伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

文字の大きさ
69 / 78

タイロンの復讐

しおりを挟む
ひと月もしたら向こうから新しい外交官が王宮に来た。

かなりの年寄り。

こんな長旅、よく持ちこたえたなと思うほど。

だけど、かなりの恰幅の良さとニコニコ愛想よく笑うのに微かに見え隠れする目付きの悪さが気になった。

怒りを含んだ冷えた目付き。

下手は出来ない気がして護衛や案内は俺が対応した。

数日もたてばこの年寄りがかなりのやり手だと分かった。

会議の護衛に付き添えば、時折青ざめるメランプス王子と外務大臣。

顔を怒りで赤くするフィンレー王子。

だけどそうなればこのじいさんがにこやかに一言、二言、何か仄めかせばすぐに誰かがじいさんの援護に回る。

マイナスはうちで持つと言って。

とんでもねぇじいさんが来たと舌を巻いた。

「タイロン殿、良ければ中へ」

客室へ送ったあと室内へ呼ばれた。

変わった外交官だ。

こちらの用意した離宮に堂々とくつろぐ。

他国の外交官は毎日の作戦を皆と練るために王宮外の官邸を利用したがるのに。

諜報も考慮して自国の使用人を沢山連れてくるのが通例なのに珍しいほどの少数だ。

棚の酒を取ろうとしたので率先して動く。

「よいよい。座りなさい。助けた礼をしたい」

誰のことかと思うが、心当たりは一人だ。

「ユニコーンの乙女ですね」

当然のことをしたまでと答えると第四王子より可愛がってるからと笑う。

「孫同然のご令嬢でなぁ。悲しませるようなことがあればもっと根こそぎ剥いでやるのに。今回はこの程度にしとこうかのぉ」

憎々しげな声音に少し体が後ろへ引く。

「我が国から二人のご令嬢が輿入れもしとる。利益も返さねばの。明日はその話をしよう」

ニコニコと笑うのに目付きが鋭い。

席についてしばらく明日についての話題を肴に酒の相手をすると急に、くふくふと笑いだした。

「もう良さそうだ」

さっと立ち上がって手招きをする。

「もう一人はどこかな。預かりものがある」

さあ急げと急き立てられ扉の外へ。

「何がもうよろしいのですか?」

「見張り」

気づいていたのかと目を細めた。

お互いひとりで一本近く飲んでる。

見張りの気配も消えて残された俺はまだ帰さんのかと呆れていたとことだった。

「かなり歩きますよ。時間が、」

「走ればよい。ほら行くぞ」

「は?」

「方向はどっちだ。ほら走れ」

「うわっ」

バシンと背中を叩かれて後ろから追いたててくる。

なんだ、このじいさんは。

「足が遅い。若いくせに不摂生がすぎるぞ」

「くっ」

遅れたら後ろからバシバシ叩かれた。

あれから毎日の拷問と勉強会だ。

睡眠不足は否めない。

メランプス王子や部下だけでなくあいつからも休めと叱られていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~

キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。 両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。 ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。 全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。 エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。 ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。 こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

婚約破棄されるはずでしたが、王太子の目の前で皇帝に攫われました』

鷹 綾
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間―― 目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。 そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。 一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。 選ばれる側から、選ぶ側へ。 これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。 --

この度娘が結婚する事になりました。女手一つ、なんとか親としての務めを果たし終えたと思っていたら騎士上がりの年下侯爵様に見初められました。

毒島かすみ
恋愛
真実の愛を見つけたと、夫に離婚を突きつけられた主人公エミリアは娘と共に貧しい生活を強いられながらも、自分達の幸せの為に道を切り開き、幸せを掴んでいく物語です。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し

有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。 30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。 1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。 だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。 そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。 史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。 世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。 全くのフィクションですので、歴史考察はありません。 *あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。

処理中です...