて中は薄暗く、あまりよく見えません。

手は後ろへと縛られました。

でも痛くされることもなく緩く。

一人は部屋に置かれた木箱を重たそうに開けて私を見つめてます。

「この箱の中に入って」

私が一人くらい入って余裕がありそうな大きな木箱へと促されました。

「はい」

「……大人しいわね」

「……逃げたら次はお二方のどちらかがこの中に入るのでしょう?怖いですけど、おふたりが、いない時に逃げるのでご安心されてください」

「はあ?ふ、ふざけないでよ。私達がそんな、」

「お二人とも怯えてらっしゃるからそうなのかと思いまして」

二人とも青ざめてぶるぶる震えてるから、同じ目に遭うのかと。

「ちがう、私達は」

「そうよね?違うわよね?」

お二人で身を寄せあって励まし合って。

見てるこちらがいたたまれません。

「申し訳ありません。出過ぎたことを申しました」

縛られて大変なのは私なのですが。

自分より泣かれると慌てる気持ちがどこへやら。

すん、と胸が落ちて悲観することもなく、ただどうしたものかと思うばかりです。

お二人がおろおろしている間に目が慣れてきたのでまわりを見渡しますと、私がおります中央の木箱の他に、部屋のすみに作業台と藁を重ねてシーツをかけた寝床らしきベッド、壁にはノコギリや大きな枝切りばさみがかけてありました。

「ここは、庭師の」

荷物を置く小屋なのでしょう。

「……縛られてるくせに。……どうやって逃げるのよ?」

落ち着かれたようですが、暗がりでもわかるほど憔悴したご様子です。

「……あぁ、それは。臨機応変に。」

何も当てなどございません。

この、木箱に入れられてどうなるのかも。

「この木箱に入ったらあとはどうなるのですか?」

「……知らないわ」

「……先程の池に沈められてしまうとか?」 

キャァッと、お二人が悲鳴を。

「知らない!やめてよ、そんな恐ろしいことを言うのは!」

ぶるぶる震えて縮こまるお二人。

「ごめんなさい。そんなに怯えるとは思わず。……この箱に入ればよろしいのですね」

「う、ひっく、ごめんなさい」

「恨まないでね、私達も好きでやってるんじゃないんだから」

さすがに、お気になさらずとは言えません。

蓋の隙間から困った顔で見つめ返すと何度も謝っていらっしゃいます。

私は黙って体を丸め、蓋の閉まる音を聞きました。

蓋を閉められて、どのくらい経ったのでしょうか。

同じ体勢でずっといるのは疲れます。

手足がしびれて何度目かの寝返りです。

狭くてただ身体を斜めにしたり転がるしかできませんが。

「……ふう」

大きく息を吐いてどうするか思い付かないまま目をつぶってじっと過ごし、うつらうつらとしていると蓋を叩く音がしました。

とんとん、とんとん

「はい?」

ごそごそと動いて木箱の側面を足で叩きました。

手は後ろに縛られてるので動かせません。

とんとん、とんとん

私も返すようにまた、とんとん、とんとん

「はーい」

先程より大きく返事をします。

静かになり蓋が持ち上がる気配がしました。

鍵らしいものをされてなかったと分かり、拍子抜けです。

隙間が広がり、そこに大きな巨人みたいな人が蓋を片手で持っておりました。

「……大きい」


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