人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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貴人牢

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その後は以前、エヴ嬢と会った水辺で頭を洗う。
髪に血がこびりつき拭うだけでは取れなかったからだ。
情欲に濡れたエヴ嬢の痴態とあの色魔への殺意で気が昂って仕方ない。
目の前で私の番に手を出され守れなかったことも。
今すぐエヴ嬢のもとへ走って全てを喰らいたい衝動が何度も襲う。
だが、望まぬだろうと思えば昂る気を抑えるために冷えた水を頭からかけた。
その日の夕刻、いつもは団員らと混ざって食事をするのに、食事時になってもエヴ嬢達は戻らないのでジェラルド伯に尋ねた。
城内の奥に封印を施し、そこでしばらく様子を見るそうだ。
ヤンも容態が芳しくなくしばらく城内で世話をせねばならないと。

「会えますか?」

「…どうぞ。私共は会えませんので」

魅了が落ち着いたとは言え用心のためだと呟いた。

「よろしいのですか?」

「魅了に抗えるのでしょう?ならば問題はありません。人族の私共には難しいので仕方ありません。…あれに手を出すことなど、あってはならぬ」

ジェラルド伯とロバート殿の苦い顔に目線を落とした。
エヴ嬢の部屋は城内の最奥の貴人牢だった。
案内は途中までで、自ら扉を叩く。
返事はなく静かだった。
不審に思い開けてみるとラウルとダリウスが床に臥せっている。

「ラウル!ダリウス?!」

「団長?」

水色の簡素なドレスを着たエヴ嬢がソファーの上で肘掛けを背もたれに寄りかかり、座面に両足を乗せて丸く腰かけている。
ソファーの下には脱いだ靴が散らばっている。
空気をぴりつかせ顔に紋様を浮かべているのに、おっとりとした様子に戸惑った。

「これはなんだ?」

「ああ、一人になりたいって言うのに邪魔するから寝かせちゃった」

ぱちん、と指を鳴らすと二人が起きる。

「二人とも、私を一人にしてくれる?部屋からは出ないから」

それとも寝かせて私は外に行こうかと問う。 
これも色魔の力と分かる。

「…分かりました。扉の前に待機します」

「ラウルはヒムドの治療をして。ダリウスは休まないとだめだよ」

二人は黙って出ていく。

「団長は何かご用ですか?討伐のこと?」

目を向けずに残った私へ問うた。

「顔を見に来た」

「ならもう帰ってください。見たからいいでしょう?」

「話をしたい」

「何の話を?私はお話ししたくないですっ。一人になりたいっ」

イライラと声をあげる。

「気が昂ってる」

ぱりっと音がして次第に守護の紋が濃くなる。
ヤンが動けない今、コブが出来ると困る。

「一人にしてもいいが、感情を抑えられるか?それとも毛並みを触るか?気が紛れるかもしれない」

「…触る」

座ったまま両腕を広げて招く。
いつも通りの子供っぽいエヴ嬢だ。
ソファーの隣に腰かけ背を向けてやると、にぎにぎと尻尾を掴む。
いつもより荒っぽく強い力だ。
痛いが堪えた。
黙って好きなようにさせていると次第に柔らかく触るようになった。
ふと、背中に重さを感じた。
尻尾を抱き締め、頭を背にもたれさせていると気づく。

「…すいません、団長。八つ当たりしました。迷惑も心配もかけた。痛くしてごめんなさい」

ラウル達にも謝らなきゃ、と小さく呟いた。

「あなたは物わかりが良すぎる。人のことばかりだ。このくらい、望むならいくらでも構わないのに」

「番だから?」

「一目見てから惹かれていた。解呪をしてからは堪らなかった。今も、大好きだ。望むことを何でもしてやりたい。好きなだけ握れ。いくらでも堪えてやるから」

「もう満足しましたから」

ならばと向き直って尻尾を取り上げた。

「あなたは番だ。だが、あなただから私の番なのかもしれない。本能や運命が勝手に決めたものではないと思う」

甘い言葉を吐いてもポカンとするエヴ嬢の手を取り、伺うようにゆっくりと引き寄せた。寄せると色魔の匂いに気が高ぶる。あいつは殺してやりたい。

「許されるなら抱き締めたい。口付けも触れ合いも。望まれたい。私の番」

欲が腹の奥底から沸き上がる。
喰らいたいと欲が巡る。
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