伯爵令嬢、溺愛されるまで~婚約後~

うめまつ

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タイロンの復讐

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息が上がって前のめりになる。

さすがのじいさんも同じだ。

「ふーっ、この小屋か」

トントンと丁寧に扉を叩く。

俺はいつも勝手に開ける。

不思議そうな顔をしたあいつがすぐに顔を出した。

「……コンバンワ。……アンタ、誰ダ?」

「どうも、夜分に申し訳ない」

丁寧に挨拶して名乗りをする。

貴族と分かり慌ててる。

「顔の傷、大きな体格。目の色と髪の色も。間違いないな。よし、これは預かりものだ。確認を頼む」

小さな小包みを渡した。

手のひらサイズのそれを訝しげにしながら中を開けると小さめのキャンバス。

まじまじと見つめて首をかしげた。

「お姫さんには、コウ見えタノカ?」

黙って俺も手を出して見せてもらうと、キャンバスには結構な男前に描かれたこいつだ。

「……は、はは。格好いいじゃねぇか。良すぎるかと思ったが似てるぞ。笑うとこんな感じだ」

「カラかうな」

「はは、怒るなよ。これ、きっとあの子が描いたぜ?」

そう言うと睨んでいたくせに顔が緩む。

俺もだ。

下手くそって言えば下手くそ。

多分、誰かに手伝ってもらってそれから特徴をちょいちょい足したんだ。

筆のタッチがアンバランスだから分かりやすい。

字が書けないこいつのために。

「これは私から。いらんならやらん」

どっちがいい、と聞かれて二枚の絵姿。

婚約者とユニコーン娘の。

大人びた奴と幼い奴。

去年と今年のらしい。

「ぶは、第四王子、こんな可愛かったのかよ」

何これ、ちっさ。

「可愛いのはリリィだ」

じいさんに睨まれたが、ユニコーン娘はどっちも変わらない。

一緒だ。

「……あの、スイマセン。コッチをくだサイ」

顔を赤くして大人びた絵姿を指さした。

便乗して幼い絵姿は俺がもらった。

二人が可愛いから。

渋面だったが帰れば家にあるとぼやく。

「これは第四王子から」

もうひとつ出てきた。

ハンカチが二枚。

高そうな奴が一枚。

もう一枚はかなり地味。

小さな刺繍が端についている。

これもユニコーン娘らしい。

やっぱり下手くそ。

かなり不器用。

「最初はこれを頑張ってたが諦めたらしい。第四王子がこっそり回収した」

「途中なんじゃないですか?」

「いや、こんなもん」

私も似たものを持ってると答えたからたまらない。

「ぶふっ、ふ!くく!くはっ、はは!」

貴族の娘と思えばギリギリ。

王家の婚約者なのに、これはだめだ。

「いで、あでっ!くおおおっ、いってぇ」

二人がかりで殴られた。

じいさんの方がひでぇ。

眉間の急所を狙いやがった。

「うるサイ」

「やかましいわい」

「あはは、反省します、あてて、いてて、もう勘弁、あはは、」

眉間を押さえながら、笑って答えるからブスくれたじいさんが耳をぐっと引っ張る。

こんな笑うのは久しぶりだ。

すっげぇ楽しい。
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