人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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蹴り

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私に気づくと走ってきた。

「あんたっ!番というものがいながらどういうことだ?!」

胸ぐらを掴みそうな両腕をその場でパシッと向かい合わせに握って動きを止めるが、激昂したままだった。

「ちくしょう!離せ!あんたねぇ!あんなっ、ああいうのを中にほったらかしてどこ行ってたんですか?!」

「何のことだ」

私はエヴ嬢の天幕から朝帰りをしているのだ。
なぜ番というものがいながらと責められる。

「ヤンか誰か知らせに来てないのか?昨日の夜は彼らと過ごした」

「はああ?!!ああっもうっ、連絡は私には届いてませんっ。それよりなんで?どういうことですか?あんなのどうするんですか?いえ、ご存じないんですよね?…はあ、すいませんがお耳を、」

先程の剣幕で余計に人目を集めてしまい周囲を気にして互いの耳を寄せた。
それといつまでも握っていたくないのでエドの落ち着いた様子から手を離す。

「中に、女性が。おそらく裸で寝台に横たわっていました」

聞いて頭が痛くなった。

「顔は見たか?」

「いえ、入ると布団を被って叫んで、慌てて出ました。明るい色の髪をした若い娘のようだったとしか」

他に何か見たかと問うが、薄暗くてそれ以外分からなかったと答える。

「昨日、晩餐にペリエ嬢が来ていた」

「はぁ?」

「陛下の番を揶揄したので番に手を出したら首をねじ切ると脅した。まだ理解していないようだったから、ジェラルド伯とロバート殿の目の前で陛下の許可のもと接触を拒否していることをはっきりとな。かなり手酷く打ちのめしたんだが。まさか、」

「そ、そんなことしたんですか?」

「当たり前だ。あれの執着はわかっているだろう?」

「番が見つかったんだから諦めるでしょう?普通!」

「昨日の様子だと怪しかった。叩き折るしかなかった、…あいつら」

天幕へ目を向けるとペリエ嬢の侍女らを見つけた。エステートと名乗ったあの根性悪の女騎士も共に天幕の入り口に近づいている。
やはり中にはと察して腹立ちながらずんずんと大股に歩いて集団に近づく。

「どういうつもりだ?」

「ペリエお嬢様のお迎えに参りました。このような時間までご寵愛を頂けたようで」

くっと嘲る微笑みに腹が立つ。
主人に対して、私に対してこの小馬鹿にした態度。
女であることを感謝しろとどろどろに黒く巻いた腹のとぐろが暴れている。
不遜な態度のエステートの後ろには怯えて不安げな侍女と荷物を抱えたパティ公爵家の私兵が数人並ぶ。
公爵令嬢に仕える彼女らは見目がよく家格に相応しいように着飾られている。
華やかな女の集団は早朝なのに多くの人だかりを集めていた。
回りは好奇の目だけではなく、久々の見目の良い若い女へ不躾に視線が注がれる。
少し強引にすれば言うことを聞きそうな、被虐を覚えるような、普通のか弱い女性と甲冑に身を包みつつも女らしさを全面に出した顔と体つきの女騎士。
そんな物欲しげな男共の視線を侍女は怯えるのに堂々と受けて立つエステートは凛としているのではない。
高揚し満足そうな気配がある。
男の下卑た注目を浴びて優越を感じる、こいつのこういう下品な性質が嫌いだ。

「重要書類もある最高上官の天幕への侵入。罪に問うことになると分からんのか」

「招き入れた、と答えましたら?」

陛下はまだしも叔父に当たる前陛下は庇うだろう。
嘘だろうが関係なくそれを利用して婚姻を押し付けそうだ。
まだ力ずくでの対抗は出来ない。

「さっさと連れて出ていけ」

「女性は支度がございますのでこちらをお借りいたします」

後ろには侍女の他に荷物を抱えた私兵を数人従えている。
中へ入るのを確認してから天幕から離れエドへ振り返る。

「エド、ここで雇った下働きの女達がいたはずだ。あいつらに従わないような気の強いのを集めろ」

「は?」

「居座る気だ。家具はいらん。書類と甲冑。必要なものだけ取りに入らせろ」

あの量から察するに今朝の支度の分だけではない。男五人がかりで運ぶ支度の荷物などあり得ない。

「そんな、そこまで」

「やれ」

「はっ!」

「昨日の見張りも呼べ。話を聞いてから処分する」

聞こえたのかその場に担当の見張りが飛び出して土下座した。
聞けばパティ公爵家とは縁続きの男爵の男。
もう一人も子爵と彼女らより低い身分だ。
夜更けに尋ねてきて暗くとも本人と分かり逆らえなかったと謝罪する。
許すつもりもなく二人をそれぞれ蹴りあげた。宙を飛んで遠巻きに見守る団員らのもとへ勢いよく転がる。

「兵士としての自覚が足らん。お前らはそれでも突っぱねるべきだった。荷運びに降格だ」

一番下の仕事だ。
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