伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

文字の大きさ
55 / 78

55

しおりを挟む
『いい加減になさいませ、グラッセ王女』

凛とした声が辺りに響きました。

『ええ、第二王子妃のお言葉通りでございます。ご自身を女王だと仰るなら品格を大事にされませ』

そのようなお姿を人目に晒して、王家の第一王女であらせますのにと、ため息をつきながらもう一人の女性は呆れたご様子。

不機嫌な、低く抑揚のない声にびくっと反射的に肩が揺れました。

「サフィア様、お、お姉様」

もぞもぞとロルフ様の腕から顔を振り向くとお二人が護衛と共にそこに立っておられました。

その後ろには我が国から連れて行った侍女やメイド達。

お二人ともこの状況を冷たく一瞥し、サフィア様が手を軽くあげると、側のメイド達がすぐにグラッセ王女を囲んで無理やりガウンを羽織らせて装いを整えました。

グラッセ王女が怒ってもメイド達は顔色ひとつ変えません。

当たり前です。

彼女達はサフィア様にだけ忠誠を持ってこの遠い国へ付き添った者達。

サフィア様のお父様は彼女達に、有事の際は故国へサフィア様と将来のお子様を命に代えても連れて帰るように厳命されたと聞きます。

それが確実に出来る有能な側仕えを選んだと有名です。

「義姉上、側仕えらをお借りいたします」

「夫のためなら」

「サフィア、ありがとう」

「あなたのためなら。そしてこの国と故国のため」

ふふ、と優雅に微笑みを浮かべました。

そしてグラッセ王女の目の前へ歩み寄ります。

『グラッセ王女、お戯れはもうお仕舞いでございます』

夜の女王のような妖艶な佇まいも霞むほどの美しさと気品でグラッセ王女を圧倒するからサフィア様へ視線が集まります。

黄金の冠と呼ばれたサフィア様がお美しく、お会いしない間にまた王子妃として一段と飛躍されたように感じました。

『私に逆らうなど許さないわ!』

『まあ、怖い。ですが、その御身にもう自由はございませんのよ?』

『あり得ないわね。お父様がお許しになるわけ、』

『残念ですが、陛下のお望みは別でございます』

お姉様が一言。

サフィア様が手招きをして側に呼び寄せます。

『陛下は今まで庇いだてされていましたが、暴力で社交界を牛耳るやり方に大層失望されてます。他国から輿入れしたばかりの私共にあなた様の後ろ楯を望まれるほど』

ぽかんするグラッセ王女へお姉様が私に向ける以上の冷たさで見下しておられました。

お怒りです。

怖くて震えてしまいました。

三人の騎士もこれを見たら怯むのではないでしょうか。

『陛下はご自身のお亡くなりになったあとを心配されているのです。陛下のご寵愛をなくせば御身がどうなるのかお分かりになりませんか?』

『王家の私は何をしてもいいのよ。それに美しい私が女王になるのがこの国のためよ。馬鹿ね』

『……見目と血筋だけでなるおつもり、ああ、本当に、はあ、……グラッセ王女とは話など無駄でございます。しばらく私がお世話の采配を取りますから、そのおつもりで』

『な、何よ、』

『あなた様に理解するお力がないのだからもうしゃべるのはお止めなさい。さっさと馬車に乗せなさい。スワロフ公爵邸へ』

お姉様のメイドや侍女達も混ざって暴れるグラッセ王女を引きずっています。

彼女達も厳しいお姉様に鍛えられてるので動じません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

すべてを失って捨てられましたが、聖絵師として輝きます!~どうぞ私のことは忘れてくださいね~

水川サキ
恋愛
家族にも婚約者にも捨てられた。 心のよりどころは絵だけ。 それなのに、利き手を壊され描けなくなった。 すべてを失った私は―― ※他サイトに掲載

処理中です...