32 / 78
32
しおりを挟む
使者に案内されてティールームへと向かいました。
中へ入りますと、王女を中心にいつもお側にいらっしゃるふたりの取り巻きのご令嬢。
「……よく来たわね」
低い声に機嫌の悪さを感じました。
「本日はお誘いいただき光栄にございます。明日には帰国の徒につきますので、最後にご挨拶へとお伺いいたしました」
頭を下げてカテーシーをいたしました。
王女よりお声をいただくまでこのままです。
その体勢のままじっとしていますと、王女が席を立って近くに寄る気配を感じました。
心臓がばくばくします。
部屋は静まり返り、目の前に立つ王女は無言のままです。
この状況が良くないということはとてもよく分かります。
部屋に入ったふたりのご令嬢も、先程の使者のように顔色が悪くひきつっていました。
「いっ、!」
唐突に下げた頭の髪の毛を鷲掴みに。
もっと下へと髪ごと引っ張りながら頭を。
痛みと驚きで小さな悲鳴が私の口から。
取り巻きのご令嬢達からも小さな悲鳴が聞こえてきました。
足を屈めて倒れないように踏ん張りましたが、王女は力を緩めることなく強く引いて、ぶちぶちと髪の抜ける音とともに膝から崩れて床に這いつくばりました。
「いつものように運んでおいて」
乱れた髪の隙間から王女を見上げると、指に絡んだ髪を一本ずつ優雅にほぐしておられました。
その後ろではガチャンとソーサーとカップの強く当たる音とふたりのご令嬢がよつんばに座り込む私のもとへとすばやく駆け寄り、脇を抱えて立ち上がらせています。
怒ろうとおもうのですが、青ざめて涙目に私の腕を抱えるふたりのご令嬢の様子に何も思い付きません。
「かしこまりました」
声も震えて今にも泣きそうなほど、上擦っています。
「あなた、早く歩いて、早くっ」
「あ、はい」
必死なふたりに引きずられてバルコニーから外へと連れ出されました。
「あなたはバカよ。だから言ったのに」
耳元で囁かれ、忠告を生かせなかったことを思い当たり、頷いて応え、ふと顔を横に向けてお顔を見るとぼろぼろと涙を流しておりました。
そういえばメランプスお義兄様も同じように気を付けろと言っていたとぼんやりと思い出し、この事だったのかと考えました。
中へ入りますと、王女を中心にいつもお側にいらっしゃるふたりの取り巻きのご令嬢。
「……よく来たわね」
低い声に機嫌の悪さを感じました。
「本日はお誘いいただき光栄にございます。明日には帰国の徒につきますので、最後にご挨拶へとお伺いいたしました」
頭を下げてカテーシーをいたしました。
王女よりお声をいただくまでこのままです。
その体勢のままじっとしていますと、王女が席を立って近くに寄る気配を感じました。
心臓がばくばくします。
部屋は静まり返り、目の前に立つ王女は無言のままです。
この状況が良くないということはとてもよく分かります。
部屋に入ったふたりのご令嬢も、先程の使者のように顔色が悪くひきつっていました。
「いっ、!」
唐突に下げた頭の髪の毛を鷲掴みに。
もっと下へと髪ごと引っ張りながら頭を。
痛みと驚きで小さな悲鳴が私の口から。
取り巻きのご令嬢達からも小さな悲鳴が聞こえてきました。
足を屈めて倒れないように踏ん張りましたが、王女は力を緩めることなく強く引いて、ぶちぶちと髪の抜ける音とともに膝から崩れて床に這いつくばりました。
「いつものように運んでおいて」
乱れた髪の隙間から王女を見上げると、指に絡んだ髪を一本ずつ優雅にほぐしておられました。
その後ろではガチャンとソーサーとカップの強く当たる音とふたりのご令嬢がよつんばに座り込む私のもとへとすばやく駆け寄り、脇を抱えて立ち上がらせています。
怒ろうとおもうのですが、青ざめて涙目に私の腕を抱えるふたりのご令嬢の様子に何も思い付きません。
「かしこまりました」
声も震えて今にも泣きそうなほど、上擦っています。
「あなた、早く歩いて、早くっ」
「あ、はい」
必死なふたりに引きずられてバルコニーから外へと連れ出されました。
「あなたはバカよ。だから言ったのに」
耳元で囁かれ、忠告を生かせなかったことを思い当たり、頷いて応え、ふと顔を横に向けてお顔を見るとぼろぼろと涙を流しておりました。
そういえばメランプスお義兄様も同じように気を付けろと言っていたとぼんやりと思い出し、この事だったのかと考えました。
14
あなたにおすすめの小説
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』
鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
--
この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。
毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。
とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】
社交界を賑わせた婚約披露の茶会。
令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。
「真実の愛を見つけたんだ」
それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。
愛よりも冷たく、そして美しく。
笑顔で地獄へお送りいたします――
死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?
神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。
(私って一体何なの)
朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。
そして――
「ここにいたのか」
目の前には記憶より若い伴侶の姿。
(……もしかして巻き戻った?)
今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!!
だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。
学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。
そして居るはずのない人物がもう一人。
……帝国の第二王子殿下?
彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。
一体何が起こっているの!?
投資の天才”を名乗る臣民たちよ。 その全財産、確かに受け取った。 我が民のために活かそう』 〜虚飾を砕く女王の経済鉄槌〜
しおしお
恋愛
バブルに沸くアルビオン王国。
「エルドラド株」を持たぬ者は時代遅れ――
そう嘲笑いながら、実体のない海外権益へ全財産を注ぎ込む貴族たち。
自らを“投資の天才”と称し、増税に苦しむ民を見下す日々。
若き女王リリアーナは、その狂騒を静かに見つめていた。
やがて始まる王室監査。
暴かれる虚偽契約。
崩れ落ちる担保。
連鎖する破綻。
昨日まで「時代の勝者」を気取っていた特権階級は、一夜にして無一文へ。
泣きつく彼らに、女王はただ微笑む。
――“皆様の尊いご投資、確かに受け取りましたわ”
没収された富は国庫へ。
再配分された資源は民へ。
虚飾を砕き、制度を再設計し、王国を立て直す。
これは復讐譚ではない。
清算と再建の物語。
泡沫の王国に、女王の鉄槌が下される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる