16 / 315
人狼
しおりを挟む
グリーブスは人狼の家系だ。
豪腕と繁殖。
人族の何倍もの筋力と運動神経。
性欲が多くて絶倫。
私もその通りに人狼としての体力と魔力を持つし、絶倫だ。
今まで好きに遊んだ。
そして人狼族の最大の特徴は番だ。
人生で一度だけ愛する人と出会ったら獣化出来るようになる。
その相手しか愛せない。
だから情愛の人狼と呼ばれている。
私は今だに獣化したことがない。
いつか会えると期待していたが三十路を過ぎた今は諦めていた。
国内外を遠征で周り探したのに。
通常の人狼なら10才から20才の間で見つける。
ここまで遅い者はそうはいない。
ちらっとエヴ嬢へと視線を向けた。
エヴ嬢の姿形は美しい。
性格も明け透けで幼いが無邪気さは好ましい。
この豪腕も頼もしいと気に入っている。
だが、どんなに気に入っても人狼にとっての番とは違う。
性別も身分も関係ない。
どんな姿形だろうが性格が破綻していようが、一目見て番だと本能が言えば逆らえない存在なのだ。
獣化してその場で拐って食う。
それがグリーブスにとって当然のこと。
これほど自分から欲した相手は初めてだ。
だが、獣化しない。
その疑念が私の相手ではないのだと自制する。
欲しくてたまらないが病気で寝込んどるところを押し倒したいと考える自分の性欲にも呆れる。
間違いを起こしたくない。
嫌われたくない。
そう思ってエヴ嬢から目をそらした。
汁物を作ってエヴ嬢を起こす。
「食べられるか?」
エヴ嬢がゆっくり仰向けに寝転ぶ。
「無理です。ごめんなさい」
食べられないなら仕方ないと答えるとまた、すいませんとか細い声で謝る。
静かにポロポロ涙を流す。
「泣くな」
「すいません。何でか出ます。そんな泣くほどキツイ訳でもないのに」
マントで顔を拭っている。
「熱のせいだ。そういう時もある」
「はぁい。…ぐす、」
すんすんと小さく。
マントで顔を隠して泣いた。
額に手を乗せると変わらず熱い。
顔にかかった髪を後ろへと撫で付ける。
そうやったから熱が下がるわけでもないのにいつまでもしていた。
「団長」
「ん?なん、だ?」
少し下げたマントから紫の目と視線がかち合う。
目が合っただけなのに、ぞわっと総毛立ち全身が固まる。
何もないよう受け答えを返すが、声がうわずった。
「やっぱりキツイです。泣くほど」
「そうか」
「迷惑かけたこともごめんなさい」
「迷惑などない」
「…ありがとうございます」
しょぼんと悲しそうに眉が下がる。
「嘘じゃないからな。気を使った訳じゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だ。気にしなくていいから寝なさい。もう少し熱が落ち着いたら食事も出来る」
「はい」
静かにまた目をつぶって横を向いた。
黒猫が鳴きながらエヴ嬢の首もとへ。
丸まってぐるぐると喉を鳴らした。
「ヒムド、きもちいい。ふわふわ」
マントから腕を出して猫を抱き寄せている。
白い肩と二の腕にまた見とれてしまい、慌てて目をそらした。
豪腕と繁殖。
人族の何倍もの筋力と運動神経。
性欲が多くて絶倫。
私もその通りに人狼としての体力と魔力を持つし、絶倫だ。
今まで好きに遊んだ。
そして人狼族の最大の特徴は番だ。
人生で一度だけ愛する人と出会ったら獣化出来るようになる。
その相手しか愛せない。
だから情愛の人狼と呼ばれている。
私は今だに獣化したことがない。
いつか会えると期待していたが三十路を過ぎた今は諦めていた。
国内外を遠征で周り探したのに。
通常の人狼なら10才から20才の間で見つける。
ここまで遅い者はそうはいない。
ちらっとエヴ嬢へと視線を向けた。
エヴ嬢の姿形は美しい。
性格も明け透けで幼いが無邪気さは好ましい。
この豪腕も頼もしいと気に入っている。
だが、どんなに気に入っても人狼にとっての番とは違う。
性別も身分も関係ない。
どんな姿形だろうが性格が破綻していようが、一目見て番だと本能が言えば逆らえない存在なのだ。
獣化してその場で拐って食う。
それがグリーブスにとって当然のこと。
これほど自分から欲した相手は初めてだ。
だが、獣化しない。
その疑念が私の相手ではないのだと自制する。
欲しくてたまらないが病気で寝込んどるところを押し倒したいと考える自分の性欲にも呆れる。
間違いを起こしたくない。
嫌われたくない。
そう思ってエヴ嬢から目をそらした。
汁物を作ってエヴ嬢を起こす。
「食べられるか?」
エヴ嬢がゆっくり仰向けに寝転ぶ。
「無理です。ごめんなさい」
食べられないなら仕方ないと答えるとまた、すいませんとか細い声で謝る。
静かにポロポロ涙を流す。
「泣くな」
「すいません。何でか出ます。そんな泣くほどキツイ訳でもないのに」
マントで顔を拭っている。
「熱のせいだ。そういう時もある」
「はぁい。…ぐす、」
すんすんと小さく。
マントで顔を隠して泣いた。
額に手を乗せると変わらず熱い。
顔にかかった髪を後ろへと撫で付ける。
そうやったから熱が下がるわけでもないのにいつまでもしていた。
「団長」
「ん?なん、だ?」
少し下げたマントから紫の目と視線がかち合う。
目が合っただけなのに、ぞわっと総毛立ち全身が固まる。
何もないよう受け答えを返すが、声がうわずった。
「やっぱりキツイです。泣くほど」
「そうか」
「迷惑かけたこともごめんなさい」
「迷惑などない」
「…ありがとうございます」
しょぼんと悲しそうに眉が下がる。
「嘘じゃないからな。気を使った訳じゃない」
「本当に?」
「ああ、本当だ。気にしなくていいから寝なさい。もう少し熱が落ち着いたら食事も出来る」
「はい」
静かにまた目をつぶって横を向いた。
黒猫が鳴きながらエヴ嬢の首もとへ。
丸まってぐるぐると喉を鳴らした。
「ヒムド、きもちいい。ふわふわ」
マントから腕を出して猫を抱き寄せている。
白い肩と二の腕にまた見とれてしまい、慌てて目をそらした。
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる