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くっさ。
また来てる。
小さい小窓しかなくて閉めっぱなし。
真っ暗な狭い庭師小屋。
こいつが俺の寝床でいつも寝てる。
悪いけど臭い。
何かって血だ。
あと今日は少し汚物っぽい臭い。
この小屋は草と花しか置いてない。
奥様にお出しするドライフラワーなんか作ってるのになぁ。
ふう、とため息。
でもいつも洗ってくるのに変だな。
今日は特に臭い。
多分、武具の隙間に染みてるんだろうけど、宮殿の中を歩く時に臭いを注意されないのか?
ふむ、と首をかしげて俺と変わらない大男を眺めた。
開けた扉の軋みにも気づかず寝てる。
そういう時は放っとく。
きっと眠いんだ。
静かに扉と小窓を開けて空気の入れ換えをする。
起こさないように静かな作業。
集めた種の選別。
形の良いのだけ。
残念な種は中庭の人の目に触れない場所で育てるか奥様の許しがあるなら売ったり譲ったり。
また時期が来るまで種は寝かせる。
ガーゼに包んで麻の小袋へ。
数と花の名前だけは書ける。
薄い木板にカリカリとインクで書く。
今は名前だけ。
「う、んん」
起きたな。
でも放っとく。
また寝ろ。
こっちの邪魔されたくない。
近衛なのにこいつは夜勤が多い。
毎日、血で臭いのも。
悪かった顔色が治ったけどこいつ大丈夫なのか?
大体の作業が終わったんで壁に干してた草花をいくつか集めた。
すんすんと匂いを嗅いでどれにするか選んだ。
「……水くれぇ。喉乾いた」
「勝手に飲メ」
水桶を指さす。
新しいのは置いておいた。
「ああ?……チッ、んだよ」
ケチと文句言いながら自分で。
俺の小屋を臭くした上にワガママ言うなと内心でおさめる。
いちいち喧嘩するほどのことじゃない。
言えば自分でするし、悪いと思えばちゃんと謝る。
今、困ってるのは臭いをだけだ。
「お前、靴をチャンと洗え。臭うゾ」
「え、まじか?」
ふと見ると地面に汚れがついている。
足跡。
靴底が汚れてるんだ。
「オイ、マサか拭いただけか?水洗いは?ブラシは?靴下、変えタのか?」
「あー、……あは」
「このバカ」
臭いはずだ。
しかもそのままの足で俺の寝床を使いやがった。
藁にかけたシーツの上でブーツのまま寝てたから絶対、汚れた。
「ソレしかないのに」
ブスくれてると頭をかきながら謝ってきた。
素直に謝るなら許すしかない。
「換えを持ってくるよ、悪かった」
「持って来タラ、許ス」
それにどこかの石畳や芝生も汚れたはずだ。
どこを通ってきたと聞けばいつも通りと答えたので清掃してくると告げてから、立ち上がった。
「悪い、手伝う」
「イイ。夜勤ダろ?」
ハッとして外の日時計を見た。
「あー、寝過ぎたぁ」
もう行かなきゃと慌ててる。
「臭いカラ、コレを持って行ケ」
「あん?」
臭い消しのハーブを詰めた麻袋を渡した。
「怒らレルぞ?」
靴を洗う時もそれに浸したり擦ったりしろと教える。
少しはましだ。
「おー、すげぇ。さすがだなぁ。これ便利じゃん。悪いけどまたくれない?」
「イイぞ。そのくらい」
勉強のお礼になるならと安請け合いした。
「あと20個よろしく。部下もくせぇから助かるわー」
「に、にじゅう?!」
驚いてる間にじゃーな、明日もらいに来ると走っていなくなった。
昔っからあいつの猫なで声は気を付けなきゃいけないのに、また引っ掛かった自分が間抜けだ。
仕方ない。
それより明るいうちに急がないと。
桶とブラシを持って庭の清掃に向かう。
思ったより汚れていた。
もう一度、心の中であのバカと罵る。
一瞬、ブーツを洗ってやろうかとよぎって固まった。
さすがにそれは甘やかしすぎな気がするし、男同士でなんとなく気持ち悪い。
でもこの血と汚物の足跡を見るとまた妙な仕事を任されてるんだろうなぁって。
あいつ、昔から頭が良くて要領いいから大人と混じって対等にやり合ってた。
俺なら出来ないような難しい話を当たり前に。
その場で頭の中でそろばん弾いて金の交渉から品物の確認から買い取り。
すごいんだよなぁ。
末っ子のくせに。
言わないけど絶対末っ子。
あの我が儘で負けず嫌いで人懐っこいのは末っ子。
末っ子なのに。
あいつは家族いなくて甘えるところがない。
だから、毎日こうやって休みに来るのも疲れてるのかなと思った。
ブーツなんか洗ってやるくらい良い気もする。
どうしようかな。
また来てる。
小さい小窓しかなくて閉めっぱなし。
真っ暗な狭い庭師小屋。
こいつが俺の寝床でいつも寝てる。
悪いけど臭い。
何かって血だ。
あと今日は少し汚物っぽい臭い。
この小屋は草と花しか置いてない。
奥様にお出しするドライフラワーなんか作ってるのになぁ。
ふう、とため息。
でもいつも洗ってくるのに変だな。
今日は特に臭い。
多分、武具の隙間に染みてるんだろうけど、宮殿の中を歩く時に臭いを注意されないのか?
ふむ、と首をかしげて俺と変わらない大男を眺めた。
開けた扉の軋みにも気づかず寝てる。
そういう時は放っとく。
きっと眠いんだ。
静かに扉と小窓を開けて空気の入れ換えをする。
起こさないように静かな作業。
集めた種の選別。
形の良いのだけ。
残念な種は中庭の人の目に触れない場所で育てるか奥様の許しがあるなら売ったり譲ったり。
また時期が来るまで種は寝かせる。
ガーゼに包んで麻の小袋へ。
数と花の名前だけは書ける。
薄い木板にカリカリとインクで書く。
今は名前だけ。
「う、んん」
起きたな。
でも放っとく。
また寝ろ。
こっちの邪魔されたくない。
近衛なのにこいつは夜勤が多い。
毎日、血で臭いのも。
悪かった顔色が治ったけどこいつ大丈夫なのか?
大体の作業が終わったんで壁に干してた草花をいくつか集めた。
すんすんと匂いを嗅いでどれにするか選んだ。
「……水くれぇ。喉乾いた」
「勝手に飲メ」
水桶を指さす。
新しいのは置いておいた。
「ああ?……チッ、んだよ」
ケチと文句言いながら自分で。
俺の小屋を臭くした上にワガママ言うなと内心でおさめる。
いちいち喧嘩するほどのことじゃない。
言えば自分でするし、悪いと思えばちゃんと謝る。
今、困ってるのは臭いをだけだ。
「お前、靴をチャンと洗え。臭うゾ」
「え、まじか?」
ふと見ると地面に汚れがついている。
足跡。
靴底が汚れてるんだ。
「オイ、マサか拭いただけか?水洗いは?ブラシは?靴下、変えタのか?」
「あー、……あは」
「このバカ」
臭いはずだ。
しかもそのままの足で俺の寝床を使いやがった。
藁にかけたシーツの上でブーツのまま寝てたから絶対、汚れた。
「ソレしかないのに」
ブスくれてると頭をかきながら謝ってきた。
素直に謝るなら許すしかない。
「換えを持ってくるよ、悪かった」
「持って来タラ、許ス」
それにどこかの石畳や芝生も汚れたはずだ。
どこを通ってきたと聞けばいつも通りと答えたので清掃してくると告げてから、立ち上がった。
「悪い、手伝う」
「イイ。夜勤ダろ?」
ハッとして外の日時計を見た。
「あー、寝過ぎたぁ」
もう行かなきゃと慌ててる。
「臭いカラ、コレを持って行ケ」
「あん?」
臭い消しのハーブを詰めた麻袋を渡した。
「怒らレルぞ?」
靴を洗う時もそれに浸したり擦ったりしろと教える。
少しはましだ。
「おー、すげぇ。さすがだなぁ。これ便利じゃん。悪いけどまたくれない?」
「イイぞ。そのくらい」
勉強のお礼になるならと安請け合いした。
「あと20個よろしく。部下もくせぇから助かるわー」
「に、にじゅう?!」
驚いてる間にじゃーな、明日もらいに来ると走っていなくなった。
昔っからあいつの猫なで声は気を付けなきゃいけないのに、また引っ掛かった自分が間抜けだ。
仕方ない。
それより明るいうちに急がないと。
桶とブラシを持って庭の清掃に向かう。
思ったより汚れていた。
もう一度、心の中であのバカと罵る。
一瞬、ブーツを洗ってやろうかとよぎって固まった。
さすがにそれは甘やかしすぎな気がするし、男同士でなんとなく気持ち悪い。
でもこの血と汚物の足跡を見るとまた妙な仕事を任されてるんだろうなぁって。
あいつ、昔から頭が良くて要領いいから大人と混じって対等にやり合ってた。
俺なら出来ないような難しい話を当たり前に。
その場で頭の中でそろばん弾いて金の交渉から品物の確認から買い取り。
すごいんだよなぁ。
末っ子のくせに。
言わないけど絶対末っ子。
あの我が儘で負けず嫌いで人懐っこいのは末っ子。
末っ子なのに。
あいつは家族いなくて甘えるところがない。
だから、毎日こうやって休みに来るのも疲れてるのかなと思った。
ブーツなんか洗ってやるくらい良い気もする。
どうしようかな。
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