人狼の団長、見つけた番はすでに溺愛されている《団長はお預け中、たまに待てが出来ないで押し倒す》

うめまつ

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空腹

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「あ、あっ、ひや、やぁっ」

膝から力が抜けて倒れかけている。
ヒムドが首から顔を出して、突っ込んだ手に爪を立て噛みつき、ダリウス達が私の後ろを羽交い締めに引き離した。

「腹は膨れたか?」

ブラウンが手を広げて立ちふさがり地面に倒れたエヴ嬢をリーグとラウルが助け起こしている。
激情に駆られた視線でヤンは私の首に手をかけた。
じゅ、と熱さを感じる。
吸い上げるつもりだと分かる。

「団長、どういうつもりですか?」

「腹を空かせていた。放置できない。また無意識に襲わせるのか?」

冷たく見つめ返すと言葉に窮する。

「…いえ」

「なら定期的に飲ませろ。離せ」

腕を強く跳ねて押さえた腕を振り切り、ヤンの手を払う。

「ブラウン、お前も知ってるんだろう?」

怯むブラウンを押し退けて大股でエヴ嬢に寄る。

「止めろっ!触んなっ」

「団長っ、止めてください!何だってこんなことするんすか!?」

「お前ら、離れ、ラウル!どけっ」

顔をあげたエヴ嬢の瞳が金色に輝いていた。
空気には魔力の圧が加わり、抱き締めるラウルの顔に手を触れる。

「エヴ様っ、何を、ん、んんっ」 

顔を引き寄せて唇を奪い、ばつんと音が響くとラウルが倒れた。
異常を察したリーグが素早く飛び退こうと身動ぎするのに魅了を混ぜた視線ひとつで動きを制す。
魅了の囚われたリーグがエヴ嬢に飛び掛かり、ラウルと同じように唇を合わせればまた、ばつんと音が鳴り倒れた。
舌から術式をかけたのだろう。
エヴ嬢に被さって倒れるリーグに口付けを続けた。
頬を優しく撫でてこくこくと喉を鳴らしてまだ吸っていると分かった。

「だから、腹が空いてならやると言ったのだ」

腹立たしさに低く唸った。
魅了を受けないためにブラウンは目を覆ってその場に膝を着いて、ヤン達は身構えて捕まえる気でいる。
強い魅了にたじろいだが、捕らわれるほどではないようだ。
私も強い圧に身体に力を込めて対峙する。
全身に魔力を巡らせれば何ら支障はない。
エヴ嬢は捕らえたつもりで、こいこいと手招きするのを近寄って目線を合わせて座る。顔を寄せようとするのを避けて、地面にしゃがんだエヴ嬢の手を取ると一気に吸い上げられる。
以前の夢の時のような強引な吸い上げに強い目眩がする。
ペロッと誘うように顔を舐めてくるのを押し返して制した。術式で身を封じられるわけにはいかない。

「手だけだ」

そう言うと手に噛みついて舌をはせて指を食む。
ぞくぞくする快感に欲が刺激される。
さっさと終わらせようと濃い精力を与えた。

「ん、ふぁぁっ、」

果てたような声に金と紫が混じった瞳の輝きが落ち着いて胸に倒れてきた。

「満足したか?」

「また、わたし。もうやだぁ、ご、めんな、さい。ふ、ううっ、ひっく」

「誰彼と吸うくらいなら私だけにすればいい」

すすり泣き小さく呟くエヴ嬢を横抱きに抱えてヤンを呼んだ。

「頼む」

引き受けたヤンが胸に顔を隠すように抱えた。欲に果てた表情は私とてヤンに見せるのも嫌だった。

「リーグを担ぐ」

どうせ櫓に連れて行かねばならない。
起きたら説明を求められる。
ある程度話す必要があった。

「…定期的に、と言いますとどの程度が望ましいのでしょうか?」

「腹が空けばだ。それも嫌がるなら二、三日おきが良かろう。無理にでもやれ。放っとけば襲うようになる」

「分かりました」

「手からでいい。私がやると言いたいが今は動けん」

その間も静かにぐずぐず泣いていたが、次第に静かになり寝息が聞こえてきた。

「寝たのか?」

「そのようです」

ダリウスがラウルを担いで待っていたので、帰るために歩き始めた。

「く、ううっ、」

するとラウルからばつんと音が鳴る。

「と、解けた」

「術式を解いたのか。降りるか?」

ダリウスが驚いて問うと背にだらりとしたままだった。

「無理。指一本、動かない。このまま運んでよ。ドレインと違うから魔力は使えるけど、だるさ半端ない。頭がぼーっとする」

「口は回るようだな。それに淡白なエルフだからか?夢魔は欲に絡んだ精力を好む」

「団長、正解。淡白な種族は精力を吸われると弱い」

「回復はどうだ?時間かかるか?」

「んー。もう指が動く。身体も少し。これなら半刻ほどかな。団長、リーグを寄せてください。術式解くから」

「ああ、頼む」

動けないラウルに背に担いだリーグを寄せるとふらつく手をリーグの垂れた手に当てる。
ばつんと千切れる音が鳴ると、リーグが微かに身動ぎした。

「う、だ、団長、さーせん。話、聞こえて、たっす。ラウル、あり、がと」

「道すがら説明をする。ヤン、ある程度話していいか?」

「ここまで目撃したのなら仕方ないですね。しかし旦那様への報告はさせていただきます」

「口を滑らすような奴なら舌を切る。こいつは馬鹿じゃないから安心しろ」

背中から、こわぁと小さく聞こえた。

「聞かなく、ていいっす。知りたくないっす」

「賢明だ。だが、役立ってもらわねばならない。多少は覚悟して聞け」

「うわぁ、怖いっす…」

ヤンと二人で説明をすると、聞きたくなかったっすと小さく呻いた。

「リーグ、どう?動ける?」

「そっすね、立つのは無理そうっす。腕とかは動けるようになったけど。力が入んないっす」

「俺の状態と同じくらいか。淡白なのが原因じゃなくて一気に吸われたせいかな。人族とエルフの混血だけじゃ比較が足んないや。人狼だからって何でこんなピンピンしてるんだ?種族によって精力の差があるから?あの術式の効果をもっと調べたい。身動きと魔力の流れを阻害しただけか、俺達が動けなくなった原因になるのか、エヴ嬢の器の大きさも確認したい。人族なら何人くらい吸えるのか、消費についても」

帰り着くまでぶつぶつと分析を呟いていた。
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