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婦人
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しばらく様子を見ていると他の団員らはペリエ嬢を遠目に気づくとさっさと進路を変えて逃げている。
エヴ嬢達はのんびりしているところを捕まったようだ。
こちらもこのままでは見つかると朝飯も食わずにここを離れた。
ヤンを連れ立って先程の内容を話すと呆れている。
「お相手のすごさもですが、ダリウスの口下手は矯正したいですね。言葉に窮したからと担いで逃げてもらっては困ります」
「頑張った方じゃないか?下手に牙を見せたくなかったのだろう」
心情を察してヤンも黙った。
「とりあえず様子を聞けて良かった」
「そうですね、私もそちらの話を聞けてようございました。それで、打開策は何かありますか?」
「ない」
追い出す算段がつかない。こちらはそれをヤンに尋ねるつもりだった。
「何か問題を起こしたらそれを理由に追い返すが、余程のことじゃないと跳ねのけられる」
「分かりました。お嬢様は我々でしっかり見ておきますのでご安心を」
「何か名案はないか?」
「ありません」
「だよな」
お互い仕方なしと納得のままその場は別れた。
エドの天幕に入り中でごちゃごちゃしている中、勝手に椅子に座って休んだ。
「エド、腹へった」
「私もです。暇なら勝手に食事処へ行かれてください。忙しい」
女達の手伝いのもと部屋の整理をしている。女達は字が読めないので書類をごちゃ混ぜに取ってきたようだ。その区分に忙しくテーブルが乱雑に散らかっていた。
逆に字が読めないなら助かると入室を許し、寝台を運び入れて女達は重い甲冑といくつかの武器を邪魔にならないように片して天幕内は慌ただしい。
「あれがいた」
「逃げてきたんですね」
「ああ、さすがに尻尾を巻いて逃げてきた。忙しいところ悪いが、ご婦人のどなたか食事をここに届けてくれないか?」
「こんな時間までお腹すいたでしょう。すぐお持ちしますよ。二人分ですね!」
年配の気っぷの良さそうな女が愛想よく笑い、天幕を出ていった。
「あら、いいわね。こんな色男二人なら私が世話しても良かったのに」
一人がポツリと呟き、皆でそうよねぇと揃って頷いた。
「はは、色男か。あなた達に言われて悪い気はしない。良かったな、エド。二人で色男だそうだ」
疲れていて口が緩んでいた。
毒気に当てられて疲れた今、この明け透けな物言いは気楽だ。
意外そうにエドが見つめていたが気にせず彼女らに笑いかけた。
こちらが軽口で返せば年配のご婦人方は活気づいた。
「本当よ。きったない旦那よりいいわ」
「聞いた?ご婦人ですって!こんな私らみたいなババアに、むずかゆくなっちまうよ」
それまで静かだった女達が一斉にけらけら笑いだし、エドがぎょっとしている。
疲れていたが、女達の元気のよさに釣られて笑う。
「はははっ、気に入っていただけたか。それは何より。あなた方には面倒事を頼んで気にしていた」
「なぁに、気にしなさんな。荷運びくらい恩人様のためなら。ねぇ?みんな」
「そうそう、このくらい何てことないね。若い娘らからぎゃーぎゃー騒がれたって何だって言うのさ!はっ!」
「面白かったわねぇ、顔を真っ赤にしてさ。あははは!二言目には無礼な!田舎者!高貴なご令嬢を前に何とする!ですって!こんな田舎の庶民がそんなの知らないわよ。田舎が嫌なら帰んなさいっての。こっちはスタンビートでピリピリしてんのに、何しに来たんだかね」
身ぶり手振りで真似をして一層、女達が笑った。
「なんでしたっけ?私は黄色の薔薇だ、花だとか何とか。人族でしょうに。何言ってん、」
たまらず吹き出した。社交界の二つ名を知らないのだ。当たり前と分かるが、金色を黄色と聞き間違えてる。
「く、くくっ、失礼。いや、王都の社交界で金色の薔薇姫と二つ名で呼ばれてるんだ。美しいってことで、くっ」
「へぇー!そうなんですか?!黄色じゃなくて金色ねー、あーそぉ?」
「なら、うちのお姫様は何て名だい?」
「バカね、領からお出になったことないでしょうが。外に知られてないよ」
「ラウルもエルフの見かけだよ。二人並ぶと目の保養だわ」
「ヤンだって」
「わたしゃ、ダリウスだね。寡黙で優しい。体つきも頼りがいがある。孫達にあんな優しい男を見つけろって躾てるよ」
「分かるけど他の二人も優しいじゃないか。どの子も水を運んでたら、途中までいつも持ってくれるんだよ。あの子らも忙しいだろうに」
そうそうと皆で頷いて、良い子よねーと盛り上がる。大型を討伐するあの三人でさえ、彼女らには子供扱いだ。
「可愛い顔ならラウルだねぇ」
「ヤンもいい男だよ?」
「あの二人はモテすぎなんだよ。あんな男を選んだら孫が苦労する」
「確かにそうね、あははっ」
次は勝手に四人の二つ名を決めようと話し合いを始め、かと思うと今度は避難から帰ってきた親戚の話題だ。尽きない話題に口が忙しいのに、女達はチャキチャキ働き仕事を見つけては手早く動く。
勢いづいて仕舞いにはエドにまで命令ぎみに口を出していた。
エヴ嬢達はのんびりしているところを捕まったようだ。
こちらもこのままでは見つかると朝飯も食わずにここを離れた。
ヤンを連れ立って先程の内容を話すと呆れている。
「お相手のすごさもですが、ダリウスの口下手は矯正したいですね。言葉に窮したからと担いで逃げてもらっては困ります」
「頑張った方じゃないか?下手に牙を見せたくなかったのだろう」
心情を察してヤンも黙った。
「とりあえず様子を聞けて良かった」
「そうですね、私もそちらの話を聞けてようございました。それで、打開策は何かありますか?」
「ない」
追い出す算段がつかない。こちらはそれをヤンに尋ねるつもりだった。
「何か問題を起こしたらそれを理由に追い返すが、余程のことじゃないと跳ねのけられる」
「分かりました。お嬢様は我々でしっかり見ておきますのでご安心を」
「何か名案はないか?」
「ありません」
「だよな」
お互い仕方なしと納得のままその場は別れた。
エドの天幕に入り中でごちゃごちゃしている中、勝手に椅子に座って休んだ。
「エド、腹へった」
「私もです。暇なら勝手に食事処へ行かれてください。忙しい」
女達の手伝いのもと部屋の整理をしている。女達は字が読めないので書類をごちゃ混ぜに取ってきたようだ。その区分に忙しくテーブルが乱雑に散らかっていた。
逆に字が読めないなら助かると入室を許し、寝台を運び入れて女達は重い甲冑といくつかの武器を邪魔にならないように片して天幕内は慌ただしい。
「あれがいた」
「逃げてきたんですね」
「ああ、さすがに尻尾を巻いて逃げてきた。忙しいところ悪いが、ご婦人のどなたか食事をここに届けてくれないか?」
「こんな時間までお腹すいたでしょう。すぐお持ちしますよ。二人分ですね!」
年配の気っぷの良さそうな女が愛想よく笑い、天幕を出ていった。
「あら、いいわね。こんな色男二人なら私が世話しても良かったのに」
一人がポツリと呟き、皆でそうよねぇと揃って頷いた。
「はは、色男か。あなた達に言われて悪い気はしない。良かったな、エド。二人で色男だそうだ」
疲れていて口が緩んでいた。
毒気に当てられて疲れた今、この明け透けな物言いは気楽だ。
意外そうにエドが見つめていたが気にせず彼女らに笑いかけた。
こちらが軽口で返せば年配のご婦人方は活気づいた。
「本当よ。きったない旦那よりいいわ」
「聞いた?ご婦人ですって!こんな私らみたいなババアに、むずかゆくなっちまうよ」
それまで静かだった女達が一斉にけらけら笑いだし、エドがぎょっとしている。
疲れていたが、女達の元気のよさに釣られて笑う。
「はははっ、気に入っていただけたか。それは何より。あなた方には面倒事を頼んで気にしていた」
「なぁに、気にしなさんな。荷運びくらい恩人様のためなら。ねぇ?みんな」
「そうそう、このくらい何てことないね。若い娘らからぎゃーぎゃー騒がれたって何だって言うのさ!はっ!」
「面白かったわねぇ、顔を真っ赤にしてさ。あははは!二言目には無礼な!田舎者!高貴なご令嬢を前に何とする!ですって!こんな田舎の庶民がそんなの知らないわよ。田舎が嫌なら帰んなさいっての。こっちはスタンビートでピリピリしてんのに、何しに来たんだかね」
身ぶり手振りで真似をして一層、女達が笑った。
「なんでしたっけ?私は黄色の薔薇だ、花だとか何とか。人族でしょうに。何言ってん、」
たまらず吹き出した。社交界の二つ名を知らないのだ。当たり前と分かるが、金色を黄色と聞き間違えてる。
「く、くくっ、失礼。いや、王都の社交界で金色の薔薇姫と二つ名で呼ばれてるんだ。美しいってことで、くっ」
「へぇー!そうなんですか?!黄色じゃなくて金色ねー、あーそぉ?」
「なら、うちのお姫様は何て名だい?」
「バカね、領からお出になったことないでしょうが。外に知られてないよ」
「ラウルもエルフの見かけだよ。二人並ぶと目の保養だわ」
「ヤンだって」
「わたしゃ、ダリウスだね。寡黙で優しい。体つきも頼りがいがある。孫達にあんな優しい男を見つけろって躾てるよ」
「分かるけど他の二人も優しいじゃないか。どの子も水を運んでたら、途中までいつも持ってくれるんだよ。あの子らも忙しいだろうに」
そうそうと皆で頷いて、良い子よねーと盛り上がる。大型を討伐するあの三人でさえ、彼女らには子供扱いだ。
「可愛い顔ならラウルだねぇ」
「ヤンもいい男だよ?」
「あの二人はモテすぎなんだよ。あんな男を選んだら孫が苦労する」
「確かにそうね、あははっ」
次は勝手に四人の二つ名を決めようと話し合いを始め、かと思うと今度は避難から帰ってきた親戚の話題だ。尽きない話題に口が忙しいのに、女達はチャキチャキ働き仕事を見つけては手早く動く。
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