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主流
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「スミスさんだけでうんざりしてんのに」
「近々、娼館が開く。それまでと思え」
女がいなくてとち狂ったんだと言えば疑わしげに睨む。
「あいつ、オレに執着してるじゃないか」
「あいつはな。だが、大半は娼館で解決する」
「ラウル、意外とスミスさんが壁になっているんだから、そう怒るな」
「ヤン、どういうことだよ?何の話だ?」
「団の中で上位の実力で部下を束ねる地位にいる。高位貴族の出で出自もいいらしい。彼に遠慮して他の男らは大人しいと聞いた。私なんかは丁寧とは言え誘いがある。先程の様子だとダリウスもじゃないか?私達よりましだろう?」
それより支度をするぞと笑って渋るラウルをせっついている。
もう起こしてよかろう。
上半身を起こして腹の上の足をおろそうと手をかけたらバチっとエヴ嬢の寝ぼけた目と合った。
「おはよう、エヴ嬢」
「…はよう、ございまぁす。…眩し、…ねむ、」
むにゃむにゃと呟き、ごろんとうつ伏せに転がってラグに突っ伏して二度寝した。
ヤン達はそのまま自身の支度を進めていた。
二つの桶を抱えたダリウスが私の分も洗顔の支度をしている。
「すまない。代わろう」
直ぐ様立って動く私の様子を見て、にぃと軽く口角が上がる。
「頼んでいいですか。支度をしますので」
「ああ、構わん」
洗ったら帰るかと思うがこの場が居心地よくて少しばかり心残りだ。
手拭いで顔を拭いて三人の支度が済むころ、エヴ嬢がムクッと起きて洗面器の水で顔を洗い、衝立へ行くとさっさと一人で着替え始めた。
「手間がかからんな」
「はい。侍女がいればいいのですが、腕が立つ者がなかなか見つかりません」
「そうだな。ではエヴ嬢、邪魔をした。失礼する」
「はーい」
衝立の裏から間延びした返事をし、ヤンがまた伸ばしませんよと声をかけていた。
「あ、そうだ。団長、ラウルとスミスさんは結婚できるんですか?男同士なのに」
また唐突な質問に私達の動きが止まった。
三人がなんとかしろという顔でこちらを向いた。
「…さっきの聞いてたのか」
「聞こえてました。何の話しかなって。スミスさん、ラウルが可愛いから女の子と勘違いしてると思ってた」
「あいつも性別は理解してる。出来る出来ないなら、二人は婚姻出来る。今のところ、スミスが同性のラウルを好んでもラウルは受け入れていないから無理だろう。王都や近隣の領では気持ちが通じ合えば同性同士パートナーとなる者がいる。男女の婚姻と同じように式をあげたり婚姻の証を交換して、役所に報告すればいい。クレイン領ではまだ広まってないようだな」
「出来ますけど、主流ではありません」
ヤンの補足に納得したようで、分かりましたぁとまた間延びした返事を返してきた。
「もう気になることはないか?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
衝立越しの会話を終えて天幕の垂れをくぐるとヤンが小声で礼を言う。
「面倒な質問の相談役か。ペット枠から出世したのかわからん」
「私は肩の荷が下りました。下手に説明すると明後日の方向へ鵜呑みにするので」
「だろうな」
ラウルは育ちから世俗に疎く、ダリウスは口下手。ヤンは幼少期から教育を受けたとは言え私から見ればまだ経験が浅い若者。なんだか口の上手さでここにいる気がしてきた。
ヤンが黙礼するのを片手を上げて応え、自分の天幕へ向かった。
思ったより日が高く、起きて活動する団員らとすれ違いながら辿り着くと天幕の入り口に多くの人だかりと仁王立ちのエドがいる。
鬼の形相だ。
「近々、娼館が開く。それまでと思え」
女がいなくてとち狂ったんだと言えば疑わしげに睨む。
「あいつ、オレに執着してるじゃないか」
「あいつはな。だが、大半は娼館で解決する」
「ラウル、意外とスミスさんが壁になっているんだから、そう怒るな」
「ヤン、どういうことだよ?何の話だ?」
「団の中で上位の実力で部下を束ねる地位にいる。高位貴族の出で出自もいいらしい。彼に遠慮して他の男らは大人しいと聞いた。私なんかは丁寧とは言え誘いがある。先程の様子だとダリウスもじゃないか?私達よりましだろう?」
それより支度をするぞと笑って渋るラウルをせっついている。
もう起こしてよかろう。
上半身を起こして腹の上の足をおろそうと手をかけたらバチっとエヴ嬢の寝ぼけた目と合った。
「おはよう、エヴ嬢」
「…はよう、ございまぁす。…眩し、…ねむ、」
むにゃむにゃと呟き、ごろんとうつ伏せに転がってラグに突っ伏して二度寝した。
ヤン達はそのまま自身の支度を進めていた。
二つの桶を抱えたダリウスが私の分も洗顔の支度をしている。
「すまない。代わろう」
直ぐ様立って動く私の様子を見て、にぃと軽く口角が上がる。
「頼んでいいですか。支度をしますので」
「ああ、構わん」
洗ったら帰るかと思うがこの場が居心地よくて少しばかり心残りだ。
手拭いで顔を拭いて三人の支度が済むころ、エヴ嬢がムクッと起きて洗面器の水で顔を洗い、衝立へ行くとさっさと一人で着替え始めた。
「手間がかからんな」
「はい。侍女がいればいいのですが、腕が立つ者がなかなか見つかりません」
「そうだな。ではエヴ嬢、邪魔をした。失礼する」
「はーい」
衝立の裏から間延びした返事をし、ヤンがまた伸ばしませんよと声をかけていた。
「あ、そうだ。団長、ラウルとスミスさんは結婚できるんですか?男同士なのに」
また唐突な質問に私達の動きが止まった。
三人がなんとかしろという顔でこちらを向いた。
「…さっきの聞いてたのか」
「聞こえてました。何の話しかなって。スミスさん、ラウルが可愛いから女の子と勘違いしてると思ってた」
「あいつも性別は理解してる。出来る出来ないなら、二人は婚姻出来る。今のところ、スミスが同性のラウルを好んでもラウルは受け入れていないから無理だろう。王都や近隣の領では気持ちが通じ合えば同性同士パートナーとなる者がいる。男女の婚姻と同じように式をあげたり婚姻の証を交換して、役所に報告すればいい。クレイン領ではまだ広まってないようだな」
「出来ますけど、主流ではありません」
ヤンの補足に納得したようで、分かりましたぁとまた間延びした返事を返してきた。
「もう気になることはないか?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
衝立越しの会話を終えて天幕の垂れをくぐるとヤンが小声で礼を言う。
「面倒な質問の相談役か。ペット枠から出世したのかわからん」
「私は肩の荷が下りました。下手に説明すると明後日の方向へ鵜呑みにするので」
「だろうな」
ラウルは育ちから世俗に疎く、ダリウスは口下手。ヤンは幼少期から教育を受けたとは言え私から見ればまだ経験が浅い若者。なんだか口の上手さでここにいる気がしてきた。
ヤンが黙礼するのを片手を上げて応え、自分の天幕へ向かった。
思ったより日が高く、起きて活動する団員らとすれ違いながら辿り着くと天幕の入り口に多くの人だかりと仁王立ちのエドがいる。
鬼の形相だ。
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