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しおりを挟む『……王家の血筋だとしても、あんな悪趣味で下品な方。しかも義理とは言え身内なんてゾッとするわ』
ふん、と鼻を鳴らして呟きました。
『ウルリカ、すまない。迷惑を、』
『あなたもです』
お話を遮ってピシャリと。
凍えた空気と軽蔑で底冷えする視線。
『身内がああなるまで何をしていましたの?私へ身内の件を咎めましたけどどういうおつもりでしたの?家のために最善を尽くす私に何の非があるというのですか?ご自身に甘いのではありません?』
『ウルリカ、ご、ごめ、』
『謝れば済むと思ってらっしゃるなんて子供の考えですわ。スワロフ公爵の当主ともあろう者がそれさえも考え至らないなんて』
『う、』
『私がこれからあの方のお世話をしなくてはいけなくなりましたの。あんな暴力的で下品で頭の悪い女性の。今夜の騒動を隠すために明日の来賓へのおもてなしも。本当にどれだけ私に仕事をさせるおつもりなのかしら。きっとか弱い私にまた倒れて死ねと仰るのね。ああ、言い訳なさらないで。何もかもあなたがちゃんとしないからです。全てあなたのせいですからね』
メランプスお義兄様がなだめようとするのに口を挟ませずに流れるようにお話しされています。
こうなったらお姉様は止まりません。
静かに聞き入る周囲を気にせず、ネチネチと言葉でメランプスお義兄様をいたぶり続けます。
『私は妻としての務めを完璧に全うしてますのに、あなたはご自身を完璧な夫のおつもりでしたの?王家の一員としても、スワロフ公爵家当主としても。……その程度で?』
謝罪も言い訳も封じられて黙るしか出来ず、それなのに黙っていることも気に入らないらしくそれで済ます気かとなじります。
メランプスお義兄様が問われて答えれば浅はか、愚かと抑揚のない声で遠回しに表現して攻撃が終わりません。
お姉様の静かな怒りにメランプスお義兄様が半泣きです。
サフィア様は動じることなくお姉様を見つめて、隣のフィンレー王子は怯えて後退りしています。
「ウルリカは本当に参考になるわ」
「サフィア、やめろ。やめてくれ」
「私を怒らせなければよろしいかと」
「大事にするから頼む」
「大事に?それだけでは足りません。ちゃんと愛してくださいませ」
サフィア様に睨まれて何度も頭を振って頷いていました。
「あれが姉君の愛情表現なのかな。かなり屈折してるけど」
私を抱き締めたロルフ様が小さく呟いてます。
あれが?
首をかしげて項垂れるメランプスお義兄様とそれを静かな声で威圧するお姉様を見つめました。
そうだとするなら今まで厳しくて怖かったお姉様が違う人に見えてきました。
それに追いかけられた時も沢山お姉様の名前も呼びました。
お姉様なら負けないのにと思って。
「お姉様はとっても頼もしい方ですから」
以前のような息苦しさはありません。
お姉様に頼もしさばかり感じます。
ロルフ様とこそこそお話ししていると、パッとお姉様がこちらを振り返って目をつり上げました。
「リリィ、婚約者とは言えあなたは殿方とそんな距離で何をしているの?」
「ご、ごめんなさいっ、むぎゅ、」
慌てて離れようとしたのにロルフ様が離してくれません。
シーツを引き上げて頭から隠してしまいました。
「姉君、申し訳ありませんが、このまま隠してお連れします」
「……そうですか。……ならどうぞ?」
ロルフ様のお答えに口調は気に入らないという空気でした。
「よ、と」
「はわっ」
「この距離なら運べそう」
シーツでロルフ様のお顔は見えませんが、弾んだお声。
私を横に抱き上げてずんずん進んでいきました。
「タイロン、ウドル、待たせて悪いね?」
「いえいえ、王家には新しい風が入ったとよく分かり満足してます」
タイロン様の機嫌のいいお声。
「そうか、それならよかったよ」
ロルフ様はいつものように穏やかに。
「ユニコーンの乙女にも驚かされましたが、あのお二方の王子妃も爪を隠しておられたのですね。くく、これから勤めが楽しくなりそうだ」
では、私達は騎乗してお供いたしますと声が遠退きました。
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