伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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33※ヨルンガ

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失敗した。

離宮を足早に歩く。

リリィ様が王女のお茶会から戻られない。

王女の離宮へと訪ねても帰ったの一点張りで門前払いを受けた。

使者からお連れするのはリリィ様のみと突っぱねられても、サラか俺が無理やりにでもお側にいるべきたった。

お一人で向かわせるんじゃなかった。

今は悔やんでも仕方がない。

あの王女に対抗できる人間にこの話を伝えねばならない。

隣の離宮。

滞在中の婚約者のもとへと急いだ。

知らせを聞いたロルフ様も顔色が変わる。

「王女のもとへ行く。ヨルンガ、メランプスとフィンレー王子には?」

「お知らせいたしました」

お二人に早馬で知らせ、離宮にはサラを待機させた。

ロルフ様と共にグラッセ王女の離宮へと馬を走らせた。

俺を門前払いした奴等がロルフ様と共だと中へと招き入れる。

それさえも悔しくなる。

案内されたティールームではふたりの取り巻きとグラッセ王女がいた。

「どうかされました?」 

しらっとした王女と顔色の悪い取り巻き。

何か起きたことは察した。

「リリィはどこですか?」

「あら?とうにお帰りになりましたわ。ねえ、皆さん」  

取り巻きは人形のような顔色で頷く。

「こちらへご挨拶だけですぐにお戻りになり、私達がお見送りいたしました」

「戻ってませんよ。こちらに伺ってから戻らないと侍従が私に報告しました。フィンレー王子とスワロフ公爵にも知らせたのですぐにこちらへ参ります」

「だから?」

「早くお話しした方がよろしいのでは?」

「私が何を?」

「リリィの行方を」

「なぜ私が関わってると思いますの?失礼な方ね。あぁ、うふふ。あの子は社交界の妖精よ?そのへんの草むらにでも隠れているのでしょうね、く、く」

たまらず笑いをこぼし挑戦的にロルフ様へと視線を向ける。

「もしかして、あなたに愛想をつかして消えてしまったのかしら。ほほ、」

「……性悪」

ボソッとロルフ様の呟きが耳に届いた。

許されるなら俺も同じように呟いただろう。

「それより私の前にそんな色の汚い者を。退かしてちょうだい。誰か、早く外へ」

手を二つ叩いて直ぐ様、扉から兵士が数人駆けつけて俺を囲み、腕を捕まれそうになり思わずその手を振り払った。

ここまで差別的な行いは初めてだ。

「ヨルンガ、大人しくしとけ」

「ロルフ様、しかし、」

俺はリリィ様の侍従としてだけで今回の訪国したのではない。

メイドとしてのサラとは違い、俺は通訳と護衛を兼任した外交官の一員としての立場を持っていた。

それが今は兵士に囲まれて刃を向けられている。

「どうやらここでは女王らしい」

「は?」

「やっとわかったの?この離宮では私が王なのよ」

「性悪な、ね」

パァンと弾ける音。

自分の目を疑った。

我が国の外交団筆頭であり、第四王子であらせられるロルフ様の頬を王女は勢いよく叩いたのだ。

「意外と口が悪いのね」

「ふ、お気に召さないのであれば幸いですね」

赤くなった頬を気にすることなく、くっと口許を歪ませて笑っていた。

『タイロン、部屋へ運んでおいて』

『どのお部屋に?』

声のする方へと顔を向ければ、兵士を連れて入室したタイロンが立っていた。

『こんなこと、許されると思っておられるのか?!』
 
「ヨルンガ、やめとけ。よすんだ」

ロルフ様にとめられても口が止まらなかった。

『出来ません!このようなことを。重責を担った外交官への暴挙をこれ以上されるというなら、ぐあっ!』

頭を後ろから殴られてその場に前のめりに倒された。

『うるさいわ。さっさと外に捨ててきなさい』

『リリィ様に飽きたらずロルフ様にまで!離せ!離せぇ!!』

暴れれば殴られた。

顔に、頭に熱い滑りを感じた。

ああ、くそ。

血が出たんだ。

目にもかかって回りが赤く見える。

片目は開けていられなくて残った瞳でロルフ様へと視線を必死で向けた。

兵士に両脇から羽交い締めに部屋から引きずり出され、ロルフ様と王女の対峙する姿を最後に、扉は閉められた。
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