人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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「あ、その、」

愛想の悪い低い声に怯えたクレイン領の団員を一瞥する。

「何があった?」

エヴ嬢に会えないと言う苛立ちを切り替えて問う。
忙しいジェラルド伯とロバート殿も、余程のことがない限りエヴ嬢と食事処を利用している。どういうことかと疑念を抱いた。

「はっ!グリーブス団長のお客様がいらっしゃってるとお聞きしています!あの、どうしても来ていただきたいと、それだけしか、く、詳しくは存じません!」

ペコペコ頭を下げて青ざめ、それだけしか分からないと繰り返す。
何者か分からない者の来訪に何かあったと察せられる。その上に領主の誘いは無下に出来ない。

「了承した」

では、と案内しようとするので余程急ぐのかと眉をしかめた。

「このままか?」

「はいぃっ。ゆ、ゆ、有事ですので、ジェラルド伯がそのようにとっ」

「そうか。ではエド、お前がエヴ嬢に伝えろ。伝えるだけだ。返事は私が尋ねに行く。いらんことは言うな」

ふと、思い付きで待てと止めた。

「気が変わった。あちらにはリーグを行かせろ。明日の同行もさせる。他の人員は返事を貰ってから選ぶ」

「リーグですか?」

「ああ、四人とも気に入っている。明日行くなら緩和材にちょうどいい。…ラウルとスミスのことだ。扱いが上手い」

「あいつがですか、ほぉぉ。可愛がられやすい奴じゃありますけど」

分からないという顔なので噛み砕いて説明すると意外だと目をしばたたかせ不思議そうにしている。何事も仕事と割り切ってこなすエドからしたら人当たりの良さが何の役に立つのか疑問なのだろう。それにあいつは極端なほど上に逆らわず、泳ぎ以外は大人しく目立たない。エドの中で評価があまり高くない。
エドの他人の感情に左右されない性質は仕事に役立っているが、エヴ嬢が絡むとポンコツだ。仕事に関しての目端はかなり利くのにその事だけが残念に思う。
最新の注意を払って手に入れなければいけないのにこれでは困る。
しかし得手不得手があるから仕方ないと諦めた。
今の私の呆れ顔にも気づかないのだから相当鈍い。
この鈍さがあるから私の相棒を10年も続けていられる。
怯える若い団員の案内に連れられて城に向かった。

「そんなに怯えるな。先程は機嫌が良くなかった」

「い、いえ!そんな!と、ところであのリーグさんって、」

話題を変えたくて名を出したのだろうと思ったら、いい人ですねと答えたのでぽかんとした。
親しいのかと聞くとクレイン領の団員とだいぶ打ち解けているようだ。ベアード殿が気さくに挨拶するほどと聞いて驚いた。あいつの交流の広さは度しがたい。
本当に今後、他領への討伐でそうやって両団の橋渡しができる奴は欲しい。
クレイン領の者は私達を盾にせず率先して戦う姿勢を見せる。
それに未曾有の危機を乗り越えた英雄の地ということもあり、こちらの団員の多くがいつも以上に腰が低い。
何より舐めた態度を取ればエヴ嬢を含めた四人が恐ろしいというのもある。
今回が特異なのだ。
由緒ある王都団ということで貴族の傍流を汲む者ばかり。
何かとプライドが高く、逆に領の私団は庶民しかいないので避けようにも、お互い皿の持ち方だの食べ方だの因縁つけてつまらない揉め事をしょっちゅう起こす。
私が実権を握ってからは身分にこだわらず陰湿さの抜けた動きやすい雰囲気になったが、以前庶民出身のリーグがやられたのを見るとまだ何かしらの差別や足の引っ張り合いは根強いと分かる。
だが、今日のリーグの下克上と、いつもと違う気合いの入ったスミスの拳を思い出してどれも成長期と評価した。
スミスの場合はラウルに良いところを見せようとしたのだろう。
理由が何であれ部下のやる気は嬉しく思う
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