伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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34※メランプス

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メランプスのもとにも知らせが届いた。

「大変だ。姉のもとへ行ってからリリィが行方不明だ」

側にいたウルリカにも説明をした。

「すまない、君の大事な妹に、」

急いで馬の支度を指示する横でウルリカは大きなため息を吐いた。

「……帰り際まで迷惑な子」

ウルリカの一言に眉をひそめる。

「……ウルリカ、俺に何かあったら同じことを言うのか?妹だけにか?」

「……は?」

「君らの間で何があったのか知らない。知る必要もない。そう思っていた。」

目をそらすウルリカの腕をつかんで、なおも反らそうと背ける顔を強く顎をつかんで瞳を見つめた。

「やめて、離して」

「君は平気なのか?妹が不穏な動きに巻き込まれたのかもしれないのに」

「やめて、痛いわ」

力を緩めるとさっと後ろへと後ずさる。

「ひどいわ。乱暴なさるなんて。信じられない」

「手荒にしてすまなかった」

それだけ言ったら睨み付ける妻を放って外套を羽織る。

「家族に対してそんな薄情になれる君を信用出来ない。それだけだ」

「どうして?私に非はないわ。あの子が勝手にいなくなった。それだけよ」

「いい加減に妹にこだわるのはよせ。出来ないなら離縁も考えてる」

青ざめるウルリカになおも言いつのる。

「君は賢くて努力家だ。妻としての務めを充分に果たしてきた。それを俺なりに大切にしてきた。」

「それがどうして、妹のせいでこんな話になるの」

「いずれ、君と俺との間に子が出来る。それさえも気に入らなければ妹のように切り捨てるのか?」

馬の支度ができたと執事が報告に来た。

「我が子に親の気まぐれで苦労させたくない。父は、姉と兄しか愛さなかった。俺の髪と目の色がこれだから」

スペアとなるはずだったのに父親の態度のせいで俺は周囲につま弾きにされた。

後先を考えない父の片寄った愛情。

そのせいで派閥を率いて兄と姉は無駄な争いまでしている。

「俺はそんなものに振り回されるより穏やかな家庭を築きたい。……君のような努力家で穏やかな女性となら作れると思ったんだ」

帽子を被りウルリカへ背を向けた。

「これ以上失望させるな」

それだけ言い残して部屋を出た。

離縁をちらつかせたことは本心ではない。

だが、あの苛烈さにうんざりしているのは本当だ。

社交界を牛耳る姉の不興を買えば、姉の気が済むまで爪弾きにされ何人もの令嬢が社交界から姿を消した。

親でさえ見つけられない娘まで出ている。

兄とふたりで、姉をどうするか密談を続けていた。

ウルリカと義姉のサフィア嬢にもそれとなく伝えていたことだ。

リリィにもそれとなく伝えたが、無駄だったことにほぞを噛む。

姉とウルリカは、見かけは違うのに気に入らないものを排斥したがる癖は似てると感じてずっと嫌だった。

大人しく従順そうな見た目と違って。

いら立ちに任せて馬を走らせた。

目的地は兄のもとだ。

兄の住まう離宮に着くと案内を無視して1番に兄の執務室へと駆け込んだ。

「メランプス、待っていたぞ」

「兄上、事情はご存じか?」

「ああ、おおよそはな。リリィの侍従は周到だ。姉の手紙の写しを届けてきた」

渡された手紙には謝罪の旨が書かれていた。

「これに呼び出されたということか。お人好しのリリィなら断れまい。それと、写しと言うことは原本が?」

「姉の直筆らしい。向こうで管理しているとか」

「よし。それは都合がいい」

「動くか?」

「ここで動かねば友好国の信頼を全て失うことになります。兄上、ご決断を」

「わかった。あとはお前が頼りだ」

「仕込みは済んでいます」

兄上は兵士を呼び寄せ、合図を送るようにと指示を出した。

これでいいはず。

自分の書いた絵の通りになるはず。

「第二王子!大変です!」

「今度はなんだ!?」

新たに駆け込んできた兵士に兄が怒鳴り付ける。

後ろから兵士ふたりに支えられながら現れたのはリリィの侍従ヨルンガだった。

頭に布を当てて、白いシャツは血で濡れていた。

『申し上げます。王女の離宮にロルフ様が囚われています。抵抗したところ、私はこの有り様です』

俺も兄上も、ヨルンガの放ったその言葉に真っ青になった。

友好国の通訳を痛め付け、その上第四王子を捕らえたなど。

姉上、そこまで愚かであったかと膝から崩れそうになった。
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