伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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「はあっ!がぼ!お、溺れる!た、助けて!」

ザブンッと大きな水しぶき。

追いかけてきたと当てが外れたショックと助けて欲しいと願う気持ちで頭の中はぐちゃぐちゃに混乱してます。

「落ち着いて!暴れないで!」

「ぶぁはっ、あぶ!」

首根っこを捕まれて岸へとあげられましたが、助けてくれた騎士の背中を突き飛ばしてよろけながら走りました。 

でもすぐに肩を捕まれて後ろへ倒されて、ロルフ様とアンバルの名前を叫びました。

「リリィ!落ち着いて!俺だ!ロルフだ!」

「へ?は?あ、」

「ほら、よく顔を見て」

「ひ、髭?」

鼻から下が真っ黒?

薄く真っ黒?

「あ」

ちょっと待ってと濡れた手の甲で髭をごしごしとこすると、それが薄れて本当にロルフ様です。

「う、うわあああん!」

「リリィ!待って!泣く前にアンバルを止めてくれ!暴れてるんだ!」

「え?」

ごめんと謝りながら腕を引かれて着いたのはさっき私が登った木で三人の騎士は上によじ登って助けてくれと叫んでいます。

下にはアンバルがガンガンと木に後ろ足で蹴って揺さぶったり立ち上がって引きずり下ろそうと頑張ってました。

その横でタイロン様がお手上げだと頭をかいてアンバルを眺めていらっしゃいます。

「……アンバル、アンバルゥゥ!いい子ぉ!凄い!」

私に気づいてドスドスと近寄ってあぶあぶと私の髪を食んで鼻先を顔に寄せたりとすくに抱き締めました。

「アンバルゥゥ、ありがとう、助けに来てくれたのね?うう、」

ぼろぼろ泣いて喜ぶと、ふんふんと鼻を鳴らしてヒヒンといななきました。

「ロルフ様も、ありがとうございますぅ、うう、グズッ」

アンバルを抱き締める私を背中からロルフ様が抱き締めてくださいました。

「辛い思いをさせてごめんね。もっと早く来たかった」

「うう、ぐす、鬼ごっこなら得意ですから」

しばらくそうしていました。

「さてと、こっちは終わりましたので。王子、そろそろ屋敷内も落ち着いた頃かと思いますよ」

いつの間にかタイロン様は三人を気絶させてベルトで拘束をしていました。

「ああ、そうだといいけど」

「大丈夫ですよ。緊急時用の花火です。メランプス王子との取り決めの」

こちらも、とロルフ様に渡すのは剥き身の剣です。

どうやら私と騎士が木の上で奮闘している時にお二人が駆けつけて他の騎士と戦っていたそうです。

途中でアンバルも乱入して。

それに気づかず私は池に飛び込んで溺れるから剣を捨てて追いかけたとタイロン様が教えてくださいました。

そしてあの花火はグラッセ王女の離宮に駆け込むタイミングを知らせるものだと私に説明されました。

「あちらから知らせが来たんでね。そうなると私も動かざる得ない。本当に使うとは思いませんでした」

あの花火。

あれのせいで騎士に見つかったので少し恨めしいです。

「やはり主は、いや、メランプスが君の雇い主か?」

「雇い主、そうですね。自分をここまで引き立てたのはメランプス王子なので優先的に取引してるだけですよ。別にお互いに主従があるわけじゃありません」

そういうの嫌いなんですよねぇと皮肉を浮かべて笑って、私の知る騎士のイメージとだいぶかけ離れた方のようです。

「さあ、王子。ご無事の報告も急がねば」

話の途中、どぼんと大きな飛び込む音がしてタイロン様が池の確認し、ロルフ様は剣を抜いて私とアンバルを庇います。

「誰か溺れているようです」

ばしゃ、ばしゃ、と小さくなる水音にタイロン様が胸当ての甲冑を外すと池に飛び込みました。

誰かを連れて岸に戻るとそれはぐったりするウドルでした。

「ウドル!」

ロルフ様が何者かお尋ねになるので私を逃がそうとしてあの三人から乱暴されたと訴えました。

『お、お姫さん、』

気がついて私達とアンバルと転がる三人の騎士を見て、ほーっとため息を吐きました。

『あのクズがやられてルなら、もういいのカナ?お姫さん、怪我は?』

『ほっぺを叩かれたダケ。大丈夫』

『無事デよかった』

覆面のない顔で笑みを浮かべました。

『ウドルのケガは?』

『俺、頑丈ダから』

でかいだけじゃないと答えるのがおかしくて私も笑ってしまいました。

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