人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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大型

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その日も通常の魔獣討伐だった。
金物の匂いと音で逃がさぬように革鎧の軽装。
ある程度狩り終えて帰路につこうと気が緩んだ時、地面を揺らすドンという地響きで周囲の木々が大きく揺れた。

そしてすぐに森の奥から大気を震わす咆哮と威圧。

「スタンビードだ!構えろ!」

近々と予想はついていた。そのために人員は通常の倍で動いている。

魔力溜まりから爆発的に魔獣が産まれて溢れるとしか分かっていないのでこうやって間引きするしか対応はない。

小型、中型と雑多な魔獣が奥から飛び出して、その奥から生まれたてらしい大型が大量に足元の手頃な魔獣を食い荒らしながら現れた。

「今は討伐出来なくても押し返すだけでいい!」

各々、訓練通りに隊列を組ながら全員、強化をまとい魔獣に当たる。

エドと私、エヴ嬢と他の三人は単体で大型と対峙した。

剣を振るい1体、2体と屠る。

半日程で大半は壊滅した。前半の討伐の影響で万全ではなかったことで、それなりの犠牲者と魔力切れで倒れる者が多い。救いだったのはラウルの鳥で早急に城内へ救援を呼べたことだ。

「スミス、魔力溜まりは消えたか?」

うちの一番の探索使い。

地に両手を置いて魔力を流す。

顔色の悪さから魔力切れが分かった。

「帰る体力は残しておけ」

尖った耳をピクピクさせて気を付けますと答えた。

「でも彼には負けたくありません」

スミスの言う彼とはエヴ嬢付きのラウルだ。同じエルフの混血で似た系統の魔法を使う。今のところラウルに軍配が上がって悔しい思いをしている。

「私が信頼するのはお前だ。気にするな。何か分かったらエドか私に知らせろ」

「承知しました」

必ずお役に立ちますと負けたくないときつく目を細める。

「負傷者が多いんだ。帰りはひと一人を担ぐつもりでいろ」

やる気になるのはいいが無茶をされても困る。

負傷者、犠牲者を把握して負傷したというロバート殿の様子を見に行く。
岩に腰こけてベアード殿に片腕の止血を受けていた。皆と同様に顔色が悪い。

「よくご無事で」

ベアードと組み数人の隊列で大型の討伐に当たったと聞く。

「なんとか生き延びました」

少し離れてエヴ嬢達も側に控えている。ラウルもスミスと同じように探索魔法を使っているようだった。両手を地面につけている。
少し異質なのはヤンが向かいに座ってラウルの手に手を重ねている。繋がれた手はボウッと薄く光っていた。

「エヴ様、ロバート様、半刻もせずに飛行種が来ます。数は20から30。全体は小型と中型。大型が2、3体混じっています」

「この暗さで飛ぶなら夜行種か砦まで来るか?」

「おそらく」

指示を仰ぐようにロバート殿が私を見た。

「鳥を飛ばせ。出来るか?」

ならばと引き継いで問う。

ヤンが汗を吹き出しながら手が強く光る。ラウルも汗をボタボタとこぼしながら手から鳥を数羽、作り手をあげれば砦へと飛んでいく。

二人ともその場に突っ伏して肩で喘ぐ。

「砦の守りに戻ります」

即座の撤退としんがりの選別。頭の中は目まぐるしく回転していた。

「帰路の川沿いに反応がありました。進路を変える必要ごあります」

ラウルが顔の汗を拭きながらこちらへ進言した。場所を確認すると通り道となる川沿いだ。そこを避けて進むようにと言う。

「個体数とサイズは?」

遠回りになることが気がかりだ。早急に負傷者の収容と砦の守りを固めたい。

「川べりに大型が4体です。中型も。おそらく水中にも魔獣がいます」

「分かった」

地中と違い、水中の探索はまた別に魔力を流さねば感知できない。
空からの襲来は木や地面についたことで感知できる。スミスよりかなり広範囲で正確な探索に目を見張る。とんでもない技量に専門の魔導師でもここまで出来る者がいるのか疑問だ。それにしてもまたあいつが悔しがるだろうと苦笑がこぼれて、この切羽詰まった状況なのに思ったより余裕な自分に意外だと感じた。

「地形の不利がある。ロバート殿、そちらの団が主体となって案内してください。しんがりはこちらの動ける者を出します」

「こちらからも出します。お互いにこれ以上の犠牲者を出すわけにはいきませんから」

「お兄様、私が動けます」

場にそぐわない鈴のような声。

ロバート殿は苦しげに顔を歪めたが、頼むと答えた。

「はぁい。がんばります」

声の主、エヴ嬢だけがまだ強化を解かぬまま。

顔色が悪く疲れて項垂れた団員らの中で一人まっすぐ立っていた。
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