人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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変化

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「まあ、いいが。それよりなぜ急に変わった?さすがに分からない」

「私の番は身も心も美しい。素晴らしい方だ。共にいると頭が下がる。相応しいと望まれるように努力するのは私だ。相応しくないと言うならその首、ねじ切ってやる。番は私の命。何かすると言うならお覚悟を」

ラウルの台詞に固まった。

「申し訳ありませんが、旦那様に言われて聞いてました。短い晩餐の間くらいならオレの耳に届くように出来ます」

「また変わった術式を」

感心してると満更でもないと鼻を高くした。本から目を離して光らせていた手が落ち着いた。

「前の王妹の娘で王家筋と学んでたんですけど詳しくなくて。社交界の華らしいですね、ペリエ・パティ公爵令嬢は。あとは王家から過度な溺愛と団長への執着が有名だとか。旦那様が昨日のうちに客人の人となりを把握しとけと。それで聞いていたら、あの高位貴族の令嬢相手にあの啖呵。あんたなら裏切らない、悪くないって思ったんですよ、オレはね?貴族相手に対抗出来るし、せいぜいエヴ様のために働けばいいんだ」

つんけんした様子でまた術式の構成に取りかかる。
その様子にヤンが鼻で笑う。

「はっ、最後までごねてたのはお前だ。偉そうに」

「るせー、ヤン。お前らの決断早すぎるんだ」

目を合わさず軽く言い返すが、ムッとしてまたいじけた顔をしていた。

「団長はお前らより忍耐強い。それにあれを殺すのに私達だけでは足らない」

その時点で決めました、と答える。
話す私達の横で黙々と自分達とエヴ嬢の朝の支度をしている。

「ダリウス、君は?」

桶を持って外に行くのを呼び止めたら、天幕の垂れに手をかけて立ち止まりこちらを振り向いた。

「…別に、最初から。…グリーブスの栄誉なのだから仕方ないと」

しばらく目をさ迷わせて考え込むと視線を合わせる。

「強化なしとは言え、あの殴打に耐えた男は初めてで、楽しい」

「次の鍛練では本気を出せばいい。私も楽しかった」

そう言うと満足そうに目を細めた。

「これも」

顎をさすって整っているのに他人に畏怖される厳つい見た目と鋭い犬歯のことと分かる。

「家族でさえ怯むのに好んでる」

目線の先には大の字で眠るエヴ嬢だ。
一層満足げに目が細くなり、白い牙が見えるのも気にせず口許がほころぶ。

「見た目を言うなら団員の間ではモテているそうだぞ」

そう言うとダリウスは訝しげに顔をあげた。気づいてなかったのか。こちらはわざわざ娼館の誘致をせっつく程なのに。同性の交合が認知されていない地域だから免疫がないのだろうか。

「…団員?…モテて?…何が?」

理解できない様子のダリウスとどうでもいいと興味を持たないラウル。ヤンだけは目を背け無表情に黙っている。

「三人とも、エヴ嬢より人気らしい」

エヴ嬢は私の番と周知されているからだ。出せば私が処分する。

「…人気?」

「あぁ?俺も?何?馬鹿じゃないの?」

「…存じてます」

「は?知ってたのか?」

「ああ、しばらく私だけ討伐に参加したことがあっただろう?その時の話題だ。ここでは聞かないが、団の中で男同士は普通のことだとか。お前が一番人気だぞ?良かったな?」

全身総毛立ったのかブルッと大きく身震いをして自分の身体を抱き締めた。

「はぁ?男女見境のない淫魔じゃあるまいし同性ってなんだよ?ありえねぇ」

「王都では同性で付き合うことに忌避はない。人族とは違い、他の種族は婚姻に性別は関係ない。その影響だ」

「はぁ?純血は出産に性別が関係ないから、いや、純血だって女の腹から産まれる。そりゃあ、男同士も繁殖出来るけど。各々種族によって繁殖の手順があるからいいってだけだ。それだって制約が多いのに、なんで女の腹しか使えない人族や混血がなに真似てんの?あり得ない」

さすが繁殖を得意とする狂信教の出だ。
この様子だと秘匿された種族ごとの制約なんかも詳しそうだ。確か、あそこの教義は楽しみとしての交合を厳しく戒め、子を為せない人間を罪人と見なす。ラウルの同性間の交合に強い忌避感を見せるのはそこからだろうか。その教えに染まった価値観を覆して子のなせないエヴ嬢を慕うのかと思うと感慨深い。

「性別に関係なく伴侶と想いが通じ合えば人生が豊かになる。女性が子をなすだけが結婚ではないという思想が広く当たり前なんだ。逆に女の代わりにヤるのが楽しいだけの奴らもいる。怠惰に映るかもしれんが、団員らにはある程度の発散として禁止してはいない」

「いや、世俗のことはそれなりに分かってるけど。でもなんか、現実にいて自分が巻き込まれるのは、」

「ラウル、お前は抱きたいと男に好まれているそうだ。で、ダリウスは抱かれたいと。私は半々らしい」

指をさしてヤンが説明をした。

「ああ、通りで。…ふーん」

何か心当たりに納得し、ダリウスは興味なさそうに鼻を鳴らしてさっさと外へ行く。

「うわっ、…抱きたいとか、最悪。…ヤン、てめぇはなんでそんな冷静なんだよ」

気温は暑いのに、ラウルが寒そうに身体を縮めて掻き抱いた二の腕を擦る。

「他人の趣味だ。どうでもいい」

「徒党を組んだって、君らの誰かを押し倒せる団員はいない。それよりこちらとしては団員の安全を図りたい。充分自身で気をつけて、抵抗するにしても再起不能になるような扱いはやめてほしい。特に体格的に狙われやすいラウル」

やり返すとしたら、一番えげつないだろう。私自身、この分野に無知ということもあるが、不能の術式なんぞ珍しいものを軽々と扱う。他にも色々と隠してそうだ。
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