人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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左遷

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「…天幕内の書類も団内や討伐関連のみで番の名を書いた物はない。私が書いたのは一度だ。番が見つかったと父に報告した時だけ。父とのやり取りで名を書いたがここには残っていない」

返信にも、とはたと気づいて手が止まった。

「もし、父からの手紙を読んだなら素性はバレた。名が知られるのもすぐだ。エド、どこにある?」

立ち上がって父の手紙を探したが、それだけ見つからない。
読めばクレイン辺境伯の令嬢だと分かるはずだ。そして魔人を討伐した英雄の一人と名を馳せている。
あとはここで誰か見つければ良いだけだ。
今までのように無理に拐えないと知られ、番との間にまだ溝があると分かれば、私ならそこを突く。

「この中も確認します」

「頼む。いや、一人じゃ時間がかかる。誰か口の固い者に手伝わせろ」

ごみ箱を抱えるエドにそう言うと苦笑いを返してきた。困ったように見える顔に申し訳ないと感じた。

「悪いな、手間なことばかりで」

「いえ、初めて頼むと言われた気がします。嬉しくて」

「そうだったか?いつも頼りにしているつもりだが」

「仕事はですね。団長は私より一回りも年下なのに昔からしっかりされていて、学ぶことが多い。仕事だって要望に答えるだけで必死でした」

「エド、照れているのか?」

困った顔に見えたがそうではないと気づいた。

「まあね、むず痒いですね。そんなに一生懸命頼られて。出来のいい弟に頼られた兄の気分です。頑張りますよ」

「ああ、かなり頼りにしている。こっちの書類は私がするから食事を済ませて、そのゴミ箱を頼む」

「分かりました」

さっと食事を済ませて交代した。
エドの言う通り、受け取った書類は私が管理していた時よりシワと破れが目立っている。
腹立たしさにきつく眉をしかめ歯を噛み締める。
書類の整理が落ち着いた昼過ぎ頃、スミスとラウルが天幕に顔を出した。

「ただいま戻りました」

後ろにリーグを連れている。
本来なら来なくていいがラウルが連れてきたのだろう。

「どうだった?」

「副団長の報告通り、確かに。初めてのことで原因の検討がつきません」
渋い顔のスミスと反対にラウルは顔を紅潮させて興奮している。

「魔素溜まりの減少を再現できるなら画期的なことです。継続して調べたいのですが可能でしょうか?ぜひ自分も同行させてください」

「ああ、もちろん検討する。こちらもラウルの協力がほしい」

「ありがとうございますっ」

いつもツンケンしているラウルの顔が喜びに、ぱぁーっと明るく輝いて隣のスミスが見惚れていた。
さすがの鈍感なエドもラウルの華やかな顔立ちの変化に感嘆のため息をついている。

「ラウル、顔をどうにかした方がいいぞ。虫が増える」

「はぁ?何言ってるんですか?」

相変わらずの無知さがおかしくて口許を手で隠して笑うと馬鹿にされたと不機嫌になる。
それでもやはり機嫌がいい。
うきうきとはしゃぐ雰囲気から頭の中は魔素溜まりのあれこれで頭が一杯なようだ。

「予定が立てば知らせる。リーグを使いに出そう」

「え?俺っすか?あー、いやぁ、俺よりスミス先輩に、」

リーグからすっとぼけた声が出た。
スミスに睨まれて面倒と思って譲ろうとする。

「スミスは忙しい」

「いえ!私がぜひ!」

スミスが勇んで手をあげる。
それよりやらせたいことが多いと言うのに。

「忙しくないのか?探索から討伐の他に部隊を任せてるのにそんなに暇か。なら仕事を増やすか?それとも手を抜いていると疑うべきか?」

ぐうの音も出ずに萎れていく。
その様子をラウルは楽しそうに見つめていたので、リーグを指さしてからかい混じりに提案をした。
案件を抱えるスミスと違って水関係以外は手が空いているのに、目先の安寧のために仕事を放棄する態度が今朝の騒動と被って腹が立つ。
多少、弄ってやるつもりになった。

「こいつは気が回る。そちらで好きに使っても構わない。連れて帰るか?」

笑みを浮かべるのに、ラウルは私の怒った様子を察して目を見開いた。
リーグも気づいて微かに狼狽えている。

「そうですね。うちとしてはぜひ招きたいです」

「水辺の討伐以外は暇人だ。連れていけ」

に、と口角をあげてそう言うと、嬉しそうにラウルがリーグを見つめた。
慌ててぶんぶんと頭を振ってラウルに無言で抗議している。

「うーん、残念ながら嫌そうですね」

「気にすることはない」

「主がまた話を聞きたがっていたのでお連れしたいんですけどね。海辺の話はとても喜んでいましたから」

「ああ、そうか。その約束もあったな。暇潰しになる。このまま連れていくといい」

「え、ちょっと、団長?ラウル?ちょっと待ってくださいよ。すいませんっ、なんか怒らせたみたいで、」

「暇を持て余していたから助かります」

「出来るなら私も同席したかったが仕方ない。羨ましいぞ、リーグ」

戻ったら私へ報告しろと言うと口をあんぐり開けて呆れている。
エヴ嬢のご機嫌伺いに使いたいのが分かったのだろう。
ついでに様子を知りたいと言う私の勝手な欲も。

「それと自分もですが、ダリウスとヤンが水中戦のコツを聞きたがっていました。良かったら模擬戦を頼みたいんですが」

「好きにするといい。だが、まだ溺れそうな一人は参加させるな。甲冑水泳が出来てからだ。そうだ、ヤンから聞いたが、これからクレイン領の鍛練を増やすのだろう?それもついでに連れていけ」

「え?!それも?!」

「いいんですか?というか、そうなるとしばらくこちらで預かることになりますよ?明日から毎日クレイン領側での鍛練なので」

「構わん」

「団長!本当にすいません!許してください!」

何が悪かったか分からずとも慌てて謝るリーグを無視してラウルと話を進める。
王都団の体術を学びたがっていたんだった。
習うならこいつが良かろう。
説明が上手く、必要以上触らない。
細身の見かけによらず荒くれ育ちなので我流の喧嘩術も持っている。
エヴ嬢が興味を持つだろう。
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