人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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しんがり

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「エヴ、二人を借りるよ」

「はぁい、どうぞ」

ロバート殿がヤンとラウルを指さす。
エヴ嬢の驚くことなくゆったりと頷く。

「ベアード、二人を先頭に。ラウルは小まめに探索をかけろ。ヤンはラウルのタンクになれ」

二人も当然と首肯する。

「タンクとは?」 

問うとロバート殿がこちらを振り返る。

「ヤンはドレインですが、吸うだけでなく補充も出来ます」

先程の探索で手を重ねていたのは魔力の補充だと話す。

「私にも出来るか?」

ヤンの答えを聞く前に手を出した。

「慣れていないと吐きます。痛みも」

「構わん」

「相性が悪ければ増えません。それでもよろしいですか?」

「ものは試しだ」

「分かりました。両手を」

言われた通りにヤンの前に手を出した。ヤンは手の甲から包むように手を握る。
ボウッと触れた肌が光ると、そこが熱湯をかけたように熱くなった。

「ぐ、」

それだけでなく火傷のような痛みが触れたところから腕へと一気に広がった。
歯を食いしばって耐えるが、瞬く間に胃がせりあがり前のめりにかしいだ。

「ぐお、うお、え!」

どぼっと口から腹のものが吹きだした。自分の足元にぶちまけて私とヤンの靴が汚れた。

「思ったより入りました」

靴を汚してしまったのに気にした様子はない。それより思ったより器に注げたことに満足している。

嘔吐は一過性のものらしく、続けて気分が悪いと言うことはない。全快とは言えないが失った半分近くの魔力が戻った。

「はあ、はあ、靴をすまない」

「いえ、どうせ血と泥で汚れています」

額に汗をにじませてそれをこすっている。

「貴公にも副作用があるのか?」

「通常吸い込むのを、逆に無理やり吐き出すので多少負担なだけです。相性が良ければ問題ありません」

そう言って次はダリウスの片手を取る。同じように光るので魔力を注いでいると分かった。

「もういい。無理するな」

ダリウスの逃げる手を捕まえ直してまた光る。

「魔獣の分が余ってる。減らさないと新しく吸えない」

私や先程のラウルと違い、何の支障もなさそうだ。二人の馴染んだ様子に相性のよさを納得する。

そのやり取りの横でラウルがヤンへ手を出した。

「くれ」

「やる」

ダリウスの手を離して次はラウルの手を握った。一瞬、強く光ってもう終わりだたとすぐに手を離した。

「相性がいいのか?」

先程の辛そうな様子から相性が悪いと思ったのだがと話すと、ラウルは緑の瞳でジロッと睨んできた。

「さっきのは探索魔法に注いでたんです。俺が術式、ヤンが動力」

延々と逆流させてヤンには負担らしい。同様にラウルも通常の数倍大きな規模の術式を展開させるから死にそうになると答えた。

軽く、そうかと答えてその場は離れた。

驚いて見せる気にならなかった。

エヴ嬢もラウルも、ヤンとダリウスも。

一人一人がとんでもない技量だ。

あの四人合わせればうちの団に匹敵する。

このクレイン領に留めるには過ぎた戦力だ。

黒獅子により四人の存在は王宮に露呈した。

そして共闘する私達から王宮へ詳細が伝わる。あとは王宮の判断に従うが、必ず何かしら対策を講じるだろう。このまま放っておくには力が強大すぎる。

先のことを考えつつ、周囲へ撤退の指示を出す。負傷者を先頭にロバート殿が率いるクレインの私兵団とヤンとラウルに任せた。

中核にはベアード殿とエドを組ませる。

後方には私とエヴ嬢、ダリウスが対応する。
側には探索のためにスミスを呼んだ。

だが、小まめに探索をするので魔力切れで顔色が悪い。ヤンに頼んでスミスにも交流をしてもらったが、残念なことに吐いただけで全く増えなかった。

団の後方で私達四人が徒歩で進む。途中、ダリウスが草の茎を折ってスミスに渡した。

「この茎の水分に魔力回復の効果があります」

この地方の植物らしく魔力枯渇した時の応急措置に使われるようだ。

「ありがたい」

「1本で止めてくださいね。それだけでも口の中がかぶれますし、2本めは腹を下します」

「そうか、それでも今はありがたい」

そう言って口に咥えた。

「ラウルがいればいいのに」

ポツリとエヴ嬢が呟いて、スミスが苦々しく顔を歪めた。それを見てダリウスも主の言葉に困ったように眉を下げた。
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