人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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獣化

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「…ヤン、ちょっと待て。ラウルもよく見ろ。こいつ本当に団長か?…その耳。…身体も。顔と声は団長のようだが」

「こんな暗がりで何も見えないっつーの。オーガのお前ほどエルフや人は夜目が利かないんだ。それで見た目がどうなってるって?説明してよ」

「一回りデカイ。犬のような獣の耳と尻尾。顔は団長」

ダリウスに言われて手をやるとふさふさの感触だった。手を見ると一回り大きくなっている。慌てて身体を確認すると全体が一回り大きくなり服が破けている。腰の辺りの違和感に目を向ければデカイ尻尾が揺れていた。

「…やった」

獣化できた。
エヴ嬢が、私の番だ
嬉しくて手の震えが止まらない。

「…何者だ。…この真っ暗闇で。…エヴ嬢が団長と呼んでたのでてっきりご本人だと思ったが」

「エド、私で間違いはない。獣化したんだ」

エド達の抜刀の気配に急いで答えた。

「とうとう獣化できたんですか!」

「やっぱりエヴ嬢が団長の番なんですか?!おめでとうございます?!」

「でも守護持ちっすよ?夜なんかどうするんすか?」

「なんでもいい。エヴ嬢となら、」

うちの団員らと声に出して喜んだことでクレイン領の者達がカッとなった。

「おめでとうってなんだよ!うちのお嬢様に乱暴しやがって!てめぇら、何笑ってやがる!くそったれども!ぶっ殺してやる!」

「そうだ!ふざけんなっ!たとえあんたらでも許せねぇっ!こんなところで若い女を襲うのが王都流か?!見損なったぞ!」

掴み合いになり喧騒が騒がしくなる。

「やめろっ!」

恫喝すると団員らが引き、手も口も出すなと釘を指したが、相手の激昂は収まらない。
怒鳴る彼らに囲まれるとエド達が私を守ろうと間に入り、また同じやり取りの繰り返した。
彼らの後ろから、ビュンッ、と風を裂く大きな音が響いて皆が振り向く。
剣を横に向けるヤンの姿に、横に薙いで風切りを鳴らしたとわかった。

「皆さん、静かに。話ができないので下がってください」

その言葉にクレイン領の団員らは従う。
こちらへ歩み寄るヤンに合わせてこちらも部下を下がらせた。
輪の中で先頭に立ったヤンが私の姿をじっと眺め、ヤンとダリウスは抜刀したまま。ラウルはエヴ嬢を後ろへと隠した。

「ここは王都から最も離れた辺境地なので、グリーブス家が人狼の家系だと知らない者が多いんですよ。さすがに私共はエヴ様付きなので、他家関連の教育を受けて存じておりますが」

グリーブスの名前さえ知らないのが普通ですと、ヤンの低い声が響く。
人狼という言葉にクレイン領の者がどよめいた。

「いくら辺境だからって、多少は人狼の番と獣化は耳にする。ただ希少種だから本当に話だけだ。すごいね、初めて獣化を見たよ。こんな風になるんだ」

「エヴ様が番とはなぁ」

剣を納めながらダリウスも小さく呟く。
その様子にただの性欲でエヴ嬢に乱暴したのではないと理解を得られたと胸を撫で下ろす。

「分かってもらえてよかった。エヴ嬢は番だ。先程の手荒にしたことは謝るが事情を汲んでほしい」

三人は私の様相をじっと眺め、エヴ嬢はラウルの後ろに隠れている。

「古巣の奴らが獣化した人狼を欲しがってたけど、簡単には番わないし戦闘に特化してるからすぐ逃亡する。にしても出会ってすぐ理性がぶっ飛ぶって話、本当なんだね。普段の団長を思えばらしくない。…でもさ、番だからって女性を襲うのはどうなの?なんでエヴ様がこんなに怯えなきゃなんないの?それを許せって何?納得いかないや。なあ、ダリウス」
「ああ、先程の様子では受け入れがたい」

「だよね、オレもだ。ヤンは?」

「…私としてはエヴ様次第です。エヴ様が諾と言えば従います」

尻尾が揺れる。

「ならば番を渡してくれ。エヴ嬢、私のそばに来てくれ。匂いを嗅ぎたい」

近寄り手を伸ばすとラウルの後ろでイヤイヤと首を振った。

「さっきのをまたするの?なんで?あんなの嫌だ。…団長、私こと贄にするの?…あんなのするの魔人」

大きな金鳴りと先程より濃い緑の紋様が現れた。

「違う、私は人狼だ。性急だったのは謝る。だが、あれは愛してるからだ。あなたは私の番だ。私の伴侶だ」

駆け寄って触れようとすると手を弾かれた。
強化を強めて光り続ける。

「触んないでよ!あれは嫌い!あれは贄を食べる時にするやつ!番だろうが何だろうが嫌だ!伴侶になんかならない!団長なんか嫌い!大嫌いっ!あんなの!ううっ、あうっ、あ、」

エヴ嬢が叫ぶと溢れた魔力が強すぎるせいか紋様がコブ状に変形し、前のめりに苦しみだす。手と顔がボコン、ボコンと紋様に添って所々、拳程に膨らんで腫れていく。

「う、うう、ま、魔力が、抑えられない」

喉を押さえて苦しいと呻いた。息が出来ないと。おそらく、育ったコブが喉を圧迫しているんだ。ダリウスとラウルに支えられ、ヤンがヒューヒューと喉を詰まらせているエヴ嬢の首を握って触れたところが光ると、膨らんだコブが収束する。それとともに穏やか呼吸音になり、落ち着きを取り戻した。
エヴ嬢の異様な姿に頭を殴られたような衝撃を受けた。体質と経験からまだエヴ嬢は肌を合わす事を恐れている。なのに、何も知らずに本能のままエヴ嬢に触れて苦しめた。後悔で血の気が引く。
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