人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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体験談

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城門を抜けてエドに声をかけた。

「お疲れ様です」

「お前も。迅速な手回しでいつも通り戦いやすかった」

エドの後方支援があると思うと目の前の討伐に集中しやすくて助かる。
さすがだと誉めると渋い顔になる。

「…どうした?」

「…いえ、こちらに集中してる間に申し訳ありません」

次はエドの天幕に居座られたと頭を下げた。
頭痛から目をきつく締めてこめかみを揉む。
見張りを置いていたとはいえ、この戦況に人手が足りず彼らもかり出していたそうだ。

「書類は?」

「鍵のついてるものには施錠して、ついていないものには上から錠前やら鎖やら使って鍵をかけていますので、それは大丈夫です」

エドが胸元から紐に通した3本の鍵を出して私へ手渡す。

「…パティ公爵と陛下からの返信はまだだろうな」

途方にくれて額を撫でながら呟いた。

「昨日、こちらの手紙を持たせたばかりですから。早くて一週間ほどです」

「…今日も出しておけ」

「はい、もう書き終えています」

「…そうか、すまない」

「…団長、お気を確かに」

怒る気力が失せて力なく頭を揺らすと心底可哀想にと同情していた。

「湯あみに公衆浴場へ行ってくる」

私を含めた上官らは普段、城内の浴室を借りているが今は寄りたくない。

「服をご用意します」

「以前のでいい」

しゅうっと獣化を解くと鎧と服が弛み肩からずり落ちた肩当てを押さえる。

「このまま行ったら目立つ。前の服なら違う天幕に保管していただろう?」

取りに誰かをやって戻ってきたとバレたくなかった。

「はい、すぐにお持ちします」

「自分で取りに行くからいい。飯も外で食ってくる。現金を用意しといてくれ。午後はどこかで誰にも知られず休みたいんだが。あとは頼んでいいか?」

「半日なら大丈夫です。またこのようなスタンビートがなければ。報せの鐘が鳴ったら必ずお戻りください」

本来、責任者の私が居場所を伝えないのはいかんのだが、エドは承諾した。

「ジェラルド伯にも半日いないと念のため伝えておいてくれ。私抜きでせねばならなくなった時のために」

「分かりました。団長、そんな泣きそうにしないでください。ゆっくり休んで、気持ちを慰めて、行けるならこっそり会いに行かれてらどうですか?」

「そうだな。行けるならな」

ふう、と息を吐いた。
下級兵士の天幕を借りて鎧を脱いでエドに預けた。自分で服を取りに行くつもりだったが、側にいた団員が気を利かせて持ってきてくれて、湯の支度も整えてくれる。
回りは無表情を通すが、それぞれの目に同情が浮かんでいた。

「お前らも同じ目に遇えばいいのに」

「怖いこと仰らないでください」

エドが鎧をまとめながら叱る。

「仲間がほしいんだ。誰かこういう目にあったことないのか?」

ふて腐れて天幕内の団員らに問うと、一人、二人控えめに手を上げた。

「昔付き合った女があんな感じで、こっちの話は聞かずに何でも勝手に決めて押し付けるので別れたことがあります」

「私は独り暮らしをしていた頃、遠征から帰ったら部屋に顔見知りの女がいて恋人だと回りに言い触らしてました」

ぎょっと回りが振り向いた。

「なんだ、それ?嘘だろ?怖いよ」

「私もびっくりしたんだ。怖くてそれ以来、寮で暮らしている」

隣の若い団員の驚く声に困った顔で頷いた。

「その顔見知りは、確か通ってた飯屋の従業員だったか?」

話を思い出して呟くと、覚えておいででしたかと恥ずかしそうに答える。
こいつが寮に戻りたがるので、なぜかと理由を尋ねてそんな会話があった。

「自分は男にですけど、婚約者がいると断るのに迫られて、勝手に愛人だと婚約者に会いに来て、」

「ええ?!」

「はぁ?それで?」

あったな、そんなことと呟く者もいた。
私も報告に上がっていたことを思い出して心当たりに頷いた。

「向こうの家まで巻き込んでの大騒動になりました。一度ご破算になったけど、婚約者が信じてくれてなんとか結婚できて今は良好です」

ほっと皆に安堵の空気が流れる。

「羨ましい」

黙って聞いていたが、思わずポツリと呟くと1人の団員がおずおずと口を開く。

「だ、団長も、エ、う、いえ。番様と必ず乗り越えられます」

「…番は結婚に乗り気ではない。…まだ説得してる最中だ」

「え?!そうなんですか?!」

「ああ、結婚が怖いそうだ」

「ええ??どうして?」

「自信がないと。それに産まれて10年、言葉を発するのも、目も耳も使えないまま寝たきりだったそうだ。身体が元気になったのはこの数年のことでまだ家族との時間が少なく離れたがらない。伴侶として望まれていると理解してるが、本音は嫌がっている。無理やりは出来ない」

エドを含めた全員がぽかんと口を開けて驚いていた。
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