118 / 315
空腹
しおりを挟む
「あ、あっ、ひや、やぁっ」
膝から力が抜けて倒れかけている。
ヒムドが首から顔を出して、突っ込んだ手に爪を立て噛みつき、ダリウス達が私の後ろを羽交い締めに引き離した。
「腹は膨れたか?」
ブラウンが手を広げて立ちふさがり地面に倒れたエヴ嬢をリーグとラウルが助け起こしている。
激情に駆られた視線でヤンは私の首に手をかけた。
じゅ、と熱さを感じる。
吸い上げるつもりだと分かる。
「団長、どういうつもりですか?」
「腹を空かせていた。放置できない。また無意識に襲わせるのか?」
冷たく見つめ返すと言葉に窮する。
「…いえ」
「なら定期的に飲ませろ。離せ」
腕を強く跳ねて押さえた腕を振り切り、ヤンの手を払う。
「ブラウン、お前も知ってるんだろう?」
怯むブラウンを押し退けて大股でエヴ嬢に寄る。
「止めろっ!触んなっ」
「団長っ、止めてください!何だってこんなことするんすか!?」
「お前ら、離れ、ラウル!どけっ」
顔をあげたエヴ嬢の瞳が金色に輝いていた。
空気には魔力の圧が加わり、抱き締めるラウルの顔に手を触れる。
「エヴ様っ、何を、ん、んんっ」
顔を引き寄せて唇を奪い、ばつんと音が響くとラウルが倒れた。
異常を察したリーグが素早く飛び退こうと身動ぎするのに魅了を混ぜた視線ひとつで動きを制す。
魅了の囚われたリーグがエヴ嬢に飛び掛かり、ラウルと同じように唇を合わせればまた、ばつんと音が鳴り倒れた。
舌から術式をかけたのだろう。
エヴ嬢に被さって倒れるリーグに口付けを続けた。
頬を優しく撫でてこくこくと喉を鳴らしてまだ吸っていると分かった。
「だから、腹が空いてならやると言ったのだ」
腹立たしさに低く唸った。
魅了を受けないためにブラウンは目を覆ってその場に膝を着いて、ヤン達は身構えて捕まえる気でいる。
強い魅了にたじろいだが、捕らわれるほどではないようだ。
私も強い圧に身体に力を込めて対峙する。
全身に魔力を巡らせれば何ら支障はない。
エヴ嬢は捕らえたつもりで、こいこいと手招きするのを近寄って目線を合わせて座る。顔を寄せようとするのを避けて、地面にしゃがんだエヴ嬢の手を取ると一気に吸い上げられる。
以前の夢の時のような強引な吸い上げに強い目眩がする。
ペロッと誘うように顔を舐めてくるのを押し返して制した。術式で身を封じられるわけにはいかない。
「手だけだ」
そう言うと手に噛みついて舌をはせて指を食む。
ぞくぞくする快感に欲が刺激される。
さっさと終わらせようと濃い精力を与えた。
「ん、ふぁぁっ、」
果てたような声に金と紫が混じった瞳の輝きが落ち着いて胸に倒れてきた。
「満足したか?」
「また、わたし。もうやだぁ、ご、めんな、さい。ふ、ううっ、ひっく」
「誰彼と吸うくらいなら私だけにすればいい」
すすり泣き小さく呟くエヴ嬢を横抱きに抱えてヤンを呼んだ。
「頼む」
引き受けたヤンが胸に顔を隠すように抱えた。欲に果てた表情は私とてヤンに見せるのも嫌だった。
「リーグを担ぐ」
どうせ櫓に連れて行かねばならない。
起きたら説明を求められる。
ある程度話す必要があった。
「…定期的に、と言いますとどの程度が望ましいのでしょうか?」
「腹が空けばだ。それも嫌がるなら二、三日おきが良かろう。無理にでもやれ。放っとけば襲うようになる」
「分かりました」
「手からでいい。私がやると言いたいが今は動けん」
その間も静かにぐずぐず泣いていたが、次第に静かになり寝息が聞こえてきた。
「寝たのか?」
「そのようです」
ダリウスがラウルを担いで待っていたので、帰るために歩き始めた。
「く、ううっ、」
するとラウルからばつんと音が鳴る。
「と、解けた」
「術式を解いたのか。降りるか?」
ダリウスが驚いて問うと背にだらりとしたままだった。
「無理。指一本、動かない。このまま運んでよ。ドレインと違うから魔力は使えるけど、だるさ半端ない。頭がぼーっとする」
「口は回るようだな。それに淡白なエルフだからか?夢魔は欲に絡んだ精力を好む」
「団長、正解。淡白な種族は精力を吸われると弱い」
「回復はどうだ?時間かかるか?」
「んー。もう指が動く。身体も少し。これなら半刻ほどかな。団長、リーグを寄せてください。術式解くから」
「ああ、頼む」
動けないラウルに背に担いだリーグを寄せるとふらつく手をリーグの垂れた手に当てる。
ばつんと千切れる音が鳴ると、リーグが微かに身動ぎした。
「う、だ、団長、さーせん。話、聞こえて、たっす。ラウル、あり、がと」
「道すがら説明をする。ヤン、ある程度話していいか?」
「ここまで目撃したのなら仕方ないですね。しかし旦那様への報告はさせていただきます」
「口を滑らすような奴なら舌を切る。こいつは馬鹿じゃないから安心しろ」
背中から、こわぁと小さく聞こえた。
「聞かなく、ていいっす。知りたくないっす」
「賢明だ。だが、役立ってもらわねばならない。多少は覚悟して聞け」
「うわぁ、怖いっす…」
ヤンと二人で説明をすると、聞きたくなかったっすと小さく呻いた。
「リーグ、どう?動ける?」
「そっすね、立つのは無理そうっす。腕とかは動けるようになったけど。力が入んないっす」
「俺の状態と同じくらいか。淡白なのが原因じゃなくて一気に吸われたせいかな。人族とエルフの混血だけじゃ比較が足んないや。人狼だからって何でこんなピンピンしてるんだ?種族によって精力の差があるから?あの術式の効果をもっと調べたい。身動きと魔力の流れを阻害しただけか、俺達が動けなくなった原因になるのか、エヴ嬢の器の大きさも確認したい。人族なら何人くらい吸えるのか、消費についても」
帰り着くまでぶつぶつと分析を呟いていた。
膝から力が抜けて倒れかけている。
ヒムドが首から顔を出して、突っ込んだ手に爪を立て噛みつき、ダリウス達が私の後ろを羽交い締めに引き離した。
「腹は膨れたか?」
ブラウンが手を広げて立ちふさがり地面に倒れたエヴ嬢をリーグとラウルが助け起こしている。
激情に駆られた視線でヤンは私の首に手をかけた。
じゅ、と熱さを感じる。
吸い上げるつもりだと分かる。
「団長、どういうつもりですか?」
「腹を空かせていた。放置できない。また無意識に襲わせるのか?」
冷たく見つめ返すと言葉に窮する。
「…いえ」
「なら定期的に飲ませろ。離せ」
腕を強く跳ねて押さえた腕を振り切り、ヤンの手を払う。
「ブラウン、お前も知ってるんだろう?」
怯むブラウンを押し退けて大股でエヴ嬢に寄る。
「止めろっ!触んなっ」
「団長っ、止めてください!何だってこんなことするんすか!?」
「お前ら、離れ、ラウル!どけっ」
顔をあげたエヴ嬢の瞳が金色に輝いていた。
空気には魔力の圧が加わり、抱き締めるラウルの顔に手を触れる。
「エヴ様っ、何を、ん、んんっ」
顔を引き寄せて唇を奪い、ばつんと音が響くとラウルが倒れた。
異常を察したリーグが素早く飛び退こうと身動ぎするのに魅了を混ぜた視線ひとつで動きを制す。
魅了の囚われたリーグがエヴ嬢に飛び掛かり、ラウルと同じように唇を合わせればまた、ばつんと音が鳴り倒れた。
舌から術式をかけたのだろう。
エヴ嬢に被さって倒れるリーグに口付けを続けた。
頬を優しく撫でてこくこくと喉を鳴らしてまだ吸っていると分かった。
「だから、腹が空いてならやると言ったのだ」
腹立たしさに低く唸った。
魅了を受けないためにブラウンは目を覆ってその場に膝を着いて、ヤン達は身構えて捕まえる気でいる。
強い魅了にたじろいだが、捕らわれるほどではないようだ。
私も強い圧に身体に力を込めて対峙する。
全身に魔力を巡らせれば何ら支障はない。
エヴ嬢は捕らえたつもりで、こいこいと手招きするのを近寄って目線を合わせて座る。顔を寄せようとするのを避けて、地面にしゃがんだエヴ嬢の手を取ると一気に吸い上げられる。
以前の夢の時のような強引な吸い上げに強い目眩がする。
ペロッと誘うように顔を舐めてくるのを押し返して制した。術式で身を封じられるわけにはいかない。
「手だけだ」
そう言うと手に噛みついて舌をはせて指を食む。
ぞくぞくする快感に欲が刺激される。
さっさと終わらせようと濃い精力を与えた。
「ん、ふぁぁっ、」
果てたような声に金と紫が混じった瞳の輝きが落ち着いて胸に倒れてきた。
「満足したか?」
「また、わたし。もうやだぁ、ご、めんな、さい。ふ、ううっ、ひっく」
「誰彼と吸うくらいなら私だけにすればいい」
すすり泣き小さく呟くエヴ嬢を横抱きに抱えてヤンを呼んだ。
「頼む」
引き受けたヤンが胸に顔を隠すように抱えた。欲に果てた表情は私とてヤンに見せるのも嫌だった。
「リーグを担ぐ」
どうせ櫓に連れて行かねばならない。
起きたら説明を求められる。
ある程度話す必要があった。
「…定期的に、と言いますとどの程度が望ましいのでしょうか?」
「腹が空けばだ。それも嫌がるなら二、三日おきが良かろう。無理にでもやれ。放っとけば襲うようになる」
「分かりました」
「手からでいい。私がやると言いたいが今は動けん」
その間も静かにぐずぐず泣いていたが、次第に静かになり寝息が聞こえてきた。
「寝たのか?」
「そのようです」
ダリウスがラウルを担いで待っていたので、帰るために歩き始めた。
「く、ううっ、」
するとラウルからばつんと音が鳴る。
「と、解けた」
「術式を解いたのか。降りるか?」
ダリウスが驚いて問うと背にだらりとしたままだった。
「無理。指一本、動かない。このまま運んでよ。ドレインと違うから魔力は使えるけど、だるさ半端ない。頭がぼーっとする」
「口は回るようだな。それに淡白なエルフだからか?夢魔は欲に絡んだ精力を好む」
「団長、正解。淡白な種族は精力を吸われると弱い」
「回復はどうだ?時間かかるか?」
「んー。もう指が動く。身体も少し。これなら半刻ほどかな。団長、リーグを寄せてください。術式解くから」
「ああ、頼む」
動けないラウルに背に担いだリーグを寄せるとふらつく手をリーグの垂れた手に当てる。
ばつんと千切れる音が鳴ると、リーグが微かに身動ぎした。
「う、だ、団長、さーせん。話、聞こえて、たっす。ラウル、あり、がと」
「道すがら説明をする。ヤン、ある程度話していいか?」
「ここまで目撃したのなら仕方ないですね。しかし旦那様への報告はさせていただきます」
「口を滑らすような奴なら舌を切る。こいつは馬鹿じゃないから安心しろ」
背中から、こわぁと小さく聞こえた。
「聞かなく、ていいっす。知りたくないっす」
「賢明だ。だが、役立ってもらわねばならない。多少は覚悟して聞け」
「うわぁ、怖いっす…」
ヤンと二人で説明をすると、聞きたくなかったっすと小さく呻いた。
「リーグ、どう?動ける?」
「そっすね、立つのは無理そうっす。腕とかは動けるようになったけど。力が入んないっす」
「俺の状態と同じくらいか。淡白なのが原因じゃなくて一気に吸われたせいかな。人族とエルフの混血だけじゃ比較が足んないや。人狼だからって何でこんなピンピンしてるんだ?種族によって精力の差があるから?あの術式の効果をもっと調べたい。身動きと魔力の流れを阻害しただけか、俺達が動けなくなった原因になるのか、エヴ嬢の器の大きさも確認したい。人族なら何人くらい吸えるのか、消費についても」
帰り着くまでぶつぶつと分析を呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
結婚式に結婚相手の不貞が発覚した花嫁は、義父になるはずだった公爵当主と結ばれる
狭山雪菜
恋愛
アリス・マーフィーは、社交界デビューの時にベネット公爵家から結婚の打診を受けた。
しかし、結婚相手は女にだらしないと有名な次期当主で………
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる