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得物
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「今、消えた」
彼らも、ほーっと息を吐いて納刀する。
「ラウル、魔素溜まりを消したのは色魔らしい」
「はぁ?」
先程の話を伝えると目を見開いて驚いている。
「…上位種となると把握してないことが多いなぁ。大発見って思ったのに」
残念だと呟いた。
「すいませんでした。私が見たいと言ったから」
エヴ嬢が頭を下げた。
「気にするな。私も興味があった。こればかりは色魔の気分次第だから仕方ない」
帰りにヤン達も水辺で汚れた手足を洗って戻ることにし、川辺まで戻るとリーグとスミスが隊列を組んで現れ、私達の無事に安堵のため息を吐いた。
ヤン達が洗っている間、エヴ嬢が足をつけて遊んでいる。
リーグが石投げを教えて、他の団長らを交えて競争を始めた。
「投擲の正確さならスミス先輩っすね」
その一言で回りの同意が起こり、視線が集まると満更でもないと正確な投擲を披露する。
向かいの離れた岩場を的に何度も石を投げて当てるとエヴ嬢を始め見ていた者は感心した。
「へー、上手いですね。さすが」
エヴ嬢の喜ぶ姿に反応してラウルは感心したと答えると、その一言で調子に乗る。
皆とのゲームをほっぽりだして誉めて誉めてと圧をかけ、知りたいなどと言っていないのしつこくコツを話して嫌がられる。
白ける回りをほったらかし、めげずにラウルにだけ話題を振ってラウルはどんどん不機嫌になる。
止めろと邪険にするのに、余計ご機嫌を取ろうと話しかけて悪循環だった。
特にエヴ嬢が、もうゲームをしないんですか、順番来ましたよと問うのさえ気づかず無視したせいで怒りに火をつけた。
「スミスさん、オレも得意なんで」
そう言ってスミス以上の正確さで投擲を見せる。
「俺の方が上手いかも」
「まぐれだ!」
鼻で笑い、負けじと言い返したことで二人で対決を始めた。
回りはどちらが上手いか賭けを楽しんだ。
ラウルの方が上手い。
勝敗は決した。
「…ラウルは花を持たそうとしたのに。…オレもわざわざ話題にしたのに。…何やってんだ、あの人」
落ち込むスミスを遠目から呆れて眺めるリーグに納得して笑った。
「初恋かもしれないな。あまりにもポンコツすぎる」
「そっすね。二人が発展するのは無理として、お互いが会話できる程度に話題を出すつもりだったんすけど。昨日もこんなだったんすよねぇ。…これはお手上げっす。スミス先輩は平常心の訓練からっすね」
「鍛えるのか?」
「はぁ?まさか。嫌っすよ?俺には無理っす」
「そうでもないと思うが。私としてはあいつの精神面を鍛えてもらうと助かる。精神の向上は仕事にも関わる。目端の利くお前も、もう少し腕があったら任すことを増やせる」
「庶民っすよ?字も読めないし、最低限の教育も受けてない。俺は泳ぎだけっす。それだって地元じゃ並みですよ?身体も貧弱だし、だめっすよ」
「字は勉強しているだろう?もう少しやる気を出すなら引き立てる。給料が増えたら仕送りが楽になる」
「その代わり時間がなくなるっす」
「なるほど、そこも留意しよう。上に来たら定期的な連休の習得を融通する。頻度の希望はあるか?」
「え?そこまでするんすか?」
破格の条件に、ぱっと顔をあげて目を見開いた。連休など通常許されない。
「お前の交友の広さは価値がある。他団との橋渡しに助かるからな。今もクレイン領団からの評判が良くて友好に役立っている。以前、他の領地では仲裁に役立ったことが何度もあった。お前の良さを分かっている者も多い。これで回りに認めさせるだけの技量を身に付けるなら、文句出ない」
ぽかんと口を開けて微動だにしない。
「評価に驚いたか?」
「うっす」
「あとは言葉使いだな。上に来ると貴族との交流が増える。それの相手もしてもらいたい」
マナーの勉強は我が家に呼んで公爵家の執事らに躾てもらえばいい。
物覚えのいいこいつなら短期で鍛えられる。
「うっす。いえ、はい」
「難しいか?」
「…ですね、かなり。俺の身分ですし、学もない、腕力もない。剣を習うのもここで初めて。あるのは、この人当たりの良さと泳ぎだけです。泳ぎなんか、内地の奴らより上手いってだけだし。毎日の漁で鍛えたから」
「向こうで討伐に参加してたんだろ?荒事に慣れている」
「はい、親に内緒で。金になるし、海賊や魔獣相手に。もらった金で魚を買えばバレないし」
いくつからと尋ねれば9歳からと答える。
さすがに若すぎて驚いた。
最初は船の雑用として乗り込んでいたそうだ。
「我流の体術も悪くない。大柄な相手に細身を活かして健闘してる」
「喧嘩ばっかりしてたんで」
「戦闘技術を含めて全てのバランスが極端に傾いてるが、悪くない。人格も経験も。まだ17歳なのだから身体は育つ。あとは上に来るか留まるかお前次第だ。私は伸びしろを期待して引き立てる気はある。しばらくはクレイン領団で学んでこい。貴族向けの剣術よりあちらの型破りな剣術の方がお前に合ってる」
「う、っす、いえ、分かりました」
神妙に頭を揺らして、あとはぼーっと地面を眺めていた。
少しはやる気になればいいとリーグを横目にエヴ嬢達の遊びを眺めた。
体格の審査があるうちは大柄な者ばかりだ。
泳ぎの得意な者だけ免除されているが、それでも貴族が多く身体もリーグより大きい。
リーグは当初荷運びとしてここを出入りしていた。
2年前、川の横断中に水辺から二頭の大型魔獣に襲われ回りが右往左往する中、ひとり冷静に荷の槍を担いで川に飛び込み、あっという間にそれぞれの頭と喉をひと突きしたのだ。
大型を二頭もよくやったと言うと、きょとんとしながらあれは中型だと答えていた。
海辺の大型はあれの倍以上だとか。
あの頃は今より背も低く細くて、まだ15歳と若かったのに。
そのことで俺なんか無理だと嫌がるのを無理やり団に引き込んで今に至る。
そしてうちとは逆にクレイン領は体格の差が激しく得物は自由だ。
初めて見たが、エヴ嬢の腰より小柄な男の小隊が存在する。
ホビットの混血で小さな筋肉だるまや細身とまた体格が様々。
身長の低さ以外バラバラの体格を持つ彼らは身軽でダガーや暗器を使いこなし、集団で大型を討伐する。
得物も見たことないものがちらほらあった。
どの団員らも自作の得物だ。
ラウルの双刀やエヴ嬢のメイス、ダリウスはかなり大きな大剣。
それに倣って団員らもそれぞれ好みの武器を使う。
ヤンはジェラルド伯とロバート殿と同じ貴族的な普通の剣と型だ。
領団の中で彼らだけだ。
一応、一律の剣を支給されて全員持ち歩いてはいるが、それとは別に槍やこん棒などのお気に入りの得物を必ず身体のどこかに身に付けていた。
リーグもそちらの方が今の体格に合った剣技を磨けるだろう。
彼らも、ほーっと息を吐いて納刀する。
「ラウル、魔素溜まりを消したのは色魔らしい」
「はぁ?」
先程の話を伝えると目を見開いて驚いている。
「…上位種となると把握してないことが多いなぁ。大発見って思ったのに」
残念だと呟いた。
「すいませんでした。私が見たいと言ったから」
エヴ嬢が頭を下げた。
「気にするな。私も興味があった。こればかりは色魔の気分次第だから仕方ない」
帰りにヤン達も水辺で汚れた手足を洗って戻ることにし、川辺まで戻るとリーグとスミスが隊列を組んで現れ、私達の無事に安堵のため息を吐いた。
ヤン達が洗っている間、エヴ嬢が足をつけて遊んでいる。
リーグが石投げを教えて、他の団長らを交えて競争を始めた。
「投擲の正確さならスミス先輩っすね」
その一言で回りの同意が起こり、視線が集まると満更でもないと正確な投擲を披露する。
向かいの離れた岩場を的に何度も石を投げて当てるとエヴ嬢を始め見ていた者は感心した。
「へー、上手いですね。さすが」
エヴ嬢の喜ぶ姿に反応してラウルは感心したと答えると、その一言で調子に乗る。
皆とのゲームをほっぽりだして誉めて誉めてと圧をかけ、知りたいなどと言っていないのしつこくコツを話して嫌がられる。
白ける回りをほったらかし、めげずにラウルにだけ話題を振ってラウルはどんどん不機嫌になる。
止めろと邪険にするのに、余計ご機嫌を取ろうと話しかけて悪循環だった。
特にエヴ嬢が、もうゲームをしないんですか、順番来ましたよと問うのさえ気づかず無視したせいで怒りに火をつけた。
「スミスさん、オレも得意なんで」
そう言ってスミス以上の正確さで投擲を見せる。
「俺の方が上手いかも」
「まぐれだ!」
鼻で笑い、負けじと言い返したことで二人で対決を始めた。
回りはどちらが上手いか賭けを楽しんだ。
ラウルの方が上手い。
勝敗は決した。
「…ラウルは花を持たそうとしたのに。…オレもわざわざ話題にしたのに。…何やってんだ、あの人」
落ち込むスミスを遠目から呆れて眺めるリーグに納得して笑った。
「初恋かもしれないな。あまりにもポンコツすぎる」
「そっすね。二人が発展するのは無理として、お互いが会話できる程度に話題を出すつもりだったんすけど。昨日もこんなだったんすよねぇ。…これはお手上げっす。スミス先輩は平常心の訓練からっすね」
「鍛えるのか?」
「はぁ?まさか。嫌っすよ?俺には無理っす」
「そうでもないと思うが。私としてはあいつの精神面を鍛えてもらうと助かる。精神の向上は仕事にも関わる。目端の利くお前も、もう少し腕があったら任すことを増やせる」
「庶民っすよ?字も読めないし、最低限の教育も受けてない。俺は泳ぎだけっす。それだって地元じゃ並みですよ?身体も貧弱だし、だめっすよ」
「字は勉強しているだろう?もう少しやる気を出すなら引き立てる。給料が増えたら仕送りが楽になる」
「その代わり時間がなくなるっす」
「なるほど、そこも留意しよう。上に来たら定期的な連休の習得を融通する。頻度の希望はあるか?」
「え?そこまでするんすか?」
破格の条件に、ぱっと顔をあげて目を見開いた。連休など通常許されない。
「お前の交友の広さは価値がある。他団との橋渡しに助かるからな。今もクレイン領団からの評判が良くて友好に役立っている。以前、他の領地では仲裁に役立ったことが何度もあった。お前の良さを分かっている者も多い。これで回りに認めさせるだけの技量を身に付けるなら、文句出ない」
ぽかんと口を開けて微動だにしない。
「評価に驚いたか?」
「うっす」
「あとは言葉使いだな。上に来ると貴族との交流が増える。それの相手もしてもらいたい」
マナーの勉強は我が家に呼んで公爵家の執事らに躾てもらえばいい。
物覚えのいいこいつなら短期で鍛えられる。
「うっす。いえ、はい」
「難しいか?」
「…ですね、かなり。俺の身分ですし、学もない、腕力もない。剣を習うのもここで初めて。あるのは、この人当たりの良さと泳ぎだけです。泳ぎなんか、内地の奴らより上手いってだけだし。毎日の漁で鍛えたから」
「向こうで討伐に参加してたんだろ?荒事に慣れている」
「はい、親に内緒で。金になるし、海賊や魔獣相手に。もらった金で魚を買えばバレないし」
いくつからと尋ねれば9歳からと答える。
さすがに若すぎて驚いた。
最初は船の雑用として乗り込んでいたそうだ。
「我流の体術も悪くない。大柄な相手に細身を活かして健闘してる」
「喧嘩ばっかりしてたんで」
「戦闘技術を含めて全てのバランスが極端に傾いてるが、悪くない。人格も経験も。まだ17歳なのだから身体は育つ。あとは上に来るか留まるかお前次第だ。私は伸びしろを期待して引き立てる気はある。しばらくはクレイン領団で学んでこい。貴族向けの剣術よりあちらの型破りな剣術の方がお前に合ってる」
「う、っす、いえ、分かりました」
神妙に頭を揺らして、あとはぼーっと地面を眺めていた。
少しはやる気になればいいとリーグを横目にエヴ嬢達の遊びを眺めた。
体格の審査があるうちは大柄な者ばかりだ。
泳ぎの得意な者だけ免除されているが、それでも貴族が多く身体もリーグより大きい。
リーグは当初荷運びとしてここを出入りしていた。
2年前、川の横断中に水辺から二頭の大型魔獣に襲われ回りが右往左往する中、ひとり冷静に荷の槍を担いで川に飛び込み、あっという間にそれぞれの頭と喉をひと突きしたのだ。
大型を二頭もよくやったと言うと、きょとんとしながらあれは中型だと答えていた。
海辺の大型はあれの倍以上だとか。
あの頃は今より背も低く細くて、まだ15歳と若かったのに。
そのことで俺なんか無理だと嫌がるのを無理やり団に引き込んで今に至る。
そしてうちとは逆にクレイン領は体格の差が激しく得物は自由だ。
初めて見たが、エヴ嬢の腰より小柄な男の小隊が存在する。
ホビットの混血で小さな筋肉だるまや細身とまた体格が様々。
身長の低さ以外バラバラの体格を持つ彼らは身軽でダガーや暗器を使いこなし、集団で大型を討伐する。
得物も見たことないものがちらほらあった。
どの団員らも自作の得物だ。
ラウルの双刀やエヴ嬢のメイス、ダリウスはかなり大きな大剣。
それに倣って団員らもそれぞれ好みの武器を使う。
ヤンはジェラルド伯とロバート殿と同じ貴族的な普通の剣と型だ。
領団の中で彼らだけだ。
一応、一律の剣を支給されて全員持ち歩いてはいるが、それとは別に槍やこん棒などのお気に入りの得物を必ず身体のどこかに身に付けていた。
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