伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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タイロンの復讐

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王宮の第二執務室。

「ひどい顔色だな」

「……そうですかね?」

メランプス王子からの指摘に顎をさする。

毎日それなりに楽しいつもりなんだが、体はそうもいかないらしい。

「囚人に執着しすぎるな」

「そうですね」

素直に返事を返した。

その傾向は理解している。

反省する気がないだけだ。

「それで庭師の件か?」

「はい」

あいつの今後の処遇。

メランプス王子にもあいつと俺の関わりを見せたくないが、仕方がない。

庭に頻繁に出入りしてあいつと会ってるのはもう知られている。

「ふーん。……特に何もないつもりだけど、何を気にしてる?分からないと答えようがない」

「……リリィ・サンマルク嬢があの庭師本人にあちらの庭師として雇いたいと話していたそうです」

「……あー、リリィかぁ」

リリィはなぁ、と天を仰いでぼやいた。

「言いそう、と言うか、言ったんだろうね。……ちょうど」

ちょうど?

言葉に反応して目線が動く。

「ロルフの封書と一緒にリリィから庭師は元気かと手紙が入っていた。……ふう。……何も知らせてないからなぁ」

言葉の意図が分からずに目を細めるとメランプス王子が執務机に頬杖をつく。

「あの子はなかなかののんびり屋でね。お詫びを送ったのに、無事だからいいですの一言だよ。国の大事を一介の伯爵令嬢が知ることではないからと断って必要なことは婚約者とサフィア王子妃にどうぞと丸投げ。おかげで逆に二人のやりたい放題になったけど」

遠慮しながら一番、手強い相手を表に出すから厄介だとぼやく。

「ロルフに話がいったら正式に要求してくる。あいつ、婚約者に甘いから。……先に庭師をやっちゃおうかなぁ」

「は?」

「ちょうど譲りたくない案件があるんだ。それの代わりにしてもいい」

「あ、」

ぐっと腹に力を入れて言葉を堪えた。

王家の秘密を知るのに、と。

そんなことを言えばすぐに病死ということにして処分しようと言われかねない。

「身内か?」

「いえ」

身内ではない。

あっちは俺のこと忘れていた。

俺も布の下の顔の傷を見るまで気づかなかった。

あいつはデカく育ちすぎたからだ。

初見で分かるかよ、あんなデカイの。

それに今さらかな。

あいつとは子供の頃の思い出ってだけだ。

「まあいい。考えておく。処分かどうか」

小さく息を飲む。

目付きも瞬時に研ぎ澄ました。

「嫌なら言わないと分からないんだが」

「……何のことですか」

「……いまだにお前はなつかないんだな。そんなに僕じゃ不満か?」

悔しそうに唇を噛んで睨まれた。

知るか、俺は王家の全てが嫌いだ。

「優先はあなたですけど?」

三人の中でならこの王子だ。

取り立ててくれた恩がある。

あの王女は最初から論外。

フィンレー王子も微妙なところ。

「ちっ、お前は信用出来るがお前からの信頼はない」

そっぽを向いてすぐに剣呑な目付きが丸く変わる。

「……庭師を置いておけば変わるか」

にや、と口許が歪む。

それを見てムッとした。

「お前の友人だ。大事にしよう」

猫のように笑うからムカついた。

帰りにメランプス王子に似た猫を見つけたら蹴るかもしれないと頭によぎった。

帰り道ではユニコーン娘とその婚約者を思い出した。

二人ともあいつの名前を呼ぶ。

メランプス王子をそれなりに気に入ってるが、やっぱりあんたは王家の人間だ。

名前を覚える気なんかねぇ。

それがあいつらとの差だよ。

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