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背中の姫が泣いている。
小さく嗚咽が聞こえる。
泣くなと何度も呟いた。
悲しまないでほしい。
お願いだから。
篭から出して慰めたい。
涙を拭いてやりたい。
そう思ったが、それよりも早く逃がさなくてはと焦っていた。
必死で中庭を走る。
揺れて可哀想だが、堪えてくれと心に何度も叫ぶ。
小さくてあどけない他国のお姫様だ。
俺とは何の関わりもない。
それにこの気さくさはきっと本当のお姫様じゃない。
下位の貴族令嬢。
庶民の俺からしたら貴族のお姫様だけど。
柔らかそうな白銀の髪と虹色のアイスブルー。
瞳だけは我が国の王家の象徴。
やはり美しいと感動した。
見たのは久々だ。
こんな間近で見たのは初めて。
頬に手を添えて目の前には涙に濡れて輝きが増した瞳が俺を見つめていた。
憎んでいたのに。
あっという間にまた心を奪われた。
守りたいと思ってしまった。
美しい瞳を持つこの小さなお姫様を。
走ってるうちに以前見たのは違う瞳のアイスブルーだったと思いを馳せる。
小さいお姫様。
背中のお姫様と同じくらいの頃。
王家の証の黄金と虹色のアイスブルー。
美しくて可憐でたおやか。
一目で恋するほど。
いや、恋というよりもっと深い敬愛。
王家の象徴を身にまとった王女様に一生を捧げる覚悟だった。
これからお仕えしなさいと昔、父親に言われた。
俺の親父は庭師でそのまたじいちゃんも庭師でずっと庭師。
代々、王家に仕える庭師だ。
幼い頃から親父について俺も王宮に出入りしていた。
毎日ではない。
人手が必要な時だけ。
でもある日、親父が大怪我をして家に運ばれた。
理由を聞いても教えてくれずお袋も何も答えてくれなかった。
親父の手当てを手伝い背中を見れば、そこには幾重にも一直線に線が走り肉が裂けて流血していた。
初めて見る怪我だった。
知るのは転んで出来る擦り傷や刃物の怪我。
あとは近所の大工職人が櫓から落ちて足がポッキリみたいな。
親父の背中は骨折したような怪我でもない。
その頃の俺は知らなかった。
しばらくは怪我した親父の代わりに俺が庭の手入れに出入りすることになった。
簡単な作業なら出来た。
雑草を抜いたり間引いたり掃除をしたり。
下働きのおばさんに使用人向けのお茶とお菓子をもらった時、親父の怪我の理由を尋ねたら二度と聞くなと突き飛ばされた。
子供は物が分かってないから困ると怒鳴りながら。
そのあと部屋に飾る花を頼まれて綺麗なものを選んで渡したら室内に呼ばれた。
誉められるのかと期待した。
待っていたのは火かき棒だった。
父親と同じで趣味が悪いと怒って殴られた。
小さな姫に。
そのあとも何度か失態で呼ばれていつも火かき棒だ。
いや、鞭の時もあった。
その日も火かき棒で。
辺りどころが悪くて火かき棒の先の曲がりが顔をかすって口に引っ掛かりそのまま頬まで裂けた。
父親と同じでお前も絨毯を汚したと叱られた。
殴ったから血が出たんだ。
お前のせいだと憎かった。
小さく嗚咽が聞こえる。
泣くなと何度も呟いた。
悲しまないでほしい。
お願いだから。
篭から出して慰めたい。
涙を拭いてやりたい。
そう思ったが、それよりも早く逃がさなくてはと焦っていた。
必死で中庭を走る。
揺れて可哀想だが、堪えてくれと心に何度も叫ぶ。
小さくてあどけない他国のお姫様だ。
俺とは何の関わりもない。
それにこの気さくさはきっと本当のお姫様じゃない。
下位の貴族令嬢。
庶民の俺からしたら貴族のお姫様だけど。
柔らかそうな白銀の髪と虹色のアイスブルー。
瞳だけは我が国の王家の象徴。
やはり美しいと感動した。
見たのは久々だ。
こんな間近で見たのは初めて。
頬に手を添えて目の前には涙に濡れて輝きが増した瞳が俺を見つめていた。
憎んでいたのに。
あっという間にまた心を奪われた。
守りたいと思ってしまった。
美しい瞳を持つこの小さなお姫様を。
走ってるうちに以前見たのは違う瞳のアイスブルーだったと思いを馳せる。
小さいお姫様。
背中のお姫様と同じくらいの頃。
王家の証の黄金と虹色のアイスブルー。
美しくて可憐でたおやか。
一目で恋するほど。
いや、恋というよりもっと深い敬愛。
王家の象徴を身にまとった王女様に一生を捧げる覚悟だった。
これからお仕えしなさいと昔、父親に言われた。
俺の親父は庭師でそのまたじいちゃんも庭師でずっと庭師。
代々、王家に仕える庭師だ。
幼い頃から親父について俺も王宮に出入りしていた。
毎日ではない。
人手が必要な時だけ。
でもある日、親父が大怪我をして家に運ばれた。
理由を聞いても教えてくれずお袋も何も答えてくれなかった。
親父の手当てを手伝い背中を見れば、そこには幾重にも一直線に線が走り肉が裂けて流血していた。
初めて見る怪我だった。
知るのは転んで出来る擦り傷や刃物の怪我。
あとは近所の大工職人が櫓から落ちて足がポッキリみたいな。
親父の背中は骨折したような怪我でもない。
その頃の俺は知らなかった。
しばらくは怪我した親父の代わりに俺が庭の手入れに出入りすることになった。
簡単な作業なら出来た。
雑草を抜いたり間引いたり掃除をしたり。
下働きのおばさんに使用人向けのお茶とお菓子をもらった時、親父の怪我の理由を尋ねたら二度と聞くなと突き飛ばされた。
子供は物が分かってないから困ると怒鳴りながら。
そのあと部屋に飾る花を頼まれて綺麗なものを選んで渡したら室内に呼ばれた。
誉められるのかと期待した。
待っていたのは火かき棒だった。
父親と同じで趣味が悪いと怒って殴られた。
小さな姫に。
そのあとも何度か失態で呼ばれていつも火かき棒だ。
いや、鞭の時もあった。
その日も火かき棒で。
辺りどころが悪くて火かき棒の先の曲がりが顔をかすって口に引っ掛かりそのまま頬まで裂けた。
父親と同じでお前も絨毯を汚したと叱られた。
殴ったから血が出たんだ。
お前のせいだと憎かった。
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