伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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2週間もたつと怪我が目立たなくなったので、サフィア様のお茶会に招かれました。

事件の経過もお話しするからお二人と聞いておりましたのに。




「リリィが逃げた!」

「リリィ様!」

「お待ちください!」

だって!だって!

お庭に行ったらロルフ様がいらっしゃるんですもの!

お会いできて嬉しかったのに。

そのまま向かいに座ってらっしゃるお二人の側で挨拶したら、サフィア様がいきなりからかうんですもの。

「ロルフ様の妖精が戻りましたわよ?全てが愛しくて可愛らしいのよね。ほほ、羨ましいわ。私も情熱的に愛を語られたい」

主人にお願いしなくてはと。

次の瞬間、私もロルフ様も顔が真っ赤に。

「う“んんっ、そ、それは、本音なので」

「ほほ、よろしいのよ?さあ、リリィ。ここへ。ロルフ様のお隣。会えるのを楽しみにしてたのよね」

「あ、う。あ、あの、」

「気にせずいいのよ?お話が終わったら二人にしてあげるから。沢山愛を語らうといいわ」

サフィア様の笑顔の圧とロルフ様の赤いお顔。

でも瞳はお優しく細めて私を見つめています。

「リリィ、隣へ、」

「ご、ごめんなさいぃ」

息が苦しいです。

久々のコルセットのせいかと思います。

言い訳ですけど。

ロルフ様の眼差しが嬉しくて恥ずかしくて。

ずりずりと後退りしていたらサフィア様は不思議そうにされます。

「リリィ?どうしたの?あなたの大好きなロルフ様よ?毎日会いたいと医師のグレゴリオに話していたのよね?」

目の前ではっきりと。

ぴゃっと体が跳ねます。

「は、恥ずかしくて、あの、あの、もう、」

「あ、リリィ!待ちなさい!」

思わず後ろを振り返って走って逃げました。

逃げたと後ろから皆さんの慌てた声が聞こえましたけど、足が止まりません。

裸足でもヒールでも走るのは得意のようです。

中庭の奥。

サラとヨルンガとロルフ様を撒いてしまいました。

「……ど、どうしよう」

頬の火照りが消えればとんでもないことをしたと青ざめてしまいます。

お忙しいサフィア様がせっかくお時間を作ってくださったのに。

戻らなきゃと思うのにぼろぼろ涙が出て声もひくひくとえずいて止まらない。

木陰で膝を丸めて泣いていました。

『お姫さん?なんデ、ここにいル?』

『う、ウドル』

『また何かアッタのか?大丈夫か?』

覆面のウドルです。

背中の篭を下ろして私の目の前に座ります。

『ち、違うの、恥ずかしくナッテ、私が』

せっかくサフィア様のご好意で婚約者に会えたのにとメソメソしているとウドルは分からないと首をひねります。

『何が恥ずかしイのか、俺にはさっぱりダ』

早く戻れと急かされて手を出すので大人しくその手を握りました。

『いて、』

「ご、ごめん」

私の体を引いたところでウドルが顔を歪めたのでさっと手を離しました。

『……”ごめん“、前も言っていタ。どういう意味ダ?』

『ごめんなさいって意味』

『……貴族のクセに気安く言ウな』

『え?……ごめんなさい』

呆れた顔付きで、ふうとため息。

『俺はただの庭師ダ』

『……うん、ごめん』

それがどうして謝るとダメとたしなめられたか分かりません。

『分かってナイ。もうイイ。ソレより顔』

ポケットから綺麗なハンカチを出して私の頬をポンポンと撫でます。

『……こんなスグに役立つと思わなかっタ』

『買っタの?』

『褒美に貰っタ。前になくテ困っタから』

にこっと目が細く。

ロルフ様に似ています。

『ハンカチ、貰って良かっタ』

覆面の下で満足そうな微笑み。

よく分からないけどウドルの笑みにほっとして私も微笑み返しました。
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