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フィンレー王子の離宮にサラも呼ばれていました。
ぼろぼろのワンピースは脱いで湯あみのあとは自分の部屋着に着替えます。
「本当に、リリィ様は、ひっく、うう、お怪我ばかりして」
「ごめんなさい、サラ」
「いいえ、リリィ様は何も謝ることありません。リリィ様は、リリィ様はぁ!うわああん!」
「落ち着きなさい、サラ」
世話が出来ないのなら代わりなさいとヨルンガがたしなめてます。
「申し訳ありません、お任せください。ぐすん、ひっく、」
泣きながらも髪の毛に櫛を通して装いを整えてくれます。
「ヨルンガ、怪我」
「大したことありません。血が止まれば明日には包帯も不要です」
頭に巻かれた包帯にはまだ血が滲んでいますのに。
「無理しないで?」
隣で湿布の用意をしてます。
私は頬が腫れただけですけど、ヨルンガの怪我は頭ですし、まだ血も出ていますのに。
「そんな柔ではありません。お気になさらず、ご自身のことを労ってください」
「うん、でも心配だから」
話をしていると扉のノックにヨルンガが立ち上がって対応してくれました。
「リリィ様、お医者様が来られました」
「あ、はい。よろしくお願い、し」
顔を見て目が点になりました。
ガレヌスです。
若いガレヌスが立っています。
ガレヌスは以前、私が怪我をした時お世話になったのですが、少し荒っぽい診察と泣くほど苦いお薬を無理やり飲ませた怖い王宮医師です。
「が、ガレヌス?」
「いえ、息子です」
三番目、と簡潔に答えました。
「サフィア様の専属としてこちらにお供いたしました」
「そ、そうなんですね」
「では、早速診察を」
「あ、はい。お願いします」
ガレヌスみたいに荒っぽいのかと心配でしたが、そんなことなくお優しく顔を確認すると手足や背中、お腹と服の上から細かく触診されています。
意外と優しい。
顔が怖いのは似ていますけど。
「頬以外なら手と足に少々の擦り傷だけですね」
向かいに座って私の手のひらを取るとピンセットで小さく刺さった木の枝をひとつひとつ抜いてくれました。
最後は手のひらを揉んで痛みはないかと尋ねました。
「チクチクするところは?」
「ないです」
「良さそうですね」
お薬なのか柑橘のような香りの香油を塗って布を巻いてます。
「侍女殿、今のように足の裏のささくれを確認しなされ。ピンセットで抜いてこの香油を塗れば傷跡は残りませんから」
「分かりました」
「では、失礼します」
広げた荷物を片付け始めたのでもうお帰りになるようです。
「お顔の手当ては?」
ヨルンガが尋ねるとスッと用意していた湿布を指差してそれでいいと仰います。
「父の持たせた湿布なのでしょう。私も同じものを使ってます。お二人とも湿布の張り替えは慣れていると聞いておりますから、あとはよろしく」
荷物をまとめたらさっさと立ち上がって扉へ。
ヨルンガが急いで扉を開けます。
「本当にそれだけでよろしいのですか?」
戸惑うヨルンガの顔に頷きました。
「もう少し丁寧にとも思いましたが、お連れの一人が重症です。そちらに集中せねば」
「え!まさか、ロルフ様が?」
「いえ、第四王子は薬も抜けて元気です。少々手にお怪我をされてますが、男ならあのくらい軽症です。おおっと、落ち着きなさい」
「誰がそんな怪我をしているんですか?」
半泣きの私が駆け寄るから肩に手を置いてなだめて椅子に座らせると薬箱からお薬を出しています。
「心を穏やかにする薬です。こちらは睡眠薬。元気なご様子に気が回らず申し訳ありません」
ヨルンガに二つの薬を渡していました。
サラがすぐにお水の支度をして飲むばかりにしてくれます。
「飲みますから、あの、怪我はウドルですか?」
「名は知りませんが、顔に傷のある大男です。あなたの前に第四王子とまとめて診察をしました。見た限り肋骨と腕の骨折です」
「わ、私のせいです。あの、えと、お名前」
名を呼ぼうとして名前を聞いていないことに気づきました。
「グレゴリオです。しっかり患者は診ます。安心なさい」
「は、はい。でも、心配で。少し様子を見に行っても、」
気が急いて立ち上がるとグレゴリオが顎をさすりながら首をかしげて私を見つめました。
「本当に活発なご令嬢ですね。大人しくさせるのに苦い薬がいいと父から聞いていたのでご用意しておきましょうか?」
「え、」
「そうですね。どうしましょうか」
「な、悩まなくても。ヨルンガ、大人しくするから苦い薬はだめ、や、やだ。お願い」
沢山お願いしたのに。
明日は寝込むほど苦いお薬を持ってきますと言って出ていきました。
「嫌って言ったのにぃ!」
「そのお顔で部屋を出ようとするからです」
泣いてるのにヨルンガが睨んでます。
泣き落としが効きません。
ぼろぼろのワンピースは脱いで湯あみのあとは自分の部屋着に着替えます。
「本当に、リリィ様は、ひっく、うう、お怪我ばかりして」
「ごめんなさい、サラ」
「いいえ、リリィ様は何も謝ることありません。リリィ様は、リリィ様はぁ!うわああん!」
「落ち着きなさい、サラ」
世話が出来ないのなら代わりなさいとヨルンガがたしなめてます。
「申し訳ありません、お任せください。ぐすん、ひっく、」
泣きながらも髪の毛に櫛を通して装いを整えてくれます。
「ヨルンガ、怪我」
「大したことありません。血が止まれば明日には包帯も不要です」
頭に巻かれた包帯にはまだ血が滲んでいますのに。
「無理しないで?」
隣で湿布の用意をしてます。
私は頬が腫れただけですけど、ヨルンガの怪我は頭ですし、まだ血も出ていますのに。
「そんな柔ではありません。お気になさらず、ご自身のことを労ってください」
「うん、でも心配だから」
話をしていると扉のノックにヨルンガが立ち上がって対応してくれました。
「リリィ様、お医者様が来られました」
「あ、はい。よろしくお願い、し」
顔を見て目が点になりました。
ガレヌスです。
若いガレヌスが立っています。
ガレヌスは以前、私が怪我をした時お世話になったのですが、少し荒っぽい診察と泣くほど苦いお薬を無理やり飲ませた怖い王宮医師です。
「が、ガレヌス?」
「いえ、息子です」
三番目、と簡潔に答えました。
「サフィア様の専属としてこちらにお供いたしました」
「そ、そうなんですね」
「では、早速診察を」
「あ、はい。お願いします」
ガレヌスみたいに荒っぽいのかと心配でしたが、そんなことなくお優しく顔を確認すると手足や背中、お腹と服の上から細かく触診されています。
意外と優しい。
顔が怖いのは似ていますけど。
「頬以外なら手と足に少々の擦り傷だけですね」
向かいに座って私の手のひらを取るとピンセットで小さく刺さった木の枝をひとつひとつ抜いてくれました。
最後は手のひらを揉んで痛みはないかと尋ねました。
「チクチクするところは?」
「ないです」
「良さそうですね」
お薬なのか柑橘のような香りの香油を塗って布を巻いてます。
「侍女殿、今のように足の裏のささくれを確認しなされ。ピンセットで抜いてこの香油を塗れば傷跡は残りませんから」
「分かりました」
「では、失礼します」
広げた荷物を片付け始めたのでもうお帰りになるようです。
「お顔の手当ては?」
ヨルンガが尋ねるとスッと用意していた湿布を指差してそれでいいと仰います。
「父の持たせた湿布なのでしょう。私も同じものを使ってます。お二人とも湿布の張り替えは慣れていると聞いておりますから、あとはよろしく」
荷物をまとめたらさっさと立ち上がって扉へ。
ヨルンガが急いで扉を開けます。
「本当にそれだけでよろしいのですか?」
戸惑うヨルンガの顔に頷きました。
「もう少し丁寧にとも思いましたが、お連れの一人が重症です。そちらに集中せねば」
「え!まさか、ロルフ様が?」
「いえ、第四王子は薬も抜けて元気です。少々手にお怪我をされてますが、男ならあのくらい軽症です。おおっと、落ち着きなさい」
「誰がそんな怪我をしているんですか?」
半泣きの私が駆け寄るから肩に手を置いてなだめて椅子に座らせると薬箱からお薬を出しています。
「心を穏やかにする薬です。こちらは睡眠薬。元気なご様子に気が回らず申し訳ありません」
ヨルンガに二つの薬を渡していました。
サラがすぐにお水の支度をして飲むばかりにしてくれます。
「飲みますから、あの、怪我はウドルですか?」
「名は知りませんが、顔に傷のある大男です。あなたの前に第四王子とまとめて診察をしました。見た限り肋骨と腕の骨折です」
「わ、私のせいです。あの、えと、お名前」
名を呼ぼうとして名前を聞いていないことに気づきました。
「グレゴリオです。しっかり患者は診ます。安心なさい」
「は、はい。でも、心配で。少し様子を見に行っても、」
気が急いて立ち上がるとグレゴリオが顎をさすりながら首をかしげて私を見つめました。
「本当に活発なご令嬢ですね。大人しくさせるのに苦い薬がいいと父から聞いていたのでご用意しておきましょうか?」
「え、」
「そうですね。どうしましょうか」
「な、悩まなくても。ヨルンガ、大人しくするから苦い薬はだめ、や、やだ。お願い」
沢山お願いしたのに。
明日は寝込むほど苦いお薬を持ってきますと言って出ていきました。
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